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2018年9月18日(火)
検証『ふるさと納税』 高額返礼品競争の功罪

ゲスト

増田寛也
元総務大臣 前岩手県知事
鈴木直道
北海道夕張市長
小西砂千夫
関西学院大学人間福祉学部教授

検証『ふるさと納税』 制度の理念と目的
生野キャスター
「11日、野田総務大臣は『ふるさと納税は存続の危機にある』と発言し、見直しを検討する旨を明らかにしました。なぜ現在問題になっているのか。ふるさと納税発足時の元総務大臣、また、ふるさと納税が破綻財政の再生に一躍買っていると言う夕張市長、さらに、ふるさと納税をはじめ、地方の財政事情に詳しい大学教授を迎えて、話を聞いてまいります。まずは、ふるさと納税の仕組みを見ていきたいと思います。2008年、制度がスタートしました。自分の選んだ自治体に寄付、ふるさと納税を行った場合に証明書をもらい確定申告をすると、寄付額のうち2000円を超える部分について所得制と住民税から原則として全額が控除されます。わかりやすく言いますと、3万円を自分の選んだ自治体に寄付するとした場合、2000円差し引いた2万8000円が所得税と住民税の対象額から引かれるということです。この控除なのですが、年間に控除される限度額がありまして、年収や世帯構成でも若干違います。日本の平均年収に近い500万円の方で見ていきますと、500万円で独身、または共働きの場合、6万1000円となっていますが。同じ年収でも扶養家族控除などがある世帯は表のように少なくなっていくということです。増田さんが総務大臣だった当時にふるさと納税がスタートしましたが、この制度を立ち上げるに当たって国の狙いはどこにあったのでしょうか?」
増田氏
「当時は、ちょうど、私が大臣だった時は第1次安倍政権だったのですけれども、それが福田内閣に変わる時だったのですが、その少し前に小泉内閣がありまして。官から民へ、国から地方へ、とこういう掛け声で地方分権改革にだいぶいろいろ取り組まれた時。それから、権限はだいぶこう地方に移ったのですが、税財源についてはまだなかなか手がつけられなくて、次、税財源をどうするかということで三位一体改革とか、少し技術的な話になりますが、そんなことを取り組まれたのですが、その次の一手をどうしようということを考えられていた時期ですね。地方について、もっと地方の元気を出すためにはどうしようかという、そういう背景があった。その中で、こういうふるさと納税という仕組みができ上がったのですが。私の前任は菅、現在の官房長官ですけれど、総務大臣を、前任をやっておられて、ちょうどその時にこういう制度をつくろうという大臣からの問題提起がありまして、その時の菅、当時の大臣がおっしゃっていた言葉は、地方で高校まで一生懸命、若い人達を教育するのですが、大学、あるいは就職の時に都会に出ていって、そのまま都会で納税をしていると。それ以外の分野でも随分そういったことが行われていて、そういう人達が大人になって自分を育ててくれた生まれ育った地域にもっと元気になってもらいたいということで、御礼の気持ちを込めて寄付するということに何か応えるような、制度があるといいのではないかと。それが当時、知事で言うと、福井県の西川知事とか、そういう人達も随分そういったことを世の中に訴えられて。確かにふるさとを思う気持ちというのをもっともっと制度化して大事にしたらいいのではないかと、こういう背景が菅大臣の時にあったんですね。私はその流れを受けて、有識者会議を立ち上げたところで、私はバトンタッチしたのですが。その報告書を受けて、ちょうど2007年の暮れの党税調と税制改正、2008年に私も答弁しましたけれど、法律が成立し4月からスタートと、こんなのがその時の背景にありますね」
松山キャスター
「ここへ来て見直しを迫られている、これはなぜだと思われますか?」
増田氏
「最初数年は寄付額は本当に少なくて。私がスタートして、2、3年は、ポツポツと寄付したいという話を聞くぐらいでしたね。途中でその後、制度が変わって、控除額の上限が2倍になるとか、それから、手続きが、当時は、当初は確定申告を全部、しない人でも、これの控除を受けるためには、確定申告が必要だとか、手続き的にはなかなか大変だったのですが、そういう制度改正が途中で行われて。いや、でも、1番大きな原因というのはサイトなどで、どこの返礼品が随分と魅力ですよ、お得ですよというようなことが、すぐに容易にわかるような仕組みがだんだんできあがってきまして。そのあたりが一般の国民の皆さん方の非常に関心を呼んで、最近の制度改正等を含めて、爆発的に寄付額が増えたのではないかと思いますね」
