プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2018年9月3日(月)
概算要求100兆円超え 消費増税と景気対策は

ゲスト

伊吹文明
元財務大臣 自由民主党衆議員議員
土居丈朗
慶応義塾大学経済学部教授

伊吹文明氏『国家財政論』『100兆予算』の是非を問う
竹内キャスター
「先週8月31日、各省庁からの来年度予算の概算要求が出揃いました。総額は102兆円台後半になる見通しです。さらに、まだ盛り込まれていない消費税増税に向けた景気対策などもあり、今後の予算編成次第では当初予算として初めて100兆円を超える規模との見方もあります。自民党の重鎮・伊吹文明さんと、慶応大学の土居丈朗さんを迎えて、アベノミクス7年目の予算編成の焦点と、日本財政の将来について話を聞いていきます」
松山キャスター
「2019年度の予算を見通すうえで大きなポイントとなるのは、消費増税の実現、社会保障費の抑制、財政健全化の道筋、この3つの視点です。この3つの視点を中心に徹底検証していきたいと思います」
竹内キャスター
「今回の概算要求の大枠を見ていきます。全ての費目が増額しています。社会保障費は高齢化に伴う6000億円の自然増で32.1兆円。政策経費は実質2.9兆円の新たな特別枠が設けられ、地方分・国債費等を合わせまして全体で102兆円台後半になると見られています。さらに消費増税の時の景気対策は今後、予算審議の過程で増えていくと言われています」
松山キャスター
「土居さん、今回の概算要求、100兆円超す要求額になっていますけれど、どう見ていますか?」
土居教授
「過去にも100兆円を超える概算要求額があったということは安倍政権、第2次安倍政権が始まって以来ずっと…」
松山キャスター
「ずっと続いていますよね」
土居教授
「このところ続いているわけですけれど、これまでの6回の安倍内閣での予算編成は、大きく要求を出していいけれども、そのあとで予算折衝でいらないものは削って、それで最終的にそんなに歳出が増えないような当初予算をつくるということをやってきたんですね」
松山キャスター
「絞り込んでいくと?」
土居教授
「はい、そうです。特に『骨太の方針』でそういうことを閣議決定して、特に2016、2017、2018年度の最近3年間は『骨太の方針2015』という2015年6月に決めた閣議決定で、3年間で社会保障費は1.5兆円の増加に抑えると、それから、社会保障を含む政策的経費である一般歳出は3年間で1.6兆円に抑える、…の増加に抑えると、これを実行してきたというタガが一応あったわけですね。それが今回、2018年6月の、今年の6月の『骨太の方針2018』では数値目標は入れないことにしたと。そうすると、数字では予算をいくらまでしか増やせないということは何もまだ内閣としては約束していない、その中での今回の概算要求だったと。そうすると、120兆円強の概算要求を果たしてどこまで絞り込めるのかということなると、目安となる数字が金額としては出ていないので、本当にそれぞれの交渉事とか、与党の中での最終判断とか、そういうものに依存することになるので。かつ財務省のバーゲニングパワーも昨今の不祥事でちょっと弱まっているのではないかという話もありますし、来年は選挙があるという話もありますし、いや、ひょっとすると、消費増税のためなら多少の大盤振る舞いもやむを得ないというような判断に流れてしまうと、ますます歳出を増やすということについての歯止めがかからなくなるかもしれないという心配が、あります」

