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2018年11月28日(水)
駐日イラン大使に聞く 制裁科す米国への対応

ゲスト

モルテザ・ラフマーニ・モヴァッヘド
駐日イラン大使(前半)
田中浩一郎
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授(後半)
小塚郁也
防衛研究所政策研究部主任研究官(後半)

駐日イラン大使に聞く 米国の『イラン核合意』離脱
斉藤キャスター
「世界に大きな影響を与えるイラン情勢について徹底検証します。前半は駐日イラン大使を招き、アメリカのイラン制裁の影響、核合意から離脱したアメリカにどう向き合うのか今後の日本との関係の話を聞いていきます。後半はイランと中東情勢について専門家の方に話を聞いていきます。ラフマーニ大使、今年7月に日本に着任されたということですが、日本はどうですか?」
ラフマーニ大使
「日本はとても歴史、文化の豊かな国であり、輝かしい歴史と文化の国です。また、テクノロジーの分野における発展、非常に勤勉な努力家の人々、また、文化的民度の高い人々です。私は、こういった日本国、日本におきまして駐日大使として着任できたことを嬉しく思っていますよ。イランと日本は、西アジア、東アジア、アジアの西と東に位置する国として数百年に及ぶ長い交流の歴史がございます。イランの人々は日本の人々に対して非常に尊敬の念を抱いています。政府間の協力、交流におきましても非常に親密で友好的な関係にあります。であるからこそ、駐日大使として赴任できましたことは私のおおいなる誇り・名誉であります」
松山キャスター
「そうした中で、来年はイランと日本の外交樹立の90周年という節目の年を迎えるということなのですけれど、この90周年という年の重み、どういう関係に今後発展させていくべきだというふうに考えていますか?」
ラフマーニ大使
「2019年は国交樹立90周年の年で節目の年でございます。人的交流・文化交流はシルクロードの時代まで遡ります。日本の観光客、また日本のビジネスマンが多くイランを訪問され、2019年はぜひ2国間にとりまして極めて重要な、また、輝かしい2国間の発展の年にしていきたいと考えております。様々な文化行事ですとか、また、経済関係のフォーラムですとか、また、科学技術に関する行事を予定しております。是非この節目の年に日本において実施していきたいと考えています。また、在テヘラン日本大使におかれましても、同様にイラン・テヘランにおきまして、多くの行事を開催される予定と聞いております」
松山キャスター
「まさに、イランと言うと我々日本人は石油という概念で捉えがちなのですけれども、大使がおっしゃったように、シルクロードの時代からずっとイランとの貿易というのはあったわけで、様々な工芸品などが日本に持ち込まれていたという歴史もあります。そのあたりも含め、イランと日本の今後について今日はじっくりと聞いていきたいと思います」
斉藤キャスター
「さて、アメリカがイランに対して制裁を発動するなど激しく対立することになった原因というのは、トランプ大統領が今年5月、オバマ政権時代に調印された、いわゆるイラン核合意からの離脱を表明したことに始まります。イラン核合意とはいったいどういうものなのかと言いますと、イランが核兵器を製造するために必要な濃縮ウランを生産しているとして、2015年の7月、イランとアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・中国・ロシアがイランの核開発を制限する合意に至りました。イランはウラン濃縮用遠心分離機を10年間、5060基以下に限定、ウラン濃縮の上限は3.67%までにするとともに、貯蔵濃縮ウランは300キロ以下に限定、こちらの期間は15年間です。さらに兵器級プルトニウムの生産禁止などの内容に合意して、このイラン核合意によって国連安保理決議に基づく制裁の解除やアメリカ・EU(欧州連合)等による核関連の独自制裁の停止が、解除が行われました。しかし、アメリカのトランプ大統領は合意には根本的な欠陥があるとして、この3つを主に問題点として挙げました。1つ目は、核開発制限に期間がある。2つ目は、弾道ミサイルの開発を制限していないではないか。3つ目は、イランは周辺国でテロリストを軍事的・経済的に支援している。今年5月、アメリカはイラン核合意からの離脱を表明したわけですけれども」
