株式会社ビーエスフジ
番組審議会 議事概要
BSフジ番組審議会事務局
第97回
- 開催年月日
- 2020年7月1日(水)
- 開催場所
- 東京都港区台場2丁目4番8号 フジテレビメディアタワー22階 ㈱ビーエスフジ(WEB会議)
- 出席者
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音 好宏 委員長/上智大学教授 三屋 裕子 副委員長/(公財)日本バスケットボール協会会長 林 高広 副委員長/㈱ギンザのサヱグサ取締役・未来創造室室長 鈴木おさむ 放送作家 加藤 義人 ㈱テレビマンユニオン 代表取締役 三田 寛子 女優・タレント 行正 り香 英語コンテンツ制作・料理研究家 酒井孝太郎 ㈱産業経済新聞社編集局文化部長 - 審議事項(2K・4K)
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番組審議 『令和の法隆寺~千四百年の伝承と聖徳太子の残響~』
(1月4日初回放送、5月10日再放送)
議事概要
BSフジの番組審議会が1日、テレビ会議形式で開かれ「令和の法隆寺~千四百年の伝承と聖徳太子の残響~』(1月4日初回放送、5月10日再放送)について審議した。「高精細な4Kで撮影した仏像など貴重な映像だけでなく、寺や聖徳太子の謎を紐解く意欲作」「教育番組として子供たちに見せたい番組」との評価の一方で「寺や仏像のシーンはもっとじっくり見たかった」「謎にこだわり過ぎという気がした」という意見もあった。
令和の法隆寺~千四百年の伝承と聖徳太子の残響~
委員の発言の概要は以下の通り。
- 建築や歴史的事実の紹介にとどまらず、冒頭にさまざまな謎が提示され、一つ一つ謎を紐解いていく番組構成がうまい。日本史に興味がある人もない人も楽しめる。演出も抑制が効いていて落ち着いて見ることができた。
- 映像の美しさは4Kなので十分に堪能した。伽藍の中は暗いがおそらく自然光で撮影したと思われる。技術的に難しい中で、微妙な色合い、立体感や奥行きが緻密に再現されていた。資料的価値も高い。番組内に和辻哲郎さんの「古寺巡礼」の文章がたびたび挿入されていた。風雪に耐えうる名文だと思った。
- このような学術的価値の高い番組を教育番組として活用できないか。これを見て修学旅行に行くのと見ないで行くのではものの捉え方が全く違う。こういうものを子供たちに見せることができないものか。
- 寺社巡りを好む視聴者に関心を持たせる工夫として御朱印を丁寧にパートごとに入れているところに工夫が感じられた。
- 昭和の大修理を指揮した宮大工の西岡常一さんの弟子、小川三夫さんを取り上げているのがいい。こういう人が時代を超えてスーパーテクノロジーで法隆寺を作ってきたのだと思いながら見ることができた。
- 仏像は法隆寺の中で白眉だと思う。できればもっとじっくり見せてもいいと思った。同じ制作者として自戒を込めて言うが、編集すればするほどカットが長いかなと思ってくるものだ。できるだけしっかり見せていく、そうすることによって当時の木肌の実感であるとか、彫刻師のノミの捌きのディテールとか丁寧に描ける。
- どのようなターゲットに向けてやっているのかがわかりにくかった。法隆寺の様々な謎、焼失した後の話、再建、仏像、太子の女性への尊敬の念など、たくさんのテーマが含まれていただけに、どこがメインテーマだったのかわからなかった。「和を以て貴しと為す」から入ったのでそれだったのかもしれないが、くみ取ることができなかった。
- 映像は美しくナレーションのトーンもすばらしいので、長く見ることに慣れない世代のためには、短く切って、今はこのテーマでやっていると伝えていくことができたらいいと思った。
- お寺さんに入っていく時にいつも自分が感じる、シーンとしみこんでくる強いパワーがこの番組にも感じられた。和辻さんのご本の言葉と映像がマッチしていて、ぐいぐいと引き込まれていった。
- 実際にお寺さんに行くと傷んだりするから照明が配慮されていて暗くて見えづらい。しかし今回さすが4K、技術の発達でそのへんも見て取れた。
- 宮大工の小川さんのインタビューの中で、「法隆寺の五重塔は知恵の塊」「その頃は知識がないんだから知恵を出して作った」という言葉が印象的だった。今世の中がコロナ禍において、どうやって生きていくのか試されている。知識がなくても知恵を絞って工夫するって生き方をこれから大事にしなくてはいけないと、今後の生き方のヒントにもなるような感銘を受けた。
- 一つ一つの撮影交渉も大変なはずで、今回の映像はすべてお宝映像だ。ただの資料映像的なものとしてだけでなく、ミステリーでもあり、聖徳太子の歴史まで見せていく大変な意欲作だった。
- テレビがコロナで大変なことになっているが、再放送でも面白いすばらしい番組はたくさんあるはずなので、どんどん放送するいい機会だと思う。
- 見終わったときにすっきりしない感じを持った。冒頭から「謎の寺」と興味を余分に引きすぎている感があった。謎と言うからには、謎を紐解く妙味、おもしろさを期待してしまったが正直難しくてよくわからなかった。そこまで謎にこだわって視点を持って行かなくても、十分魅力的な内容になったと思う。いろいろな角度を取り上げすぎていて、たくさん寺が出てきて、内容を欲張ったのかという印象を受けた。
