•  今から24年前、東京で雑誌の編集をしていた男が、輪島に移り住み、漆塗りの職人になった。
     彼の名は赤木明登。
     輪島の中心地から車で20分。
     人里離れた場所に暮らし、6人の弟子を抱える漆塗り工房の主だ。
     今、彼が作る“ぬりもの“が注目を集め、“普段使いがしたくなる、親しみやすい”と、多くのファンが愛用している。
     「漆塗りは婚礼などの晴れの日に使うもの、高級なものというイメージがあるが、毎日の食卓でこそ使って欲しい。よい道具、いいなと思う道具を使うことで日々の食卓や暮らしが楽しく、幸せに感じられるようになるから」と“ぬりもの”に想いをこめる。

     彼は日々の生活を大切にしている。ことさら食べることには熱心だ。
     家の前に畑をつくり、自分たちが食べる分だけの野菜を育てる。梅干しや味噌なども自家製。輪島の朝市にでかけてはその日あがった魚を仕入れ干物を作る。季節のうまいものを料理し、そして食卓を囲む。
     朝は夫婦で、昼はお弟子さんと、夜は友人やお客さんがやってきて大勢で…。どの食卓も和やかで楽しそうだ。
     その中心には使いこみ、艶のでた漆のお椀や器がさりげなくあり、食卓に彩りを与えている。
     彼は言う。
     「日常の食卓こそ、夢の食卓なんじゃないか。豊かな日常を楽しみ、食卓を囲み、幸せに生活するからこそ、よい“ぬりもの”がうまれる。そういうものが買ってくれた人、使ってくれる人を幸せにすることができる」
     今回は“日常の生活を大切にしたくなる”そんな食卓をお届けする。