松山キャスター
「アメリカ側は、トランプ大統領は、核開発の制限に期間が設けられていることがこの条約の問題だというふうに言っていると。もう1つは、イランが弾道ミサイルの開発をする可能性があると、それを制限していないことが問題だと言っています。これはイランとしてはこれについてどう反論されますか?」
ラフマーニ大使
「ええ。我々は以前から、イラン国内における核開発、すなわち原子力エネルギーの開発は既に平和裏のものでありました。あらゆるイランに対する嫌疑、また、イランの核開発に対する嫌疑はIAEA(国際原子力機関)によって全て否定されました。IAEAは明確にイランに軍事目的の核開発はしていなかったということを表明しています。イランも、他の国際社会の各国と同じように原子力の平和利用をする権利があると考えています。これは、この権利はイラン核合意におきまして、国連の2231号決議におきまして承認されました。国際法ですとか、また国際規則にはそれぞれのものがございます。いかなる国であれ、自らの好きなように、自らの国内法にのみに基づいて、他の国々に対して、これはやってはいけない、これはやるべきだ、というふうに指示することはあってはならないと考えます」
松山キャスター
「また、アメリカのトランプ政権は、こういうことも指摘しています。イランがその周辺の国でテロリストを軍事的、または経済的に支援している、これが問題だということを言っているわけですけれども。この実態が本当にあるのかどうか、イランとしてはどういう見解を表明されますか?」
ラフマーニ大使
「我々は決して我々のプレゼンス、各国におきます軍事的なプレゼンスではございません。シリアですとか、イラクにおきましても、合法的な政府の招請、また、嘆願によりましてテロと戦うために我々はプレゼンスを得ています。シリアの政府は合法的な政府であります。本当にアメリカ側はシリアの合法政府によってその招聘、またその願いによってプレゼンスを得ているのでしょうか。我々の中東地域の安全保障、また安定・平和というものは、我々の国、各国の国々のものでしょうか、それとも域外の国々のものなのでしょうか。長年にわたり昔からずっとイランは常に地域の平和と安定のために建設的な役割を果たしてきました。アフガニスタンにおきましても、イラクにおきましても、シリアにおきましても、全ての我々の活動は地域の平和をもたらすためのものであります」

米国の『制裁』とイランの現状
斉藤キャスター
「アメリカはイラン核合意からの離脱に伴ってイランに対して経済制裁を再発動しました。8月には金や貴金属の取引、自動車関連の取引、またアメリカへの絨毯輸出などが対象になっていました。今月5日には、原油の取引やイラン中央銀行との決済などを禁ずる制裁を発動しています。ただし、日本を含めた8つの国と地域は最長180日間という期限つきで適用除外の対象になっているんですね。しかし、実際、日本はイランからの石油の輸入をストップしているという状況です。このように、広範囲にわたって厳しい制裁が科せられていますが、大使、イラン国内への影響というのは深刻なものなのでしょうか?」
ラフマーニ大使
「我々は制裁のことにはあまり。アメリカはここ40年は何度もイランに対して制裁をかしたことがあります。毎回いろいろな言い訳をつくって、そういうことをやりました。世界中における貿易ということはまったく閉鎖されることではありません。私達は原油の売り手であり、世界中に買い手がいっぱいあります。前回の制裁時は、私達はスムーズに経済の状態を経営することができました。11月4日以降はイランの経済状態がよくなりました。イランの通貨は35%ぐらい強まり、原油の売るための契約が結ばれ、ヨーロッパとの協力とかは継続を保持されており、イランの原油ではない輸出は世界中のそれぞれの国々へ、最近の10か月において18%も増加されています。これらは全てイランの経済が強い印です」
松山キャスター
