甲武信ヶ岳。不思議な山の名前…その由来は、甲州・武州・信州の3国にまたがることからつけられたとも。事実、その山頂は日本を代表する3つの大河の源流となり、山梨県(甲州)側からは笛吹川・富士川、長野県(信州)側からは千曲川・信濃川、埼玉県(武州)側からは東京湾に注ぐ荒川の最初の一滴をはぐくんでいる。
奥秩父を代表する山、甲武信ヶ岳へは、尾根ルートはもちろんのこと、水流ほとばしる沢からのルートも忘れてはならない。その一つが笛吹川東沢釜の沢。かつては、甲武信ヶ岳に登る唯一の一般路になっていたというが、現在では登山道は荒れ、沢登りの経験者同行でないと遡行は難しい。しかしその素晴らしい渓相はよく知られており、両門の滝、千畳のナメと名付けられた谷の絶景は訪れるものに感嘆を与え続けてきた。
今回は、頂上直下にある山小屋、甲武信小屋のチーフ・北爪清史さんの案内で、沢を最も美しく彩る紅葉の季節に、清らかな水の響きを道連れに頂を目指す。
この沢だけとも言って過言ではない自然の造形、鮮やかな紅葉、太古の森に輝く緑の苔、そして山頂からの大展望。“水の山、甲武信ヶ岳”ならではの“水の旅”を堪能する。