•  「海の京都」と言われる丹後半島。その付け根の小さな街、宮津。日本三景の天の橋立を抱く景勝地だ。宮津には、知る人ぞ知る酢の醸造元がある。飯尾醸造だ。100%無農薬の素材を使う事でも有名な飯尾醸造の酢造りは、昔ながらの方法にこだわっている。だから、自ずと季節と寄り添うことになる。
     「醸は農なり」を地で行く飯尾醸造の一年を見つめた。
     酢づくりの一年は、雪に閉ざされた寒い冬から始まる。米を蒸し、麹をつくり、酒母をつくり、もろみを作る。いわゆる酒だ。酢というものは全て、アルコールを酢酸菌で発酵させて作られる。できた酒に酢酸菌を浮かべ、およそ100日。ゆっくりと自然に任せ、味わい深い酢ができるのを待つ。その間にも、季節は巡ってゆく。春は田植えの季節。次の酢を作るため、田を耕し、苗を植える。暑い夏に稲はすくすくと成長し、秋は収穫の季節。醸造所の秋は忙しい。稲だけではなく、さまざまな果実酒の材料も収穫の季節を迎えるからだ。なかでも紅芋酢づくりはドラマチックだ。真紫の芋を、伝統の木枠で大人の男4人がかりで絞る。できた紅芋酢はルビーのような深紫。極上の風味を醸し出す。
     番組では、一年に一度のハイライト、米の収穫に密着。狭い棚田で機械を入れずに米作りを行っている飯尾醸造では、7年前から「稲刈り体験会」を実施。酢を買う顧客を宮津へ呼び、蔵人とともに稲刈りに精を出す。「自分の使う酢は、どんなところで育っているのか」、「誰が作っているのか」、また「誰が使ってくれているのか」、普段は交流のない、生産者と消費者が共に汗を流し、同じ食卓を囲む。
     そこには、日本人の大事にしてきた「食の楽しさ」が詰まっていた。