第22回「利尻山・夏」

 最果ての日本百名山、利尻山は、その呼び名の通り日本最北端宗谷岬にも近い、利尻島の中央部に屹立する孤高の名峰。標高は1700メートル少々ながら森林限界は500メートル付近、かなり下部から高山植物が咲く花の名山でもある。リシリヒナゲシなど、この山だけの固有種も数種を数え、海からまっすぐ空へと突き上げる尾根には7月、厳しい気候を耐え抜いた可憐な花々が咲き誇る。この山の魅力はその初夏の花々と、孤高の島の峰ならではの独特の展望。
 今回の山旅では、朝には山を取り巻く見事な雲海、昼からは雲の海から、今度は本当の北の海が見渡せるという幸運に恵まれた。「こんな絶景はあまりないですよ、本当に運がいい」と笑う渡辺敏哉さんはこの利尻島でペンションを経営しながら、毎日のように山へ向かう地元ガイド。ところが山のガイドになる前はなんと海の男、湘南サーファー。そんな渡辺さんが故郷の山と人生を共にするきっかけとなったのも、ここ利尻山の花たちとの出会いだった…。