•  長野県松本市。木工デザイナー三谷龍二の工房は、りんご畑と雑木林がある丘の上にある。彼は生活に根ざした食器や生活道具を作ってきた。作品は人気があり、東京で個展を開けば三谷の作品を買いたいと大行列。オープン1時間で完売するほど。需要に供給が間に合っておらず、常に注文待ちだという。人気の秘密はシンプルでいて、普段使いができること。
     日々の暮らしを大切にしている三谷。一番好きな時間は、森の中を散歩する時間。裏にある森に小さな椅子とコーヒーを淹れて持ち込み、そこではゆっくりとコーヒーを飲むのが好きなのだ。そんな時に新しい器のイメージを巡らす。「木の器を使う人は、どこか森の気配を感じたいと思う。」
     だから、時々、森にやってきては、倒れた倒木など、人工的でない自然のあり方を感じ器に森の気配を吹き込んできた。
     最近、三谷がはじめたことがある。それは森の中で、木の板からひとさじのスプーンを作るワークショップだ。さらに、料理をつくり自分で作ったスプーンで食卓を囲む。参加者たちは楽しい食卓を思い描いて、食器づくりに没頭する。時間を忘れ、どこか幸せな気持ちになっていく。
     今日は「森の気配を感じる器」がもたらす「幸福な食卓」についての物語。