•  日本有数の桃の生産地、山梨県笛吹市一宮町。ここに一風変った経歴の桃農家がいる。『宝桃園』の堀井俊彦さん(35)。8年前、妻の実家を襲った突然の不幸。祖父の代から続く桃農園を切盛りしていた義理の兄が、交通事故により帰らぬ人となってしまった。もともとはIT関連の会社で営業マンをしていた堀井さんは、1年間の葛藤の末、桃農園を継ぐことを決意。当初は、知識も経験もない初めての仕事に苦悩する日々だったという。しかし、師匠と仰ぐ近隣の桃農家の先輩たちや家族に支えられ、貪欲に学び、ひたむきに汗を流し、人々に愛される桃を作るようになった。そんな堀井さんを応援しようと「宝桃園」には不思議と人が集まってくる。桃を買ってくれるお客さんが「桃の袋がけ」「収穫」の作業を手伝いにやってくるのだ。
     「桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す」
     桃や李(スモモ)の木は何も言わないが、その下には自然と人が集まって道が出来るという漢詩。これは堀井さんが目指す桃園の理想だ。桃を通して、多くの人が集まり、繋がりが広がればと考えている。
     そして今年、感謝の気持ちを込め、桃の木の下で収穫祭を行った。毎年、桃を購入してくれる人や取引のある料理人たち、総勢100人。食卓を囲み、桃を丸かじりする。今年の桃は美味しく出来たか。義兄や義父から続く「宝桃園」の味は守られているか。代々続く桃畑で行われた食卓会をお届けする。