•  加賀百万石のお膝元、石川県金沢市。前田利家が入城して以来400年以上に渡り戦禍を逃れたこの町には歴史と文化の香りが今も漂う。もちろん、食文化も。海の幸・山の幸に恵まれ、“美食の町”と呼ぶにふさわしい食材と、何代にもわたって守られてきた土地ならではの料理が金沢にはある。
     125年の歴史を誇る料亭「金城樓」では、輪島塗、九谷焼の名工たちが手掛けた雅な器に手間を惜しまぬ料理が美しく盛られ、加賀料理の真髄を感じさせられる。「金沢の食文化を、料亭文化を守っていくのが使命」と語る5代目の心意気も納得だ。
     3年前、同じ思いで立ち上がり、活動しているグループがいる。立ち並ぶ町家に江戸時代の風情が残る、ひがし茶屋街。賑わう通りを一本入ったところにある店「押寿し体験厨房 金澤寿し」がその拠点だ。メンバーは9人、皆、金沢に暮らす主婦ばかり。ここでは、金沢の伝統料理「押し寿司」作りを“お母さん”たちが自身の体験を語りながら楽しく指導してくれる。押し寿司とは、金沢で昔から祭りの日に食べられていたお寿司。前日から祖母・母・娘の三代で大きな木枠に寿司飯と旬の魚を交互に敷き詰め、作るのが常だったという。
     「体験を通して金沢のことをもっと知ってもらいたい。そしてここで暮らす人々の人柄に触れ、楽しんで帰ってもらえたら嬉しい」と、店長の周田さんは語る。
     年の瀬が迫った12月。金沢の台所、近江町市場にメンバーの姿があった。
     「もっと金沢らしい押し寿司を作りたい」と新作の「押し寿司」作りに乗り出したのだ。
     果たしてどんな押し寿司が出来上がるのか?また、その押し寿司を囲み、どんな食卓会が開かれるのだろう。