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2018年9月11日(火)
櫻井よしこ×中国動向 新戦略シャープパワー

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト 国家基本問題研究所理事長

櫻井よしこ氏に聞く 中国『対アフリカ戦略』
竹内キャスター
「先週、北京で開催された『中国アフリカ協力フォーラム』で、習近平国家主席はアフリカに総額600億ドル、およそ6兆6000億円もの経済支援を表明しました。アジア・ヨーロッパ・アフリカを結ぶ『一帯一路』構想のもと途上国への支援に積極的な中国ですが、アメリカとの貿易戦争の最中、この動きはどういった狙いと戦略があるのか、今日はじっくりと聞いていきます。今月の3日から4日、北京で開催されましたアフリカ地域53か国の首脳らを北京に招き開催したもので、このフォーラムには国連のグテーレス事務総長も出席し話題となりました。フォーラムの中で習近平国家主席は、アフリカへの支援として今後3年間に無償援助150億ドルを含む600億ドル、日本円でおよそ6兆6000億円もの拠出を表明したということなんですよね」
櫻井氏
「アフリカは、中国が展開している世界戦略の一部、大事な一部なのですけれど、中国が狙っていることそのものをまず全体像として押さえておくことが大事だろうと思うんです。現在、私達が目の前にしているこの大きな変化は中国が新しいルールをつくろうとしているところから始まっているわけですね。第2次世界大戦の戦勝国の、いわゆる西側先進諸国がつくったルールでは、我々は嫌なんだと。昨年の10月の19回党大会でしたか、そこで中国は自分達の長期戦略をはっきり打ち出したわけですね。それは建国100年にあたる2049年までには中国が世界の民族の上にそびえ立つ民族になるんだと。中華民族の偉大なる復興であるということを言いましたけれど、これは中国の価値観に基づく世界の秩序というものをつくっていくんだという決意ですね。それはおのずとアメリカやヨーロッパがつくったものとは違うんだということで、現在、中国がそのための勢力を広げるための動きをしていて、それは中国が共産党の教えに従って秩序をつくるということの目的を達成するためですね。現在おっしゃったアフリカ会議、中国アフリカ会議で6兆6000億円の金をこれから投じるというのは、その大戦略の中の1つだというふうに見たらいいと思うんですね」
松山キャスター
「ここ数年、中国がアフリカという地域に特に力を入れ、そういう援助を行っていると。このアフリカの意味合いというのか、たとえば、資源があるからとか、そういうこともあるのですか?」
櫻井氏
「アフリカはもう資源の宝庫ですよね。それから、これから人口が増え…、現在、だいたい13億人ぐらいですか、全部で、これから人口が増えていって次の世紀はアフリカの世紀だと言われていますよね。人材も育つでしょうし、もちろん、それには教育が必要ですよね。すさまじい量の資源があるわけですから、これを中国は何としてでも自分の国の発展のためにいただきたい、手にしたい。そのためには、先ほども言いました6兆6000億円と言うと、私達にとってはすごく大きいお金ですけれども、アフリカ大陸のあの資源と、その国の数の多さと、そこから生まれてくる政治力ですよね、国連などにおける政治力とか、そういったものを考えると、本当に中国はその初期投資でこれだけ出ししている…、これまでにも出していますけれど、非常にうまくやっていると言いますか。たとえば、それぞれの国がものすごく貧しいでしょう。ジブチに軍事基地を、初めて海外の軍事基地を中国は置きましたね。あそこにすごく大きなアフリカで最大規模の物流センターみたいなものをつくったんですよね。その物流センターはもちろん、軍事的にも使われるのですけれども、その物流センターをつくるお金が二億数千万円ですよ。ところが、その国のGDP(国内総生産)そのものが2億円ちょっとなんですよね。だから、彼らにとってはすごく大きいお金なのだけれども、私達から見るとそれほどでもない。私達のスタンダードから見ると、中国のスタンダードから見ると、小さなお金で一国を支配するだけの効果を生み出すプロジェクトをやり遂げることができる」

中国『対外援助』の狙い
松山キャスター
