3月
#18 TOKYO CITY POP 2020

今回のテーマは「東京の音楽」。いま世界中から注目を集めているという「シティポップ」をはじめとする、かつての日本の音楽。はっぴいえんど、シュガー・ベイブ、ティン・パン・アレー、荒井由実、矢野顕子、遠藤賢司、YMO、RCサクセション…彼らが試行錯誤の末に生み出したサウンドは、現代の日本のミュージシャンたちにどんな影響をもたらしたのか?そして「東京という街を歌うこと」とは?TOKYO CITY POPの名曲たちを、現在を生きるミュージシャンたちが語り合い、歌う。
<出演者> オカモトコウキ(OKAMOTO'S)、崎山蒼志、渋谷龍太(SUPER BEAVER)、菅原慎一(シャムキャッツ)、一十三十一、古舘佑太郎、洪申豪(透明雑誌/Vooid)、Rei (五十音順)

第35回 前編 3月3日放送

崎山蒼志×Rei 『僕らが“はっぴいえんど”に惹かれる理由』

共にはっぴいえんどを愛する2人の若きシンガーソングライターが、東京を走るバスの車内で対談する。

■ はっぴいえんどとの出会い
崎山「YMOの映像を見ていく中で知った。いろんな人がはっぴいえんどの「風をあつめて」をカバーしていて。40年50年も経っているとは思えない新鮮さがある」
Rei「私は帰国子女で、英語で考えたり会話することが多いけど、日本語の歌を歌いたいと思ったのは、松本隆さんの詩が好きだったから。」

■ 2人が愛する曲
「夏なんです」(1971) 作詞松本隆 作曲細野晴臣

Rei「夏をガラス瓶の中に入れて封をした感じ。気だるさとか。「ギンギンギラギラ太陽」とか眩い歌詞をこのトーンで歌っているのが、より歌詞の鮮やかさを際立たせている」
崎山「コードチェンジとかも、どうなってんの?っていう。鎮守の森はふかみどり、この辺の歌詞もすごく好きです」

■ 色褪せない理由
Rei「4人ともソングライターであることは特異だと思う。アレンジ、ミックスも幅広くて素敵」
崎山「松本さんの詩は松本さんの詩だなっていう感じがする。めちゃくちゃ洗練されていて、それぞれの風景が浮かぶような歌詞。「Wの悲劇」という曲も大好き。ツンとした感じで真理を言っている。」
Rei「こんなすごい人が同じ場所にいたっていうのがすごい。先輩ミュージシャンが礎を作ってくれて、カルチャーの深い国で生まれてミュージシャンをやっているのは恵まれていると思う」

菅原慎一(シャムキャッツ)× 洪申豪(透明雑誌/Vooid) 『台湾でシティポップが愛される理由』

続いては台湾。シャムキャッツ・菅原が、台湾の音楽基地となっているカルチャーストア「PAR STORE」で、その店長・透明雑誌/Vooidの洪申豪(通称:モンキー)と語る。

■ 菅原が語るシティポップ
菅原「東京の面白いところは多角的な要素。いろんな人が住んでいて、場所があって、価値観がある。シティポップも同じで、いろんなスタイルの曲、なんでもシティポップと言えるのではと思っています」

■ 台湾における東京の音楽の影響
林以樂(benben)「渋谷系の音楽めちゃくちゃ好き。カヒミ・カリィ、カジヒデキ、フリッパーズギター。日本のアニメを見て、その曲を歌って、そのあと日本のポップに興味を持つ人も多い。若い人も山下達郎を知っている」
菅原「竹内まりやさん、大貫妙子さん、山下達郎さんとかは人気があって、かなり認知度も高いですね。「PLASTIC LOVE」は元々YouTubeにアップされたのが拡散されたんです。台湾の9m88という有名な歌手がカバーして、そのファンへ、という流れができた」
「PLASTIC LOVE」(1984) 作詞作曲竹内まりや プロデュース山下達郎

林以樂「Yogee New Waves、never young beach、CHARA。CHARAは映画「スワロウテイル」から。欧米と比べて、日本の映画の方が感覚が近い。ああ、よくある、この感じ、って。」
「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」(1996) 作詞岩井俊二,Chara,小林武史 作曲小林武史

■ 日本と台湾のアーティストの交流
菅原「2010〜11年くらいに透明雑誌という台湾のバンドが、草の根的に日本と台湾を出入りして、そこから交流が生まれた。その後は頻繁に行き来をしています」

■ 台湾と日本の違い
洪申豪(透明雑誌/Vooid)「台湾と日本の一番違うところはインフォメーション(クレジット、ライナーノーツなど)がちゃんと(残っている)。台湾にはない。」
菅原「台湾は80年代の終わりまで海外の音楽、カルチャーの出入りが制限されていた。インターネットを通じて日本のシティポップが入ってきて、それが自らの小さい頃の懐かしさに重なっているから、台湾はよりシティポップへの愛が強いなと思う。」

洪「小学生の時、ジブリ映画「魔女の宅急便」を見た。あの曲は好き。優しい、いい感じ。ユーミンさんの曲はいつもそういう雰囲気がある。本当に素晴らしいミュージシャン」
「ルージュの伝言」(1975) 作詞作曲荒井由実 プロデュース村井邦彦
「ひこうき雲」(1973) 作詞作曲荒井由実

