•  一年間でたった20頭しか生産されない幻の豚・柿豚(かきぶた)。
     福岡県うきは市、筑後川のほとりで育つこの豚は、市の特産物である柿を与えられて大きくなる。その味は一流の料理人をも唸らせる。  柿豚の生産者は杉勝也さん(40歳)。養豚場の長男として生まれた杉さんだが、大学卒業後は地元を離れ、ソーセージやハムなどを作る肉加工の道に進んでいた。先代が倒れ、実家の養豚場に戻ったものの、当初は畜産には興味が持てなかったという。そこで周りの反対を押し切り、養豚場の敷地内に自前の加工場を建てた杉さん。ところが肉加工にのめりこむ日々が、逆に杉さんの心を徐々に畜産に向かわせることになったという。ハムやベーコンの味を極めるには、原料となる豚そのものの品質が大事だと、身をもって気付いたのだ。
     地元うきは市は柿の生産が盛んで、傷柿や形が整わない柿は、「規格外」とされ廃棄されていた。その柿を豚にあたえたところ、得られた肉質は予想をはるかに上回るものだった。
     柿豚の誕生。
     11月上旬、杉さんは東京で柿豚を振舞う料理会を開いた。柿豚を通じて知り合った人たちで囲む美味しい食卓。そこには、豚を育て、加工し、さらに消費者であるお客さんともつながろうとする、杉さんの夢の食卓があった。