6月
#9 モキュメンタリー

モキュメンタリーとは、フィクションをあたかもドキュメンタリーのような手法で撮影・演習する技法。今回のTOKYOストーリーズは、このモキュメンタリーを使って東京を切り取る。第17回の「妖怪・東京太郎の今」では、東京都民の平均数値を具現化した存在、妖怪・東京太郎に密着することで見える今の東京とは。第18回の「宇宙移民の光と影」では宇宙人が東京で生活することでの考えや苦悩を描くことで、未来の東京が見えてくる。

第17回 妖怪・東京太郎の今 6月4日放送

妖怪・東京太郎とは

東京都の公文書の記入例として使われている「東京太郎」。実は150年前から存在する伝説の人物。今から50年前テレビの前に姿を現し、その後、忽然とその姿を消した。一体今、東京太郎はどのような姿で、どのような暮らしをしているのか?民俗学研究家の岡英雄さんによると東京太郎とは、東京都民の平均を具現化した“妖怪”。明治初期、浮世絵や新聞で報じられ、その存在が知られるようになったという。番組では、50年ぶりにカメラの前に姿を見せた太郎さんに密着した。

【東京太郎 プロフィール(東京都民の平均)】
・年齢44歳(総務省統計局「国勢調査人口等基本集計」平成27年)
・身長:171.3㎝(2018 都道府県 DataBook 株式会社日本食糧新聞社)
・発見当時の身長:155㎝(「事典 人と動物の考古学」吉川弘文館・刊)
・3年前に二重になる
・能力:東京出身でない人は、透けて見える
ほか

妖怪・東京太郎が世の中から姿を消した理由

「昔、一億総中流時代だった時は、『皆が上がるから自分も上がる』っていうモチベーションがありましたけど、今は貧富の差が開いたことで、(自分の存在があることで)自分が平均より“上か下”がはっきりわかってしまうのが、疎ましく思われ始めたんだと思うんです」と、理由を語った。

妖怪・東京太郎の仕事

東京都新宿区。都庁の中にある極秘機関で東京のお土産などを作る際に味やパッケージを都民の代表として意見し、製品化の助言をしている。また雑誌のインタビューなども答える事もある。
『月刊平均』を発行している宝山出版の吉田さん曰く「昔は、商品開発やインタビューの人が並んでいたんですけど、太郎さんも高齢化が進んでいるので最近は人が減りましたね」。
※東京都民の24%は65歳以上となり、今後高齢者が増えてくると太郎さんの年齢も上がる事になる。

妖怪・東京太郎の精神面

精神面も都民の平均を示す太郎さん
●2020年の東京オリンピックについて
「前回の東京オリンピックは盛り上がりましたけど、今回の東京オリンピックはあんまり盛り上がってないですね」。
●働き方について
「昔は『仕事が人生』だって感じがありましたけど、今の若い世代を見ていると『人生を楽しむために働く』って感じ。素敵なことだとは思います」。
●経済について
「オイルショックからバブル崩壊で日本人のメンタルはやられていると思うんです。リーマンショックの時なんか具合が悪くて飛び起きましたよ。とはいえ戦争の焼け野原から(経済を)ここまで復活させたのは凄いことです。それを考えると皆、本気を出せば、まだまだやれるだろうって思いますね」
●結婚について
「結婚したいか、したくないかと言われると・・・そこまでしたいわけではないですね。しなきゃいけないんじゃないかという感覚はあります。恋愛とか結婚に興味が持てなくなってきている」

妖怪・東京太郎の婚活

マッチングアプリで、知り合った女性とのデート。お相手は加藤花子さん(30)。加藤さんのお仕事はBL(ボーイズラブ)の漫画家。初めて会う太郎さんと加藤さん、2時間ほど談笑してわかれた。加藤さんが“良い印象”を持ったら、連絡がくることになっている。太郎さんが、今まであった女性のリストをスマホで見ていると、スタッフがあることに気づく。“会っている人、全員の名前がハナコさん”(笑)。果たして2人に進展はあるのか。

全日本太郎会議

3月3日。全国の太郎さんが国会議事堂に集まる全日本太郎会議。その晩、恒例の打ち上げ太郎会が行われた。この回は今年で100回目。
太郎会後、太郎さんは「他県の太郎さんは苦楽を共にしているので仲間みたいな感じですね。地方再生とか言いますけど、日本の首都は東京だから、まずは東京が元気にならないといけないですよね」と語った。