- 見ごたえがあるいい番組だった。教育番組として子供たちにも見せたい。番組宣伝をどれだけしたのか気になった。しっかり宣伝してほしい番組だった。
- 仏像がきれいだと思った。引き込まれるようで、これぞテレビだと思った。実際観覧者はあそこまで近寄って見られないので細部は見えない。テレビならではとかなり見入った。
- 宮大工の小川さんの解説もおもしろかった。歴史をつないでいる人はいいことを言うと思った。
- 仏像のあの微笑って、アルカイックスマイルということなどいろいろ勉強になった。
- 西暦600年当時にそれなりの建物、その文様とかどうやって作ったのだろう。今ある道具ではないはずだ。なぜそのような道具になったのか、法隆寺の建築物の精巧さや緻密さを聞けば聞くほど、その裏側に興味を持った。番組として掘り下げる機会があったら当時の最高の技術を支えた道具にフォーカスしてほしい。
- 私も高校の時に梅原猛さんの著書「隠された十字架―法隆寺論」を読んで古代史はこうやって読むのだと感激したことがあって、聖徳太子の政治家像に興味を持っていた。今回の番組タイトルの「聖徳太子の残響」という部分から、私は梅原さんの言うところの怨念みたいなもの、歴史の中での彼の政治家としての足跡が出てくるのかと思っていたがその部分は今回の作品では多くなかった。しかし、なぜ建て替えられたかのか、それをどうやって解明したかを丁寧に追いかけていて、言うなれば「ザ・日本のお寺」、法隆寺の持っている意味を映像化していてよかった。
- 最近ではサイエンスで古代史を解明していくことが多いと聞いている。番組中では年輪を調べるところでは出てきたがそれ以外は文献研究を援用するものだった。テレビではサイエンスを使って分析をする方が視聴者は感心すると思う。
- お寺はカメラを動かさずゆっくり見せてもよかったのかと思った。その方が、重厚感が出ると思った。しかし長回しにすればするほど若い人は飽きてしまうかもしれない。視聴者からの反応がどうだったかが気になる。
これらの意見に対して事業者側からは以下のような発言があった。
- NHKではこれまでいくつかやっているが、民放BSの番組で法隆寺を撮影できるのは多分初めてではないか、非常に貴重な機会だと肝に銘じて、しっかり撮って行こうと3月から12月にかけて季節をまたいで撮影した。
- 「和を以て貴しと為す」という言葉を残した聖徳太子の実像と太子が開いたとされる法隆寺の姿を見つめ直すことで、令和という時代を皆で改めて考える機会になればと制作した。
- 「聖徳太子」とは、それぞれの時代ごとに、人々の理想が投影された姿なのではないか?…そのことを令和の時代に感じてもらえればと、番組の最後に構成した。
- 専門家の選定についてだが、テレビ的に刺激的な内容や無理な考証で信憑性の疑わしいものなどが多々あり、最終的に研究を積み重ねた研究家の意見をお聞きしようということで選定した。
- 和辻哲郎氏の「古寺巡礼」の引用にも評価をいただいたが、法隆寺の持つ普遍性と相俟って、大正時代の出版物である「古寺巡礼」の言葉がはまっていたのかと感じる。
- BSがどうあるべきか、地上波などとの差別化を考えた時、それは深掘りすることであり、1時間で凝縮するところを2時間で、ある程度のリズム感で見せるということだと思う。4Kの高精細画質で、そこにいるかのような映像の濃さ、臨場感をどう表現できるかも、BSの特色として出していく。深堀りするにしても初心者を置きざりにしないためにはどうするべきか。正攻法で素材に真摯に取り組んでいくのが視聴者には届きやすい。地上波の「雑誌」的な総花的な要素ではなく、本で言えば「新書」。ある意味とっつき易く、でも専門的に解説してくれるような「新書」の番組化。それがBSにぴったりなのではないか。そういう方針でやっていく。
- コロナ感染、まだまだ東京は増えている状況。テレビの制作作業は、アフター・コロナ、ウィズ・コロナを意識しつつ、テレビの本分である放送の維持を大前提に考えながら、今後もこのようなウェブ会議、テレワークを導入しながら進めていく。テレビは、世の中、人の流れに当然沿うものなので、人の流れが復活してくれば我々もそこに対応していく。いろんな意味で環境や人々の意識も変わってくる。それを反映するのがテレビの務めだと思う。編成方針、番組の作り方にしても敏感に反応しながらやっていきたい。
報告事項
- FNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞が実施していた世論調査で、調査業務の再委託先である調査会社の社員が、昨年5月から今年5月まで14回に渡り、データを不正に入力していたことが明らかになりました。
BSフジはFNNに加盟しておりませんが、ニュース番組の制作をフジテレビに委託している関係から、誤ったデータが一部入った世論調査の結果に基づいた放送を行いました。
視聴者の皆様に誤った情報をお伝えしたことをお詫びすると共に、それに関連する放送内容を取り消します。また、取り消した放送番組については弊社のホームページに掲出しております。
その他
- 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、審議会はWEB上で行われた。