第21回「大雪山・夏」

 「北海道の屋根」と称される、大雪山。しかし大雪山という一つの山は存在せず、最高峰旭岳(2291m)を中心とする連山の総称を指す。そのたおやかな峰々は本州のアルプスなどとは全く違う趣で、とにかく広い。ある作家は、「富士山で高さを知れ、大雪で広さを知れ」と讃えたほどの広大さを誇る。
 7月、大雪山は、豊かな残雪と、一斉に咲き揃う高山植物の群落に彩られる。歩くほどに目を引き付ける花と空と雪の絶景…まさにこの山だけの楽園、アイヌの人々が「神々が遊ぶ庭」と呼んだのもうなずけるほど。
 今回、大雪山の縦走をガイドしてくれるのは、地元・北海道に生まれ育った宮下岳夫さん。北海道山岳ガイドの創始ともいえる存在で、日本の名峰から海外の峻峰まで多くの登山歴を持つものの、やはり大雪山はふるさと、一生登り続けると語る。その脳裏には、幼いころ父に連れられ、息を切らして初めて登った大雪山の絶景が今も離れずにあった。