松山キャスター
「地方のお金、予算、歳入という意味では、たとえば、その地方交付金というのもありますけれど、そちらの方ではなく、ふるさと納税という形で地方の予算を増やしていく。これは人によっては二重の地方へのお金の流れをつくるのではいかという意見もあるようですけれども、そのあたりについては?」
増田氏
「実はこれもいろいろ議論があるのですが。現在おっしゃったような地方交付税、交付金で、地方に配るお金を多くすべきではないかという議論が当時もあって。私の時に随分異論もありましたけれど、法人事業税について、国税で1度国税化して交付税原資にして、それで各自治体に配るという制度改正を行ったんですよ。ですから、そういう地方交付税交付金の方で地方に配るお金を増やすという手当てを一方ですると同時に、1人1人の国民のある種、気持ちというのですか、これはあくまでも寄付税制ですから、気持ちを前提にそれを自治体の方に寄付する仕組みをつくった。だから、両面、そのあたりは仕組みをつくったということですね」
松山キャスター
「小西さん、時代的背景というのか、要請というのか、そういうものがあって、こういう制度が立ち上がったということなのですか?」
小西教授
「1つは、ふるさと納税、増田元大臣、増田さんからご説明がありましたけれど、その報告書を見ると随分情緒的なことが書いてあるんです。それはふるさとを思う気持ちというのが基本で、ふるさとに対する恩をもっと表すべきではないか、みたいなことが書いてあって。それというのは、1つ小泉改革というのがあって、そのあとに出てきましたでしょう。小泉改革の中で少し何か厳しいことを言っていたと。ところが、もっとふるさとを大事にしようとか、地域を大事にしようとか。そこで、ポスト小泉の時に流れが変わるところがあって。現在、安倍内閣で地方創生と言っていますけれど、その最初の頃だったという感じはあって。ふるさと納税という、そのネーミングも含めて、もっと地方を大事にしましょうという、時代的背景としてはそういうことだと思いますね」

地方自治体のメリットは
松山キャスター
「鈴木さんは実際に自治体を運営されていて制度の恩恵とか、メリット・デメリット、いろいろと感じているところあると思いますけれど、この制度自体についての受け止めはどう思われていますか?」
鈴木市長
「今日、私は北海道の夕張から来たのですけれども。今月、北海道で胆振東部の地震がありまして、大変な土砂災害、また現在も避難所で1000名を超える方々がおるという状況の中で、このふるさと納税制度があることによってそういった災害における寄付、税控除がある中での寄付、こういうものが広く浸透したというふうに思っています。また、先ほど、小西先生もお話しされていましたが、地方への配慮というところが、時代背景にあったのではないかというお話がありました。2007年、制度ができる前年に夕張市は財政破綻したんですね。あの夕張の破綻というのは、それこそ全国ニュースになって、第2の夕張になるなということで各自治体が税制健全化に努力をしたという時代でもあったわけです。夕張市で言えば現在、昨年で3億6000万円集めています。年間の税収入というのが約8億円ですよ」
松山キャスター
「あぁ、では、かなりの部分を占めているということですね?」
鈴木市長
「8億円というのは別です。その他に3億6000万円の新たな歳入が確保できていると。ちょうど夕張が破綻をした翌年にできた制度でしたので、破綻をした時には想定されていなかった新しい歳入が入ってきている。そういう中で、被災地のお話をしましたけれども、そういう町の再生、夕張の場合は財政破綻ですが、そういう町を再生させる力にもなり得るというふうに認識をしています」

『返礼品問題』
竹内キャスター
「ふるさと納税の見直しについて、野田総務大臣が問題視しているのが返礼品です。返礼品とは、ふるさと納税で寄付をしてくれた利用者に対してふるさと納税先の自治体がお礼として贈る品物のことです。一般的な返礼品を夕張市の例で見てみますと夕張メロンやジンギスカン、メロン熊のぬいぐるみなどがあるということですが。総務省に指摘された返礼品の中には、海外有名メーカー掃除機、人間ドック、海外旅行などがあるということです。増田さん、今回こういった高額の返礼品が問題とされていますが、当初は寄付の考え方で始まったということで…」
増田氏
「そうですね」
