第11回「富士山・秋」

 古来より霊峰として崇められ、並ぶもののないことから「不二」ともされてきた富士山。その姿は八面玲瓏と言われ、この番組でも様々な山から展望された富士山の姿をお届けして来たが、今回はその頂を目指す。観光登山コースとしても親しまれている富士山だが、日本一の標高故の厳しさも待ち受けている。
山頂付近は夏でも0℃に近い気温のままであり、また空気の薄さから引き起こされる高山病も、富士登山には付いて回る。それでも尚日本一の頂を目指し、年間30万人近い人々が富士へとその足を向ける。
 その繰り返される火山活動のために植生に乏しいとされる富士山。しかし山麓には世界的にも貴重な森林が広がっている。特筆すべきは、青木ヶ原樹海。平安時代初期の貞観噴火により、周辺の森林は溶岩によって焼き尽くされたが、
その後千年の時を経て原生林が形成された。この青木ヶ原樹海は、森が成長して行く途上に見られるツガやヒノキの樹林が発達し、正しく「森が成長している過程」を目の当たりにすることが出来る貴重な森林である。しかしその貴重な森も、不法投棄による自然破壊が問題になっている。かつては「ゴミの山」とまで蔑まれた富士山を、本来の「美しい山」として復活させるべく、富士山クラブなど有志の活動が進められている。
 今回、そんな富士の旅を案内してくれるのは山岳ガイドの古谷聡紀さん。世界中の山々やスキー場を渡り歩き、スキーやトレッキングのガイドとして活躍する古谷さん。今回は古谷さんがガイドを務めるツアーに密着。「日本一の山に登りたい」と全国から集まった学生たちは、登山の経験もほとんどない。そんな学生たちが是非見たいと願っているのは、富士山の「御来光」。日本一の頂から望む御来光を目指し、古谷さんと学生たちの富士登山が始まる。