2月
#5 #キリトリジャンクション

人を、モノを、絶えず運ぶ首都高速道路。時間によって表情を変え、見る人の心を反映して趣を変える。そこは、無数のストーリーが交差する場所。首都高を走る車の中、カーステレオからは、ラジオDJの快活な声が響いてくる。「今日はみなさんの『首都高』の思い出を募集します。」
<出演者>
山寺宏一 野島健児 内田彩 ほか

第9回 前編:#キリトリジャンクション 2月9日放送

娘の上京

今日、娘が上京する。反対する父だが、娘をのせ東北道を上り「首都高」へ入る。ラジオから「今日はみなさんの『首都高』の思い出を募集します」と、DJが訴えかける。車内には、親子の他愛もない会話とラジオからは軽妙なDJのトーク、そして「首都高」に合う音楽が流れていた。

東京シンボル・東京タワーへ

娘に「東京タワーを見たい。今日を思い出の日にしたい!!」と言われ、渋々、車の方向変える父。日は徐々に暮れはじめ、街が紅色に染まっていく。休憩で駒形パーキングエリアにとまる親子の眼前にはスカイツリーが現れ、その大きさから急に不安になる娘。
父は「変化する時は誰だって不安。憧れの東京はとてつもなく大きい。自分の夢が勝つか、東京が勝つかはバトルだ」と娘を激励する。

ネオンに包まれる東京。そしてラジオから

DJ「今、匿名でこんなメールが届いています。『今、首都高を走っています。渋滞ならいいのに、そんな事を思ったことは初めてです。私には娘がいますが、彼女の夢のため福島から東京に引っ越すことになりました。今パーキングエリアで休憩しているのですが、東京タワーがみたいそうで。私は上京に関しては反対でした。夢を叶えるなら田舎より東京のほうが、チャンスがあるのは解っていますが、寂しくてたまりません。でも彼女が東京に押しつぶされないか不安です。実はこれからいく、東京タワーはママにプロポーズした場所です。そこに行きたいなんて、さすがパパの娘だ。離れて暮らすのは嫌だけど、パパはあなたの応援団長です。ちなみに私の首都高の思い出は今日です』。」
この父からのメールで放送は終わった。娘は不安や寂しさを振り払い、明日のから始まる新生活に思いをはせるのだった。

第10回 後編:#キリトリジャンクション 2月23日放送

兄の海外修行

ジャズのオーボエ奏者として海外で修行する兄を空港まで車で送る妹。兄の海外生活が心配なのと、なにより最愛の兄と離れて暮らすのが寂しかった妹は不機嫌だったが、車は「首都高」に入っていく。

代々木パーキングエリア台

パーキングエリアで兄に海外への渡航を思いとどまるよう迫る妹だが、尊敬する世界的ジャズオーボエ奏者、ユセフ・ラティーフを超える壮大な夢を叶えるために必要と、兄は諭す。

大黒パーキングエリア~空港

妹は、車を大黒パーキングエリアへ向ける。兄は空港に行くには遠回りになると言うが、「搭乗時間に間に合わせる」と言う事を聞かない。さっきのパーキングエリアでラジオから大黒パーキングエリアにあるチャペルに「鍵をかけると願いが叶う」というイベントを知った妹は、兄の成功を願うため、鍵をかけたかったのだ。しかし、「首都高」はこのイベントのせいか大渋滞。兄妹は、大黒パーキングエリアを諦め空港へ。そして兄は妹の前でオーボエを演奏するのだった。

10年後

兄が海外に渡ってから10年。妹は「首都高」にのって兄を送ったルートをなぞっていた。ラジオから、当時と同じDJが「今日はみなさんの『首都高』の思い出を募集します」。と、訴えかけている。また渋滞で行けなかった大黒パーキングエリアで行われたイルミネーションのイベントを振り返っていた。

妹「あの時、鍵をかけられていたら・・・」。

今日は兄の命日。兄は海外にわたった後、成功するものの、4年前に若くしてこの世を去っていた。ラジオから兄を偲び、生前の活躍が語れる。そして、兄が敬愛していたユセフ・ラティーフの演奏曲で、兄が出国前に妹前で演奏した「スパルタカス 愛のテーマ」が流れた。DJは生前、兄がインタビューで語った妹への思いを紹介した。

「僕が日本を出る時に車で送ってもらったんです。ツアースケジュールを調べているんでしょうね。帰国する時、毎回空港まで迎えにくるんですよ(笑)。あいつだけが小さい頃から『すごい、すごい』って褒めてくれたんです。実は僕より耳もいいし、音楽センスの塊なんです。でもずっと僕の事を応援してくれている。でも、日本を出る時、一番反対したのはあいつなんですけど(笑)。兄妹仲は良かったですから。
いつか、妹の結婚式に最高の演奏ができたらいいですね。昔は、家族愛って実感なかったですけど、こうして日本を離れるとね。日々『感謝』ですね」。

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