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2018年9月10日(月)
駐日米国大使に生直撃 日米通商問題の決着点

ゲスト

ウィリアム・F・ハガティ
駐日米国大使
藤崎一郎
元駐米日本大使
礒﨑敦仁
慶應義塾大学准教授(後半)

駐日米国大使が生出演! トランプ政権の本質を問う
竹内キャスター
「今夜は着任2年目に入った駐日アメリカ大使、ウィリアム・ハガティさんを招いて、トランプ政権が現在向き合っている様々な課題と日米関係の今後について話を聞いていきます」
松山キャスター
「今夜は、こちらの3つのポイントに絞って話を聞きたいと思います。まず1つは北朝鮮の非核化、米中両国間の貿易摩擦、日米関係の課題についてです。特に3番目の日米関係の課題については、トランプ大統領が日本との貿易協議にプレッシャーをかけるような発言を先週から繰り返し行っており、真意や先行きが気になるところです。アメリカの本音にグッと迫っていきたいと思います」
生野キャスター
「日本に着任されてから2年目を迎えられたということですが、大使としての活動の中で特に印象深いことはありましたか?」
ハガティ大使
「この質問に答える前に一言申し上げたいと思います。また、この場をお借りいたしまして、アメリカ国民を代表いたしまして、この数か月、日本の各地において豪雨の被害に遭った方々、また、北海道の地震による被災者の方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。この状況に関して、命を失った方々、現在まだ苦しんでいる方々に対して私どもは憂慮しておりますので、私どもの心は皆さまとともにあることをご承知おきいただければと思います」
松山キャスター
「大きな地震も北海道でまたありましたが、そういったことについてもアメリカとして今後どういった形で日本との協力というのを考えているのですか?」
ハガティ大使
「私どもはいろいろな連携の方法というものを探っておりますし、皆さま方、視聴者の方々が、私どもが建設的な支援ができる方法というものを聞きたいと思っております。私どもは、米軍にしても、また、領事館等の人々も、また、大使館の職員も、ボランティアをして支援をしております。とりわけ西部における洪水被害に対して私どもはボランティアも出ましたし、また、米国政府の義援金というものを提供し、軍事、外交官、外国人達が一団となっていろいろ支援してまいりましたがとりわけ現在、特に北海道の地震の被災者に対してどういう形で支援できるのがいいか、是非とも皆さん方のご意見も拝聴したいと思っております」
松山キャスター
「大使に就任されてから1年ちょっとということで、その間に日本全国いろいろなところを訪問されていると思うのですけれども、特に印象に残った場所、どういったところがありますか?」
ハガティ大使
「それは、本当に素晴らしい1年を過ごすことができました。実際、先週に私の娘から聞いたのは既にこの1年間で23県を訪問したということでした。北海道から沖縄に至るまで、いろいろな場所を訪問させていただきました。我々のこれまで1番心に残ったのが最初に着任してから1週間目、子供達を上野公園に連れてまいりました。そこでは永遠の、原爆の広島・長崎で失った人達の命を祈念しての永遠の碑であります。子供達にその碑を見せました。必ずこの碑の重要性というものをいずれ理解することができるだろうと伝えました。先月8月上旬、広島。長崎に子供達を全員連れていきました。そこで平和記念式典に参加し、被爆者の方々とお目にかかり、実際の式典に参加したわけですが、とりわけ子供達にも永遠に心に残る、いわゆる紛争によっていかなる犠牲が払われるかということが心に残りました。次の世代が平和を守るための最も意味ある私どもの教訓となったと思います」

米朝『非核化』協議の行方
松山キャスター
「今注目されている問題の1つが北朝鮮の核問題というのがありますが、北朝鮮の非核化については最近、次のような動きがありました。アメリカのポンペオ国務長官が一度平壌を訪問するという予定を発表しながら、突然中止になったと。その中止になった理由についてトランプ大統領は『朝鮮半島の非核化に十分な進展が見られない』ということをツイッターで表明しています。非核化に積極的ではないということで不満を漏らした形ですけれど、そのあと北朝鮮は、韓国の訪れていたその特使に対して『トランプ大統領の1期目が終わる2021年初めまでに非核化を実現して米朝両国の敵対関係に終止符を打ちたい。大統領への信頼感は変わっていない』とする金正恩委員長のメッセージを、これを託しました。このメッセージに対してトランプ大統領は『ありがとう。金委員長。一緒に成し遂げよう』ということで前向きに評価しているということですけれども。この一連の動きを大使は米朝関係が進展していると見るのか、あるいは停滞していると見るのか、どちらで捉えていますか?」