竹内キャスター
「この返礼品を送ることは制度の中に入っていたのでしょうか?」
増田氏
「制度はご覧になるとまったく、寄付をしたら、2000円以上寄付をしたら税金が控除されますと、それしか書いていないですよ。だから、ふるさとの納税という名前から始めて、こういった返礼品がどうのこうのというのはまったく制度的には何もない、現在もそれもないと。私が、制度がスタートしてから暫く見ていた限りでは、市長さん名の、寄付していただきまして、ありがとうございます、というお礼の手紙などを、各自治体で出しているのが多かったように思うのですけれども。そのうち、だんだん寄付がいっぱい集まる、あるいは集めたという話がだんだん伝わると、いったいどういうことで寄付を集めたのだろう、どうも少しずつ地場産品を、お礼で差し上げているんだというような話が出てきて、まったく、カタログショッピングだとか、何かすると制度がどうも全然違うのではないかという話になるのですが。こういう返礼品も、たとえば、これからお話があるかもしれないけれども、夕張メロンとか、メロン熊とか、こうありますけれど、そういうものですと、広く見てみると都会の人、あるいは全国の人がこの地域でどんな産品があるのというのを、こういう制度なければほとんど皆さんご存知なかったとか、産地の方でも、もっと世の中の皆さん方から評価をしてもらうために何をしたらいいのかというあたりを工夫することも少なかったような気もするので。それなりに、そういう返礼品を皆さん方に評価してもらうというのはまったく意味がないわけではないと思うのですが。ただ問題はその総額が地方税の中で、個人住民税なのですけれども、総額の中で決まっているものを、結果とすると各自治体間で取り合うような格好になるわけですよね、これは。だから、全体のパイがうんと大きくなっていく中での取り合いだったらいいのですが、制度的には決められた地方税収の中で各自治体間がそれを取り合うような形にもつながるので。おそらく特に産地ではないものまで、あるいは換金性の高いものまで返礼品に加えるというのは当初考えていた制度の仕組みをはるかに超えているのではないですかと、そのあたりを現在、大臣が問題にしたのではないかなと」
松山キャスター
「小西さん、そういう試算そういう事態に陥ってしまった理由についてはどう見ていますか?」
小西教授
「そもそも話がおかしいのは、現在こうやって普通に返礼品と、我々は返礼品と言っていますし、先ほど、竹内さんが、お礼としてお送りするもの、返礼品とはお礼としてお送りするものだと、こう言われたのですけれども。寄付をしているわけですよね。寄付というのは無償制ですよね。寄付というのは無償だから、寄付に対して返礼品があるというのはその時点でもう寄付ではないですよ。たとえば、10万円寄付しましたと、3万円返戻品が来ましたと。それは返礼品です、というふうに言っちゃうと、そもそも7万円しか寄付していないですよねと。そうすると、寄付控除は7万円しか受けられないよねと。本来、こんな議論になるはずですね。だから、返礼品、返礼品と言っていますけれども、あれは返礼品であってはいけないです。無償で寄付していただいた方へご挨拶程度のものなのであって、3割だからいいとか、1割だからいいというのではなく、我々は普通に返礼品と言っていますけれど、返礼品は、返礼品というふうに言うのだったら、もうそもそもこの制度は逸脱です。そこのところがもうひっくり返っちゃって。ご質問はどうしてこうなったのかというのですけれども、結局、返礼品の話になっているから、そもそも返礼品の話になってしまったのでは、もうこの話は『存亡の危機』と大臣がおっしゃったのは、そこを言っていると思います」
松山キャスター
「増田さんにもう一度、この返礼品のサービス合戦みたいなことが一部で行われているということですけれども、制度発足の当初、こういう返礼品合戦みたいなことというのは予想されていたのですか?」
増田氏
「指摘を、有識者の人達の報告書の中にもその指摘があって…」
松山キャスター
「あっ、あったんですね」
増田氏
「うん、そういうことが起こるかもしらん。ただいずれにしてもそれは1人1人の国民のある種、寄付についての心の問題ですから。結局2000円以上ですけれども、寄付をする、特にふるさとに寄付をすることについてもっと税制上もその気持ちに対応しようという、そこを原点にしているので。そのあと、どういう行動を多くの自治体がとるかというのは、それは様々、自治体の判断があると思うんです。だから、そこはだんだんいろいろな事態が出てきた時にそれぞれきちんと住民がいろいろ状況を見て判断する、いずれ自制の気持ちが働いてくるのではないか。今回の、先ほど、ちょっと触れた北海道の地震もそうですけれども、この間の岡山の、あるいは愛媛の大水害も含め、様々な災害がある時、相当この被災地を支援しようという気持ちはそこに通底するというか、通ずる気持ちだと思うんですよね」
