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2018年9月14日(金)
地銀消滅か!?その現状 生き残り策はあるのか

ゲスト

山本有二
元金融担当大臣 自由民主党衆議院議員
五味廣文
元金融庁長官
津田倫男
企業アドバイザー 元銀行員

『崩壊危機』生き残り策は?
生野キャスター
「高い収益力で地銀の優等生とも言われた静岡県のスルガ銀行が不動産融資の不正を行っていた問題。先週金曜日、スルガ銀行の第三者委員会は調査報告書を取りまとめ、組織ぐるみで書類の偽装など不正に手を染めていたとしました。不正な背景には地方銀行の置かれている厳しい現状もあるとみられます。地方銀行を取り巻く環境を検証するとともに、地銀再編の現状と行方について徹底議論します。こちらは全国地方銀行協会に加盟している銀行の業務純益の合計の推移をあらわしたグラフです。2016年度までは1兆円を超えていたのですけれど、昨年度は1兆円を割りまして9463億円となりました。山本さん、地銀が置かれている現状についてはどのように見ていますか?」
山本議員
「なかなか厳しいと思いますね。特に104行ある全体の日銀の中で、2017年に54行が、いわゆる顧客向けサービス業務、これで赤字です。その前も54行赤字、その前は40行赤字、だんだんと赤字の銀行が増えているというトレンドがあります。私から考えていきますと、まず利ざやが少ないですね。それから、融資の額というのは、どうも堅調に少しずつ増えているようなところがありますけれども、全体の収益が今現在ずっと特に貸し出しということだけで考えれば厳しいと。私なりにそれを分析的に考えますと、利ざやが10年間で落ちたのが0.6%。0.6%落ち、うち1%は信用コストが、景気が良いものですから、これはしょうがないとしまして、いわゆる構造問題、人口が減るという…地方ほど人口が減っているということにおいて、0.3%、半分以上、私はこの利ざやがとれない原因があるように思います」
松山キャスター
「地方銀行の業務純益の推移で2015年ぐらいから急激にグラフが落ちていますけれども、これは日銀のマイナス金利みたいなものが影響しているという見方は?」
山本議員
「それは間違いなく。利ざやがとれない原因の1つに短期のオーバーナイトというヤツをマイナスにしますと、やがて長期もずいぶん低くなってくるわけでして。長期金利がアメリカとか、EU(欧州連合)に比べるとあまりにも低いですね。ですから、たとえば、EUで聞いてみますと5%、たとえば、イタリアだと5%以上あるかもしれません、というような長期金利が、日本は0.1%。これでは、いくらがんばっても、利ざやというヤツは取れないもんになるのではないかなと、こう思っています」
松山キャスター
「五味さん、このグラフをどう見ますか?」
五味氏
「日本の現在の銀行のビジネスモデルというのは戦後の高度成長期につくられているわけですね。資金不足の時代でとにかくお客は借りにくるという前提で、金利もそれなりにもちろん、それなりに高いわけです。そういう中で、かつ国民、それを使っている企業の方はそういう成長期でドンドン資金需要が増えていく、それから、個人は、人口がドンドン増えていく、そういう中で、若い人達の、たとえば、子供を育てる、教育する、あるいは住宅を建てるとか、若い人の現役世代の資金需要というのが非常に盛んだった、その時代にビジネスモデルがつくられている」
松山キャスター
「マイホーム主義というのもありましたよね?」
五味氏
