民謡にも唄われ、全国にその名を知られる磐梯山(1816M)。山麓は日本屈指のリゾートにもなっているが、今もなお活発な活動を続ける火山であることに変わりはない。
表磐梯と呼ばれる端正な南側の姿に対し、北から望む裏磐梯は火口壁をむきだしにした荒々しい姿、この2面性もまた磐梯山の個性。
避暑地の趣きが漂う夏に比べ、冬は登山者の姿もまれなほどの厳しさを見せる磐梯山。だが冬こそ、この天下の独立峰の素晴らしさが味わえる季節でもあった。
1月から東北地方は降雪の日が多く、地元の人でさえ磐梯山の頂を見た記憶が薄いというほどの悪天続き。撮影隊も覚悟して臨んだが、頂上では、ひと月に一度あるかないかと言う360度の大展望、さらに磐梯山ならではの言葉にしがたい雪の造形に歓声をあげることとなった。
雪深き冬の厳冬期の磐梯山の頂に導いてくれたのは、地元福島の登山家・保坂昭憲さん。65歳にしてなおヒマラヤをはじめ世界の高峰を目指す保坂さんも、登山の原点は郷土の山、磐梯山だった。
そしてもうひとり、時を隔てて磐梯山に心を寄せていた人物がいた。その人の名は新島八重。幕末のジャンヌダルクと磐梯山との知られざる秘話も紹介する。