松山キャスター
「そういう意味では、全国からの支援を被災地に集中させることに一役買っている制度ということも言えると?」
増田氏
「これはまったく、まさに寄付というか、支援ということで、まったく見返りがないのですが。そういう、本来の制度というのはそういうものなのだろうと思います」
松山キャスター
「鈴木さん、実際に返礼品を、夕張市もメロンとか送られているということですけれども。一部の自治体はドンドンと返礼品を豪華にして、それで逆に客寄せと言ってはアレですけれど、たくさんの寄付金を集めるような呼び水にしているという動きがある中で、夕張市もちょっと返礼品を豪華にしてみようということは考えられなかったのですか?」
鈴木市長
「夕張は結構ふるさと納税で象徴的な街だと思っていて。財政破綻をしたことによって、夕張がんばれということで、返礼品も何もない中で、9000万円ぐらい一時期集まって。その後もニュースだとかも少なくなっていったのですが、平均して2000万円以上寄付が集まっていたんですね。ですから、ふるさと納税全体が低調期にも夕張は何のお返しもないのに毎年2000万円を超える寄付が集まっていた。ところが、いろいろな自治体が返礼品をやり始めまして、私も悩んだんですね、返礼品を導入するべきかどうか…」
松山キャスター
「あっ、導入するかどうかで悩んだ?」
鈴木市長
「悩みました、まず。夕張メロンを平成26年から返礼品にしたのですが。この時は、私はこういう声があるのだなと思いましたが、メロンを返礼品で送り返しましたら、毎年、これまでリピーター率というのは、夕張は高かったのですが、返礼品なんて送っている場合なのかと、もう返礼品なんて要らないのだから…」
小西教授
「あぁ、なるほど…」
鈴木市長
「…我々は寄付をするしと、これからも、というご意見。実は夕張の返礼品の辞退率というのは10%ぐらいあるんですよ。返礼品は要らないと、ただ一方で、先ほどの地域の特産品の話ですけれども、夕張メロンの農家を見たら、夕張が財政破綻したことによって、農業振興のそういった事業が打てない、お金がないですから。この夕張メロンというのをある種、固定買い取りをするわけです、返礼品をすることによって。そうすると、農家さんの経営安定に寄与する形になる。メロンがほしいという方にもご満足いただいて。一玉しか最初送っていませんでしたから、それで美味しかったらまた買ってくださいねということでやり始めたのですけれども。そういった意味では、地域のそういう産業を守るという側面もあると、地域産品に限定をするという意味において言えば、あるのかなと思いますね」
竹内キャスター
「野田総務大臣は『ふるさと納税は存続の危機にある』と発言しました。総務省は昨年4月に、返礼品の割合、寄付金に対する返礼品の調達価格の割合を上限3割にしました。今年4月に、返礼品は地場産品に限ると各自治体に通達をしてきましたが、一部の自治体で依然として見直しが行われていない現状を受けまして寄付金に対する返礼割合が上限の3割を超える自治体、返礼品が地場産品でない自治体、これらに当てはまる自治体に対しては、税の優遇対象から外す方針を検討すると発表しましたが。増田さん、大臣の『ふるさと納税は存続の危機にある』という発言をどのように受け止めますか?」
増田氏
「えっと、確かに全体で3650億円ぐらいですか、非常に広がってきたのですが、ここは見方が2つあると思っていまして。すごく額が大きい、これだけのものが自治体間で移っているのだという見方もあるのですが、地方税収全体は40兆円を現在超えるぐらいあるんですよね。その中で地場産品というか、地元の業者にも随分刺激というのか、良いものをつくっていこうという産業振興の面も考えると、それはそれで、こういうことでもないとなかなか注目されないというふうに、そういうふうにおっしゃる人もいるのですが。ただ、問題はあまりにも、いわゆる先ほど、小西先生もおっしゃっていたけれども、そもそもは見返りがないはずの寄付について見返りということが定着していってだんだん割合が増えていくと、3割というのは意味合いがよくわからないけれど、いろいろな…」
松山キャスター