「ええ、ありましたよね。環境は変わったわけですね。人口は減っていく、それから、企業は当然こういうバブルの崩壊、デフレもありましたけれども、ああいった国家建設期のような資金需要というものももうないわけですね。あるいは活躍の場が海外に移っていっている。では、何が現在求められているのかと言うと、今度は高齢化、ひっくり返ったわけですね。若い人がドンドン稼ぐという時代から、その人達が高齢者になって、私がまさにそうですが、そうなってそういう人達に必要な金融商品とか、金利機能・金融機能というものが求められる時代になってきた。そうすると、必要なのは、若い人達に対して集まった預金を貸し出すというやり方ではなくて、若い世代のうちに稼いだそういう資産が老後の生活にちゃんと生きるような、そういう運用です、資産運用というのが非常に重要になってきている。これに、こういう変化ですよね、一種の世代間金融ですけれど。若い人は稼ぐ、稼いで貯金をする、その貯金はお年寄りの社会保障費にまわったり、あるいはそうやって稼いだお金は、年寄りが稼いだお金を資産運用にまわしてという金融…、期待される金融機能の変化に銀行がついていっていない。相変わらず、これはまさに業務純益なのですが、昔ながらの貸し付けで儲けようとしていれば儲けは減るに決まっているわけですよ、人口も減っているわけでし、そこをうまく環境適応ができなかった。新しい、求められる新しい金融機能というものに積極的に挑んで、ビジネスモデルを変えていって、持続的に収益が上がるようなものにしていくという、この対応ができなかったというのが基本にあると思いますね」
松山キャスター
「津田さんはどうですか、現在の地銀が置かれている現状については?」
津田氏
「山本大臣、それから、五味元長官の方から、どちらかと言うとマクロ的な視点で解説があって非常にわかりやすかったと思いますね。元銀行員の立場でちょっとミクロの立場で言いますと、たぶんここ10年くらいは、収益をつくるために各行とも無理をしてきたのではないかなという気がします。その無理はどういうことかと言うと、貸出し先がない、ちょっと危ないところに貸すとすぐに倒れちゃって、引き当てをまた積まなければいけないと、これは怖いと。それで不動産担保をとればいいのではないかとか。これは、私が入った1980年ぐらいから、日本の銀行が特に顕著だったのですけれど、不動産担保をとれば少々のことには目をつむって貸してもいいと、こういう傾向があったと思います。不動産担保なら安心だというところの延長線で現在のスルガの問題もあると思いますし、それで融資で稼げなくなった、利ざやがとれないというところで焦って、どうしようと、手数料収入ならいろいろ取れるねということで、融資関係でとんでもない手数料を取るというのは、これは論外として、どうしたかと言うと、多くの銀行が、これは銀行だけではなくて、信用金庫や信用組合も一部そうですけれども、たとえば、投資信託を証券会社のために売ってあげて、それを銀行の窓口で売ることによって手数料を稼ぐ、あるいは生命保険を今度は売って稼ぐという代理店ビジネスに非常に傾斜をしてしまった。その結果として、銀行の本来果たすべき融資とか、為替とか、あるいは預金といった業務がおざなりになって、それで目先の手数料をドンドン稼いで、それでよしとする。実はそれでもこの業務純益の数字がこういうふうに下がっております。それでもう立ち行かなくなるぐらいに実際は厳しくなっている。私は最近思うのですが、商業銀行というビジネスモデルそのものがもう破綻をしているのではないかなと。だから、銀行はもう現在すぐ新しいことを考えて、新しいビジネスモデルをつくらないと、そんなに20年も30年も続かないのではないかなという気がします」
山本議員
「五味元長官がおっしゃられた、戦後のモデル、預金を集めて、それを銀行が仲介して、企業に貸すというモデルがいったん閉じた時期が1993年、これはバーゼルワンができて、自己資本規制というのが入って、永遠に集めたお金を貸せるという、それが、なくなっちゃったと。事業会社に、どうも銀行はそこでやや貸し渋りの練習を始めたと。もう1つは、2003年ぐらいから国債の大量発行が始まるわけですね。どこが引き受けるかと言ったら、銀行が皆、引き受けるわけでしょう。その国債を引き受けると、別にリスクをとっていちいち融資しなくてもある程度利益があがると。そうすると、融資のノウハウが少しずつ削られていったと。現在、本当に融資しなきゃならん時期に、この1つの流れ、歴史的な流れの中で、融資の非常に目利きの素晴らしいノウハウが失われて、現在それを問われても、本来業務の銀行の貸し出しというのが鈍ってしまっているのではないかなと、こう思うのですけれども、五味先生?」