「イランのロウハニ大統領は制裁が発動される前の7月に、アメリカによる原油の禁輸に反発して、こんな発言をしています。『政治の基本というものを理解しているなら、イランの原油輸出停止など口にしないはずだ。イランはこれまでもずっと地域の海路の安全を保証している』ということで、アメリカの制裁に対する発言として言っているわけですけれども。『イランはこれまでずっと地域の海路の安全を保証』、この『海路』というのが、非常に重要になってくる、タンカーなどが多く通るホルムズ海峡のことを言っているのではないかという報道があります。アメリカとの関係が悪化した時にホルムズ海峡を閉鎖する可能性があるのかどうか、このあたりについてはいかがですか?」
ラフマーニ大使
「ペルシャ湾地域、ホルムズ海峡の安全保障を最も保障する国というのは、域内諸国であると考えます。イランは何度も、何年もの間、ホルムズ海峡の安全保障を我々は確保してきました。それはすなわち、申し上げましたように、原油・エネルギーの輸出の安定、維持というものが必要ですし、その他の非石油部門の様々な製品の貿易もホルムズ海峡通して行われています。こういったイランの地位、安全保障における地政学的に重要なイランの地位をまた無視するのであれば、無視し、それを軽視するのであれば、それはこの地域に大きな緊張を生むことにつながります。我々は決して、イラン産原油がこの地域から輸出されることが途絶えることを許すことはありません。これは、明らかなメッセージでありまして、地域の平和と安定、安全保障のために理解をされるべき重要なメッセージであると考えています」

日本・イラン関係の今後
斉藤キャスター
「今年9月まで日本はイランから全体の5.1%を輸入していました。石油元売り各社はというと、一時輸入停止という対応をとっていますが、早ければ年内に再開する見通しだという状況です」
松山キャスター
「日本企業が早ければ年内にもイランからの原油の輸入を再開するかもと言われていますけれども。ただ、アメリカは、イラン産の原油の輸入については例外を認めていますが、例外措置も180日間という猶予期間に限るということを言っています。180日間を過ぎてしまうと、また、日本企業の中でもイランからの輸入はストップしようという動きが出るのかもしれないと言われています。ここについてはどういう懸念を持っていますか?」
ラフマーニ大使
「これは日本のいろいろな政策によると思います。私が指摘したいのは、原油経済、また産業に関する協力、また取引に関する協力、開発してほしいです。他の国々は妨げになるという理由は、私達がアテにしないことができると思います。それには国際的な必要がないと思います。ヨーロッパ・中国・インド・ロシアといろいろ協力する道もありますし、それに従って、イランと日本の間の原油に関する協力を続けることができると思います。日本はイランに対して、アジア的にはとても大事な国です」
松山キャスター
「日本では現在、人材交流という意味合いもあるのですけれども、外国人の労働者をドンドン日本に取り入れようという動きが国会などでは議論されています。今後イランは日本とどういう人的交流をはかっていくべきか、また経済的交流をはかっていくべきか、これについてはどう考えますか?」
ラフマーニ大使
「非常に高い教育を受けた優秀な人材がたくさんイランにはおります。もし日本に希望があるのであれば、意向があるのであれば、両国政府の管理によります、人材交流ですとか、人材育成プロジェクトに関しましては積極的に支援していきたいと思っています。また、今後、成長産業と言われている分野に関しましてもイランが積極的に参画し、支援していきたいと考えています。人的交流とか、このような人と人との交流につきましては両国民の相互の相互理解のさらなる進化につながると考えますし、そのことが2国間の関係の発展につながると考えます」

モルテザ・ラフマーニ・モヴァッヘド 駐日イラン大使の提言
ラフマーニ大使
「2019年ですが、2国間の国交樹立90周年の節目の年でありまして、書いてある通り、私の願いが書いてありまして、この年に両国、2国間関係のまさしく頂点までその関係が発展することを願います。そのように私は願っています。大変すばらしい国民である日本の皆様にこれを差し上げたいと、非常に親密な素晴らしい日本の国民の方々にこの私のメッセージを捧げたいと思います」

『米国VSイラン』の行方 経済制裁とイラン情勢