「これはなぜ3割なのですか、上限割合?」
増田氏
「たぶん半分は手元に残そうということもあって、それで3割ぐらいそういったものをお返ししますよね。それから、いろいろな業者さんとか、いろいろなサイトの方に払う手数料だ、何だかんだ考えるとだいたい半分ぐらいを地元、自分達の財源として残すために上限が3割ぐらいかなという、たぶんそのぐらいの計算ではないかと思うのですが」
松山キャスター
「小西さん、このあたり、寄付金に対する返礼品の調達価格の上限を3割にしようとしているという国の動きですけれども、この3割の根拠についてはどういうふうに感じますか?」
小西教授
「1つはいま、増田さんがおっしゃったことです。3割だと、それに送料・手数料が乗ってくるので、全部で5割だと。そうすると手元に5割以下しか残らない、5割未満しか残らないと。それだと、いくらなんでも制度を逸脱しちゃっているねと。だから、3割まではいいという感覚ではないですよね。3割を超えるといくらなんでも説明できないよね、くらいが3割ですよ。もう1つは、当時ずっと総務省は節度ある運用をしてくださいと、節度ある運用…、節度ある。そうすると節度ある運用と言われるけれども、自治体の方はどこまでならいいのというふうに答えを求めてくるわけですね。そうすると総務省としては、1つは3割+2割で、だから、3割だというのがありますけれど、だいたいどれぐらいの返礼品の割合かというのは必ず調査します。調査をした時に3割ぐらいで線を引くと、ちょうどそこから上までのところは少数で、3割ぐらいだと、とりあえずは皆さんなんとか納得感があるよねと、その2つですね。その2つで、3割という線を引いたと」
松山キャスター
「ただ、昨年の4月に上限3割という通達が出ているにもかかわらず、いまだに自治体によってはそれを超える返礼品を出しているところもある。そのあたりは、小西さん、なぜそういうことになっていると考えますか?」
小西教授
「どうして3割以上を続けているのですか、みたいなことをインタビューを受けたりして、その答えている例を見ましたら、結局、法的拘束力がないと言うわけですよ。3割を超えたらダメだとか、ペナルティがあるだとか。何もないということは、単なるこうしてほしいというウィッシュ・リストみたいなものでしょうと。そんなものに従う必要はないよねと。つまり、罰せられないのだったら、やったっていいではないかと、ちょっとそういう感じですよね」

『返礼品問題』地場産品
竹内キャスター
「ふるさと納税で野田総務大臣が指摘する返礼品の問題ですが、会見で返礼品が地場産品でない自治体も指摘されていますが。小西さん、地場産品に限るとした、こうした理由をどのように見ていますか?」
小西教授
「返礼品をどうするかというふうに考えると返礼品は地場産品でなくてもいいのではないか、こういう話になるのですけれども」
松山キャスター
「あぁ、なるほど」
小西教授
「そもそもこれは返礼品ではないですと、寄付したら返してもらうものだったら地場産品でなくてもいいかもしれないけれども、寄付をしましたと、寄付をした団体・自治体に対して、その自治体を思う心を持ってください、記念品ですと出すわけですね。その記念品が、よそから買ってきたものだとか、外国から輸入したものだと、それはもう、そもそももう記念品ではないですよねと。だから、自治体の方も、自分のところは返礼品が良いのがないかなと、こういうふうになるのですけれども、いや、そもそも返礼品ではないのですけれども。ここがボタンの掛け違いではないですかね」
松山キャスター
「地場産品かどうかという議論では野田総務大臣はこういう発言をしているのですが、地場産品以外の返礼品について『都市に本社を持つ企業の収益につながる事態になっている』ということも言っていて。地方自治体が出している返礼品が実は東京とか、大阪とか、大都市に本社を構える、たとえば、メーカーとか、そういったところの利益に結果的につながっているだけで地方の利益になっていないのではないかという指摘もあるようですけれども。このあたり、小西さんはどういうふうに?」
小西教授
「その裏返しで、返礼品がないよねと、ないのだけれども、その地域で暮らし、生業があって、その人達から見たら、そんなに値打ちのないものでも、他の人から見たらとても値打ちがあるというようなものが本当はあって、どの地域もそれぞれあって、そういうものを掘り起こしていくというようなことが、ふるさと納税の中でできている場合があるわけですね。野田大臣がおっしゃっているのはふるさと納税で、返礼品になるような魅力的なものを、地場産品を育成していくような、企業のためのクラウドファンディングをやるというのはどうなのかというのが大臣の提案なわけです。だから、返礼品がないのだったら、ないというのを逆手にとって産業興し・企業興ししたらどうなのだということだと思いますね」