ハガティ大使
「まずこの関係というのを少し展望してみたいと思います。私が、最初に日本に着任した1年前を見てみたいと思います。おそらく視聴者の皆様も覚えておられると思いますが、昨年の9月…11月に、北海道の上空に北朝鮮のロケットが上空を通過いたしましたが、2017年11月以降、ロケット発射がございません。さらに同時に北朝鮮から米国に対して3人の拘束者が返還されたということで、ポンペオ長官と私もその場に立ち会いました。さらに北朝鮮の米兵の遺骨が返されました。ということで、そのような意味において、核施設が解体されたということで、かなりの前進があったのではないかと思います。この2人のリーダーの間の会合によって非常に前進があったと思います。米国は、その状況をしっかりと見つめております。長い歴史を北朝鮮と持っていますが、妥当な、私は楽観的な見方をしております。我々は、そのゴールは最終的で完成に検証された非核化ということが我々の目的であります。我々の立場というものは経済的な制裁はそのまま維持していくわけであります。ただ、非常にこの1つの突破口ができたんじゃないかと思います、金委員長、またトランプ大統領との間に。北朝鮮の国民にとってもより良い生活ができるための機会が与えられたと思います。これは、国民にとっての機会であります。ですから、希望を感じる理由があるわけでありますから、先ほど申しましたように我々のアプローチは非常に現実を見つめたものであり、しかも、今後とも最大のプレッシャーというものを、機会を見つけながら今後とも取り組んでいくつもりであります」
松山キャスター
「そうした中で、国際原子力機関、IAEAは次のようなリポートを出しています。北朝鮮に関する最終報告ということで、4月下旬から5月上旬頃に北朝鮮が核関連施設を稼働した形跡があるということで、『北朝鮮は核開発活動を継続発展させている』という指摘をしています。まさに4月下旬から5月上旬と言うと、当時まさに南北首脳会談が行われていた時期と重なるわけですけれども。そういった時期でもまだ核開発を続けているということをIAEAは指摘しているわけですけれど。北朝鮮の本気度、本当に非核化をする意思があるのかどうか、それについて疑念を抱かせるような内容になっているわけですが、アメリカは、仮に北朝鮮がこのまま開発を隠れてでも続けた場合、途中からでも交渉を中断する意思というのはあるのでしょうか?」
ハガティ大使
「非常に時機を得た質問をいただきました。北朝鮮との問題、その進展は決してたやすいと私は思ったことはありません。現実を見つめる、これは日本もアメリカも同じだと思います。これは決して簡単なプロセスではないと思っております。しかし、私どもがアプローチのゴールとして持ち続けるのは、最大の圧力をかけ続け、また、現在実施中の国連の制裁措置を履行することによって北朝鮮をポジティブな方向に向かわせることができると思います。具体的な内容はもちろん、触れることはなし、私どもの計画といたしましては、引き続き同じペースでもって、同じ注力をもって、最終的に完全で検証可能な非核化を目指すということであります」

米中『貿易対立』の決着点
竹内キャスター
「これまでアメリカと中国は、7月に340億ドル、8月に160億ドル、合わせて500億ドル相当の輸入品に関税措置を実施しました。さらにアメリカは9月中に2000億ドル相当の輸入品に対する追加関税を検討していますが、先週末、トランプ大統領は新たに2670億ドル相当の上乗せも示唆しています。ハガディさん、これらの追加関税が実施された場合、世界経済にも大きな影響があるかと思います。本当にこれは実施されることになるのでしょうか?」
ハガディ大使
「答えはシンプルだと思います。中国次第です。中国は行動を変える必要があります。私はビジネスマンです、中国とビジネスをした経験もあります、大変タフな環境です。日本の企業の方も同じような懸念を持っていると思います。知的財産が盗まれ、またはアンフェアな競争をしている国有企業、強制的な技術移転を迫るジョイントベンチャーのような形態…、ですから、そういった慣行を変える必要があります。大統領が現在、プレッシャーをかなりかけています。状況を変えるためには必要で、そのランドスケープを変えようとしているわけです。私は期待しています。アメリカの決意が固いということを理解するであろうと思いますし。中国はとにかく行動を変える必要があります。答えはシンプルです」