「アフリカ協力フォーラム、アフリカの54か国中53か国が参加したということで、参加しなかった国が逆に1か国しかなかったということなのですけれども。その1か国というのがこのエスワティニという国だということですけれど、エスワティニという国は唯一、中国とではなくて台湾との外交関係を持っているということで、中国との外交関係を持っていないということで。このエスワティニという国、1か国が今後、台湾との関係をどうするのかということについて、中国側は『遠くない将来、国交樹立が実現できると信じている』と言って、最後はこのエスワティニにという国についても中国側についてくるだろうという強気の姿勢を見せています。一方で、エスワティニの外務大臣が『台湾とは良好な関係があって陣営を変えるつもりはない』ということで、あくまで台湾との関係をキープしていくんだということを言っているということですけれども。台湾との関係をめぐって中国はかなり攻勢というか、強めているという部分があるわけですか?」
櫻井氏
「うん。このところ、蔡英文さんになってから、3か国か4か国がもう台湾と断交して中国と国交を結んだ国々がありますよね。ドンドン台湾と国交を持っている国々が減っていくわけですね、減らされていっているわけですね。これは、台湾はすごく孤立感を味わっているわけですが。ここに現在ちょっと出ましたけれども、プリンシペ、パナマ、ドミニカ、アフリカのブルキナファソ、エルサルバドルとか。アメリカが、台湾に対してテコ入れをしているという状況がありますね。たとえば、台湾旅行法をつくってアメリカ政府も台湾に行くことができるということで、このところ外交面における台湾とアメリカの交流はかなり活発になってきていますけれども。それを見越して中国はドンドン、それならば実質的に台湾を孤立させてやろうということで、こういうふうにドンドン、台湾の行き場所を奪っているわけですよね。こちら側は、日本も含めて、これらに対抗することができていない。たとえば、もっと経済援助をこういった国々にするとか、台湾にするということも十分にはやられていない。たとえ、したとしても、中国はそれに倍する、もしくは10倍するような援助をするでしょうから、これは非常に難しい問題だと思うんですね。だから、現在台湾に対してアメリカはどこまで本気なのだという声が出始めているくらい、台湾は孤立しかかっているということですよね。だから、中国はこういうふうにやれば、台湾を締め上げることができるのだと。それに対して日本が何をできるのか、アメリカが何をできるのかというところは見ているかもしれませんね」

中国の対外援助&攻略法
竹内キャスター
「こちらに中国が世界のどの国に開発援助を行っているかを示した地図がありますが。中国はこれまで国際的な開発援助の国別の内訳を公表していません。アメリカのウィリアム・アンド・メアリー大学のプロジェクト『エイドデータ』が2000年から2014年までの各種データから分析したものによりますと、この赤く塗られている国に中国が援助しているということなのですが。櫻井さん、多くの場所で行われていてインパクトがありますよね?」
櫻井氏
「数字を見るとすごく面白いですね。アジアの方のカンボジアとか、カメルーンとか、コートジボワール、キューバ、エチオピア、ジンバブエなどにこれまでにだいたい2兆7000億円くらいが出ているんですよね。それから、あとアンゴラ、ラオス、パキスタンとか、ロシア、トルクメニスタンとか、ベネズエラ、こういったところにだいたい10兆8000億円、11兆円くらい出ているんです。これは2000年からの2014年ぐらいの間ですけれど、それだけを足しても、だいたい20兆円近くになるわけでしょう。それから、そのほかに、パキスタンに対し『中パ経済回廊』というのがありますね、それに対して620億ドルですから、これがだいたい6兆8000億円くらいとか。先ほどお話の出たアフリカに6兆6000億円とか。これを全部足すとだいたい27兆円くらいになるんです。これはすごいお金ですよね。このくらい出しているのが中国の援助ですけれども、これだけのお金をばらまけば、相当なインパクトがあるということなんですよね」
松山キャスター
