•  鹿児島県、霧島市の静かな山間に110年の歴史を持つ小さな無人駅がある。JR肥薩線の嘉例川駅は郷愁誘う木造の駅舎。利用客は1日わずか40人足らずだが、週末ともなると多くの観光客がやってくる。
     ここには明治時代から続く古い駅舎を守り続ける人たちがいる。訪れる人々を案内する名誉駅長、駅舎に花を生ける人、嘉例川の四季を写真に収める人など、地元、隼人町が地域活性化をめざしJRから駅舎を譲り受けた際に、地元の人たちによって組織された「嘉例川地区活性委員会」。
     嘉例川駅は2004年に九州新幹線が部分開業した際に開通した観光列車「はやとの風」の停車駅になり脚光をあびるが、人気の理由はほかにもある。週末(土日祝)だけ販売される駅弁に行列ができるのだ。
     JR九州の駅弁グランプリで3年連続1位に輝いた、薩摩の郷土料理で野菜尽くしの弁当「百年の旅物語・かれい川」。添加物を使わない手作りの駅弁を作るのは車で総菜の販売している山田まゆみさん。週末は朝4時からご主人と娘さん2人のお手伝いさんの5名で駅弁作りに精を出す。普段は170食、多い時は250食を超えることもあるという。食材のおよそ8割は嘉例川周辺で採れる野菜やお米。炊き込みご飯や煮物に使うシイタケを原木栽培している農家。駅弁のために切り干しダイコンを作ってくれる82歳のお年寄り。嘉例川の駅弁は地元の方々に支えられているのだ。
     駅が活気を取り戻し地域が盛り上がり、そこに暮らす人が元気になる。3月末、駅舎に咲く桜の下で総勢50名のお花見が開かれた。嘉例川の郷土料理で盛り上がる食卓とは。