松山キャスター
「ただ、追加関税の金額が、ドンドンつり上がってきて中国との取引のほぼ全部をカバーするぐらいの関税措置がとられてしまうということになるわけですけど。さすがに世界経済への影響ということではかなり深刻な影響が出てくると思うのですけど、それでも中国に対しては知的財産権の問題などでどうしても解決しなければいけない問題があるというのがアメリカの主張ということなのですか?」
ハガティ大使
「中国との状況というのはとても深刻で、その状態はかなり前から続いています。トランプ大統領は大変固い決意を持って状況を是正しようとしています。中国と話し合いをしています、行動を変えてほしい、と伝えました。世界の規範に基づく必要があります。他の国の経済と同じ行動をする必要があります。トランプ大統領は、その道を示しているのです。とても大きな額です。中国との貿易赤字も非常に大きなものを我々は抱えております。ですから、その状況に対応するためには、適切な金額であると思います。できるだけ早く解決したいと思っています。中国が世界のコミュニティに参加してほしいと思っています。そういったような商業活動の場に出てきてほしいと。知的財産の保護にせよ、国有企業の活用にせよ、こういったことは中国しか変えることができないわけです。進捗があれば、緊張は緩和されると思います。でも、そうならない限り圧力を続けていきます」

日本への『通商圧力』の真意は
松山キャスター
「日米の貿易関係では現在、日本の中で非常に懸念が強まっているのが、日本からアメリカへの自動車の輸出なのですけれど、アメリカは現在、アメリカに入ってくる輸入自動車に対し25%の関税をかけるということを検討されていると言われていますけれども、仮にこれが実行されると日本の自動車産業にとってかなり深刻な影響を及ぼすことになると言われています。アメリカにたくさん工場も建設して、アメリカでたくさんの雇用もつくり出していると言われる日本の自動車メーカーですけれども、そうしたことがあっても、それでも日本の自動車メーカーにとって痛手になるようなそうした関税措置、これが実際に講じられる可能性があるということなのでしょうか?」
ハガティ大使
「ウィルバー・ロス商務長官が行っているものであります。現在、様々なインプットをいろいろな各界から求めている状況であります。必ずや日本の自動車会社、また、米国の自動車産業からもインプットを求めると思います。非常に広大な調査であります。その結果をここで予測することはできませんが、はっきり申し上げられるのは、日米は素晴らしいこの貿易協定で前進する機会を持っておりますし、それが必要だと思っております。必ずや良い協定を得られると考えております」

日米関係『深化のカギ』と課題
松山キャスター
「トレード・アグリーメントと言われましたけれども、アメリカ側が求めているものと日本が求めているものとで、その内容が違っているのではないかとよく言われますけれども、これは日米通商協議、FFRと言われる閣僚級の協議が現在、日米間で行われていますけれども、日本側は茂木大臣、アメリカ側はライトハイザーUSTR代表がそれぞれトップを務めてやっていますが。これまでの協議の中で、日本側はアメリカに対してTPPにもう一度復帰してほしいということを何度も説得しています。一方、アメリカ側は2国間、バイラテラルの貿易協議、これをやるべきということを主張しているということで、なかなか主張が折り合っていないという印象を受けるのですが、アメリカはどうしてここまで2国間の協議にこだわるのですか?」
ハガティ大使