「そうですよね。中国の支援国と、日本の、たとえば、ODA(政府開発援助)の対象国との比較というのをちょっとやってみたのですけれど、こちらが中国です、ODAの対象国、キューバとか、コートジボワール、エチオピア、ジンバブエ、カメルーンなどがありますけれども。日本のODAはどちらかと言うとアジア地域が中心で、しかも、いわゆる日本が行っている、たとえば、自由で開かれたインド太平洋戦略というのがありますけれど、それに沿うような地域の国に対する援助が中心になっているということなのですけれど、この2つを比較してみて、中国が支援をしている国の中には、かなり、たとえば、独裁的な体制の国とか、そういうところも含めて、戦略的にそういうところに支援しているのかなという印象を受けるのですけれど。櫻井さんはこの比較をどう見ますか?」
櫻井氏
「日本のODAと中国のODAはまったく性格が違いますね。中国の政府開発援助、ODAというのは、政治そのものですよね。政治の目的があって、そこにばらまく。日本ももちろん、政治も大事ですよ、日本の味方になってくれるようなところに日本の援助を与えるのは当たり前の話ですけれど。日本はどちらかと言うと透明度の高い援助しましょうと、その国のためになる援助をしましょうということが基本ですね。だから、非常に独裁的な、虐殺を行っているような、もしくはすごく腐敗しているようなところに対しては、いろいろ注文をつけますよね。注文をつけると向こうも受け取りにくくなってなかなか話が進まなくて、お互いに話が停滞してしまう。その結果として日本のODAはそういったところにはなかなかいかない。インドネシアで高速鉄道をつくりましょうというのがあって、ジャカルタからバンドンでしたか…、どこかにつくろうという計画があって、日本はすごく一生懸命に地質調査をしたり、コスト・エフェクティブの計算をしたりして、計画を立てて…」
松山キャスター
「高速鉄道のコンペみたいなのをやっていましたよね?」
櫻井氏
「やりました、うん、そう。日本は本当に一生懸命調査をして、ほとんど日本で決まりと言うところまでいった時にどんでん返しがあって、中国が取っちゃったんですよね。中国が取って、中国がつけた条件は、インドネシアの負担はゼロですと、ほとんど、あなた方に何もお世話はかけません…」
松山キャスター
「供与しますと」
櫻井氏
「…というような感じだったんですね。大統領がそっちにコロッといっちゃったわけですね。いってしまって何が起きたかと言うと、実はその基本的な資料は全部、日本の資料を中国は使っていた。どこかで手に入れたのでしょうね。向こうが取ってしまったのですけれども、結局何も動いていない。つまり、日本の進出を妨げるためと、中国は、日本の資料をもらっても、その通りにやる気はありませんから、非常に無責任なことをやるわけですね。このことにもわかるように、中国は無秩序な援助をしがちだと」

中国『シャープパワー』の罠
竹内キャスター
「ここからは、中国のシャープパワーについて話を聞いていきますが、シャープパワーとは、中国やロシアなど、権威主義国家が他国に世論操作を仕掛けたり、有形無形の圧力をかけて自国に有利な方向に導く手法ということで、具体的な例が、まずこちらです。2017年、EU(欧州連合)が、中国の人権状況を批判する声明を取りまとめようとしましたが、ギリシャのみが反対、EUの決議は全会一致の原則があるため断念することとなりました。櫻井さん、ギリシャが反対した理由というのは、チャイナマネーと言えますか?」
櫻井氏
「ギリシャは、すごく誇り高い国で、西洋の文明は自分達が生み出したんだと、だから、もっと尊敬してほしいし、我々はもっとより良い立場にいるべきだという考え方があるわけですけれども。でも、現実を見ると非常に財政的な困難というのがあって、もう破綻するのではないかというところにきていた時に、たとえば、EUの中でもっと財政規律を厳しくしなさいとか、もっと倹約しなさいとか、予算を削りなさいとか言われ、もう本当に嫌気がさしていたところに中国がポンと来て、気前よくお金をいろいろつぎ込んでくれたわけですね。これは債務の罠ですよ。本当に、ドンドン、そこのところにはまり込んでいってしまって、このシャープパワーが、ご説明があったように、中国に依存させることによって影響力を行使する。その中で、ギリシャは中国の人権状況を非難することができなくなってしまったということです。本当に簡単な仕掛けによってその罠にはまってしまったと。シャープパワーでいろいろなところに影響力を及ぼしますよね、お金を貸すことによって。その拠点、拠点を見ると、これが世界、地球を取り巻くシーレーンとかにつながっているんですね。ここがスエズ運河ですよね。入ったらギリシャがありますよね。ここから抜けて行くと、今度は北極海の方までずっとすぐ行けるわけですよ。これがこういうふうにつながって全部、地球をグルグルと一周するというようなところですね」
