2月
#17 七人のクラフトマン

今回のテーマは「クラフト」。俳優・石橋蓮司が東京で製造される”東京ブランド”のクラフトなお酒に舌鼓し、東京クラフトマンたちのこだわり”酒”を語る。
<出演者> 石橋蓮司

第33回 前編 2月4日放送

■銀座のクラフトマン 武蔵昌一 児玉亮治

バーテンダーの武蔵は熊本県生まれ。上京し、アルバイトで始めたバーテンダーの仕事に魅せられ、それからはバーテンダーひと筋。夜の銀座が第二の故郷になった。しかし…。
武蔵「30周年で師匠が店を閉めると言い出し、卒業生達を集めて「何かやれ」という話になりました。バーテンダーはお酒を加工して新しいお酒を創造するが、お酒そのものは作ったことがなかった。発酵に対する興味は強くありましたね」
ビール造りに武蔵が一緒に誘ったのが、相棒のバーテンダーの児玉。不安もあったが、「やりたい」という熱意で推し進め、2016年も念願の免許を取得。その1ヶ月後、夢に見た最初の一杯が完成。現在は常時14種類のクラフトビールを提供するバーに変貌をとげた。
日本初輸入のカナダ製ビール醸造機で仕込みスタート。砕いた麦芽を50度超のお湯に投入。使用する水は濾過した水道水。大きなヘラでかき回しデンプンから糖の変化を促す。濾し器を引き上げ、麦殻を除くため濾過。ここからいよいよ佳境。煮沸した麦汁にホップを投入し、20度まで冷やして酵母を投入。およそ1週間発酵させて、完成。タンクのビールを樽へと小分けし、冷蔵庫で熟成させ2日後にはお客さんの元へ。
児玉「こだわりは『リスクを負う』ということ。でも楽しむ、というのが一番!」
武蔵「『こんなこと、あんなこともやってみよう』を貫いた方が、クラフトというのは面白いのではないかなと。クラフトの命は自由、楽しさ。こだわらないことにこだわりたい」

■神田のクラフトマン 宮井敏臣

クラフトマン・宮井は東京都荒川区に生まれた。大学卒業後、会計士の資格を取得。会計士として活躍する宮井さんに運命の出会いが…
宮井「会社のサポートをしている中で酒蔵さんも多く、お付き合いをしているうちに日本 酒に目覚めた。できたての日本酒を初めて飲んで…忘れられないですね。日本酒を作りたい、と思いました。」
そして2015年、手作りどぶろくの店「にほんしゅ・ほたる」がオープン。連日、どぶろくに魅せられたサラリーマン達が集っている。
午後2時、酒米が蒸しあがる。酒米は大吟醸にも使われている山田錦50%精米。店のテーブルの上で2時間ほど冷ます。
宮井「山田錦は一番すっきりした味わいになる」
42度のお湯に酵母を投入して、活性化させる。
宮井「生きてますよ、微生物ですから。今日は元気がいいですね笑」
酵母を麹の入っている醸造タンクに投入。ここで、冷えた酒米をタンクの中へ。2週間ほど発酵させてどぶろくができる。

■墨田区のクラフトマン 宮田明彦

クラフトマン・宮田は神奈川県生まれ。大学卒業後、光学機器メーカーに就職するが、リーマンショックを機に大好きなお酒の世界への転身を決意。2014年、クラフトビール店をオープン。続けて2018年、ブランデー(蒸留酒)作りの免許を取得。そして今、都内でも珍しい手作りブランデーをお客に提供している。
宮田「元々ウイスキーが好きだったので蒸留酒を作りたいという気持ちがあった。」
店の奥にある小さな醸造所。今日の原料は青森産リンゴ。次々にすりつぶりすリンゴの量はおよそ40キロ。そこに80度のお湯を入れ、シードルの発酵に使っていた酵母を抽出。1週間ほど発酵し、その後蒸留へ。宮田さんのブランデーは木の樽で熟成しないセルビア式。宮田「蒸留機はブランデーの修行をしたセルビアのもの。いろんな果物で作る文化があるんです。樽に入れると木の特徴がついてしまう。透明なままの状態のフルーツブランデーの方が、元の果物の特徴が楽しめて面白いんじゃないかな、と」