松山キャスター
「まさに、その趣旨に沿ったような発言も総務大臣していまして、地場産品が少ない自治体はどうしたらいいのかという、まさに現在の疑問ですけれども。野田大臣は新しい地場産品をつくる発想を持ってもらおうということで、かなり自治体の自主性に期待するような発言をしていますけれども。増田さん、このあたり、そうは言ってもなかなか地場産品が育成できないという自治体もあると思うのですが、こことのギャップをどうやって埋めるか、これをどう考えますか?」
増田氏
「たとえば、よくあちこちの自治体で牛肉が随分…」
松山キャスター
「ありますね、パックみたいな…」
増田氏
「御礼の、お応えするものとしてあるんですね。各自治体ともそういう畜産農家を持っているところは相当、お金を投じて、畜産振興というのをやっていますから。そうすると、それをお礼の品として考えると、随分そういったものがドンドン全国に行って、PRにもなりますので。それは畜産振興を、いわゆるふるさと納税という仕組みを使って、同時期に果たしていると、そういうことにもなりますし。要は、こういう制度というのは多くの関係者の納得感がないと、成り立たない制度だと思うので。そうすると、牛肉で、地元の畜産農家がいて、それの畜産振興にも資するということになると、ある程度そこに見えるつながりがあるのですが。まったくこういう地場産品がない、あるいは外国だとか、よそから輸入してくるものは、そういう多くの関係者の納得感が得られるようなその因果関係というのが見えないものですから。私はそこまでして目先のお金を集めるということ、ご本人達の尊い寄付という志を何か違うもので集めようとするのは、そこは自治体として逸脱している部分があるのではないか。見えるつながりというのが説明できませんので」
松山キャスター
「まさに逸脱しているのではないかと思われるようなケースが地場産品以外で返礼品が出されているケースだと思うのですけれども…」
増田氏
「はい」
松山キャスター
「…その例をちょっと見ていきたいと思うのですが」
竹内キャスター
「はい。今回公表されたのは1788団体中190ありました。指摘を受けた返礼品がこちらです。茨城県の鹿嶋市では、航空券に交換できるポイントということですが。この理由として、成田空港から近く鹿嶋市への観光を促すためという説明があります。神奈川県の寒川町は電化製品。岐阜県関市では海外製品輸入ということです、鍋・ナイフなどということなのですが。この両市は、市内の店舗や企業から返礼品を購入していて、雇用に貢献しているということですね。さらに大阪府の泉佐野市では、うなぎ、鹿児島県産、リンゴの青森県産などがあるということで。小西さん、地場産と地場産でないものの明確な線引きはあるのですか?」
小西教授
「それはなかなか難しいと思います。そこの例で地場産というふうにその団体も主張はしておられないと思いますけれども。そこは難しい。難しいですけれども、ふるさと納税の趣旨にかなう品物だということは、むしろ自治体の方が、このふるさと納税はこういう寄付税制ですよねと、寄付税制でふるさとを感じてもらう制度ですよねと、その目的にこの品物が最適ですよねというのを自治体の方が証明していかないといけないわけですよね。その品物で本当に証明できますかというふうに、むしろ問いかけられるのではないですか」
松山キャスター
「夕張市では、夕張メロンを返礼品として出されているということで、まさに地場産品の典型だと思うのですけれども。一方で、佐賀県の自治体が夕張メロンを返礼品として送っているというケースもある。これについてはどう受け止められます?」
鈴木市長
「これは私、本当にびっくりして。昨年、新聞を見て、夕張メロンを返礼品にしているという…」
松山キャスター
「それは事前に打診はなかったのですか?」
鈴木市長
「ないですよ」
松山キャスター
「ないのですか?」
鈴木市長
「調べていろいろいくと、これは地場産品でなければダメだなと私が確信したのは夕張メロンの写真を掲載して、何か訳あり、メロンみたいな感じでやっていて。かつ夕張メロンの数が決まっていますから、なかなか申し込みがいっぱいきた時に対応できるのかという問題について、たとえば、いや、これは北海道メロンです、写真は夕張メロンだけれども、北海道で採れた赤肉のメロンを、足らなくなったら送っちゃえばいいのだというようなことを言っていて。それはちょっと悪質だなということで…」