「松山さん、ちょっと、この文脈を説明させていただければと思います。もっと長い背景があるわけです。2016年に戻ってみたいと思います。オバマ政権の最後の年、おそらく覚えていらっしゃいますが、オバマ大統領はこのTPP協定というものを米国議会にかけなかった。その理由は可決できないと思ったからであります。その状況は現在も変わっておりません。毎回、私、米国の上院のメンバーと話す時、TPPは成立できないということであります。率直に申しまして、政治環境がますます今日では複雑化しておりまして、このような大規模な、複雑な多国間の協定を可決するのは2016年に比べてさらに難しくなっております。その段階では、オバマ大統領もそれが成立できないと思って前進させなかったわけです。そうすると現在の状況がどういうことかと申しますと、日米、2つの最も重要な世界の同盟国であります。貿易協定がこの2か国の間には必要であります。米国の農業者、企業というものが、貿易協定を持っていないがために不利に立たされたらならないと思います。日本は、多くの2国間の協定を持っていると思います。また、2つの多国間の協定を持っております。その1つTPP11、EU(欧州連合)の協定を今現在前に進めている、EPA(経済連携協定)を持っているわけでありますので。私ども米国とも是非とも協定を協議していただければ思っております。大統領はそれを非常に明確に、大統領が次回、総理とお目にかかる時にそれをはっきりと打ち明けることができるのではないかと思いますし、非常に楽観視しております」
竹内キャスター
「ここからからのゲスト、元駐米日本大使・藤崎一郎さんです」
松山キャスター
「昔からのお知り合いだと思いますけれども…」
竹内キャスター
「ここまでのハガティ大使の話を聞かれ、どのような感想を持ちましたか?」
藤崎氏
「まずハガティさんは非常に日本に来てよくやっておられる。1番良い点は、非常に親しみやすいということで、非常に評価されていると思います。竹内さんのご質問の、おっしゃったことについて、日米貿易関係で言うと私は3つの点が大事だろうというふうに思っているんですね。私は大使と違って、今の現状をやっていないものですから一般論なのですけれども、1つは、日本だけでなく、世界中の国は、アメリカがこれまで国際社会をリードしてきた、ルール・メイキングでリードしてきたというリーダーシップを続けていただきたいと。いろいろな形でそれは変わるかもしれないけれど、その責任を果たしていっていただきたいというのが1点だと思います。2点目は、いろいろ難しい問題があった時に、過去にロン・ヤスとか、小泉・ブッシュといった時代、私は小泉・ブッシュの時、外務省の局長や審議官をやっておりましたけれど、難しい問題をやった時にトップの関係が良いとそこを非常に、全体をうまく丸められるということがあるので、今回も丸めるというか、まとめていけるという、今回もそれを期待したいなというふうに思うのが第2点です。3番目は、公平で、自由・公平、互恵的という、公平さですけれど、これはあくまで機会の均等、オプティニティの均等であって結果の均等ではないのだろうと。それはなぜかと言えば、結果の均等と言った瞬間に社会主義的になって、自由主義というのは機会の均等だから、この3点が私は貿易関係では大事だろうと。日米関係全般で言うと、もう10年ぐらい前から言っている同じことなのですけれども、15年ぐらい、3つのノーというのが大事で、1つは、ノー・サプライズ、お互い驚きがあっちゃいけない、びっくりさせちゃいけない。2番目はノー・オーバーポリティナイゼイションと言って、過度に政治化問題をしないこと。3番目ですね、ノー・テイク・フォア・グランティッド、互いに当然視しない、アメリカは日本の努力を当然視しない、日本はアメリカがこれまでやってきてくれたことを当然視しない。日本のパートナーは他の国ではなくてアメリカであり、アメリカのパートナーは日本だと、この意識を持って対応していくということではないかと思って聞いておりました。ちょっと長くて恐縮ですが」
松山キャスター
「なるほど。大使、いかがですか?」
ハガティ大使
「まず、友人であり、同僚である藤崎大使とご一緒できて光栄に思えます。私にとって素晴らしい友人であり、素晴らしいアドバイザーでいらっしゃいます。また、この大変重要な関係の重要な世話人でいらっしゃいます。大使のご見解はとても正しいと思います。また、ポジティブなものであると思います。私と同じような、楽観的な観測をお持ちだといいと思います。貿易の問題は解決できるものだと思います、それも早い時期に。また、とても優秀な人達が、この貿易協定に携わっているということを、茂木大臣、ライトハイザー通商代表もとても優秀ですから、とても良いと思っております。2人の指導者達の強い関係というのが重要だというのも同じ意見です。安倍首相とトランプ大統領、とてもクリアなビジョンを持って、間もなく国連総会の時期に合わせて会うことになるかと思いますけれど。協議によってとてもポジティブな方向に進むことができると思います、両国にとって」
松山キャスター
