昭和36年4月、札幌~釧路間にて国鉄のディーゼル急行「狩勝(かりかち)」キハ56系が運行を開始した。
これが広義の意味での急行形ディーゼル動車・キハ58系のデビューだった。
北海道用に耐寒耐雪構造になっているキハ56系だが、基本設計はキハ58系と同じ。標準のキハ58系より先に改良型の56系がデビューする形となった。
この事例が、キハ58系の車両としての性格を雄弁に物語っている。
キハ58系は、それまで国鉄が培ってきたディーゼル動車の技術を集大成させた車両。それと同時に、日本全国どのような気候風土でも運用可能で、かつあらゆる編成や用途にも対応可能という万能型の車両として設計された。
そして、運用が困難な場合は、キハ56系のように用途に合わせ容易に改良することが可能だった。
それによりキハ58系は北海道から九州まで、全国で力強く疾走した。
そして、その活躍の陰には、ディーゼル動車の普及に情熱を傾けた多くの人々の努力があった。その伝説を紹介する。