•  2010年4月に急逝した小説家・劇作家の井上ひさし。  演劇と文学の両輪で活躍する稀有な作家で、自らの戯曲を上演する「こまつ座」を持ち、数々の作品を発表。高い評価と栄誉を受けてきた。
     今回の「夢の食卓」では、井上ひさしが食卓をどう考えていたのか・・・。
     井上麻矢(井上の三女)を中心に、親交のあった演出家たちから、そのエピソードを引出し、食の面から井上ひさしにアプローチをしてみたい。

     井上は、ひたすら本を読み、戯曲・小説を「書く」ことに没頭し、食事中もほとんど本を離すことはかった。
     しかし、『作家は美食家であってはならない。質素な食卓でいいのだ』と言い放ちながらも、1か月に一度、脱稿した日は、家族を連れて銀座で1日を過ごしたという。帝国ホテルでのランチ・・・ここでは決まって、パンケーキとオレンジジュース。そして映画を見て、伊東屋と本屋をめぐり、夕食は焼き肉。そしてもう1本映画を鑑賞。娘3人はこの日は学校を休み、夢のような1日を送った。

     井上のエッセイに次のような一文がある。『昭和三十年代ブームが起きましたが、あの頃までは日本の家庭にはしっかりとした食事の文化がありました。お母さんが近所の魚屋で魚を買ってきて料理して、お米とお味噌汁、それに漬物くらいで食卓を囲んでいた。昭和三十年代ブームというのは、なにも東京タワーが懐かしいのではなくて、あの頃の食事を中心とした日本人の生活を懐かしんでいるのだと思います。』

    「井上さんは、みんなで一緒に食べて語り合うということが、本当に好きだった」・・・井上を知る演出家、編集者、俳優は口をそろえて、そう答える。みなが笑って、飲み、食べる姿をいつも嬉しそうに見ていたという。
     番組では、「こまつ座」主宰の三女・井上麻矢を取材し、井上ひさしの執筆にかける情熱、家族に見せた意外な一面、食に関するエピソードなどを明らかにしていく。また井上がいつもみなを連れて行ったという新宿の焼肉屋で、井上と親交の深かった鵜山仁(演出家)、栗山民也(演出家)、小曽根真(ミュージシャン)、井上麻矢が集まり、夢の食卓が開かれる。