松山キャスター
「まさに中国がドンドンいろいろな港湾の運営権を、各国の運営権を奪っていっているということを端的に示すこの地図ですけれども…」
櫻井氏
「うん。それで、ここをちょっと見てほしいのですが、ここはオーストラリアでしょう。この赤いところがダーウィンですよ。ダーウィンというのはすごく重要なところで、オバマ政権の時に、アメリカがもう1回アジアにピボット、軸足を移しますと、エイシア・ピボットというのがありましたね。これまでアジアにそれほど力を入れてなかったのだけれど、アメリカは太平洋国家ですと、アメリカにとって太平洋はすごく大事なのだということを示すために、中国がこの太平洋を二分して、東側はアメリカがとっていいよ、西半分は中国のものだと、だから、アメリカは西太平洋には来るな、と事実上言ったわけですね。それに対して、ヒラリー・クリントンさんとか、オバマさんが反発をして、アメリカは太平洋国家なのだと、だから、西太平洋にもアメリカはドンドン行きますよということの象徴として、このオーストラリアの北部、ダーウィンというところですけれども、ここにアメリカの海兵隊をローテーションで、常駐ではないですけれども、定期的にここに駐留をさせますということで、ダーウィンに拠点をつくったんですよ。ところが、このアメリカの海兵隊の拠点のすぐ隣に中国が広大な土地を買っちゃったんですよ。それを買ってしまった、これも99年間…」
松山キャスター
「運用権をそのまま中国が押さえたと?」
櫻井氏
「運用権を、ええ…。アメリカはそのことを全然知らなくて、オバマさんがこのことを知った時に、オーストラリア政府に次回は前もって知らせてくれと言ったそうです。だから、それくらいアメリカの中国に対する警戒心というのが、生ぬるいというか、そういった時期があったわけですね。私が申し上げたいのは、ダーウィンもオーストラリアはお金で中国に事実上、譲ってしまったということです。それだけ中国のお金の威力というのはすごいということですね」
竹内キャスター
「こういう事件がありました。オーストラリアのダスティアリ上院議員が中国による南シナ海の領有権主張に『中国の内政問題だ』と中国寄りの発言をしました。すると、その裏には在オーストラリアの中国系団体から巨額献金があったことが発覚します。それによって2017年12月に議員を辞職するということで、債務の罠とは形は違いますが、これも中国のシャープパワーということなのでしょうか?」
櫻井氏
「オーストラリアは、非常に、中国との関係において難しいところに立たされていますよね。オーストラリアという国は大きい割に、人口が千何百万人ぐらいしかいないですよね」
松山キャスター
「少ないですよね」
櫻井氏
「少ないですね、東京都よりちょっと多いくらいでしょうか。そこにだいたい60万人ぐらいの外国人がいて、そのかなりの部分、3割くらいが中国人ですよね。その人達がお金を持っている、すごく意欲がある、政治的なモチベーションを強く持っているというようなこともありまして、大変活発に動いている外国人グループが在豪の中国人ですね。中には、永住権を取ったり、オーストラリアの国籍を取ったりしていて。つい最近まで、オーストラリアは大変おおらかな国というか、政治献金を外国からドンドン受けていたんですよ。別に日本だと外国から政治献金を受けたら…」
松山キャスター
「禁止ですよね?」
櫻井氏
「禁止だし、法律に違反しますけれども。オーストラリアはつい最近までそれがなかったんですね。『サイレント・インベージョン』という本をチャールズ・スタート大学というところのハミルトンさんという人が、教授が書いたのですけれども。それを読んでみると、すさまじい静かなる侵略が中国によってオーストラリアで起きている実態。具体的にたくさん書いてあるんですね。それを見ると中国はまずいろいろな仕掛けをしている、シャープパワーですか、うん。その仕掛けの1つが、シンクタンクをつくることですよ。これは中豪かな、中国とオーストラリア、中豪関係研究所というのがあるのですけれども、中国とオーストラリアの関係を研究し、どのような形にするのが1番いいかやりましょうというシンクタンク。それをつくったのがオーストラリアに住んでいる中国の大富豪です。この人はオーストラリアにも長年住んでいて国籍も取っているのですけれども…」
