第17回「開聞岳・春」

 開聞岳は鹿児島県薩摩半島の南端に位置する標高924mの火山。山麓の南西半分は海に面する。錦江湾に屹立するその姿は薩摩富士と称され、古来より航海の目印として、多くの人々を迎え、そして見送って来た。

 太平洋戦争時代、知覧基地から出撃した特別攻撃隊の戦闘機は、開聞岳に進路を取り、美しい開聞岳の姿に故郷や家族への別れを託した後、南方戦線に向かったと言われる。この時代にもまた、開聞岳は多くの人々を見送って来たのである。今回は知覧特攻平和会館の初代館長・板津忠正さんに思い出話しを伺う。

 さて、開聞岳を案内していただくのは、東京からUターンし、故郷の美しい山を改めて再発見した男性・新村信博さん。開聞岳の山麓に住み、その魅力を多くの人に知ってもらいたいと願う。

 彼とともに春浅い開聞岳を登る。珍しい螺旋状の登山道を登ると、眺望は次々と姿を変え、まるで絶景の万華鏡を眺めているかのよう。そして今年は全国的にかなり遅れている桜の開花がそこに!