•  「コケコッコー」。閑静な住宅街が広がる東京・世田谷に朝を告げる元気な鳴き声。覗けば広大な敷地の中を700羽ものニワトリが駆け回る。さらに、丸々太った豚が10頭。都会の真ん中とは思えない風景がここにある。主は「吉実園」の名で造園業を営む吉岡さん(68歳)。この地に13代続く農家でもある。
     ニワトリを飼いはじめたのは20年前。きっかけは“雑草対策”だった。商売道具の植木と畑の野菜。その共通の敵である雑草を効率よく、自然に除草できる方法はないかと考えたとき、浮かんだのがニワトリ。放し飼いにしておけば、不要な草をキレイに食べてくれるのだ。また、共通して必要なものもある。それは、良質な土。豚を飼った理由もこの土へのこだわりがあった。植木の剪定作業で出る大量の枝。これを細かく砕き、米ぬかと豚・ニワトリのフンを混ぜて熟成させるとオリジナルの堆肥が完成する。この堆肥が土を豊かにし、美味しい野菜が育つというわけだ。無駄をなくした循環農法。こうした昔ながらの農業を行うには近隣の理解と協力が必要だが、吉岡さんには心強い仲間がいる。
     風がここちよい6月の夕暮れ時。彼らを招き、吉岡さんが食卓会を開いた。吉岡家自慢のテーブルに新鮮野菜たっぷりの料理が並ぶ。そこに広がるのは食を大切に考え、無駄のない生き方が繋いでくれた縁。共に食べ、笑う時間がまた、絆を深くする。