五味氏
「いや、おっしゃる通りですね。特に1985年のプラザ合意のあと、あの超低金利政策の中でバブルが生成されていったわけですが、その頃の銀行の行動というのは、もう営業一辺倒です。とにかく資産価値がドンドン上がっていきますから不動産担保をとってあったらもういくらでも貸せるという…」
松山キャスター
「融資案件、持ってこいという感じで営業マンがダーッと出ていった…」
五味氏
「だから、貸した、本来、銀行というのは返せなくなるかもしれない人かどうかを見極めて貸すかどうかを決める、これは融資審査の1番の基本なわけで、そんなことを、返せないかもしれない人に貸しちゃいけませんなんて銀行法には書いていないです。法律に書くまでもなく当たり前の話です。それをその時期に非常にないがしろにしてしまった。このお金を貸せば相手の資金、相手の企業が発展し資金返済能力はさらに高まる、だから、貸すと、回収の危険度はそれで非常に低くなるから、ということで貸していくはずだったのが、担保で、もし何かあっても担保で全部カバーできるからドンドン貸そうと。では、それで本当に返済能力が高まったのですかと言うと、そうはなっていないと。その過程でドンドン目利きの効く、企業価値とか、事業性というものを評価できる腕利きの銀行マンがいなくなっちゃった。ドンドンそういう1番有能な人が営業にまわしちゃったわけですね。あとを育てていない。それが出発点としてあって。そのあとにもちろん、おっしゃるように、バーゼル規制が入ってきて貸せる量自体が自己資本との関係できっちり絞られてくるというようなこともあるから、なおさらですね」

『スルガ銀行』不正の背景
生野キャスター
「スルガ銀行が行っていた不正の融資はどのように行われていたのか、不動産会社スマートデイズは2014年頃から30年の家賃保証を謳い、土地付き新築シェアハウスを販売しました。そこに自己資金がない個人投資家がシェアハウスの購入を希望、スマートデイズは、スルガ銀行を紹介し、個人投資家が融資の相談をします。ところが、スルガ銀行は融資限度額が売買価格の90%とされていて、たとえば、1億円の物件を購入する場合は9000万円までしか貸せないと決められています。そこでスルガ現行は売買価格の書類を偽装し、1億2000万円の物件を買ったと装えば融資限度額は1億800万円となりまして、1億円の物件が買えることになるわけです。さらに、スルガ銀行は書類を偽装してお金を貸す代わりに金利の高い無担保ローンや定期預金、保険の契約などもセットで販売していました。津田さん、今回、スルガ銀行が行ったこの不正をどのように見ていますか?」
津田氏
「一言で言えばめちゃくちゃだなと思います。銀行員としては考えられないようなことを、目利きということに関して言いますともう日本の銀行の中には人を見て貸せる人がいなくなったと思います。高度成長期にはそういう伝説的な銀行マンがたくさんいた、あるいは皆が大丈夫だなと思っている重要企業が当然倒れる、その予兆、しっかりと読みとっていた人がいたのですけれども。もう1970年に入り、1980年代に入ると、そういう人達がドンドン必要とされなくなって、不動産担保があれば大丈夫と。要するに、経営者はどうでもいいと、数字もどうでもいいと。悪いDNAというか、考え方が、今回のスルガ銀行の中になんとなく生きていて、まるで私は亡霊を見るような気がしました。個人融資でこういうことが過去に全然なかったかと言うと、実は多かれ少なかれはあったと思うんです、どこの銀行でも。担保価値を少々水増しするとか。それから、本当は7割だけれど。これは、要するに、優良物件だから8割貸せる、こういう類のヤツはいろいろありました。でも、これは9割で、なおかつそれをこういう形で偽装していると、実際100%以上とか、120%の担保価値に対して融資していることになりますね。それ自体が無理ですよね」
生野キャスター
