『辻井伸行in富士山河口湖ピアノフェスティバル
~心の交流が生み出した色々な音楽たち~』

BSフジ初回放送:2021年12月30日

 2021年9月。富士山のふもとで、今まで日本になかった新しいカタチのピアノフェスティバルが産声を上げた。富士山河口湖ピアノフェスティバル2021。その中心となったのがピアニスト辻井伸行だ。

 富士山の広大な山麓に大自然と融合するように佇む3000人収容の「河口湖ステラシアター」でのメイン・コンサートを中心に、100名限定の贅沢な空間「河口湖円形ホール」でのプレミアム・リサイタル、河口湖の湖岸にある「河口湖美術館」でのミュージアム・コンサート、広大な芝生の公園「河口湖総合公園」で気軽に楽しめるピクニック・コンサートなど、富士河口湖町にある魅力的な4つの会場で、中心的な役割を果たした辻井伸行の挑戦を追う音楽ドキュメンタリー番組。

 芝生の上で、くつろぎながら演奏を聴ける無料のピクニック・コンサートでは、朝から雨が降りしきり一時は開催が危ぶまれた。しかし、本番が近づくにつれ雨が上がり、すがすがしい青空の下での本番。ドローン映像を確認すると、地域一帯が曇り空の中、ピクニック・コンサートの会場となった河口湖総合公園だけが太陽の光が降り注ぐ奇跡的な一瞬。芝生でくつろぎながら演奏を待つ聴衆たち。木々で囲まれた簡易ステージで辻井が演奏すると、その演奏に誘われるように小鳥が歌い出すという、まさに富士山の大自然と融合した幻想的なコンサートとなった。

 また、地元の小学生を対象に行われた音楽教室「この音なに色?」では、学校を訪れた辻井を子供たちがサプライズでお出迎え。辻井にとって初めての経験となった音楽教室。子供たちから次々に出される「お題」に、即興演奏でオリジナル曲を披露した場面では、会場がどよめくシーンも。最後には、子供たちからのお礼の合唱に辻井が感動。音楽で繋がり、子供たちにとって忘れられないひと時となった瞬間だった。

 さらに、辻井が尊敬する加古隆や小曽根真といった一流ピアニストの演奏を、会場の片隅から聴き込む辻井の姿が… そこには、今まで視聴者が見たことのない辻井伸行の素顔があった。

 そして、なんといっても河口湖ステラシアターで3000人を前にしてのメイン・コンサート。大自然の真ん中に佇むユニークなコンサートホールでの圧巻の演奏は多くの人々を魅了。そのメイン・コンサートと対照的だったのが、100人のためだけに弾いた河口湖円形ホールでのピアノリサイタル。辻井の音楽家史上、最小人数の前での演奏には確かに“いつもとは違う特別に素敵な空気”が生まれた。

 地元の人たちと心を通わせ、他のアーティストとの交流に刺激を受けた4日間。辻井は、なにを感じ、なにを得たのか?コロナ禍の閉塞感の中で、「人々を音楽で笑顔にしたい」と願う辻井は、ピアノを通して何を語ったのだろうか?ピアニスト、辻井伸行の姿に迫る。

<参加ピアニスト>
辻井伸行(全4公演)
加古隆
小曽根真
三浦友理枝
アン・セット・シス(山中惇史・高橋優介)