第14回「雲取山・冬」

 東京都の最西端に位置する雲取山。東京都の最高峰でありながら埼玉県・山梨県にも跨がるこの山は、人里から離れた奥深さ故、都心を懐に抱いているとは思えぬ程広大な自然を有している。都心からの近さと雄大な自然は、年中多くの登山者を迎えることとなっている。

 麓に霜が降り始める冬。雲取山もまた白き衣を纏い始める。登山者を迎え入れるのは、積もり始めた雪、凍てつく空気を纏った霧氷。そして澄んだ空気が見せる、雲上の眺望。南アルプスや浅間山、富士山など、日本の名だたる山が一堂に会する様は、訪れた者を惹き付けて止まない。

 雲取山の絶景は日中に留まらない。落日と替わる様に姿を現すのは、眼下に煌めく都心の夜景。東京タワーやスカイツリー等も見えるこの景色に、見た者はそれぞれ思いを馳せる。

 そんな雲取山を訪れたのは、大晦日。登山者達が目指すのは雲上の大絶景と、山頂直下にある山小屋・雲取山荘での年越し。山で年を納め、山で年を始める。昔ながらの常連客から最近山の楽しみを覚えた人まで多くの人々が、この山荘で新年を過ごそうと、冬の急登を辿って行く。

 今回、そんな山行を案内してくれるのは、新井晃一さん。雲取山荘の主人である。名物親父だった父・信太郎さんの跡目を継ぎ、昔からのスタッフと共に山小屋で登山客を迎える。先代が守って来た山小屋、そして愛した山に思いを馳せる。