「第三者委員会は債務関係・物件関係・売買関連などの資料偽装、また、行員の偽装への関与を認めました。また、問題が起きた原因としては、不適切な投資判断など審査体制の問題、過剰なノルマやパワハラによる圧力など営業の問題などがあったとしました。五味さんはスルガ銀行の不正融資問題についてはどう?」
五味氏
「異常ですよね。異常ですけれども、この第三者委員会の報告書の内容との関係で言いますと、過剰なノルマですか、そういう言い方ですか、これは、スルガ銀行だけではなくて、過去にも業態を限らず、保険会社においても、銀行においても、あるいは証券会社でも、いろんな形で、いや、そういうルール違反をやるかね?ということがあって。行政当局から結構目をつけられた例はありますかね」
松山キャスター
「昔からよく聞きますよね」
五味氏
「あります。最初に保険契約を結ぶ時の告知義務に違反があった、本当は病気があったのに、なかったと言ったではないか、みたいな。それを全部ほじくり出して、軒並み支払い拒否をしていったとか。あるいは、また政府系の仕事を請け負っていた金融機関では、ついこないだですけれども、ございました。本来の要件にはまらないような優遇融資…、それも見てみるとノルマというのがどうも基本にあったらしい。これはここに限った話ではないです。ただ非常に残念だと思うのは、銀行というのは融資機能、融資審査するというのは1番の出発点でその能力があるということを当局から認められて、免許ももらい、やっているわけなのですが、その1番基本のところの融資審査のところで虚偽・嘘をつくっていうことをしてしまっているという、これは残念だと思いますね」
松山キャスター
「そもそも主な銀行の収益の仕組みとしてはこのようなものがあります。まず1つは、融資による利子、投資信託など金融商品の販売による手数料、もう1つは、資産運用による利益、3つの大きな柱が代表的なものとして挙げられます。本来業務である融資で主な取引先が企業など法人という地方銀行が多い中で、今回、スルガ銀行が大きく売上げを伸ばしてきた背景には、個人への融資ということに特化するというビジネススタイルが非常にうけて、それが好業績につながってきたという事情がありましたけれども。そうした中で、今回のような不正行為が発覚するという事態に陥ったということで、津田さんはスルガ銀行がこれまで行ってきた個人への融資に特化するという、このスタイル自体についてはどう考えますか?」
津田氏
「これは、結構いいと思います。そういうふうに舵を切られたのは英断だったと思います。それは過去の話ではありますけれども。つまり、横浜銀行とか、静岡銀行とか、こういうところに挟まれて非常に苦しい立場にあって、だったら法人は捨てる、いくらかは取引がありますけれども、個人に特化すると。個人の方が実は利ざやが厚いんですね。考えてみれば、個人のカードローンなんて言うと、皆さん10%ぐらい払っていらっしゃるではないですか。ところが、法人で10%の金利で借りているところは今時ないです。そうすると、それで考えても手間がかかるし、小口だけれども、個人の方が、利ざやが厚いと。だから、個人に注力するというのは1つのいい戦略だと思うんです。問題はそのやり方がかなり極端であったということかなと思います」
松山キャスター
「一般に考えると、なんとなく企業相手の方が大口の資金需要があったりして、そこで融資を行った方が銀行の収益はあがるのではないかという一般的な考え方があると思うのですけれども、最近はそうとも言えなくなっている事情があるということですか?」
津田氏
「昔はとにかく量を追っていたんですね。預金量、それから、融資量とか。収益はそれほど重要ではなかった。これは1980年代もそうだったと思うのですが。終わり頃になって、1988年ぐらいから、収益も、銀行も大事ではないかと、一般企業が収益、収益と言っている時代に、銀行だけ、いや、預金量がどうだ、融資量がどうだと言っている時代ではない、利益、業務純益に注目しようというような動きが1980年代後半から出てきて。その結果として、現在はそこまで言ってないですけれども、では、効率の良い融資はどういうことですか。