松山キャスター
「中国系の方ですね?」
櫻井氏
「ファンさんという、黄向墨(ファン・シャンモー)さんという、ファンは黄色という字を書いて、ファンさんというのですけれども。この人が、たった1億5000万円のお金でこの中豪関係研究所をつくりました。そこに元オーストラリア外務大臣のカーさんという人を理事長につけたんです、所長というのですか。そこでいろいろ研究をさせて、オーストラリアの知的階層に対して働きかけ、中国に有利な政策提言をさせるということをずっとやっていたということがわかったんですね。たとえば、中国研究所でやったボブ・カーという元外務大臣ですけれども、この人はそれまでは中国に対して非常に厳しかったのですけれども、ここの理事長になった途端に中国に対してすごく融和的になりまして。南シナ海問題であるとか、そういったことに対してすごく融和的になってしまったというようなことがあります。それから、ここはシンクタンクですから大学にも働きかけるわけですね。大学にも働きかけて、いろいろな教授に影響を及ぼしたりするということがありますね。それと同時に、中国はドンドン、オーストラリアに学生を送り込むわけですよ。だいたい3分の1が中国人ですね。その多くが若い人達で、だいたい20万人を超えますよね。チベット亡命政府のロブサン・センゲさんという首相がいますよね。この方は、ハーバードを卒業なさって本当に献身的にチベットのために働いている人ですけれども、この方がオーストラリアの大学に呼ばれ、チベット問題を話そうとしたら、大学の大きな講堂が会場になっていたわけですね、そこの会場を中国人留学生達がこうやってスクラムを組んで入れないようにして、やってしまって。大学も、おそらくそういうことが起きるかもしれないと予測して、実は第2会場を用意していたんですね。第2会場できちんと講義ができたから良かったとセンゲ首相はおっしゃったのですけれども。このような政治的な動きをさせている、先ほど言った、中豪関係研究所もそれに加担していると思われているんですね。このようなことに対してオーストラリアは本当に無防備だったというのが、この『サイレント・インベージョン』に書いてあるわけです。この一連の騒動を受けて、オーストラリアのビショップさんという外務大臣がいますね、この方がすごく異例のスピーチをしたんですよ。これは中国人留学生に対してのメッセージを出したんですね。皆さん、どうぞ、オーストラリアは自由の国ですから、言論の自由、思想信条の自由、教育の自由を尊重してくださいと。あなた方、ここに来て勉強しているのだから、オーストラリアの価値観を尊重してください。それから、中国人の学者の皆さん方は、中国国内の人権問題であるとか、中国の民主化のことについても考えなければいけないのではないんですか、ということを、こういうことまで踏み込んで言った事例がつい最近あるんです。だから、そこまでしなければならないほどオーストラリアは中国のシャープパワーの攻撃に遭っているということですよね」

中国の思惑『ボストーク2018』
竹内キャスター
「9月11日から13日、『東方経済フォーラム』が行われていまして、11日には中露首脳会談、12日には日中首脳会談、9月11日から17日には軍事演習『ボストーク』が行われます。このボストークには中国軍が初めて参加すると言われていますが、ここの中国の狙いというのは何だと思われますか?」
櫻井氏
「中国の狙い?」
竹内キャスター
「はい、ロシアとの…」
櫻井氏
「中国とロシアは現在、共通の目的としてアメリカに対抗しなければいけないというのがありますよね。アメリカに対して中国とロシアは一体ですよ、ということを示す必要がありますよね。そこから日本に対しても働きかけて、できたら日米同盟の中に何らかのヒビを入れたいという思惑もあろうかというふうに思いますけれども。ただ、これはどうでしょうかね、このボストークというのはすごく大きな規模の軍事演習で、中国が初めて参加するわけですけれども。これまでは、ロシアは中国に対する構えでもあったわけですよ」
