山梨県中央部に広がる甲府盆地。そこから西を望むと、印象的な三つの峰が目に入る。南アルプス北部の名峰、鳳凰山。三つの峰はそれぞれ、地蔵、観音、薬師の名が与えられ、その三山を総称して鳳凰山と呼ばれている。
大展望を満喫出来る山として、夏には尾根に初心者の歓声がこだまする鳳凰山。
しかし今回の撮影の入山日は厳冬期と呼ばれる1月、しかも低気圧が通過した大雪の日。悪戦苦闘しながらも稜線に達すると、大雪は空のほこりをすべて落とし、山々に素晴らしい冬化粧を施していた。
そこで山が見せてくれた、空前の絶景。真冬の頂きにたどり着いた者だけが
目にすることの出来る、荘厳な朝。神々しい夕日。
今回の長い縦走路を案内してくれたのは、鳳凰山に親子で山小屋を経営する小林珠里さん(36)。山を守るという宿命から時には父との確執もあったが、それを乗り越え登山者と向き合う。そして珠里さんにガイドされ臨んだ鳳凰山の岩の尾根、その最後にカメラの前に現れたのは、おびただしい数のお地蔵様。それはこの山と里の人々の、切実で、意外な歴史を今に伝えていた…。