•  左官職人・松木憲司(51歳)。
     現代の名工にも選ばれた、日本屈指の職人である松木が手がける物がある。
     『コヘッツイ』(現代版かまど)。
     15歳で弟子入りしてから左官職人として36年のキャリア。土を相手に格闘し続けながら、松木は日本建築の移り変わりを目の当たりにしてきた。ある古い日本家屋での仕事中、その家に代々受け継がれてきた「かまど」に出会ったことが『コヘッツイ』を作るきっかけになったという。日本人の食卓を支えてきた「かまど」には神が宿るとされ、それを作る仕事は左官職人にとって大切な仕事。しかし、暮らしの変化の中、かまどを作ることが出来る職人は激減していたのだ。松木は、「かまどの文化」を現代に繋げようと決意。どこでも使えるように、持ち運びができる『コヘッツイ』を一つ一つ手作りで模索しはじめた。こだわったのは材料を土にする事と、釜の大きさ。数人でいっしょに食べられるよう最低2.5合炊きに。そこには、置いた場所すべてが、あたたかな食卓になってほしいという松木の願いが込められている。

     現在、弟子5名を率いる左官集団の親方でもある松木。
     4月、弟子たちとの毎年恒例のお花見が開かれた。
     四日市の桜並木。酒を酌み交わす職人たちの真ん中には・・・、最新の『コヘッツイ』があった。ふたを開けたとたんあがる、美味しい湯気と歓声。
    「かまどのご飯のいいところはおこげが出来るとこやよ・・・」
     炊きたてのごはんをほおばりながら、かまどに心を寄せた職人たちが、「日本の食卓への夢」を語る。