第10章『Distance』

2021年のテーマは「Distance」。

2020年は、新型コロナウイルスによって、社会の意識が根底から変わった。特に大きく揺らいだのは、「距離」である。人々は、他人との適切な「距離」を意識するようになった。電車やバスなどの交通手段の環境下だけでなく、オフィスや学校での過ごし方が変わり、オンラインによるリモート作業、リモート授業も盛んに行われた。そこで人々は、コミュニケーションの際、「距離」によって得られること、そして失われるものを実感することとなった。

SDGsには、地球で一緒に暮らす生き物たちの環境を守ることが大切な目標として書かれている。しかし、地球を俯瞰して見ると、人間の活動を発端とする「距離」の問題が、至る所で発生している。人間が、自然を壊して動物たちの生活圏に近づきすぎ、彼らのテリトリーを侵している。その象徴となるのが、「シマフクロウ」。日本の固有種で、北海道では、古来よりアイヌの守り神だった。しかし、今その個体数が激減している。なぜ、アイヌにとって、シマフクロウは「神」だったのか?そこには、人間と動物との「距離」が深くかかわっていた。

経済活動や人間のエゴを優先して「適切な距離」を侵すことで、自然がバランスを崩し、動物にとっても人間にとっても不幸なコミュニケーションが発生してしまう。果ては、本来は接触しないはずのウイルスが人間界に蔓延する事態にも…テリトリーを侵したこと、それが今回の新型コロナウイルスにつながっている一因であるとウイルス専門家はいう。

そして、ヒグマ。世界遺産に指定された知床で、今、ヒグマが人間によって死に追いやられている。観光客がヒグマに餌をやること…これが、ヒグマを死に至らしめているという。

地球という舞台で人間が守らなければならない「距離」とは何か。北海道・道東で、シマフクロウやヒグマを取材して考える。

シマフクロウ

なぜ神とまで崇められたシマフクロウが絶滅の危機に瀕しているのか?

シマフクロウはテリトリー内で行動していて、餌付けしても自分のテリトリー以外のところにある食べ物には手を出さない非常に保護が難しい動物。どうやって人間が侵したシマフクロウのテリトリーを復活させていくのか?

さらに、近年増えているのがシマフクロウの交通事故。事故にあったシマフクロウを保護し、自然に返そうと奮闘する獣医師とともに、シマフクロウの現在を訪ねる。

今回は特別に、シマフクロウの生息が確認されているエリアに場所を決して明かさないことを条件に取材に入ることができた。そこに広がっていたのは、原始北海道の手つかずの自然だった。魚を食べるシマフクロウにとって、豊かな川と、冬でも凍らない川を保つための深い森林は不可欠である。シマフクロウは、豊かな自然の象徴なのだ。

ヒグマ

ヒグマはこれまで保護されてきた動物だが、それは国立公園内でのこと。ヒグマにとっては、ほんの少し国立公園を出ただけで、人間を襲う獰猛な動物になってしまう。本来なら人間を避ける習性がある動物なのに、人間に近づき、射殺されてしまう個体が増えている。その原因は、人間がエサをやること。知床の観光客がとる無知な行動がヒグマを危機に追いやっている。