•  今回は、学者・姜尚中が自らの半生を振り返りながら、故郷の熊本を旅して豊かな食を探す。
     日本が終戦後落ち着きを取り戻し始めた頃に、幼少時代を過ごした姜。高校卒業までは熊本市で過ごした。家族や友人との懐かしい想い出がつまった街を、昔の景色と重ね合わせながら歩く。
     食にまつわる大切な想い出もたくさんある。姜の少年時代の楽しみは母の手料理。その時代、今ほど豊かではないが、卓袱台を囲んで家族や友人と賑やかな食事を楽しんだ。家族を牽引する存在だった母親は、みんなで一緒に食べる食卓を大切にしていたという。母親から教わった“分かち合って食べる”大切さを、姜は今も胸に抱き続けていた。
     熊本は姜が尊敬し研究をする夏目漱石の想い出の地でもある。姜の新著『続・悩む力』では、漱石の言葉や小説から現代の日本社会の悩みを語る。そういった問題を語りながら、家庭や食卓を通した絆の大切さを唱えている。
     そして、姜が小学校の旧友と囲む半世紀ぶりの食卓会が行われた。50年ぶりの再会だが、一緒に食卓を囲めば不思議と昔の自分たちに戻れる。戦後厳しい状況ながらも、未来を信じ必死になって生きた仲間たちが食卓で共有するもの。それを知ったとき、私たちは現代社会を生きるヒントが得られるかもしれない。