斉藤キャスター
「では早速、田中さんに聞きますが、実際のところ、イラン国内は現在どんな状況なのでしょうか?」
田中教授
「制裁が復活したのはこの夏、この11月に入ってからなのですけれど、それに先立っている今年の頭から、情勢が悪くなるのではないかというある種の見立てによってだいぶ市場が動いていたんですね。その影響が早くも出ていたのでだいぶ混乱があったと思うのですが、ある部分、予定されていた制裁が実際に科されたということで、いったんは落ち着きを見せたのだと思います。しかし、本当に今後も制裁が続けられる、あるいは強化されていくということになりますとイラン経済全体の運営というのは相当厳しいものになると私は見ています」
松山キャスター
「先ほど、イラン大使は、アメリカの一方的な制裁であって、核合意にはヨーロッパをはじめ、他の国は残っているのだと、そういう意味では、ヨーロッパ諸国などはきちんと協力して、経済的にもまだ協力をしているということで、影響は限定的だという見方を示していましたけれども、実際のところ本当に限定的なのかどうか?」
田中教授
「まさにそれがこれから試されるわけなのですけれども。欧州諸国を中心に、アメリカの制裁の影響を受けないような形でイランとの間の貿易関係を維持しようとしているわけですが、一方で、明らかなのは、たとえば、投資に関しては、ヨーロッパの多くの企業はもう撤退してしまったんですね。彼らが現在の状況の下で今後戻ってくるという状況はなかなか見えません。ですので、それは既にマイナスとして存在しているんです。貿易関係はある程度維持できたとしても、投資が入ってこないとなりますとイランが独自、自己資金でいろいろなことをやらなければいけない。しかし、それも原油の輸出が制裁の一次停止を認められたとは言え、それは暫定的なものもあるし、量的にも制約を受けますので、これは、いわゆる完全な状態でイランが外貨を稼げるという状態にないということにもちろんなります。ですから、いずれを見ても、普段まったく制裁がない時、あるいはこの核合意がアメリカによって履行されていた時に比べれば、状況は悪化します」
斉藤キャスター
「小塚さんはこの制裁の影響をどう分析されますか?」
小塚氏
「私は、この2010年から2012年段階のイランが受けていた経済制裁の状況に、今回のアメリカの制裁によって戻ったみたいな。その当時、非常にイランは輸出量が年間250万バレルぐらいあったのが、100万バレルぐらいまで、日量が下がったんですよ。その時と同じような状況になるのではないかと。私が、11月5日に始まったアメリカの制裁で1番大きいと思うのは金融制裁ですね。国際銀行間通信協会というベルギーのブリュッセルに拠点がある、銀行間取引のためのスイフトというシステムがあるんですけども。イランの金融機関がこのスイフトから除外されてしまうことになると、結局のところ貿易決済が一切できなくなってします。これは非常に痛いのではないかなと、貿易についても。もちろん、投資についてもサウスパルスガス田というのがイランにあるのですが、そこの投資をするはずだったフランスのトタル社が既に撤退を決めてしまって、代わりに中国の国有企業がそれに代わって参入するということも起きていますから。投資、これからスイフトからイランの金融機関が除外されると、これは非常に貿易決済が一切できなくなる。ドル取引は8月の制裁でもうできなくなっていますから。非常に大きいのではないかと思っています」
松山キャスター
「先ほど、田中さんの方からもありましたけれど、ドル決済ができなくなることに対する警戒感から、アメリカだけではなくて、ヨーロッパの関連企業などでもそういう動きはドンドン、警戒する動きが広まっているということなのですか?」
小塚氏
「EUは一応、スイフトに代わる決裁のために特別目的事業体を立ち上げるというようなことを既に、9月に発表したのですけれども。これが果たして、私は、スイフトに代わるような決済機能を発揮できるかどうか、そこは非常に疑問に思っているんです。ですから、ドル取引ができないということは実際、現在の国際経済から言いますと事実上取引ができないということになりますから。もしスイフトからイランの金融機関が除外される、本当にそういうことになれば、イラン経済には非常に致命的なダメージになるのではないかなと思っています」