「大使はいよいよ2年目の任期に入られたわけですけれども。これからの任期でどういうことを重点的にやっていかれたいのか、2020年に東京でオリンピックが開かれますけれども、そういったことも含め、今後の抱負を一言お願いしたいと思います」
ハガティ大使
「2020年のオリンピックは、私はとても素晴らしいチャンスだと思います。米国大使館は『ゴー・フォア・ゴールド』という取り組みを始めました。東京都と一緒に取り組んでおります。小池知事と私が数か月前に取り組みを立ち上げました。東京の学校で立ち上げました。これから200以上の学校を訪問する予定にしております。主に東京の周辺です。教育、留学に関するプログラムを行っていきます。また、スポーツ教室も行います。スポーツはこれからの1年とても重要なトピックになると思います。2020年は日米がさらに緊密になるチャンスであると考えます」

ウィリアム・F・ハガティ 駐日米国大使の提言:『KIZUNA』
松山キャスター
「大使から最後に提言をいただきたいと思いますけれども、こちらを書いていただきました」
竹内キャスター
「KIZUNA」
松山キャスター
「どういう思いで『KIZUNA』というのを提言されたのですか?」
ハガティ大使
「私あまり字がきれいではなく、申し訳ございません。漢字がちゃんと書けなかったのでローマ字にさせていただきました。『KIZUNA』というのは、私どもも今後先に進むにあたって日米が共にさらにこの関係というものを強化したいと思います。安全保障というのも重要でありますし、たとえば、在日米軍、日本の自衛隊が連携することによって、より強い強固なチームでもって日本を防衛するだけではなく、地域を安全にしております。また、日米間の外交的な関係は世界でも最も強固なものだと思いますし、藤崎大使と同じように非常に強固な経済的な関係を今後とも持つと思います。米国は日本に対する最大の投資国でありまして、日本も同じようにより多くの、日本からいただいておりますし、より多くの貿易関係が促進されることを期待しておりますし、今後将来的により強硬な経済関係をもてることを期待しております。また、文化的・人的交流も必要だと思います。それこそこれまで我々がお互いにこれだけ深い敬意を持っているのは、その基盤があるからだと思います。アメリカ人に対し非常にポジティブな印象を持っているということで、さらにその感情が深まるということを期待しております。2020年のオリンピック・パラリンピックは、素晴らしい機会だと思いますので、大使館のメンバー達は素晴らしいオリンピックスポーツに参加できる方法でもって、我々も協力したいと思います」

北朝鮮・金正恩体制は今 膠着する『米朝非核化協議』
竹内キャスター
「昨日建国70年の記念日に北朝鮮で行われた軍事パレードの話を聞いていきたいと思います。まず今年の2月8日、韓国の平昌オリンピックの開会式の前日に行われた軍事パレードでは大陸間弾道ミサイル、ICBMが登場していましたが、今回の軍事パレードでは見られず、金委員長の演説もありませんでした。礒崎さん、昨日のこの軍事パレードについてどのような分析をされていますか?」
礒崎氏
「北朝鮮としては、紆余曲折があるにせよ、アメリカとの対話を進めていきたい、関係を改善していきたいという意思があるわけですから。そういう意味で、分析というか、研究に携わっている人達は予想通りだったのではないかと思いますね、今回については」
松山キャスター
「今回、中国から習近平主席が出席するのではないかという観測がありましたけれど、結果的にナンバー3の最初は栗戦書さんが出席されたということで。これについては、中国側の思惑をどう見ていますか?」
礒崎氏
「これは結果論で、中でどういうやりとりがあったかわからないのですけれども。しかし、栗さんが、栗戦書、ナンバー3が行くという発表が、かなり直前になってから発表されましたから、そういう意味では、習近平国家主席に来てもらおう、というやりとりはあったと思うんですね。しかし、アメリカとの関係が、特にポンペオ国務長官の訪朝中止という、8月下旬からアメリカと北朝鮮とのやりとり、ごちゃごちゃ、ゴタゴタしていますから、こういう米朝関係が膠着状態に陥ったところで中国の首脳が来るというのは、必ずしも現在の北朝鮮にとってプラスにならない。結局トランプ大統領からは金正恩委員長の後ろに習近平国家主席がいるじゃないかというふうに言われてしまうわけですから。中で何があったかはわかりませんけれども」
松山キャスター