松山キャスター
「どういう対応をされたのですか?」
鈴木市長
「いや、まずはその役所に電話したんですよ。そうしたら、いや、そんなダメなんて規定はないのでというような感じで言われて。新聞にこういうことがあるのだから、ちゃんと取り上げてくださいよと話をして。私は他の地域の特産品が返礼品になるというのはおかしい。野田大臣がご就任されても、それはおかしいですよと。結局、ブランドを維持するためにいろいろなことをやっているわけです。たとえば、クレームが出たらもうすぐに産地として送り返すとか、そのことによって、いろいろなブランドを守っている。ただ、いやいや、メロンが夕張になかったら他のヤツを送っちゃえばいいのだ、みたいな、そういうことをやっているようであれば…。これは自治体ですから、自治体というのは、まさに市民や町民、村民のある意味でルールというのを真っ先に守って、皆さんに説明ができるようなやり方をするというところからちょっと逸脱しているのではないかと…」
松山キャスター
「そこが制度の趣旨に合っているかどうかというあたりの問題点だと?」
鈴木市長
「そうですね」

都市と地方の格差是正
竹内キャスター
「ふるさと納税の受入れ額が増えている一方で、世田谷区や杉並区からふるさと納税が区の税収減につながっていると問題視する声があがっています。区民税の推移を見てみますと、前年比で2017年の世田谷区がおよそ31億円減収、杉並区がおよそ14億円減収ということなのですが。小西さん、この数字をどのように受け止めますか?」
小西教授
「大きな数字だと思います。全体は、しかし、区民税はそれぐらいの、4桁、3桁あるのですけれども。でも、三十何億円の減収と言うと、とても大きいと。今、法人関係税を中心に東京都に税収が集まり過ぎるので、これを是正しましょうという話をしているんですよね。これを現在やっている時に、そこは制度としてキチッとやりましょうと言う時にこういう話がくるとどういうことなのだと。こっちでも、こっちでも攻撃されるのかということになりますよね。ふるさと納税のところは少しキチッと襟を正して、本当の意味での偏在是正を別でキチッと議論するというふうにしないと、納得感が得られないと思います」
松山キャスター
「ふるさと納税という仕組みがかなり国民に浸透してきて、まさにお得感もあって入ってきた人もかなりいるとは思うのですけれども、ある意味、中央から地方への一定のお金の流れということはできてきたという、プラスの面もあると思うのですが、あまり規制を厳しくしてしまうと今度はふるさと納税制度そのものがこの先、廃れるのではないかという危惧も出てくると思うのですが、小西さんはどう見ていますか?」
小西教授
「今日は、ほとんど話し合っているのは、フェアなのか、フェアでないのかという話ですよね。結果的に都市から農村に財源がいくとかいうのは、その結果の部分だけを見れば、そうかということになりますけれども、それがフェアではないというところが問題になっているので。そのフェア、フェアでなければ納得感は得られないと思いますね」
松山キャスター
「増田さん、このあたりはどう見ていますか?」
増田氏
「私は多くの自治体、特にかなりふるさと納税を集めている自治体こそ、一方で税収を奪われるような形になってきている、都側の事情、あるいは区の事情というのを、逆の立場に置き換えてよく考える必要があるのではないかなと思うんですね。確かに法人関係税などを見ると、1人あたりで相当、東京とそれ以外の自治体との偏在があって、6倍ぐらいの違いがあるので、これは、制度的にこれからいろいろ検討していくと思うのですけれど。こういうふるさと納税という仕組みがあるが故に全国の自治体でかなりいろいろ背伸びをして集めるような形にしていますが、所詮は、全体の税収をそのことによって増やすというよりは、現在あるものをお互いにある種、そういうことやって奪い合うような、そういう仕組みになるので。それを寄付税制というか、寄付という形で包み込んだような形になっているのでしょう。これは自治体の関係者というのか、特にトップが重々承知のうえの話なので。あまり短絡的に、というか、短期的に、当面、1、2年、バッとお金を集めればいいというふうな、そういう考え方というのは間違いで。地方自治の基本にあるのは常にお互いが共存共栄して、都市も地方も農村も含めて、共存共栄して、お互いに場合によっては災害があれば助け合うみたいなことで、地方自治とか、地方税…、地方の制度というのは成り立っていますから。その原点というのを常に忘れてはいけないのではないかなと思いますね」