松山キャスター
「そうですよね、仮想敵国が中国としての訓練だというのもあったわけですよね、以前は?」
櫻井氏
「そうですね。それが現在、中国とロシアが一緒になって日本とアメリカという、構造がまったく表面的には変わってきている。ただ、心の中ではどうかということですよね。国家基本問題研究所というシンクタンクを私はしているのですが、そこに太田さんという元防衛庁時代の情報本部長がいまして、この方の分析ではロシアと中国は全然お互いに信用していないと。だから、ロシアは、中国に対して陸から攻めて、もし行くとしたら、場合もあるわけです、国境がとにかく長いですから。この軍事演習ボストークの中の陸軍の演習は中国がいないところでやるのではないかとか…」
松山キャスター
「あぁ、なるほど…」
櫻井氏
「…見せないようにして。もしくは中国がどんな武器を出してくるか、お互いに情報収集の…」
松山キャスター
「探り合いみたいな目的で…」
櫻井氏
「その一面もあるというふうに見ておかなければ、本当のところはわからないのではないんですかというふうに言っていましたけれども、私もその通りだろうというふうに思いますね」

『中朝関係』中国の思惑は
松山キャスター
「最近の動きでは北朝鮮をめぐる動きでもだんだん新しい動きが出てきていますけれど、この間、平壌で行われた軍事パレード、建国70年の記念のパレードでしたけれども、そこでICBM(大陸間弾道ミサイル)とか、そういった弾道ミサイルを出さずにアメリカに配慮した対応をしたのではないか、北朝鮮がそういう対応をしたのではないかと言われていますけれども。一方で、中国は習近平主席がそこに出席するのではないかという観測があったにもかかわらず、最終的には栗戦書さんというナンバー3を送って、習近平さんを敢えてそこには送り込まなかった。これも貿易関係で最近、対立関係がかなり高まっているアメリカへの配慮ではないかという見方もありますけれど。櫻井さんはこのあたりはどう見ていますか?」
櫻井氏
「中国とアメリカのこの貿易戦争の影響は大変深刻だと思うんですよね。中国はそれがどんなに中国の経済を痛めつけるものか、中国は自分達の力を過信していた部分があるだろうというふうに思うんですね。集積回路の話とか、これはアメリカから輸出を止められてしまったら、中国の産業はほとんど動かなくなってしまう、自分達でやれないということにようやく気がつかされて、中国経済は既にもう減速していますけれども。中国は333ドルぐらいから7900ドル前まで、個人所得が伸びて、だいたい何十倍になっているわけですが、これがあってはじめて中国共産党の一党支配というものが安定していたわけですけれど。この経済が揺らいでしまったら、これはどうしようもないということに現在なっていて。もうある意味では、追い詰められているわけですよね。だから、アメリカとの貿易戦争で中国はもう勝ち目がないと皆、そう多くの人達が分析していますし、誰よりも中国が認識しているのだろうと思うんですね。この場面において、北朝鮮に対して中国が肩入れをして、北朝鮮が核の廃棄もミサイルの廃棄も具体的に示すことなく、朝鮮戦争の休戦協定を終戦にしたりとか、平和協定にしたりというわがままを通させることはできないという判断ですよね。だから、中国も北朝鮮に公にはあまりコミットできない。もちろん、瀬取りとかでずるいことはしているわけですけれども。公に北朝鮮の側に立つことができないということを認識して、習近平さんも行かなかったのだろうと思うの。今回の北朝鮮によるその建国記念のパレードでも、いろいろな武器が出てこないかわりに『経済をやる』と言いましたよね。これは経済をやらざるを得ない。だって、何もこれまで金正恩さんは手に入れていないわけですから、これはそこにいかざるを得ないということで冷静に見ると、アメリカの圧力による外交というものが少しずつ功を奏しているのではないかというふうに私は見ています」
松山キャスター
「米中の貿易摩擦、かなりエスカレートしていますけれども、これがまた中国の今後の態度にも変化を生じさせる可能性はありますかね?」
櫻井氏