「そうした中で、先ほど、出演されたハガティ大使なのですけれども、こういう発言をされております」
竹内キャスター
「北朝鮮の非核化について『楽観的には見ている。不可逆的な非核化を目指すことに変わりはなく、そのために圧力、制裁は続けている。突破口はできているが、現実と機会を見て取り組んでいく』と述べられましたが。藤崎さん、どう受け止めますか?」
藤崎氏
「私はそこまであまり楽観的ではないです、率直に言って。トランプ政権は現在、これがうまくいっているということを示したいと、それは非常に強いだろうと思います。中間選挙もありますし、世界にこういうことをやりましたから。ところが、北朝鮮がそこのところの気分をわからなくて、強い対応をとり過ぎたりしますと、こちらも拳を振り上げざるを得ない。ポンペオさんの(訪朝)延期とか。アメリカの気分がわかってくれると、あうんの呼吸がわかってくれたなということで大変前向きな評価をする。今度のパレードのこともそうですし、たとえば、今日のツイッターで『2人の好きなもの同士が良い会話をするほど良いことはない』ということを言っているんですよ。『2人の好きな者同士が』と、ここまで言うのかというようなツイッターですよね。それから、『急ぐこと、必要はない』と言ったり、政権中にできればいいのだということを金正恩さんが言ったということを伝えたら、『ありがとう』と言ったり、非常にとにかく良い形をつくっていきたいということはあるのだろうと思いますね。他方、北朝鮮は、これは礒﨑崎先生の方が専門ですけれど、まず、実はいつか来た道で同じようなことやっているなという感じが強い。つまり、1つは役割分担、もう1つは小出しです。役割分担というのは下の人に、金桂冠さんとか、あるいは崔善姫さんという人に強いことを言わして、ご本尊が出てきて、少し前向きなことを言ってバランスをとる。2番目の小出しというのは、できることを少しずつやっていくと。つまり、アメリカ人を釈放したり、遺骨の返還やったりしながら、だんだん延ばしていくと、この2つを見ると、ああ、いつか来た道だな、という感じを私はして見ています」
松山キャスター
「その役割分担と小出しという戦略が仮に事実だとすると、結局は時間稼ぎということに、また、逆戻りしてしまうかのように聞こえるのですけれども。IAEAの報告を見ても、北朝鮮はシンガポールでの6月の米朝首脳の会談の前後ぐらいでもまだ核開発を続けているという報告書を出しています。そういう意味では、まったく進まないのではないかという印象も受けるのですけれども、藤崎さん、そのあたりは?」
藤崎氏
「私は基本的には目標は体制維持にあるのだろうということ、これはもう皆さんおそらく異論がないのだろうと思いますよね。そのためには、私は、核やミサイルは虎の子として大事なので、これを減らしたり、切っていく時によほどの代償がないとなかなかできないと思っているのだろうと思います。1つ、私は大事なことは、北朝鮮は終戦宣言だとか、平和条約を欲しているとか、あるいは体制保証を要求しているといったようなことを彼らが言い、それを受け止めることもあるのですけれど、実はそんなものを本当に必要としているのだろうかと、ああいう国が。一片のそういう宣言とか、条例をどこまで信用して自分の警戒態勢を解くかというと、あまりそんなことはないのではないか。ですから、何のために彼がそういうことを言うかと言えば、自分の方から要求が出されなければ、非核化の要求だけを突きつけられるから、バランス上いろいろなことを言っていくというのは、従来からある作戦ですよね、先生ね?」
礒﨑准教授
「そうですね」
藤崎氏
「ですから、そこのところはあまり言っている文言をそのまま捉えて分析をしていかない方がいいのではないかというふうに私は見ています」
松山キャスター
「一般的に言うと、北朝鮮が求めている体制保証とか、終戦宣言、あるいは平和協定みたいなものは国としての安全の保証を得るために、その段階として求めているという認識が一般報道でもよくありますけれども、そうではなくて、もっと高いハードルの球を投げることで、わざと交渉の材料にしているということですか?」
藤崎氏
「あの国は、自分がそういうトップにいた時に、そういう保証をしてもらって、本当に安心するだろうかと。松山さんがもしその立場にいたとしたら…」
松山キャスター
「口だけの約束だったら、ちょっと信用できないかもしれない」
藤崎氏
