第13回「立山・冬」

 富士山・白山と並び日本三大霊山に数えられる立山。古くは万葉の歌にも詠まれたこの山は、北アルプスの中央に位置し、その厳しさから人を寄せ付けない峻厳さを備え、古くより伝わる立山信仰では、その頂に極楽浄土がある、と崇められて来た。
 人を寄せ付けない厳しさを持つ立山。しかし現在では、その美しさを誰もが堪能出来る様になった。1971年に開通した立山黒部アルペンルートは、立山に多くの人を迎え入れる事となり、立山の美しさが世に広まる所となった。
 11月中旬。立山には冬の気配が訪れ、雪が山肌を覆う。広大な山域が新雪を纏ったその美しい姿は、立山黒部アルペンルートが営業を終了する11月末までのわずかな期間にしか見る事が出来ない。そしてその時期、冬の立山にスキーヤー達が足を運ぶ。
 彼らの目的はバックカントリー。まだ荒らされていない、自然のままの雪を縦横無尽に滑るアクティビティである。今回はそのバックカントリーのツアーの一つに同行する。一行を出迎えるのは、純白の衣を纏う山肌、その山肌を紅色に染め上げる夕陽。そして冬の澄んだ空気が織り成す、満天の星空。そこは正に、絶景の地。
 更に、冬を迎え古来からの峻厳な姿を見せる立山連峰の主峰・雄山の3,000mの頂を目指す。視界も利かず、足取りも思う様に運べない、人を拒絶するかの様な冬山の厳しさ。-10℃を下回るブリザードの中、奇跡の様な絶景が、目の前に現れる。
 今回その絶景へと導いてくれるのは、山岳ガイドの杉本水生さん。大手企業を辞しガイドに転身した杉本さん。自然の美しい姿を人と分かち合いたい、とガイドを続ける杉本さんと共に、冬の立山の絶景を目指す。