「中国はどこで折り合うかわかりませんけれども、いろいろ考えてみると、アメリカと貿易戦争をずっとやる余裕はないですよね。どうしても行き詰まってしまう。行き詰まった時に、どうするのか。もちろん、習近平さんは外に活路を求めようということで、国内の公共工事をやったり、一帯一路を進めようとするでしょうけれども、それには限りがあるわけですから、中国も非常に困っているというふうに思いますね」

『日中関係』の行方
竹内キャスター
「一時はすっかり冷え込んでいた日中関係ですが、8月に中国の上海師範大学で開催される予定でした『慰安婦問題についての国際シンポジウム』が中国政府からの指示で中止になったと報じられました。中国当局のこの中止措置、日本へのどのようなメッセージだと捉えればよいでしょうか?」
櫻井氏
「ウフフ…、すごく中国って、わかりやすいというか、本当に現金な国ですよね」
松山キャスター
「明らかに潮目が変わっていますよね?」
櫻井氏
「変わっていますよね。アメリカとの関係が厳しくなった。貿易戦争はなかなか止みそうにない。基本的価値においても中国とアメリカが折り合うことは難しいだろうと思いますから。この米中関係の緊張というのはもちろん、緩和することもあるのでしょうけれども、かなり続くと見ないといけないと思うんですね。その中で中国は日本にすがるしかないわけですね。ここの上海師範大学のシンポジウムですけれど、この上海師範大学がどういう大学かというのを知ると、もっとビックリするんですね。これは反日の拠点と言っていいですよ、慰安婦問題においては。ここに、蘇智良さんという学者がいるんです。この人はアメリカのイエール大学かどこかから『チャイニーズ・コンフォート・ウーマン』、中国の慰安婦という、中国人慰安婦という、本を英語で出した人。アメリカの一流大学の出版部から出しましたから、世界に信用されているんです。でも、中身を読みましたけど、全部でたらめと言っていいくらい酷い内容です。その人が教えているのが上海師範大学で。慰安婦問題についていろいろな、韓国を指導したり、いろいろなことを指導し、国際社会で、慰安婦問題で日本を追い詰める役割を果たしてきたのがこの大学ですよ。ここが、北朝鮮や韓国やいろいろなところの慰安婦を呼んでシンポジウムをするというのを中国外務省が2日前になってキャンセルさせたわけですね。その時に中国外務省が言った言葉が『こんなことをしたら日本を刺激するじゃないか』と言ったっていうの。まぁご冗談遊ばせ、これまで散々…」
松山キャスター
「ちょっと前だったら絶対言わないような言葉ですよね?」
櫻井氏
「そうでしょう?だから、そのようなことがありました。これは日本とその環境を良くしなければいけないということが、中国側の切迫した状況としてあるわけですね。この他にも、中国が姿勢を柔軟にしているというのはたくさんありますよね。たとえば、靖国神社に絶対に行くなとか、言わなくなりましたね。首脳会談…」
松山キャスター
「最近、あまり聞かなくなりましたね?」
櫻井氏
「うん。首脳会談をしてやってもいいけれども、靖国には行くなとか、行かないと宣言せよとか。もしくは尖閣諸島は中国のものだと言えとか、もしくは中国と領土問題は存在しないのだということを言えとか、いろいろな注文をつけてきていましたでしょう。でも、現在は一切言わない。今年の夏も、昨年の夏も、安倍政権の閣僚は1人も靖国神社に参拝しませんでした。これはすごくおかしいと、私は安倍政権に対しては思っていますけれども。昨年も今年も誰も閣僚は行かないで、その代わりに総理が、ご自分のポケットマネーで玉串料をお払いになってお供えした。これは、条件は昨年も今年も同じですよね。今年は、総理が自分は憲法改正をやるのだとおっしゃった。これは昨年との違いですよね、憲法改正をやるということについて、中国はこれまで、何だ、これは軍国主義に戻るのではないかという非難をしていたんですね。その意味で、昨年と今年の日本の状況を考えると、今年の方が、中国が厳しく言ってきてもおかしくないわけでしょう。でも、昨年よりも言葉がずっと柔らかいですよ。だから、いろいろなことを考えると、中国が本当に日本に積極的に近づこうとしているというのがわかってきますね」
松山キャスター