松山キャスター
「鈴木さんはこの事態についてどう感じますか?」
鈴木市長
「私も、もともと夕張の市長になる前、東京都の職員で働いていましたけれど、大きな額だと思います。ただ、そういった形で税収が奪われるというところについても、現在これだけの返礼品合戦になっていて、制度が制度趣旨から逸脱するような利用実態がある中で、いろいろな声が出ている。たとえば、災害があった時にふるさと納税を使って応援をしたい、返礼品はないけれど、そこの部分に対して言わないですよ、たぶん。いや、それはおかしいではないかと。だから、ちゃんとこのふるさと納税制度というのを適切に運用すれば、そこは全部が全部、文句がなくなるかと言ったら、なくならないと思いますけれども、まずそこを正すというのが大事なのではないですか」
松山キャスター
「増田さん、先ほど、小西さんも話されましたけれど、フェアかどうかというのが1番重要だということなのですけれども」
増田氏
「はい、そうですね」
松山キャスター
「まさに見直しの中で問われているのはそこだと思うのですけれども、現在、一生懸命、自治体に対して何度も呼びかけている状況で、それでもまだ全ての自治体がそれに従っているわけではないと。このフェアということを徹底するために国としてできること、あるいは自治体ができること、どういうことがあると?」
増田氏
「特に自治体で是非やってほしいのはどこにどういう使い道でこれを使いましたということを徹底的に公開すると同時に、そういう形で寄付してくれた方は全員わかっているわけですから。自治体によってはそういうことを丁寧にやっているという話は聞いていますけれども、そうでない自治体も多いやに聞いているので、どういう形で使いましたか、いわゆる使途を、きちんと明らかにすること。それがいまのような話で、たとえば、災害があった時にふるさと納税で多く集めたと、これについてはおそらく東京の、持っていかれる区の方もそれほどそのことに目くじらを立てることはないと思うんです。使われ方というか、使い方というか、そのあたりの納得感を大勢の皆さん方から得るような努力、これは自治体でもっともっとやらないと、現在、足りない部分ではないかなと」
松山キャスター
「自治体の中の議会の中でもじっくりとそういうことも議論すべきと?」
増田氏
「議論すべきでしょうね、ええ」
鈴木市長
「あと大事なことがちょっとあるんですよね。税金が皆さんとられているわけですよ、所得税・住民税。その一部を自分が希望するところに入れるということなので。これまでは税金をとられている世界しか手段がなかったものを、自分の意思で、たとえば、震災のためにとか、自分の町のふるさとのためにと選べると。これは返礼品も確かに大事ですけれども、攻めの納税というか、税金をとられる世界から自分で選択できるのだって、そういう制度意義というのも大きいと思うんですよね」

増田寛也 元総務大臣の提言:『自治体間の共存共栄を忘れないこと』
増田氏
「『自治体間の共存共栄を忘れないこと』。これはあくまでも寄付税制ですから、個人の気持ちが前提にあるのですが自治体同士で見ても全体の税を、繰り返しになりますが、奪い合うような形になるので、一部の自治体だけが、俺が良ければということはダメなので。全体がこれによって、個人の寄付がきちんと行き渡るような、そういう仕組みを追求すべきだと思います」

鈴木直道 北海道夕張市長の提言:『“モノ”から“コト”へ』
鈴木市長
「モノからコトへということで、今日は、ほとんどが返礼品合戦の話だったのですが、寄付を何に使うのですかと。たとえば、夕張だったら高校存続を何とかしたいのだとか、そういう課題解決の競い合い、そこに対して皆さんに寄付をしていただく。この制度本来の趣旨に、このタイミングで戻すということが大事なのではないかなというふうに思います」

小西砂千夫 関西学院大学人間福祉学部教授の提言:『政策への共感』
小西教授
「『政策への共感』というふうにしましたけれど。これも、いわば同じで、今日は返礼品の話ばっかりでしたけれども、寄付税制だから本当は何かの政策に共感をして、こういう政策をしたいから、隣に夕張市長さんがいらっしゃいますけれど、夕張市の財政再建に協力してくださいと、政策への共感というのが基本、この基本が忘れられがちではないかと思います」