知られざるテレビ美術の世界

#31 2022.08.20 /
#32 2022.08.27

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華やかな歌番組のセットや色彩鮮やかなバラエティ番組のセット。ドラマで出てくる家具や食べ物…。テレビ画面を通して私たちが目にする美術セットや道具の数々。これら全てエンタメ界で働く美術のプロフェッショナルチームによって生み出される。

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中でも番組作りに欠かせない核となるスタジオセットは設計・デザイン・優れた色彩感覚、全てを兼ね備えたデザイナーがイメージを膨らませて作り上げた唯一無二の作品といえる。身近であるがゆえに見過ごされがちなテレビ美術の世界を巡る。

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今回は、昨年のテレビ番組出演数は450本以上、テレビで見ない日がないというモデルでタレントの「みちょぱ」こと池田美優さんとのアートの旅。
「テレビに出始めて6年ぐらいなんですけど、ここ2~3年はコロナでセットを立てずにCG、合成でやるものが多かったと思います。やっぱりセットのほうが嬉しいし、入り込めるし。あと、(グリーンバック/クロマキー合成だと)緑の服を着れなかったり、収録によってはアクセサリーも(映像が)抜けちゃうから駄目って言われちゃったり、だから、なるべくセットを組めるなら組んでほしいなっていう気持ちはあります」と、スタジオセットへの思いを語ってくれたみちょぱさん。そんなみちょぱさんとともに、普段なかなか見ることがないテレビ美術を支えるある場所へ。

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「知られざるテレビ美術の世界」
 その1 テレビ美術倉庫

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案内してくれるのはテレビ美術歴40年、フジアール美術事業部の馬場啓友(ばば・ひろとも)さん。訪れた場所はフジテレビ3階「美術コミュニティルーム」。ここにはテレビ美術制作を支える会社が13社在籍する。みちょぱさんも「初めて降りたかも。3階になかなか来ないので新鮮です」というようにテレビ局に通うタレントさんでも滅多に訪れることのない場所。

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「キャノン砲・スモーク・炭ガス」などでシチュエーションを演出する「東京特殊効果」。 テクニカル技術を使い大型セットを動かす会社、「テルミック」などを案内。 さらにアクリル装飾の会社が二つあり、セットの床、アクリル系の作り物とかそれぞれ役割が違うことを説明してくださる馬場さん。「違う会社なんだ。みんな一緒だと思ってた」とみちょぱさんも驚きの声をあげる。次に向かったのは、「フジテレビ美術倉庫」。敷地面積およそ2000平方メートルの場所に、テレビ美術に欠かせない道具が所狭しと置かれている。

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<みちょぱさんに知ってほしいテレビ美術>

ここではみちょぱさんに知ってもらいたいテレビ美術の道具をセレクトし馬場さんに解説いただく。まずは今の時代に欠かせないものとなった<アクリル遮蔽版>から。

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馬場さん コロナになっちゃったので、必ずスタジオに入ると立ってるアクリル板。

みちょぱさん こんなに(種類が)あるんですか?でも確かに番組によって質が違うなって思うことあります。

さらに奥へと進み、馬場さんが見せてくれたのは<のりダン>。「海苔のダンボールなんです」と馬場さん。さまざまな美術道具が収められている。

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馬場さん なぜ海苔のダンボールかというと、一般的なダンボールより丈夫なんです。だから、海苔問屋さんから仕入れてます。多分どこのテレビ局でもありますよ。

みちょぱさん こんなに丈夫なら引っ越しの時も<のりダン>にしてほしい(笑)。

続いて目にしたのは、スタジオセットには欠かせない<平台>。バラエティ番組の“ひな壇”に利用される。

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馬場さん いろんなサイズがあってフジテレビだけで500枚ぐらい。

みちょぱさん 1番組でだいたいどれぐらい使うものなんですか?

馬場さん 番組によりますけど、だいたい100枚とか。

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そして、この<平台>の高さの調整するために<箱馬>というものがあるんですけど、フジテレビ本社で1000個ぐらいあります。いろんなサイズがあるんですけど、(サイズの単位は)尺なんですよね。2.5尺、2.0尺、1.5尺と。

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尺 ▶ 日本古来の単位。1尺=約30㎝

最後に馬場さんが美術倉庫にあるとっておきの“お宝”『笑っていいとも!』の看板を見せてくださった。

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馬場さん 実は以前、(美術倉庫が)見学者の動線になってたんです。そのときに当時の美術プロデューサーの方が(『いいとも!』の看板は)さすがに捨てられない。皆さんをちょっと驚かそうという意味でここに置いたんです。

みちょぱさん 確かにこれは見たいですね。フォトスポットエリアですよね。基本終わっちゃった番組のものは捨てちゃうんですか?

