『剣客商売スペシャル　母と娘と』

　秋山大治郎（山口馬木也）の妻・三冬（寺島しのぶ）には最近心配なことがある。かわいい盛りの息子の小太郎（當銘竜基）を、秋山小兵衛（藤田まこと）の伴侶・おはる（小林綾子）が溺愛して、三冬のすきを見ては小兵衛の家へ連れて行ってしまう。

　ある日、小兵衛（藤田まこと）は懇意の医師・小川宗哲（島田順司）の家で、村松太九蔵（夏八木勲）という患者を見た。太九蔵は、肝臓に大きなしこりがあり、あと一月の命だった。しかし、彼は「命を削っても果たしたい一念がある」という…。

　おはるの実家がある関屋村に、永井源太郎（高杉瑞穂）という若い浪人がいた。日本橋の大きな薬種問屋の啓養堂の用心棒をしている。ある日、その源太郎が浪人に背後から斬られてしまう。それを大治郎が助けた。
　かつて源太郎の父・十太夫は小兵衛に捕らえられていた。十太夫は、1500石の目付け役でありながら、新刀の試し斬りのため辻斬りをしていたのだ。十太夫は切腹、永井家は改易になった。だが源太郎は小兵衛を恨まず、むしろ父親の不始末を詫びたいと思っていた。

　そんな時、青砥村周辺には10日ほど前から、樺島長兵衛（渡辺哲）という盗賊の一味の浪人たちが、啓養堂などに押し込む準備のために集まっていた。しかし、その浪人たちが、このところ一人また一人と何者かに斬られている…。