•  三重県伊賀上野、丸柱地区。「伊賀焼」で知られるこの場所に、陶工・福森雅武さんが暮らしている。「土鍋」づくりを生業としてきた窯元「土楽」の7代目。工房でつくられる黒い「土鍋」は、全て手で曳いた手作り。職人が手間ひまをかけて作っている。その鍋は全国から注文が殺到するほどの人気だ。福森さんはろくろに向かい、土とじっくり語り合いながら、丁寧に器をつくりあげていく。福森さんのつくる器、人柄に、魅了され、多くの人びとが彼のもとにやってくる。白洲次郎・正子夫妻も足しげく通ったという。そこで振る舞われるのは、福森さんが作る、地元の食材をつかった料理。春には裏山で穫れた山菜、夏には鮎、秋はまつたけ、冬になればスッポンも料理され、自作の器に盛られる。その料理は美しく、そしてうまい。

     福森さんの夢の食卓とは何だろう?

     その答えは、日々の暮らしの中にあった。花を活け、季節を感じながら食べる朝の食卓。そこには奥様がつけた漬け物と白い粥が並べられる。昼は職人たちと食卓を囲み、自分たちでつくった米、野菜を食べ、働く糧とする。家の真ん中には大きな囲炉裏があって、夜にはそこを訪ねて友人が集まってくる。炭をくべ、土鍋をかけ、料理をはじめる。出来上がったのは猟師が送ってくれた猪肉のスキヤキ。福森さんにとって、これは日常。私たちからみれば「夢のような食卓」だった。