馬場さん もちろん使い回すやつもありますけど、半分ぐらいは捨てちゃいますね。

みちょぱさん でも『いいとも!』は一生残しておいてほしいですね。

「知られざるテレビ美術の世界」
 その2 フジテレビ・美術デザイナー

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続いてスタジオセットはどのように生み出されていくのか。テレビ業界で働くデザイナーを訪ねるために、フジテレビ10階の「美術制作センター」へ。ここは、フジテレビで働く美術デザイナー9名をはじめ、アートコーディネーターやプロデューサーなどが在籍している。今回は2014年に日本で唯一のテレビ美術専門賞・伊藤熹朔(いとう・きさく)賞で協会賞を受賞、人気バラエティ番組や音楽番組のセットデザインを担当している鈴木賢太さんにセットデザインの魅力について語っていただく。

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■鈴木賢太さん(フジテレビ美術制作センター ゼネラルデザイナー)
[手がけたセットデザイン]
VS嵐・VS魂
IPPONグランプリ
MUSIC FAIR
FNS歌謡祭・夏
千鳥のクセがスゴいネタGP
呼び出し先生タナカ 他多数

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みちょぱさん 賢太さんは何でテレビデザイナーというのを目指したんですか?

賢太さん 空間デザインに興味があって、一番いろいろな種類のデザインをやれるところはどこかな、と考えたときに、テレビだと一番いろいろやれそうだなと。それでテレビデザイン選びました。

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みちょぱさん デザイナーとして楽しいことは?

賢太さん 「無茶を叶える」という作業は、僕の中で快感に近いものになってますね。面白い部分が何ヶ所かあるんです。初め、設計して楽しくて、スタジオで実際に立って体験できる空間としてもう1回楽しくて、これが映像作品でお茶の間に届いて、自分でいち視聴者の目線でそれを見るのがまた楽しい。最近はSNSで反応も返ってきたりするので、そういうのを自分でセットエゴサするんですね。悪いのは見ないようにしますけど。

みちょぱさん それが一番良いです(笑)。でも、普通のアート作品と違って、物として残らないじゃないですか。

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賢太さん 本当に「一夜城」というか、インスタレーションだと思っていて、そのときその瞬間、最高に良いものになって、もったいないけど終わったらなくなってしまう、そのために頑張るっていう感じで作ってます。普通に考えたらナイですよね、数ヶ月前から準備して2日3日かけて睡眠を惜しんで、立てて。2時間撮って壊して…。

みちょぱさん 寂しい。

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賢太さん でも、瞬間の情熱が組み合わさったものですよね。僕は美術のプロですけど、技術であり、演者さんであり、その一つのエレメントとしてプロフェッショナルの力が合わさって1個の作品になっていくので、そこに僕は美術のジャンルで代表として入れることは誇らしいし、楽しいことです。

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『2022 FNS歌謡祭・夏』セット

プロフェッショナルとして瞬間に懸ける思いを話してくれた賢太さん。しかし、その情熱がときにディレクターからの高い要求との戦いになることもあるという。最近手がけた『FNS歌謡祭・夏』のセットでは…。

賢太さん 「予算は変わりません。でも去年より良くしたいです」と言われまして(笑)。

みちょぱさん 無茶なお願いをね(笑)。

賢太さん 常々無茶です。でも、僕はどうしてもそれを叶えたい。できるだけやってあげたい、と思うので、逆に条件を出すんです。大勢の演者さんがいっぺんに集まるタイプにすると、どうしても大きい画面が後ろに必要だったりするけど、それをロケとかに散らしていって、スタジオはこういうタイプで固められるんだったら、それがすごくカッコ良く見えるためのセットならいける、と。

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みちょぱさん それでこういう模型も作るんですか。

賢太さん そうですね。この3年ぐらいテーマはだいたい似てるんですけれど、夏の雰囲気がしっかりあって、コロナも進んできちゃって外に出れない中でのセットなので、外を感じられるものを、と。その中で今回は縦に巨大なビジョンを配置して、滝壷みたいなイメージのもを真ん中にどーんと置いて映像がどんどん広がっていくような…そこを目指してやりました。