つまり、これだけ貸した、融資量に対して収益がこれだけあがっているという、つまり、利率で求めるというヤツですね。ROE(自己資本利益率)とかROA(総資産利益率)とか、こういうヤツです。それで言うと、個人が、どうも法人よりか良いと、手間はかかるけれど。法人はほとんど利ざやが取れない、昔から1%も取れなかったんですね、それは1990年代もそうですけれども。ところが、個人の場合、現在のように10%というふうに取れる。現在はゼロ金利ですから、要するに、マイナス金利ですから、預金の金利はゼロです。それでカードローンで、10.5%で貸したら、この分が丸々粗利になるわけですね。これはいい商売だと思ったのは悪い着眼点ではないと思います」
五味氏
「目のつけ所は悪くないですよ。問題はそれが行き過ぎちゃって…」
松山キャスター
「コンプライアンスがキチッとできているのか、リスク管理がキチッとできているか…」
五味氏
「ええ。だから、担保にとる不動産の価格の割増しなんて嘘をつかなくたって、本当にお金を貸したらば十分返ってくると、だから、担保の価値をそんなに、担保価値の何割以内というふうにあまりきつく言わなくて大丈夫です、まさに目利きで、これは返済能力が十分あるから、だから、担保は十分ではなくても、貸そうではないかという決断があって別に構わないし、必要なケースもあるんですよ、それが。担保がないから貸さないみたいなことをいまだに言っている銀行では。むしろこういう人達もいたんだよね、ただ残念なことに嘘をついちゃった。融資基準を変えれば別によかったわけですよ」
山本議員
「私は、不動産にこだわる、不動産担保にこだわることのマイナス面というのがどこにあるかという時に、昔、ドルと金の交換レートをブレトンウッズで35ドル…、34ドルか、決めた時に、金の量とドル紙幣の量が、いわばリンクしなければいけないということと同じで、新しいものへのチャレンジだとか、世界の流動性を上げるだとかいう時に、限界を自分でつくるようなもので、自分でその手足を縛っちゃった。だから、担保がないと融資できない。松山さんの意欲に銀行が貸したいという時に、それができなくなるわけでしょう。普通聞くと、欧米の先進国の貸付というのはむしろ不動産よりも意欲に貸すというわけでしょう」
松山キャスター
「そうですね。アイデアとか、将来性…」
山本議員
「うん。だから、それからすると、不動産担保に貸付をあまりにもこだわっていくことによって、日本の新しい産業や新しいビジネスをどうも抑制しているような感じがして。ここを打ち破るという貸付をどっかでやってもらいたい」

地銀再編の現状と行方
生野キャスター
「全国にあります地方銀行104行を地方別に並べました。黄色は1つの県に2つの地方銀行があることを示し、青は3つの地方銀行、緑は4つの地方銀行、赤は5つの地方銀行があることを示しています。金融機関はこの他にも、メガバンクはもちろんのこと、信用金庫や信用組合、ゆうちょ銀行や農協のJAバンクなどがあります。五味さん、人口減少が進んでいる日本で現在の地方銀行の数についてはどう見ていますか?」
五味氏
「数そのものというよりも銀行経営というのは情報産業でもあるけれども、装置産業でもある、固定費が猛烈にかかる業態ですので。そうすると、需要がうんとある時は、固定費を賄うような収入が十分期待できるということであれば、それは1県に何行あろうと、それだけの量の需要があるのだから、競争したらいいということでしょうね。だけど、そうではない環境になった時は、この状況はなかなか大変だと。小さな銀行が分立して、それぞれが膨大な固定費を抱えて、一方、収入源である地方の人口はドンドン減っていき、企業の収益も下がっていっている。そうすると、収入で固定費を賄えるのかというところまできちゃっているところが、きっといっぱいあるわけですね。そういうことから見ると、一概に何行もあった方がいいとか、1県に1行だとか、そういうことではなく、全体として地域金融の金融機能というものを、ちゃんと利益をあげながら、正常に果たしていけるという観点から見ると、こういう状況はかなり非効率と考えた方がいいのだろうなという…」
