•  千葉県いすみ市。舞台は九十九里浜の南、自然豊かな町。
     「ここでは住民同士で食卓を囲んできたんです。」
     そう教えてくれたのは、浜名一憲さん(43歳)。九十九里の名産であるイワシを使ってアンチョビの製造・販売を行いながら、作陶をする日々を送っている。浜名さんがこの地に越してきたのは今から15年前、東京で営んでいたお店を閉じて、現在は、眼下に太平洋を望む高台の一軒家に10歳の娘と二人で暮らしている。
     浜名さん親子の1日は、早朝の堤防で投網漁をすることから始まる。時には70㎝のスズキを捕ることもあるほどの腕前でその日の朝食を調達。時間をかけて料理をし、海を眺めながら二人で朝ごはんをゆっくり頂く。朝食後、いつもなら小学校まで娘を送って行くのだが、この日は夏休み。二人で散歩に出かけた。海沿いのトンネルを抜けて、蓮の花畑や木陰の散歩道を、季節の草花の話をしながら歩く。
     そして、この親子にはもう一つ楽しみにしていることがある。仲良しのご近所さん達と囲む食卓会だ。毎週のように招き合っているという食事会が、この日は浜名さんの家で開かれた。やってきたのはロボット発明家の石井さん一家やお隣さんの羽山さん、陶芸仲間の小前さん。彼らも移住者だ。ことあるごとに食卓を囲んできたという。
     海の幸と山の幸にも恵まれた小さなまちで“父と娘が大切にする食卓の時間”をお届けする。