『FNS歌謡祭・夏』。打ち合わせから完成まで2ヶ月半を費やしたスタジオセットの建て込みから完成までの様子がこちら。

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夏を感じさせる爽やかな世界観。今回最大の特徴でもある巨大滝壺も見事に表現されている。

大変さが視聴者には見えず、苦労が気づかれないのが「一番嬉しい」と話す賢太さん。しかし、様々な要求に応えるセットを作るのは容易ではないとも話す。

賢太さん 『VS』とかやっていると、「より面白く」「より激しく」ってなるんですけど、役者さんもドラマの撮影中の方だったり、アスリートで身体能力はあるけど、次の試合が控えてるということもあったりして、絶対に怪我させてはいけない、楽しくてちょっと筋肉痛にはなったけど、ぐらいで帰ってもらえるというラインを探るのがすごく大変です。

みちょぱさん そういうのも考えてるんだ。毎回私は筋肉痛になりましたけどね(笑)。

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賢太さん ディレクターがラガーマンだったりするので、それぐらいいけるだろうみたいな感じで来るんですけど。ちょっと抑えながらやったりしてます。

そんな賢太さんはそれぞれのセットデザインと、どのように向き合い、どう形にしていくのだろうか。

賢太さん 僕の場合、ディレクターから「見たことない感じで明るい感じで、だけどセンスを発揮したい」みたいなフワッとした状態で依頼がきます(笑)。

みちょぱさん 難しくないですか(笑)。

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賢太さん 難しい(笑)。でも、逆に僕もそれをお願いしてるところもあって、全部が固まってから来られると自由度が少ないんですよね。例えば『IPPONグランプリ』でいうと、相談されたときには、まだいろいろ決まってなかったので、採点のとき、目にどんどん寄って行って恥ずかしいカットで終わるような感じにしてこう、となって。

みちょぱさん へえ、(その段階では)まだ決まってなかったんですね。

賢太さん そこも僕にとってはそのデザインの一部として考えて提案してました。

0を100にする発想力でセットをデザインしていく賢太さん。そんな賢太さんは打ち合わせで見せるある技がすごいとのことで、今回はホワイトボードを前にみちょぱさんとの打ち合わせを進める形式でセットを決める過程を披露してくださった。架空の番組が立体感を持って浮かび上がってくる様を見せてくれた。

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また、賢太さん自身、フジテレビ以外のセットデザインで注目されることがあるか、とうかがうと、テレビ朝日の横井勝さん、NHKの山口高志さんのお名前が。ここからは賢太さんも一目置くお二方に、局の垣根を越えてお話をうかがうことに。

「知られざるテレビ美術の世界」
 その3 美術デザイナー & CGディレクター

NHKで『紅白歌合戦』、『SONGS』などのセットデザインを担当している山口高志さん。山口さんは何がきっかけで美術デザイナーを目指したのだろうか。

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■山口高志さん(NHK 美術デザイナー)
デザインということを意識したのは、一つはYMO。グラフィックデザイン、コスチュームステージデザインなど、デザインが一緒に世界観を構築してるっていう感覚にとても影響を受けました。

YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO) ▶ 細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一の3人組グループ。コンピュータとシンセサイザーを駆使した演奏で一大ブームを巻き起こした

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こういうクリエイティブな仕事をしてみたいなと思ったきっかけの一つです。あとはYMOと同時に漫才ブームというのがあって、アルファベット表記の「MANZAI」なんですけど、ブルーノートウェイさながらの電飾看板のセットがあって、そこに若い漫才師が登場するというショーだったんですけど、そのセットデザインを見たときに、デザインというのは音楽やエンターテイメントに魔法をかけられる、そういう力があるんだなということを感じて。仕事がしたいなと思ったんです。
日本では大竹伸朗というアーティストがいて、海外ではダミアン・ハースト。パワーとかクオリティとか、作品の多さにすごく惹かれますし、尊敬している現代アーティストだと思っています。

大竹信朗(1955-) ▶ 絵画を中心に音楽・文学・写真などあらゆるジャンルで活躍

ダミアン・ハースト(1965-) ▶ イギリスの現代美術家。「生と死の関係性」をテーマにした作品多数

そして現在、紅白歌合戦、SONGSなどの音楽番組を20年以上担当し、関わった楽曲数は少なくとも2000曲以上。これだけのデザインイメージをどのように考えるのだろうか。