松山キャスター
「たとえば、アメリカの例と比べるとアメリカはあれだけ、50州あって、地域差とかもいろいろあると思うのですけれど、それでも大手メガバンクグループの傘下にドンドン小さい銀行が入っていって、かなり整理されていますよね、グループごとに。それに比べると、日本は都市銀もあって、地方銀行、第二地銀もあって、信用組合や信用金庫もあると。日本という国の規模から考えると、かなりまだ細か過ぎるというか、数が多いのではないかなという印象があるのですけれども、そのあたりはどうですか?」
五味氏
「印象としては多いですね。多いけれども、減らせば解決するという話でもない。小さいままで面白いビジネスモデルでずっとやっていくという銀行も当然あっていいし、特定の金融機能に注目をして…、だから、スルガ銀行だって面白いビジネスモデルだったんですよ、ちゃんとやっていれば、ですね」
松山キャスター
「まさに業績は上がっていたということですからね」
五味氏
「ええ。そういう観点から言うと、単に多い少ないとは言わないですけれども、現在の人口減少とか、そういう環境変化との関係で言うと、環境変化に応じた、何らかの知恵は出してもらわないと、それは具体的には再編ということになるのでしょうけれど」

消費者サービスと競争の是非
生野キャスター
「青で塗られているのが同じ県の中に地銀が2行あっても競争が可能な地域。白が地銀2行での競争は不可能でも1行単独なら存続が可能な地域。赤が地銀1行単独でも不採算の地域となっています。この図は地銀1行でも不採算となる試算がされた県が23にものぼりました。津田さん、多くの地域で複数の地銀を抱えていますけれども、この現状はどのように見ていますか?」
津田氏
「効率化とか、重要なキーワードとして規模の利益というのがあると思います。つまり、規模が大きい方が事業体として長生きできるという規模の利益、また英語で言うとクリティカルマスとか、クリティカルマスと言うと最小限の生き残りのための必要規模と、こういうことで使われますけれど、それで言うと、確かに4県で1行ぐらいでもいいぐらいの感じになるかもしれないですね。私は10兆円かなと、預金量で大雑把に言うと。これがすぐに20兆円になっていくと思います。それでいくと、仮に20兆でまとめていくとしますと、そうすると、あっという間に日本の地銀界は20ぐらいのグループになるのではないかと。それは1つのあり方ではないか。それがベストなソリューションかどうかはわかりませんけれども、現在の必要最小限の規模と、効率化のために利益を出すために、ということで言うと、そういうのもありかなとは思います」
松山キャスター
「五味さん、この金融庁が出した資料によると、1行でも不採算となって成立していないという県がかなり、23にものぼるということですけれど。こうやって見ると、現在の地方銀行の設置状況から見てもこれから…。地方銀行の方はこの図はもちろん、ご存知だと思いますけれど、かなり衝撃的な資料だと思うのですけれど、そのあたりどう見ていますか?」
五味氏
「衝撃を受けてほしいですよね、危機感が足らないと見ていますが。これは大変よくできた調査であるというふうに思いますね。たぶんこの調査のきっかけは、公正取引委員会に対して説得材料ということで、要するに、競争すると、金融機能を提供できなくなってしまうと、だから、シェアが上がろうが、どうしようか、統合による経営合理化というのをはかるのだということなので。そこは競争政策とのバランスというのはある程度、競争政策も、そのへんのバランスというのは考えてもらわないといけないのではないかというような示唆なのだと思います。これは深刻な事態なので。むしろ、だから、経営者の皆さんは単に合併、合併ということだけではなく、生き残りのために、かつ地域に正しい金融機能を提供し続けるために発想を変えもらわないといけないのだけれど、それを早くしてほしいなという。なかなかそこまで考えている経営者の方は、地域金融機関には多くない、いらっしゃるけれど、多くはないですよね。簿外の不良資産みたいなもので、そういう経営者の人は早く正常化していただくか、後退していただくか、しないといかんです」