「リビアのカダフィはどうなったのかと、ボルトンさんは実際にそんなことを言いましたけれども。そういうことをいろいろ思い浮かべると、なかなか簡単ではないと。よほどの、いろいろな形での態勢が整わない限りは難しいなと。そこを、しかし、押していかなければいけない。そのためにまさに言ったように制裁を引き続きやり、いろいろな形での働きかけをやっていくのですけれども、それがドンドン進んでいくというわけではなくて、かなり忍耐強くやっていかなければいけないということではないかと思いますね」
松山キャスター
「礒﨑さん、そのあたりはいかがですか?」
礒﨑准教授
「そうですね。現在、膠着状態に陥っているのは、ひとえにと申しますか、米朝間の不信感ですよね。我々日本は、全体として、日本国民全体として北朝鮮に対して非常に強い不信感を抱いている。アメリカ政府もおそらくトランプ大統領除いては北朝鮮に強い不信感を抱いていると。でも、それと同じぐらい北朝鮮も日本やアメリカへ対して不信感があるわけで。北朝鮮が果たして、わからないですけれども、今回最後までいくかどうかは別としても、しかし、完全な非核化について、初めてトップがサインをしたわけですから、これを裏切って、結局、時間稼ぎではないかとなってしまったら、それはトランプ大統領、それ以降のアメリカの政権も、結局、北朝鮮というのは信用ならない国だというふうに言われるリスクを負っているわけですし、その間3回、習近平国家主席と会談しているわけですから、シンガポール行きの飛行機も借りてまで。そこで結局、また時間稼ぎをしてしまったら、アメリカどころか、中国からも、なんだ、北朝鮮はまた同じことをやっているのか、時間稼ぎではないかという、そういうリスクを負いながらも、今回の勝負に出ているという意味では、私は最後の着地点が完全な非核化に行きつくかどうかというのはアメリカとのやりとりがあるのでわからないものの、最初からアメリカを騙そうとか、そういうものではなくて、これは生き方というか、生きるんですよ。彼らは体制を維持するために現在、人権問題、インターネットの自由化を求めない、強制収容所を撤廃せよとか、そういったことを一切求めない、非常に歴代見ることのできなかったトランプ大統領という存在がいる間に、デメリットも大きくなってしまった核が、核で大きな取引ができるのであれば、それをやろうと」
松山キャスター
「その可能性を探るんだと?」
礒﨑准教授
「はい。ただ、お互い、不信感がありますから、北朝鮮も不信感があるわけですから。非核化を一気に進めて、それに対してアメリカから見返りがもらえるかというと、そうは思っていないわけですね。ですから、段階的に、まさに小出しですよね、少しずつ出しているから、それに対してアメリカも譲歩しなさいよというのが現在の北朝鮮の姿勢、特に終戦宣言をめぐるやりとりがそうですね」
竹内キャスター
「金委員長はトランプ大統領の1期目が終わる2021年までには非核化を目指すと言っていますが、そのあたりはどのように見ていますか?」
礒﨑准教授
「これは現在やっておかないと、結局トランプ大統領の後の大統領は、当然、オバマ大統領がキューバにインターネットの自由化を求めたような、その国の自由化ですとか、人権問題、民主化せよとか、そういった非核化以外の要求を突きつけてくる可能性があるわけですから。もし不可侵条約のような、内政不干渉のようなものを、そういったものを取りつけるために、つまり、安全を担保するために、核を取引に出すのであれば、現在がチャンスだと金正恩委員長は考えているでしょうね」
藤崎氏
「礒﨑先生が言われた、トランプさんの間にやっちゃえばいいのではないかと彼らが思っているというのは、私はちょっと意見が違うんです。何かと言うと、アメリカという国は、今度のオバマさんからトランプさんに代わったように、次の大統領が出てきたら、また違うことを言うんですよ。ですから…」
松山キャスター
「逆のことを言いますよね、アメリカの場合?」
藤崎氏
「現在、たとえば、それを、非核化はトランプさんと手を打ったとしても、次の大統領がきて、それだけではなくて、今度は人権をやれ、と言うかもしれないので。そうなかなかトランプさんとディールすればそれで済むというふうにはこれまでの歴史を見ていれば考えるはずがない。クリントンさんからKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)、KEDOというのは原子炉をもらう約束をしたら、ブッシュさんがきたらダメだと言う…」
松山キャスター
「軽水炉支援のための…」
藤崎氏
