第73回「皇海山・秋」

森の木々たちが色づき始める秋。
日光・中禅寺湖の湖畔も色鮮やかな紅葉を見ようと多くの観光客が訪れる。
この時期、湖畔に聳える男体山や日光白根山といった百名山も登山客で賑わう。
しかし、日光を代表する百名山はもう一つある。

中禅寺湖と男体山の素晴らしい景色を見ることができる半月山から西へ目を転じると、遥か遠くにどっしりと構える山が見える。
それが今回紹介する皇海山。

栃木県日光市と群馬県沼田市の境界にある標高2,144m。
日本百名山の著者・深田久弥は「登る人が少なく、まだ原始的な自然美を保つ山域にある山で、横が詰まり、颯爽と峰頭もたげ、一気に沢の下まで落ちている姿は、思わず脱帽したいほどの気品を備えている」と記している。

現在は群馬県側から約3時間で登る不動沢ルートが人気だが、日本百名山の著者・深田久弥が登った当時は、まだそのルートが開拓されていなかった為か、深田は栃木県側の銀山平から片道約8時間のコースを登った。
現在ではクラシックルートと言われるコースで、栃木県内の山のグレーティングで最難関と位置付けられている。

今回は深田が辿った道程を、皇海山の群馬県側の麓、片品村でペンションを営む桂田直樹さん(57歳)の案内で登る。
山梨県出身の桂田さんはペンションを始めて20年以上。宿泊するお客さんを連れて皇海山に訪れた回数は200回にもなるそう。
桂田さんにとって皇海山は、故郷から遠く離れた地で、ゼロからスタートした自分を育ててくれた恩義を感じる山。

銀山平から登り始め庚申山荘で一泊。翌日に庚申山から鋸山までの11のピークを越え皇海山の山頂を目指す。
修験道としても知られる厳しいルートから、果たしてどんな絶景が見えたのか?