東日本大震災で、太平洋沿岸の鉄道各線は津波による甚大な被害を受けた。
中でもJR山田・大船渡・気仙沼の各線は復旧費が数百億円と莫大な金額となるため、JRは鉄路での復旧を断念、BRT(バス高速輸送システム)での復旧を被災した沿線自治体に提案した。
これに対して、大船渡・気仙沼沿線の自治体はBRTでの復旧を受け入れたが山田線沿線の宮古市、山田町、大槌町、釜石市はこれを拒否、あくまで鉄路での復旧をJRに要望した。
JRは2度に亘りBRTを提案したが、沿線自治体は頑なに拒否し続けた。
その主な理由は、JR山田線を介して繋がっている三陸鉄道の南北リアス線がBRT化によって分断されること。BRT路線のほとんどが国道を走るため既存の路線バスとの競合などであった。
その後、JRは地元への説得が困難と判断、鉄路での復旧を約束し、復旧後は三陸鉄道に移管(無償譲渡)すると提案した。これは三陸鉄道にとって青天の霹靂だった。
元々赤字の三陸鉄道、そこへJR東日本管内でもワースト3に入る赤字の山田線が三陸鉄道に移管されると、更に大きな負担となる。
しかし、地元の強い鉄道存続の要望と南北リアス線の分断を考慮し、苦渋の選択であったが、JR山田線の移管を受け入れた。
2015年3月、JRは山田線復旧工事に着手した。
山田線は津波による被害で沿線の9地区が浸水、橋梁は6か所で流出、駅は7ヵ所で被災した。全長約55キロに及ぶ山田線の復旧工事は順調に進み2018年7月、全区間のレールが再び繋がった。
その後、重量65トンのディーゼル機関車で橋梁などの強度確認の試運転に入り、2019年1月に移管後、三陸鉄道の車両を使って試運転を開始し3月23日に開通式典、24日から営業運転に入る。
北リアス線と山田線、そして南リアス線が一本のレールに繋がることによって全長163キロという日本一長い、第3セクター鉄道の開通となる。
そして路線名も統一し「リアス線」と変わる。これを機に三陸沿岸は、復旧から復興へ向け弾みをつける。
番組では、山田線の鉄路復旧までの経緯を振り返りながら、なぜ鉄路でなくてはならなかったのかを、開通まで完全密着し、三陸鉄道リアス線の全貌を紹介する。