東京太郎の言葉

「150年の中で、沢山の友をなくした。彼らから学んだ確かなことは“平均より上か下か”、そんなことは本当にどうでもいい事。自分が今、幸せと言えるかどうかが、なによりも大切です」。
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

第18回 宇宙移民の光と影 6月11日放送

宇宙移民法

東京文化科学大学 筒井富彦 准教授によると「宇宙移民法」とは20年前に突貫で作られた法律で立て付けが古く、今では様々な問題が浮き彫りになってきた。現在、宇宙移民二世が成人を迎える時期にも関わらず国会に議論中の状態。法律はあるものの実質的な受け入れは、進んでいない。

石田ハルカさん(仮)の場合

石田ハルカさんは人間の顔に整形する夢があった。「お金はバイトで1700万円貯めました(笑)。週7で掛け持ちしました。寝るのは12:00~12:30(グリーゼ星人の睡眠時間は30分)です」と語る。ハルカさんが整形を思うようになったきっかけは?
「中一の時に好きだった男の子が、実は私の事を『宇宙人』って言って事を知って。やっぱり私は皆と違うと思ったんです」。さらに、「宇宙移民は、時給が安いんです。整形すると東京人と同じになるんです」と、将来への切実な思いを吐露する。

ハルカさん 整形を両親へ伝える

ハルカさんは、両親に整形した旨を伝えるも、父親から大反対にあってしまい、話は平行線。
ハルカさん「両親は、地球に不時着する前の生活を知っているから、グリーゼ星人である事への思いは私と全然違う。私としては(整形)を理解してほしいとは思っていませんが、言わないといけないし、伝えられて良かったです」と語るのだった。

グリーゼ星人への差別

1999年、東京湾に宇宙移民船が不時着。日本は世界に先駆けて宇宙移民に対する法整備に取り掛かったが、受け入れ反対のデモが起こった。
筒井 准教授は、「デモをきっかけに宇宙人を悪く扱う映画やドラマがなくなり、“エイリアン”、“宇宙人”は差別用語になりました。彼らの推奨名称としては“宇宙移民”、“グリーゼ星人”、“グリージアン”。一方、容姿のツノから“伊達政宗”、“バナナ”といった隠語が生まれました」。

星野新一さんの場合

都内の介護福祉士として働く星野新一さん(36)。今年で勤続9年。
星野さんには日本人の婚約者がいる。お相手の名前は与田えりなさん(30)。交際は5年目。異星人同士の交流会で知り合ったという2人。家の借主は与田さんだが、これにはグリーゼ星人が賃貸契約する際に法的な部分や不動産屋が貸したがらないという理由という。
結婚を考えている2人だが、与田さんの両親は反対だとし、「理解をしようとしているが、偏見があると思います」と語り、星野さんは、法体系の整備の問題を指摘する。

グリーゼ星人 路上生活者 Aさんの場合

貧困グリーゼ人を囲い込み、生活保護費を不正受給する犯罪も年々増加している。住む家をなくしたグリーゼ人は後を絶たず、その1人がAさんだ。Aさんは日本語取得につまずき、路上生活者となった。
Aさんは「東京人は忙しすぎる。グリーゼ人を受け入れる余裕なんて初めからなかったんだ」と語る。またAさん宇宙移民向けの生活保護費の受け取りを拒み続けている。

グリーゼ星人の日本語習得

日本での資格試験内容は日本人受験者と同じ内容のため、仕事を得るためには相当な日本語力が必要とされる。都内の宇宙移民向けの日本語教室、GTJ語学教室の講師・山村勇介さんは、「日本語は独特で、彼らには『ん』や『が』が発音しづらいんです。発音につまずいて翌週から来なくなる人もいますね」

石田ハルカさんの整形

ハルカさんの整形手術を出頭した、みやべヒューマンクリニックの院長・宮部賢治さんは「ここ数年、施術の件数が非常に増えています。一世の方より、二世のほうが増えています」と昨今の整形事情を語る。
手術から1週間後、石田さんの包帯を時が来た。石田さんは今の自分をみて「自分がやりたいことのスタートに立てた気がする」と涙ながらに語るのだった。
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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