■山口高志さん(NHK 美術デザイナー)
僕の場合はセットのキャッチコピーから考えます。まず「言語化」してみるんですね。「宇宙に浮かぶ森で秘密のパーティー」とか、「ゴーストシアターがよみがえる夜」、「45分間世界一周」とか。そこからは言語と絵、つまり右脳と左脳をいったりきたりする作業が始まって、言葉と絵の間を行き来するような、そんなところから始めます。

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「これまでで印象に残ったセット」を一つに絞るのは難しいのですが、2020年の『紅白歌合戦』のMr.Childrenの「Documentary Film」のセットはとても印象に残っています。「Documentary Film」という曲自体が当たり前の日常の積み重なりの尊さ、みたいなものを歌った曲なんですけど、『紅白歌合戦』というのは“イヤーエンドショー”で、その年の締めくくりの番組ですから、2020年というコロナ禍イヤーの最後の夜に、この歌をこのセットで聴くとすごく心の強く刻まれる、そういうものを作りたいなと思っていました。

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メンバーがギリギリ入るぐらいの四角い半透明の部屋の中にいるんです。ステイホーム、ソーシャルディスタンスというもののメタファー、記憶を象徴化したものだったんですけど、とても手応えのある仕事だったなと思います。

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続いて、お話をうかがったのはテレビ朝日でアートディレクターとして活躍している横井勝さん。『MUSIC STATION』や会社全体のCI、さらにはメタバース事業にも力を注いでいる。横井さんが担当される『MUSIC STATION』でのCG映像のお話を入り口に映像表現についてうかがった。

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■横井勝さん(テレビ朝日 アートディレクター)
カメラで抜かれた時にどう見えるかというところをまず考えます。映像に関しては寄って映えるのと引いて映えるのでは違うので、そういった部分を意識しないといけないですね。あとは照明です。セットの半分を照明が決めると言っても過言じゃないぐらい照明は大事。『MUSIC STATION』だと照明や電飾の担当者とは「ここは映像を落とすので照明で煽ってほしい」とか、かなり話します。映像だけで作りすぎると、「アーティストと単なる背景」みたいになってしまうことが多かったりするので、それを自分は避けるようにしています。

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印象に残ってるCGデザインは、二つあるんですけど。1つは2019年に『MUSIC STATION』のリニューアル時に、生放送中に歌を作り上げるという企画があって、一青窈さんが歌詞を書いて、それにいきものがかりの水野(良樹)さんが楽曲を放送中に完成させるというのがあったんです。その時にライブペインティングの手法で、実際、水彩画みたいなものがにじんでいく様を後ろに映し出していくという、今でいうとAdobeフレスコというツールを使ったんですけど、AIで水彩のにじむ模様をリアルタイムで計算していくっていうツールが…本来の使い方とは違うんですけど、にじむ様がキレイで、音楽とかなり合ってたなっていうのがあります。

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もう1つは、三浦大知さん(『DIVE!』)でMR的なものに挑戦したものがありました。LEDの背景スクリーンに映像を出してそれとリンクさせてARで出すという、この二つをワンセットで出すという手法は『MUSIC STATION』ではかなり使っているんですが、ダンスに合わせてフォーメーションって絶対同じようにこないものなので、三浦大知さんのクラスならかなりいいところに来るんですけど、それでもちょっとずれたり、そういったものをリアルタイムに受けて、Mixed Realityの表現していくというのが一番苦労しましたし、思い出に残っています。

アーティストの皆さんが見て「おー」って言っていただくと楽しいし、逆に違う意味で楽しいのは「ちょっとこれ違うかも」ってなったときに、リハでやってこれどう変えようか、みたいなのを追い求めて、「これこれ」みたいな反応になっていくのが、空間デザインの面白さですね。出演者が来て初めて完成するものなので、そこのやり取りはとても面白いです。

一方で、次世代のテレビセットデザイナーは最先端技術とどのように向き合っているのか。ここからは『新しいカギ』やみちょぱさんも出演している『トークィーンズ』のデザイナー永井達也さんにもお話をうかがう。

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■永井達也さん(フジテレビ美術制作センター デザイナー)
[手がけたセットデザイン]
ダウンタウンなう
芸能人が本気で考えたドッキリGP
トークィーンズ
新しいカギ

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みちょぱさん 今結構CGの依頼は多いですか?