松山キャスター
「トランプ政権はイランから原油の輸入を各国にやめてくれていうことを申し入れて、いったんは各国がそれを受け入れるという姿勢を示したわけですけれども、そのうち8か国については除外措置ということで、180日間の猶予期間を設けて、ある程度、原油の輸入もそこまでは認めるという姿勢に転換しました。このアメリカの変化、これはなぜ起きたというふうに田中さんは?」
田中教授
「これは1つに、アメリカの中間選挙、議会の中間選挙が今月頭にありましたので、そこに向けて、むやみやたらに国内のガソリン価格の高騰を引き起こす、いわゆる国際マーケットにおける原油の高騰が、トランプ大統領としては鬱陶しかったということなのでしょうね。なので、それをできるだけ中和する、ニュートライズするということで、その話を持ってきたのだろうと思っています。別に彼自身がイランに少し甘い顔をして、イランに対して少しは飴をしゃぶらせることによって態度の変更などを引き出そうとしているわけではなく、あくまでも自分の都合によって、それをやったというだけにしか私は見ていません」
松山キャスター
「中間選挙がアメリカでは終わって、原油価格が仮に、若干低い方向で安定してきた場合に、もう一度トランプ政権は以前の完全な強硬姿勢に戻る可能性が高いということですか?」
田中教授
「基本的に強硬姿勢は変わらないと思っていますので、そこはトランプ大統領自身だけではなく、安全保障担当補佐官のボルトンさんなどを含めて、対イラン、タカ派、強硬派というのがワンサカとあの政権の中にはいますので、彼らが主導する形で締めつけをドンドンやってくると思っています」
松山キャスター
「小塚さん、トランプ政権がイランに対してどういう意図でこの強硬策をずっと続けようとしているのか、このあたりどう見ていますか?」
小塚氏
「私は、安全保障問題の要素が大きいと思っていまして。北朝鮮に対して、トランプ政権が同じように非常に強力な圧力をかけて、その結果、金正恩さんが、核の交渉の方に」
松山キャスター
「対話に出てきた」
小塚氏
「対話に出てきた。それと同じことをおそらく狙っているのではないかなと思うんですね。それは今年の5月、ポンペオ国務長官がこのアメリカのJCPOA(共同包括行動計画)離脱に伴って、イランに対して12項目の要求を出しているのですけれども。これもある意味で、非常にイランの全面的な降伏というか、降参を求めるような…」
松山キャスター
「かなり厳しい要求を」
小塚氏
「厳しいです、非常に厳しいです。核だけではなくて、弾道ミサイル開発とか、あるいは、ヒズボラとか、ハマスとか」
松山キャスター
「テロ組織への支援をやめろと」
小塚氏
「テロ組織への支援。それから、あとはシリアからの撤退、革命防衛隊がシリアに派兵されていますから。そういった意味で、非常にイランにとってはちょっと飲めないような、交渉事の材料としては、妥協点を最初から出しているような、その交渉の材料になるような提案ではない、提言ではない、項目の提案ではなかったんですね。だから、北朝鮮と同じように、なるべく圧力を強めて、その結果、イラン側が参るのではないかと、対話に出てくるのではないかと、それを狙っているのではないかなと思うんです」

中東の危機と日本への影響
松山キャスター
「先ほど、イラン大使が来ていた時にも紹介した、この発言ですけれど、イランのロウハニ大統領がアメリカに対する発言として言った内容ですけれども。『海路の安全保証』というのが、いわゆるホルムズ海峡を意味していて、アメリカとの関係が最悪、悪化してきた場合にはホルムズ海峡を封鎖みたいなことも可能生として示唆をしたのではないかと一部のメディアは報じたわけですけれども。これについては、田中さんは、この発言をどう受け止めますか?」
田中教授
