乗っている車を見れば、持ち主がどんな人間かわかりますよね。フィンランドに来られたとき、人々がどんな車に乗っているか気づきましたか。もちろん日本車とボルボだらけですが、乗っている人間の性格について何が言えるでしょう。
 フィンランドの、という意味?
 ええ。
 フィンランドの車を見ていてまず言えることといったら、フィンランドの車がバカ高いということぐらいじゃないかなあ。ほとんどの人が、かなりつつましいハッチバックに乗っていて、そのほとんどが前輪駆動車だから。雪の多さも少なからず関係しているんだろうね。
「乗っている車でその人がわかる」と言うのには、少しためらいがあるなあ。人は意識的に車を選ぶから、確かに関連性はあるだろうけど、それが十分に体系立てられたものと言えるかどうかわからない。国によっても違うね。
じつは英国では長いあいだ、ボルボのドライバーは見る目がないと言われていた。でも最近では、ボルボはクールだから、変わるものだね。BMWのドライバーはバカだけど、最近ではアウディのドライバーもバカだと思われている。でも別の国へ行くと、ぼくらとまったく別の見方があって、ヒュンダイのドライバーは変人で、ボルボのドライバーは最高にクールで、サーブのドライバーはみんな人殺しだとか思われている。よくわからないね。
 ロールス・ロイス・コーニッシュを運転すると、本物の英国人らしい気分になりますか。
 うーん、ぼくは前から、ロールス・ロイス・コーニッシュとシルヴァー・シャドウはある意味多文化的な車だと言っているんだ。なぜなら、この2車は偉大で、誰が乗っても似合うから。年齢や、服装や、性別や、人種や、そういったことに関係なく、誰が乗ってもしっくりくる。明らかに英国的な車だし、威張りかえった富豪階級の遺物的なものでもあるから、こんなことを言うのは変なんだけど。
ロールス・ロイスにはロックンロールの精神が染みついているよね、とくに昔のやつはそうで、見た目もクールだよね。ぼくは自分の車を運転していると、とにかく世界に満足した、愛に満ちた気持ちになるんだ。
ごく最近ゴーストに乗りましたよね。この車はほんとうにこれからも伸びていく可能性を持っていて、いくつか派生モデルが出されても、車名の価値を傷つけるようなことはないでしょうか。
 それはつまり、ゴーストがファントムよりも小型で、下のグレードに位置するからということ?
ええ、それにドロップヘッドクーペやそれ以外の派生モデルも出す意向だとか。
 うん、大丈夫だと思うね。今のところ、BMWのロールス・ロイスの扱いかたにはじつに感心させられているから。
 ゴーストが実際は7シリーズだという点はあるけど、そのことに少し神経を尖らせすぎなんじゃないかな。大事なのは、スタイリングも細工も、何もかもがすばらしくて、伝統的なロールス・ロイスの価値に見合うものだということだし、何よりも、かつてのロールス・ロイスがやってきたこと――それはロールス・ロイスだけがしてきたことだとぼくは思うんだけど――を継承していることなんだ。つまり、静粛性と快適性というロールス・ロイスに必須のクオリティに関して、何一つ妥協をしていないということ。ラグジュアリーカーを作ろうとする人たちは多くて、とくにドイツではそうだけど、最後のところでどうしても、ニュルブルクリンクでテストして、ハンドリングを少しスポーティーにしたりしているように感じられるんだ。でもロールス・ロイスに関しては、それをやっていない。
 ある人がうまいことを言っていたんだけど、ロールス・ロイスはパワフルな車で、信号待ちのスタートダッシュではポルシェ911と遜色がないけれど、カーブでは負ける、そうあるべき車なんだと。まったくその通りだと思ったよ。今でもそういうアプローチをとっているみたいだから、ぼくは彼らのやりかたにあまり心配はしていないね。
もう一つ、非常に重要な質問です。ジェームズ、もう新しい車を手に入れましたか?
 いや、残念ながらもう別の車は持てないんじゃないかな。あれは特別な車だったから。壁に写真でも飾っておくことにするよ。みなさんありがとう、それでは。
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