さて、番組の人気が高まるにつれ、視聴者はより危険で、さらにばかげたスタントを要求しますよね。「トップ・ギア」の番組中にしたことで、一番ばかげたことは何だと思いますか。
 視聴者がほんとうに危険なことを求めているかどうかはわからないし、全体としては実際それほど危険なことをしてはいないんだ。バカはやるけど、それも実際かなり気をつけているよ。
 一番ばかげたことは何か、だったよね。それはもうどう見ても、リチャード・ハモンドがジェットエンジン搭載車に乗ったことが、結局ばかげたことになるのかな、当時はそう思わなかったんだけど。不運だっただけで。一番ばかげたことと言えば――
反感を買うようなスローガンを車体に書いて、アメリカ中部を横断したことでは?
 すごく挑発的だったから、番組の中ではあれが一番ばかげたことだろうね。
 気に入ってもらえないことはわかっていたんだけど、あれほど怒るとは思っていなかったんだ。それからライブショーでやった一番のバカは、たぶんスーパーマーケットのショッピングカートを使ったボウリングだね。あれでぼくもハモンドもボロボロになったから、もうやめたんだ。
 あらゆるテレビ番組の中でやったことのうち、最高の経験は何ですか。宇宙へ行ったこともその一つではないでしょうか。
 そう、U-2に乗ったのがたぶんハイライトだろうね、何といってもすごく……あんなことはもう二度とやらないだろうし、めったにない名誉だからね。今でもよくあんなことが認められたものだと少し驚いているんだけど、確かにいい経験だった。
 「トップ・ギア」の中では、北極点に行ったことも言うべきだろうね。到着したときはさすがにいい気分だったけど、着くまでは大変だった。ジェレミーとテントを共有しないといけなかったんだけど、彼はほら、それほど清潔なタイプじゃないから。
 中東の砂漠とか、アメリカやボツワナを横断したのもほんとうに楽しかったな。ああいう壮大なドライブは、車の良さを再確認できていいね。車に乗って、どこかはるか遠いところまで行くことができて、そのあいだずっと、車が人を支えてくれるわけだからね。そこがいいし、車が古くてくたびれたものであれば、なおさら楽しい。ぼくはオンボロ車がほんとうに好きで、それは新しい車では味わえない冒険を与えてくれるからなんだ。新しい車は、不具合なく走ることがわかっているから。
ロングドライブがお好きなんですね、ジェームズ。オーストラリアに来てスペシャルを撮影する計画はありませんか。
 えーっと、ずっと昔、12、13年ほど前になるけど、『カー』誌の企画で、オーストラリアに行って大がかりなドライブ旅行をしたんだ。南から出発して、シドニーまで北上して、はるばるパースまで横断した。フリンダーズ山脈とか、グレートオーストラリア湾とか、ところどころで寄り道もしてね。あれはすごくよかったから、またオーストラリアに行って仕事をしたいね。
唯一、オーストラリアで困るのは、正直なところ広すぎてはてしなく時間がかかることで、撮影をするとしたら、おそらく1か月は必要なんじゃないかな。でもほんとうにまたやりたいね。何もない土地ばかりだけど、魅力的なところだから。
最初に受けた運転免許の試験に落ちたんですよね。どんなミスをしたんですか。
 そうなんだ。何をしたかって? 確かロータリーでへまをしたんだと思う。正直、今となってはちょっと記憶があいまいで思い出せないけど、ごく些細なことだったよ。バス停に突っこんだとかそういうのではなくて、テクニカルなことだった。
ジェームズ、自分が現在のような仕事をすることになると予想できましたか。また、もしも人生をやり直せるとしたら、代わりに何をしますか。
 いや、夢にも思わなかったね。まるきり偶然の産物だし、ここに至るまでの道は、信じられないほど紆余曲折だらけで、思いもよらないものだったから。
 もう一度やり直したとして、熱意と勤勉さがあって、学校の勉強も頑張って、将来のビジョンも持っていたとしたら、やってみたいことはあるよ――前にも誰かに訊かれたけど――前から外科医になってみたいと思っていたんだ。かなり分析的な性格だし、わりと手先が器用だし、自分に合っていそうな気がする。でも教師もかなりいいなと思うし、金属細工師や大工のような職人的な仕事をしていても、かなり満足していたと思う。
←スペシャルコンテンツ トップページへ