永井さん そうですね。ここはクロマキーにしておこう、お金かけなくてもできることはそうしたほうがいい、という判断になることはあるので、件数は増えてるかなと思います。

みちょぱさん 『ドッキリGP』とかだとクロマキーなんですけど、元々あったセットそのままがCGになってるじゃないですか。ああいうのは?

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クロマキー合成 ▶ グリーンバックと言われるパネルを用いて、カメラで撮った人物などを背景映像にはめ込む技法

永井さん あれは、立てたセットがあって、それを毎回立てていくとランニングコストがかかるので、クロマキーのほうがコストパフォーマンスいいよね、ということでやってますね。

みちょぱさん でもやっぱり理想で言えばちゃんとセットを作りたいですね。

永井さん 当然です。

みちょぱさん こちらとしてもセットあったほうが楽しいですもん。

賢太さん 露骨に演者さんの顔が違うんですよ(笑)。見てられないですよ。入ってきてクロマキーの前でマイクつけてもらって(事務的に)「はい」はい」って言ってる感じを見ると、あー仕事モードに入ってる…って思うし、逆にセットを見て、らんらんとしてるのを見ると、こっちも楽しいです。

みちょぱさん やっぱりスイッチが変わっちゃいますね(笑)。

「知られざるテレビ美術の世界」
 その4 気鋭の4人が考える夢のセットとは

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最後に、賢太さん、永井さん、そして山口さん、横井さんに予算・時間・尽力など、何も気にしない、ドリームセットを考えてもらうことに。

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■横井勝さん(テレビ朝日 アートディレクター)
街を作りたいなと思いますね。一部セットで一部メタバースになってて、放送を見たらそれで終わりじゃなくて、繋がっていく、みたいなことができるといいなと。どうしてもテレビやってて思うのが、スクリーンを通して向こう側とこっち側みたいのがあるので、その境界を取り除いていくような表現をやっていきたいですね。

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■山口高志さん(NHK 美術デザイナー)
体験型のセットというのを作ってみたいなと思ってるんです。広大なスタジオを丸ごと押さえて、そこにはダイニングスペースもあれば、ダンスホールもあって、アート作品も飾られてて、みたいな。そういう巨大なセットを作ったとして、ウィークデーはそこで番組の放送も出るんだけど、土日は視聴者がそこに訪れることができるようにしてあって、先週歌手が立ってた場所に自分もいる、中にある調度品や庭も見学できて写真を撮る…みたいな。そんなものが作ってみたいなと思います。

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■永井達也さん(フジテレビ美術制作センター デザイナー)
オープンセットのような、いわゆる街並みを作るというのを作るというのをやってみたい。まだやったことがないので1回やってみたいなと思います。

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■鈴木賢太さん(フジテレビ美術制作センター ゼネラルデザイナー)
僕はスタジオから変えたいです。スタジオには床があるじゃないですか。掘って下から出てくることができるようになるじゃないですか。実際にラスベガスでショー見ると、シアターから改造しちゃってるんですよ。僕はやれるんだったらどこかのホテルと一緒にシアターを作って、そこで番組収録もできるし、常にプログラムがかかってるようなものをやりたいですね。

意外にも4人が作りたい夢のセットは自由に行き来できる街。いつか4人のアイディアがコラボしたセットも見てみたい、そんな思いにもさせられるドリームセットのお話となった。最後に身近にありながら知ることのなかったテレビ美術の世界に近づいたみちょぱさんに、その感想を聞いた。

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■みちょぱさん
普通のアートとは違って、テレビのお仕事って何十人何百人がかかわってできる、みんなで一つのものを作ってるっていうのが素敵だなって改めて思いました。私、結構情に厚い人間なので「仲間」とかそういうのがめちゃくちゃ響いて、クロマキーでもこれからちゃんとやる気出して頑張りたいなって思いましたし、セットが作られてるスタジオだったら、細かいとこまでチェックして、これから見たいなと思いました。違う目線でこれからお仕事ができるなと思って、すごく貴重な時間でした。

プロフェッショナルな技と大勢のチームワークが生み出すテレビ美術の世界を知ると、バラエティや音楽番組の見方に新たな味わいと深みが加わりそうだ。

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出演者

池田美優