•  “列車でランチ”という光景がこの辺りでは普通なのかもしれない。
     岐阜県南東部を走る「明知鉄道」。のどかな田園風景の中をゆっくりと走るこの鉄道では、月曜を除く毎日、車内で地元の美味しいものをいただける「食卓列車」が走っている。春は「お花見弁当列車」秋は「きのこ列車」そして冬は「じねんじょ列車」に「猪鍋列車」など、季節に応じて企画が変わる明知鉄道の食卓列車は、県内だけでなく、県外から足を伸ばす人も多い。
     そんな人気の食卓列車の中でもおよそ30年の歴史を誇るのが、春から秋にかけて走る「寒天列車」だ。
     親子、夫婦、学生時代の友人同士など参加者はみな、気心知れた人たちの集まり。しかし、出発のベルがなり、乾杯を合図に旅が始まると徐々に、初めて会った人とも料理について語り合ったり、おすそ分けをしたりとひとつの車両が昔からの仲間のような雰囲気に変わっていく。
     「寒天列車」と聞くと、少し地味に感じるかもしれないが、侮ってはいけない。三段のお重にぎっしり詰まった料理は全て、寒天尽くしの会席料理仕立て!見た目にも鮮やかで寒天の思いもよらない使い方に、参加者からも驚きの声があがる。そんな寒天のアイデア料理の数々には、沿線のよさをたくさんの人に知ってもらいたい、来てもらったからには楽しんでいってもらいたい、という地元の人々の思いが詰まっていた。
     今回は、人を運ぶだけが目的ではない、ぬくもり溢れるローカル線の食卓列車の旅。