第31回「アルプスに春告げる 山の紋章 雪形」

 白馬岳、五竜岳、蝶が岳、爺が岳…。いずれ劣らぬ北アルプスの名峰たち、でもその名前、意外なものが名付け親になっていることをご存知でしょうか?
 名付け親は、「雪形(ゆきがた)」。雪形とは、春、山の残雪と地肌が織り成す模様を、里の人々が形に見立てたもの。
 白馬だけならば「馬」の雪形、蝶が岳ならば「蝶」、爺が岳ならば「種まき爺さん」。それはまるで、謎解きパズル、自然のだまし絵。見つかったときは誰もが”あった!”と叫びます。その形から里人は、山の名前をつけていたのです。
ではなぜ…?全国で300以上が確認され、古来より伝承されてきた雪形。
 それは里の農民たちにとって切実な”占い”の道具でした。毎年決まって同じ場所に現れる雪形ですが、出現時期が年によってまちまちだったり、形が整っていたり、崩れていたり…。その変化によって雪解け水の量を測り、寒暖差を知り、農作業を始める目安としていたのです。雪形の中には、まさに自然の神秘とも言える驚くべきものも存在していました。
 しかし、気象・科学の発達にともない、農事暦としての役割を無くしていった雪形。
とほうもない昔から伝えられてきた山と人の共存、そして人間の素晴らしい知恵を現代へ残していこうと奮闘する人たちがいました。知られざる”文化資産”を、番組で一緒に発見してください!  リポーターは、父を登山家に持つ松原渓。