松山キャスター
「山本さん、この図を見て、まさに山本さんの地元の高知県も1行でも不採算になってしまうエリアに入っていますけれども、どういう感想を持たれますか?」
山本議員
「必ずしも構造的な問題だけが事業会社の継続にかかわるわけではなく、人口が減少しても、クラウドファンディングだとか、フィンテックだとか、そういったものを駆使することによって、全国を相手にしたり、あるいは世界を相手にしたりということは可能になってくるような時代はきています。その意味において事業が採算性を維持できるだけの業務純益、特に私は貸し出しとか、手数料収入というのは難しいかもしれませんが、上手な運用というようなこともあり得るのではないかと。高知県にある1つの銀行は運用が上手で、ずっとそれで事業の黒字をずっと継続している銀行もありますから。必ずしもこの地図だけの話ではない。だから、この地図だけを見て人口が減少すると全て…。銀行がない以上、事業会社の成長もないし、新しいベンチャービジネスもつくれないよと、ここはダメだよと、いうような意味ではないのではないかという気がしていますね」
生野キャスター
「さて、生き残りをかけてこれから様々な判断を迫られる地方銀行ですけれども、山本さんは地銀再編を今後どのように進めていくべきだと考えますか?」
山本議員
「すぐには実現できないでしょうけれど、ホールディングではなくて、全部が一体になった方がいいのではないか。最初は派閥争いだとか、お里の人でないと許さないみたいないがみ合いがあるかもしれませんが、行員を自由に配置転換できるということがすごく大事なのではないかと。それから、取締役だとか、頭取だとか、皆さんを全部残すのでいいのかと。ガバナンスという意味では、私は、頭取は1人でいいのではないかなという気はしています」
松山キャスター
「まさに再編とか、合併とかになってくると、それぞれの銀行の頭取、専務とかがいるわけですけれども…、それがその数をそのまま残していったら、すごい数になっていくわけですよね?」
山本議員
「そうなんですよ」
松山キャスター
「そのへんの整理統合、整理縮小みたいなものが求められてくる?」
山本議員
「ええ。人材育成だとか、適正配置だとか、先ほど言ったように、採算部門を残すかどうかだとかの経営判断というのは、1人がやった方がトータルで見やすいなという気はしますから、そういうところに留意していただきたいということが1つ。もう1つは、私はがんばっている、貸付がうまくいっている銀行のモデルなのですけれども、金融庁がよく言う、プッシュ型営業、これをできる。つまり、顧客密着型、リレーションシップ・バンキングでコテコテに仲良くなると、融資先と。もうそういうことにおいて、資産査定がたちどころにできていると。お付き合いに行く、自転車でおうかがいする、御用聞きに行くという時にはあといくら正常先債権だったら貸し付けることができるよと。それから、事業性評価についても、あっ、この事業はもっとうちが貸した方がいいなというのが瞬時に行員が全部わかっているというようなお付き合いをするような会社こそ、私は生き残ることができるし、価値があるような気がしますので。そういうように、いわゆる貸し出し事業モデルの深まり方、深化というそういうことがあり得るような再編の仕方というものができれば、むしろ地銀というのは、すごくサバイバルの大事なツールになってくるし、皆が必要するというようなことで、銀行自体の価値が上がっていくのではないかなという気がしますね」
松山キャスター
「五味さん、山本さんの話を聞いていると、ちょっと話が元に戻りますけれども、地方銀行の中でも目利きが利く行員の育成みたいなものというのがかなり重要になってくるということなのですか?」
五味氏