「それはメディアの読み違いですね。これはホルムズ海峡のことを言っているのではなく、イエメンとアフリカの角、東アフリカ、いわゆるホーン・オブ・アフリカと言われているところ、レッド・シー、紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデムのことを実は彼は言っているんですよ。そこをむしろ脅したのですけれども。なぜかと言えば、イラン自身はここ、ホルムズ海峡がまさに生命線ですので、原油だけでなく様々な産品、食料品も含めて、ここを通っています。ここを封鎖することは、自ら自殺行為になりますので、まったく意味がないです。この時に彼が言外に匂わせたのは、むしろ、バブ・エル・マンデムという、イエメン、それから、サウジアラビア、ヨーロッパへの航路、さらには中東からアメリカに向けての航路になっている、このところへの牽制だったんです。偶然かもしれませんけれども、この発言が出たちょっとあとに、イエメンの内政の一当事者であるホーシー派によるサウジのタンカーに対する攻撃が起きているんですよね」
松山キャスター
「そうした中で、アメリカは既に12項目とされる要求項目を突きつけているということで、イラン国内で今後それに対する反応ということで、対米強硬論みたいなものが持ち上がってくる可能性もあるのではないかという見方もあると思うのですが、今後、アメリカとイランのこの緊張関係の悪化、これはどういう方向に進んでいくと見ていますか?」
田中教授
「まず関係が改善されるという兆しはまったくありません。アメリカの要求は少なくとも当然のところ、イランが全面降伏するかどうかということに尽きますし、それを超えては、では、イランがずっと粘って、粘って、粘って、場合によったら国内で暴発、暴動が起きて、体制が揺らぐ、あるいは国内で強硬派が出てきて、彼らが無謀な、外に向けての無謀な行動を起こすことによって軍事介入の口実を与えてくれる、その手のことを狙っているというふうにしか読めませんので。トランプ政権にしてみれば、イランがとにかく、柿が熟して落ちるのを待つというぐらいの感じで対応しているのだと思いますね」
松山キャスター
「実際にアメリカとの間で何らかの軍事衝突みたいなことが起こる可能性、これについてはどれぐらいあると?」
田中教授
「偶発的には、海峡、それから、ペルシャ湾、アラビア海を含め、アメリカの艦船、イランの艦船等が出入りしていますし、割と至近距離で行動する時もありますので、偶発的な衝突や不測の事態ということが起きないと言い切れないと思います。ただ、戦争するという意図は、少なくともイランの方ははっきりとしていないと、これは最高指導者のハーメネイー師も、アメリカと戦争はしないと、だけど、交渉もしないと、この両方をきちんと並べていますので、戦争をする意図はイランにはまったくないですね」
松山キャスター
「当分、このまま平行線で関係悪化のまま進む可能性がある?」
田中教授
「うん、まさにその2年後の大統領選での出方を、結末を見るという格好ですよね」
松山キャスター
「小塚さん、このあたりはどう見ていますか?」
小塚氏
「2012年の状況が非常に参考になると思うんですね。この時、イランはホルムズ海峡を機雷で封鎖するというような脅しですよね、脅しを国際社会に出していましたし、また、同じ頃、イスラエルはイランの核施設を空爆するというような。非常に安全保障上の緊張が高まったのが2012年だったのですけれど、結局、何も起こらなかったので。私も田中さんがおっしゃったように、イランは少なくともホルムズ海峡を封鎖するようなこと、そんなことをすれば国際社会からまた孤立してしまって、また、国連の制裁とかを受けてしまうことになりますから、そういうことはないと思うのですが。ただ私が個人的に思うのは、2012年、2010年から2012年の間、スタックスネットというアメリカとイスラエルが共同開発したと言われているマルウェア、コンピュータウイルスみたいなものですね、これによってナタンズ、イランのナタンズのウランの濃縮施設が、攻撃されていたということがあって。また、2012年には、これはイラン側からの反撃と言われていますけれども、サウジアラビアの国営石油会社であるアラムコのコンピュータ3万台ぐらいサイバー攻撃を受けて破壊されたという事件、機能停止したという事件がありました。同じように実際の武力衝突というよりはサイバー戦と言いますか、背後にアメリカとイラン、イスラエルがいるようなサイバー戦の応酬は激化するのではないかなと考えている」
松山キャスター
「これは水面下ではもう始まっている可能性があるということですか、サイバー攻撃的なものが?」
小塚氏