第34回 後編 2月11日放送

■大泉学園のクラフトマン 越後屋美和

クラフトマン・越後屋はかつて東京の大田市場に勤めていた。そこで出会った運命の出会いは「東京の野菜のおいしさ」。
越後屋「東京の農業を知ってもらえないかと思い、地元の野菜を食べながら飲むためのワインを作りたい、と思ったのがはじめですね。」
東京の野菜をもっと知ってもらおうと始めたワイン作りだったが、免許取得の壁やワイナリーを建てるための区との交渉などを重ね、2014年に免許取得。東京初のワイナリー、東京ワイナリーがオープン。連日多くのワイン好きが集っている。
東京産のワインにこだわり、ここ練馬区の農園を借りてブドウを育てている。ピノグリという品種がメイン。
越後屋「手間がかかるから可愛い。ワインは何も加えていないのにブドウだけでアルコールになる、その不思議に惹かれました。生きるための食、農業がワインには詰まっている。もちろんお酒が好きなのもあるんですけど笑」
東京のブドウの収穫期は8月頃。収穫されたブドウは枝を取り除き粉砕、その後1週間〜1ヶ月ほど発酵し、プレスして発酵した果汁を絞り出す。絞り出された果汁はタンクへと送られ、約3ヶ月熟成。越後屋のワインは濾過をしない濁り生ワインが特徴。

■板橋区のクラフトマン 片野龍

クラフトマン・片野は東京・板橋区生まれ。26歳の時、現在のバーを引き継いだ。「いつか自分の酒を作りたい」と思っていたが踏み出せない片野の背中を押したのは、東京ワイナリーの越後屋さん。
片野「小さい資本でもできるんじゃないかと。先駆者がいたからチャレンジできました」
2018年に蒸留所を作り、同じ年に免許を取得。次々と東京の果実でリキュールを作り出していき、現在13種類。そんな片野のリキュールを応援する人たちが…。
★板橋区蓮根「酒道庵」店主・阿部雄一郎さん
「うちは日本酒専門ですけど置きたいと思った、それぐらいいい酒です。(片野について)多くは作れないけど美味しい酒を作る。地元に蔵ができたんですから、応援したいです」
使うのは板橋区・久保農園のゆず。片野の蒸留所には、皮だけをお米ベースのアルコールにつけたもの、果実を丸ごとアルコール漬けにしたもののビンなど、多数のリキュールが並んでいる。
片野「香りだけを抽出できる『蒸留』に魅せられた。香りへのこだわりでしょうね。東京の農家は規模が小さく、生産量が少なくて大手メーカーでは作れないが、素晴らしい材料がいっぱいある。なんとか活用したいと思います」

■二子玉川のクラフトマン 市原尚子

クラフトマン・市原は香川県に生まれた。大学卒業後、銀座にある会社に就職。20年前、結婚を機に二子玉川に住み始める。転機は6年前だった。
市原「ママ友達との女子会で、この街に足りないもの、やりたいことは?というプレゼンをしていた。即興で『ゆるキャラと地ビールがないんじゃない?』と」
プレゼンは大成功。ビール作りのチャレンジが始まったが、ゼロからのスタート。なんとか知り合いの酒蔵で自分たちのビールが作れることになっても飲める場所がなかった。場所を探して4年、2018年に『ふたこビール醸造所』オープン。
世田谷区瀬田のおよそ20坪の土地で、アメリカ産をはじめ10種類のホップを栽培している。ここで7〜8月に収穫されるホップで全体使用量のおよそ1〜2割をまかなっている。お店のカウンター内にある醸造施設は、撮影時は未稼働の状態。稼働のための最終準備をしている。

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