•  東京・富ヶ谷に、食卓を楽しくする小さなパン屋「ルヴァン」がある。天然酵母パンの元祖といわれるこの店の魅力は、どっしりと重く味わい深いパン。オーナーの甲田幹夫さん(64歳)は、“安全で健康に良いパン”を目指し、原料は知り合いの農家から仕入れた国産の小麦、その一部を石臼でひいてまるごと使っている。甲田さんの考えとそこから生まれるパンに魅せられ、店には職人を目指す若者たちが多く集まる。厨房内は緊迫感が漂い会話もほとんどないが、彼らにとって安心できる場が食卓だ。作業中こわばった面持ちのスタッフも、自然と笑顔が広がる。食べ物と時間を共有することで、その日あった成功も失敗も語り合える。お互いの気持ちを再確認する大切な空間だ。
     甲田さんが開業以来抱いてきた想い、それは「パンは目的ではなく手段である」ということ。パンは、様々な人の食卓に届けられる。一日の終わりに親子で囲む食卓、毎朝夫婦でゆったりとした時を過ごす食卓、初めて会う人たちが集まり交流できる食卓。日々いろんな場所にパンの食卓があり、そこには家族の大切な時間、夫婦の絆、そして新たな出会いがあった。