「そうですね、ありましたね。私はどちらかと言うと、北朝鮮が現在、こういう対応に出てきたのは経済制裁が厳しくなって、それから、全てのオプションがテーブルの上にあると、軍事的な侵攻までチラつかされて、この状況をなんとか脱却しなければいけないと。そのためには話し合いだと。これをいろいろな形で続けていくうちに、もう少しいろいろな形で緩んでくるということで。もし本当に今から非核化を本気で完全にやるということを考えているのだったら、昨年までの間に、あんなに何度も核実験やミサイル実験をやって、ほぼ完成したぞと今年言っていましたね、秋に。それで完成したからもうやらなくていいのだと、実験を。そこまでもってくる必要はないわけで。ですから、もちろん、全然可能性がないわけではないけれど、相当慎重に締めながらやっていかないと、これはそう簡単に相手が応じてくることではない。これは最初に申し上げた、いつか来た道で、何度もこれをやっていると。2005年の6者協議というのは、これはもっとレベルが低いのですけれども、トップではないのですけれども、もっとはっきりと非核化の約束を全部していますね。IAEAの復帰とか、NPT(核拡散防止条約)の復帰とか、そういうことをまず約束させる必要があるのではないかなというふうに思いますね」
松山キャスター
「現在行われている、ロシアのウラジオストクでの東方経済フォーラム。この場所で当初は金正恩委員長がそこに招待されるのではないのかという観測があって、安倍総理もそこに行くということで、何らかの形で、日朝の接触ができるのではないかという見方がありました。金委員長は今回、そこには参加しないということになっているということで、そこでの接触というのは難しくなったわけですけれど。この日朝会談、現在の段階で、アメリカと北朝鮮の関係がまたやや微妙になっているこの段階で、日朝会談というのはどういう形で進んでいくというふうに、藤崎さんは見ていますか?」
藤崎氏
「率直に言って、3か月前にどういう世論があったのかと言うと、日本だけバスに乗り遅れたのではないかと、ロシアも行っている、中国も行っている、アメリカもシンガポールでできる、我々はどうしたのだ、という感じが非常に強かった。現在そういうものはなくなっているのはなぜかと言うと、北朝鮮の対応から見て、そんなにもしかしたら変わったわけではなく、結局、アメリカとの関係、アメリカも少し急ぎすぎたかもしれないけれども、なかなか大変な状況に入っていると。日本はじっくり腰を落ち着けて、日本にだっていざとなれば資金協力という形の1番北朝鮮がほしがっているものがあるわけですし、日本からももちろん、解決してもらわなければいけない、拉致問題が先ほど出たようにあるわけですけれど。非常に腰を落ち着けてやっているという意味で、もちろん、いろいろなバイのチャンネルをつくっていくことが大事ですけれど、流れにすぐ沿って泳いでいかなければいけないということではなくて、日本は日本の国益に照らしてやっていくという、現在の動きはいいのではないかなと思って見ています」
松山キャスター
「ちょっと前、ワシントン・ポストは、ベトナムで日本の北村情報官が北朝鮮の高官と極秘に接触していたという報道もありましたけれども。そういう拉致問題についての水面下の交渉だと思いますが、そういう動きはあって然るべきだと?」
藤崎氏
「それはいろいろな形で、私はその北村報道官の、私も報道でしか見ていませんけれども、いろいろな形でのチャンネルというのは常にあっていいのではないかなと思います。それはお互いに、皆がこちら側ではしっかりとまとまってやっているという前提のうえで、もちろん、調整ができているという意味では、いろいろな形でやっていくことが大事だと思いますね」
松山キャスター
「礒﨑さんはいかがですか?」
礒﨑准教授
「良いチャンネルを模索しているなという印象です。今回、外交、対外関係の攻勢をかけてきているのは、金正恩国務委員長の隣に常に金英哲氏が座っているわけで、彼につながるルート、統一戦線部の人達をつかまえてやる、そうする形で安倍首相も信頼する部下を送るというのは良いルートだと思います」
松山キャスター
「アメリカも情報機関を使って今回、米朝会談を実現しましたけれども、日本もあらゆるルート、情報機関に関する部門も使って、そういうパイプをつくるというのは悪いことではない?」
礒﨑准教授
「そうですね。問題は中身です、あとは中身だと思います。北朝鮮側に誠意を求めるというのはもちろんですけれども、それに対応して日本側も誠意を然るべき時に見せることができるかという戦略的な決断ですね」