「まさに安倍総理が現在の中国の状況等をどう捉えているかということを端的に表す最近の発言なのですけれども、5月に李克強首相が来日して『日中関係は完全に正常な軌道に戻ったと言えます。海空連絡メカニズムについても合意しました。年内に訪中するのを楽しみにしていますし、その次に習近平国家主席を日本に招きたい』という発言が、今月1日の産経新聞のインタビューの中で安倍総理が答えているわけですけれど。中国側からの、いわゆる微笑み外交的なものに対しては、現在の段階ではかなり好意的に受け止めているというふうに受け取られる発言ですけれども。櫻井さんは、この安倍総理の胸中をどういうふうに?」
櫻井氏
「これは、総理が『完全に正常な軌道に戻った』と確かにおっしゃっていましたよね。私、随分考えたんですね、どういう意味かなと思って考えたのですけれど。つまり、これまで完全でなかったのは、中国は、先ほど申し上げたようにいろいろな条件をつけてた。首脳会談をするのに、首脳会談というのは問題があっても、なくても一国を代表する政治家同士が会って、問題があれば解決しましょう、なければもっと前に進めましょうというのが首脳会談ですよね。だから、こういう問題があるから首脳会談をしない、というのはすごくおかしいわけですけど。先ほども申し上げたように尖閣の問題をちゃんとしないと首脳会談をしてやらないとか、靖国のことをちゃんとやらないと首脳会談をしてやらないとか、あれこれ、あれこれ、条件をつけてきた中国が条件を言わなくなった。日本が筋を曲げずにこれまできちんと主張を通してきた。それがようやく受け入れられるようなったという意味で『完全に正常な軌道に戻った』というふうに、総理はおっしゃったのだろうというふうに思いますね。その意味において、今、日本にとってはチャンスなんですよ。本当の意味で日中関係を良くするために、日本の国益を守るために、きちんとやるべき時だし、やれるチャンスなのだろうというふうに思いますよね」
松山キャスター
「逆に、中国に言うべきこともきちんと言える良いチャンスということでもあるということですか?」
櫻井氏
「はい。こういう時でなければ、中国はまた…、中国は、このまま日本に対してすごく友好的な姿勢をとり続ける国ではありませんよ。米中関係が何らかの形で好転したり、中国の立場が相対的に強くなった時には、また、反日の中国に戻る可能性は十分ありますから、政治というのはその時々の潮目というものを捉えて、その時に自分の国に対してどういうことをするのが1番良いのか、これを見極めるのが総理大臣の責任ですよね。だから、現在は、日本は日中関係を改善するというこの波に乗って、改善ということは相手のためにも良いことなのだけれど、私達のためにも良くないといけないんですよ。なぜ私達が中国政府に、官房長官と総理大臣と外務大臣は、靖国に行くなと言われなければいけないのか。日本のために戦って亡くなった人をどうしてこれで慰霊できるのか。尖閣諸島をなぜ中国のものだと言わなければいけないのか。バカバカしい話ですね。こんなおかしなことはやめて、1つの独立した国としてきちんとした論陣を張りましょう、言いましょう。それが言えるチャンス。言っても中国はすごく強くは出てこられないと思います。憲法改正についても、もっと堂々と憲法改正をするような議論をもうやったらいいというふうに思いますよ」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言:『日本の価値で積極平和外交を』
櫻井氏
「『日本の価値で積極平和外交を』と。日本と中国、まったく違いますよね。日本はまたアメリカとも違いますね。私は、日本はアメリカである必要はないし、中国であることは断然嫌だと思うんですね。日本自身の価値観というものがしっかりとあるわけですから。この日本自身の価値観を基本にして、平和をもって平和外交、積極平和外交をドンドン進めていくことが、アジアのためにも、世界のためにも良いというふうに思います。また、今がそのチャンスだと思うんですね。大きな図で見ると、アメリカがどっちかと言うとちょっと世界から引き加減のところにある。中国がそこにドンドン入り込んで私達とはまったく違う価値観で世界を不幸なところにしようとしているわけですから。それを防ぐために、アメリカと協力し合いながら、アメリカと基本は同じ、自由とか、民主主義とか、人権とか、国際法とか、そういった小さな国を守る、という価値観を守りながら、それでも日本独自のカラーを出していく外交を積極的にやったらいいと思いますね。安倍さんならそれができる。むしろそれをこれまでやってきたのが安倍外交だと思っています」