「サイバー攻撃、サイバー戦についてはもうずっとやっていますので、同じことを。さらに2012年のように、あからさまに応酬が始まるのではないかなという、そういう予想はしているんですね。実際、サイバー戦の場合はアトリビューションの問題と言って、誰がやっているのか、帰属がわからないという匿名性がありますから、背後でアメリカやイスラエル、あるいはイランがやっていたにしても、実際はハッカーがやっているということで、非対称的な脅威ということになってしまう」
松山キャスター
「政府は関与していないと」
小塚氏
「政府の関与まで証明できないですよね、サイバー戦の場合。従って、そういうのは激化する可能性があるのではないかと思っています」
松山キャスター
「イランについては、まさに原油の輸入をどうするかという話がまさにあるわけで。日本企業はいったんその原油の輸入をやめる姿勢を示していましたけれども、とりあえず、例外措置もあるということで年内にはもう1回再開するのではないかという動きになっている。日本の原油輸入の動向、田中さんは今後どう推移すると考えますか?」
田中教授
「これは各社がどういう対応をとるかということが本当のところ見えないので、私の方からも何とも言えないのですが。ただ問題は180日後にまた現在の措置が失効してしまうという状態、すなわち息の短い話ですので、手間を日本の企業が惜しんでまで現在あらためてイラン原油を引き取るのかどうかということにたぶんかかってくるのだと思うんですよ。すなわち、もう少し先のことまで見ないと、いろいろな船の手配であるとか、こういったものを考えてやっていけないのではないかということをちょっと私は懸念しております」
松山キャスター
「小塚さんはいかがですか?」
小塚氏
「私はこの問題については安倍総理が9月にニューヨークでイラン核合意の支持をすると」
松山キャスター
「はい、言いましたね」
小塚氏
「支持を継続するということをおっしゃられて。外交的に言いますと日本の立場は、EU、ヨーロッパと同じようにイラン核合意支持。ただ各企業の合理的なガバナンスと言いますか、判断は政府の方針とはまったく別だと思うんです。田中さんがおっしゃったように、これから半年後にはまた…」
松山キャスター
「期限がくるわけですよね?」
小塚氏
「期限がくるわけですから。アメリカが要求しているのはその間にイランからの原油の輸入をゼロにしろと言っているわけですね。ですから、段階的にドンドン減らしていかないことにはアメリカに延長の交渉すらできないことになってしまいますから。ですから、企業の論理としては、アメリカ市場から排除されるリスクを考えれば、イランとの取引を削減、あるいは少なくする…」
松山キャスター
「絞っていく」
小塚氏
「うん、その方向しかないのだと思います」

小塚郁也 防衛研究所政策研究部主任研究官の提言:『外交と経済の分離』
小塚氏
「私の提言は『外交と経済の分離』ということですね。日本の外交上の立場は、イラン核合意継続支持ということなのですけれど、経済の合理的な、企業の合理的な判断というのは政府の方針とはまた別に考えるべきだということですね。ですから、企業は各企業のご判断、合理的なガバナンスによってイランとの取引を削減するか、停止するか、その判断をしていくべきだと私は考えています」

田中浩一郎 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の提言:『トランプに惑わされず いまこそ独自外交』
田中教授
「まずトランプ外交に惑わされていてもしょうがないと思いますので、この2年間、トランプさんが、ツイートであれ、あるいは公の発言であれ、様々なビーンボールを投げてくる中で、それにいちいち反応して、あるいはそれを過剰に受け止めてきた側にも相当責任があると思います。日本はもともと中東外交、とりわけイラン外交、対イラン外交に関しては独自外交というものを誇ってきたという、かつての歴史が、あるいは経緯がありますので、現在こそそれを復活させてドンドン全面に出ていってほしいと思います。特に核合意を遵守するという点において、日本とヨーロッパは同じ土俵の上にありますが、日本はヨーロッパのような独自の対応策というものはとっていないです、現在のところ。なので、少なくともそれに見合うだけのものを日本も追求して然るべきではないかと思います」