「はい。融資業務だけでなくて、投資系の仕事というのもこれから増やさないといけないわけですね。特に経済構造が変化してきている、地域経済だと本当になくなってしまうかもしれないぐらいの激変に見舞われている中で、構造的に金融が果たさなければいけない機能というのも変化してきているわけですよね。従来のように黙っていてもお金を借りに来る、借りに来た人に貸していれば商売になるということはもうないわけですね。構造転換していますから、そういうお金を貸すという、融資という行動だけではなくて、もっとエクイティ、エクイティ性のもの、投資性の資金というものに大事な役割が増えてきているわけです。特に地方ではそれはそうですね。こういう投資性の資金みたいなものをちゃんと扱える、そういう人材を、別にイチから新卒を鍛えなくてもいいです、外から輸入すればいいのですが。あまり高いお給料は払えないでしょうけれども、でも、有力な都市銀行や何かが、そういったエクイティ性の資金の扱いというものに、あるいはリスク管理というものに慣れたような方が、銀行を退職なさったら、そういう方を連れてくるというやり方で人材を、人材のポートフォリオみたいなものを見直していくということなのではないでしょうか。高度成長期に必要とされた銀行の人材ポートフォリオと違うものが求められていますので、それを現在の人材と重ね合わせて見て、そこに空白がある。あるいはダブリがあるという時に、どうやって空白を埋めるか、外から持ってくるか、中から育てるのか。ダブっているところに無駄があるわけですから、どう合理化するのかとか、そこらへんを考えていく。もうちょっと総合的に経営を見直すっていうことが必要になる。だから、そうすると、経営哲学とか、あるいは経営環境というものをきっちり身につけている方が、山本大臣がおっしゃるように1人いて、その1人が総指揮をとるというやり方が大事ですね」

津田倫男 元銀行員の提言:『義を見てせざるは勇なきなり』
津田氏
「ちょっと大上段に構えた表現ですけれども、『義を見てせざるは勇なきなり』と。つまり、何を言いたいかと言うと、上が不正をしている時は下の人は勇気を持って告発をしなさいと。ある意味、下克上の奨めです。なぜかと言うと、見ていますと、40代以上の銀行員はあまりロールモデルにならないです。だから、30代、20代の人がドンドン銀行を変革していくべきだと思います。そのためには邪魔ですから、おかしいと思う人にはドンドン出ていってもらうと。それがいいと思います」
松山キャスター
「若き半沢直樹みたいな人に出てこいと…」
津田氏
「そうですね。半沢はなかなか出てこないと思いますけれど、人材の入れ替えが金融界、銀行界には絶対必要だと思う、信金、信組もそうですけれど。その手始めとして、黙っていない。現行員の人の特徴は同調圧力に弱いということがあるのですけれど、勇気を持って、日本を良くするのだという気持ちで発言、つまり、告発してほしいと思います」

五味廣文 元金融庁長官の提言:『橋をたたいて渡るのでなく橋を作って渡る』
五味氏
「橋を叩いて渡るのでなく、橋をつくって渡る。石橋を叩いて渡る、銀行は、叩いても渡らない銀行もあるのですが、いずれにしてもそれまで使っていた橋がちゃんと安全かどうかを確認するという同じ発想ですね。だけれども、石橋の上を鉄道が通るわけにいかない、できないです。要するに、社会環境や金融環境が変わって、やらなければいけない、とるべきリスク、あるいは収益源であるリスクというものが変化してしまったのであれば、変化したリスクを、勇気を持ってとる。だけど、これまでの道具でとりきれない。だったら、新しく橋をつくったらいいでしょうと。鉄道を通したかったら鉄橋をつくればいいですよと、こういう話で。そういうふうにリスクをとって収益につなげていくということが大事であって、環境変化に適応してくださいということです」

山本有二 元金融担当大臣の提言:『鳥の目、虫の目、目利きの目』
山本議員
「『鳥の目、虫の目、目利きの目』。銀行再編は鳥瞰図的には要るのでしょう。しかし、虫の目で顧客のお客様の息遣いを感じながら、表情を見ながら、しっかりとした判断をしていく、目利きでなければ、銀行は人材として適切ではないわけですから。そういうジャッジがきちんと皆でできる、そういう銀行に期待をかけていきたいというように思っています」