•  石巻港の南に位置する、宮城県東松島市大曲浜(おおまがりはま)。
     3・11東日本大震災で、この浜の7分の1、246人の人々が命を失った(死者:248人 行方不明者:21人 2012年3月1日現在)。そして、400トンの船が民家に乗り上げたままになっていた。震災後、大曲浜地区は最も危険な地区に指定され、浜の住民は元の場所に住み続けることはできない。現在、国や県の援助で新たな居住区の計画が進み、住民たちは復興への強い意志をもって、新天地での再スタートを切ろうとしている。

     彼らの故郷・大曲浜には、300年以上前から受け継がれてきた伝統芸能がある。正月や結婚式など“ハレの日”に、無病息災・大漁豊作を祈って舞いを披露してきた「大曲浜獅子舞」だ。この獅子舞は、地元の保存会によって守られてきた町の誇りだった。しかし、震災で獅子頭は行方不明。会長を含む保存会のメンバーも4人、波にのまれてしまった。400トンの船が乗り上げた民家、そこは獅子舞保存会の会長の家だった。

     その後、獅子頭が瓦礫の中から見つかった。それは残された保存会のメンバーだけでなく、浜の住民みなに力を与えた。さらに今年の2月、皆の心の重石だった400トンの船の撤去作業が行われた。その“ハレの日”に、獅子舞保存会のメンバーが瓦礫の中で獅子舞を舞う。メンバーの中には、亡くなった会長の息子さんもいた。その夜の食卓会は、会長の息子さん家族や保存会のメンバー達が、移転先の新たな町づくりへの抱負や夢を語る、決意の食卓。

     “新しい故郷”へ持っていく“心の故郷”。新天地へ向かう、節目の食卓を追った。