■ 台湾の音楽シーンは?
洪「今はストリームの時代なので、CDとかレコード、カセットは記念のような感じ。でもこの店では、私の好きなアーティストを薦めたい」
菅原「ミュージシャンの一人として、彼らのピュアな気持ちに正直に向き合いたい。シティポップを流行りとして消費するんじゃなくて、ちゃんとつなげていきたいと思います」

第36回 後編 3月17日放送

渋谷龍太(SUPER BEAVER) × 一十三十一『山下達郎』

対談場所はお台場。高層ビルと往来するゆりかもめを背に、2人のミュージシャンが言葉を交わす。

■ 山下達郎との出会い
渋谷「小さい頃から聞いていて。ハードロックが好きな家だったんですけど、唯一山下達郎さんをガンガンかけていた」
一十三「北海道の実家がレストランをやっていて、そこで山下達郎さんがかかっていた。北海道の西海岸、『FOR YOU』のジャケットから出てきたようなダイナー(笑)。人生に影響を与えられている」

■ 2人が愛する曲
一十三「この間行ったLIVEで聴きました」
渋谷「僕も行きました(笑)! LIVEバージョンとAメロの感じも全然違う。LIVEで聞くとより渋いですよね。暴力的じゃなく、鋭角な感じが気持ちいい」
一十三「この曲でどれだけの方が救われたかと思いますよね。このソリッドな世界観とリズムは子どもにも伝わるんですよ。私も大好きなだったので。」
「PAPER DOLL」(1978)作詞作曲:山下達郎

■ 憧れ続ける理由
渋谷「大先輩でかっこいいことやってくれている人がいると、まだまだ自分も音楽で何かできるんだなってワクワクする。この先ももっといろんなことができて、自分の未来に期待できる」
一十三「色褪せなくて、かっこいいですよね」

■ 東京を歌うということ
渋谷「ずっと生まれも育ちも東京。東京で育ってきたから苦労を知らないからっていう見方をされたこともあって。東京生まれなりのコンプレックスがあるんですよ。でも、せっかくそういうところで生まれたんならバチバチに出したい。何かを」
「東京流星群」SUPER BEAVER (2013)

崎山蒼志×Rei 『風をあつめて』はっぴいえんど

■ 東京を歌うということ
Rei「決意と意志を持ってないと存在が許されない街だなって。夢を追いかけてきたからかもしれないけどそう感じる。自分がいつか東京っていう曲を書く時にはそういう曲になるのかなって」
「風をあつめて」(1971)作詞 松本隆 作曲 細野晴臣

オカモトコウキ(OKAMOTO'S) × 古舘佑太郎 『東京出身ミュージシャンが考える東京の音楽』

続いては、東京で生まれ育った2人のミュージシャンが都内をドライブしながら対談する。

■ 古舘佑太郎が考える「東京の音楽」
「NOW ON AIR」赤い公園(2014)
古舘「東京の音楽、で浮かんだのがこの曲。シティポップじゃないかもしれないけど。サウンドというよりも詩世界。すごく都会の女の子。シティポップってなんだろう?」
オカモト「シティポップは実際、東京の人がやる音楽じゃないってアンケートに書いてたでしょ?それは本当にそうだなって思う」
古舘「ネット普及前は東京に対する憧れがみんなすごかった。かたや東京、シティポップは、松任谷由実さん、はっぴいえんどさん、山下達郎さんたちが独自でやっていったものなのかなって」

■ 東京を歌うということ
オカモト「地方から出てきて、やるぞ!っていうメンタリティが俺たちにはない」
古舘「みんな東京のことを歌うけど、僕らはどうしても歌えない。東京ボーイだねって言われるけど中身はそんな感じじゃないから、最近は怒りも感じる(笑)」
「東狂」2(2019)

オカモト「俺たちも最近東京を書いた曲がある。綺麗じゃない、カオスな、欲望が終わりない感じ。」
「90’S TOKYO BOYS」OKAMOTO’S(2017)

古舘「我々はもう憧れで東京を描けないから、噛み付くくらいしかできない。でもナイアガラ・レコーズとか、その時代の人たちが纏う東京観って素直で自然。自然に都会。東京出身でちゃんと東京をまとって、音楽で表現できていたのかなって」
オカモト「時代だったのかも。ハイソで世界の最先端で、趣味も良くて、カオスになってなくて。いい時代の香りを、今聞くと感じる。今はもうできないよね、絶対」
「LOVELAND、ISLAND」(1982)作詞作曲山下達郎

■ オカモトコウキが考える「東京の音楽」
古舘「自分が生まれる前の東京の空気感にすごく憧れる。コウキくんの声はこの時代のボーカリストの空気纏ってるんですよ。懐かしくてちょっと快適。」
オカモト「それは嬉しい。なんでだろう、すごい好きだからかな(笑)」
「DOWN TOWN BOY」佐野元春(1982)

古舘「自分が自然と東京を纏っていたって気付かされたのが、サカナクションの山口一郎さんから、僕が10代のときに作った曲に「こんな都会的な曲はない」って言ってもらったとき。全く東京を意識していない曲だったから、自分は東京に対してこんがらがってるけど、シティミュージックをやってるんだって思った」
「夏の夜」The SALOVERS(2011)

オカモト「東京の人はシティポップを作らない説は本当にあるよね。東京的な価値観、リアリティとかってヒップホップの人たちの方が出してるっていうこともある。70〜80年代のシティポップは“すごくよかったもの”の記憶として真空パックされてるけど、今のシティポップはきっと違うんだろうって」
「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」作詞作曲山口一郎

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