アベノミクスと『100兆円予算』
竹内キャスター
「過去の安倍政権の予算繰りを見てみますと、概算要求で100兆円を超えるのは5年連続となっています。しかし、編成過程で毎年度絞り込みが行われて、当初予算の枠組みは96兆円から97兆円程度になっています。年度末に補正予算が組まれて、最終的な歳出規模は100兆円前後となっています。では、第2次安倍政権スタート以来の年度末の補正予算について見ておきますと。政権交代直後、2012年度の補正予算でアベノミクス3本の矢の財政出動で10.3兆円、以来毎年、補正予算を組んでいます。伊吹さん、これら補正予算による景気対策をどのように評価されていますか?」
伊吹議員
「補正予算というのは、予算編成後出てきた事態、たとえば、今年であれば。中国地方を中心とした大水害がありますし、明日もどうなるかはわかりません。こういうものに対する対策とか、いろいろなことがあるのだけれども。同時に、これは予算編成のテクニックというのか、ずるいことなのだけれども、たとえば、今年補正予算を組む場合に、平成31年度の概算要求に入っているものを補正予算、平成30年度の補正予算の中で処理をしながら来年度の102兆円をできるだけ100兆円の枠の中に抑えるとか、そういう機能も実は…」
松山キャスター
「計算上の辻褄をあわせると」
伊吹議員
「…あるんですよ。だから、当初だけで議論するというのはあまり意味がないのではないかという気がするんです」
松山キャスター
「なるほど。土居さん、そのあたりは?」
土居教授
「私も、伊吹先生がおっしゃった通りだと思います。まさに結局、特に昭和50年代に財政再建の方法としてシーリングという手法を積極活用して、とにかく前の年よりも要求額自体を減らす。それから、支出を抑制するというやり方をしてきた頃から、当初予算で入らないヤツは補正まわしと言って、補正予算で復活させて面目を保つとか、やりたいことをできるようにするとか、そういうことをやってきたという伝統みたいなものがあって。一時、小泉内閣の時、そういうのは、やめようということにはなったのだけれど、もちろん、震災があったりとか、どうしても当初予算をつくった時には予想できない事態が起こったりすることが近年ままあるものですから、また、補正予算頼みというか、裁量的な補正予算をしっかり…割と多様化するようになってきた。私は、最終的には年度トータルで、補正ではなくて決算の段階で、どれぐらいお金を使うことにしたのか、どれぐらい税収が入るということだったのかというところを見極めるという、最後の姿が本来ある程度当初予算段階から見込んでいて、補正予算を組むにしてもどういう条件だったらこれだけ組むというような、ある種のルール的なものを、もうちょっとハッキリした方がよくて。極端に言えば、総理が思い立ったら補正予算とか、党が、こぞって議員が補正をつくれと、機運が高まったらつくるというのではなくて、あらかじめ当初予算でやるべきものは基本的にはそれで収める。だけど、どうしてもやむを得ないという、ある種の条件を前もって決めておいて、そういう条件、災害が起こったとか、思ったほどには税収が入らなかったとか、そういうようなあらかじめ条件を決めたうえで補正予算をつくるという形にしておかないと、どうしても補正でルーズになって財政赤字をなかなか減らせないと、こういうような状況になっているのではないかと思います」

『総裁選』候補に望むもの
松山キャスター
「現在まさに行われている総裁選で、どういう議論が交わされて、その結果どうなるかというあたりも気になるところだと思うのですけれど、そうした経済財政政策についてそれぞれの、安倍総理と石破元幹事長の発言をちょっとここで見ておきたいと思うのですが、安倍総理は『デフレの完全脱却を成し遂げて戦後最大のGDP600兆円を実現する』と。『若者にチャンスあふれる地方創生』『近年の気象変化に対応した国土強靱化』など、まさにこのあたりは何度か豪雨対策で補正予算を組んでやったりしていますが、そういったことも含め、ある程度公共事業費にもお金を使っていくという意味にもとれると思うのですが。一方、石破元幹事長の方は『検証なき膨張を続ける成長戦略を見直して、財政規律にも配慮した経済財政運営を行う』という方針を出しています。で、もう1つは『地方の自主性を後押しする財源の充実』『もうかる農林水産業の実現』ということで。ただ、ここだけを見ていると、まだ財政規律ついて、どういう方向性を出すか具体論はなかなかちょっと見えてこない気がするのですけれども」
伊吹議員
「わからない…。本来、これは国家運営で財政というのは基本であって、税金というのはもう皆さんご承知のように、議会ができたのはまさに勝手に権力を持っている者に税金をとらさないということですね。だから、英国でマグナカルタというのがあって、王が徴税をする場合、当時は地主、それから、大金持ちの商工業者だと思いますが、そういう人達の同意なくして税はとりませんというのがマグナカルタ、そのために議会、国会というものができた。だから、財政というのはもう政治そのものですね」
松山キャスター
「代表なくして課税なし…」
伊吹議員
「うん、そうそう。それから、今度はどういうところへ使うかということを決めていくわけですから。総裁選のテーマとしては是非お二方とももう少し具体的に、安倍さんはもう10%はやりますということを明言しておりますね」
松山キャスター
「骨太でも盛り込まれていますね」
伊吹議員
「ええ。だから、これはよほどのことがない限りやるのでしょう。石破さんは、財政規律を重視すると言うことはいいのだけれども、そのあとに農業のための財源の確保と言っているのだけれども、これはどういう財源なのか、そういうところを少し具体的にお互いに議論をしてもらって。安倍さんが言っておられたように、誇りのある国・日本を次の世代に残すということは借金まみれの財政を残しちゃいけないと思うんです。だから、そのへんの具体論。1つは、これは経済全体を大きくして、自然増収をかなり大きく出すということですね、これで税収が増えますから。それから、消費増税をするとか、新たな税を入れるという、これは制度的な収入増加措置です。この2つの組み合わせですよ。だから、新たな増税の法案を出すというのはなかなか厳しいから、経済を大きくして自然増収でもって財政を再建していくという主張がやりやすいのだけれど。一方で、長寿化がこれだけ進んでくると、構造的な歳出が増えていくので…」
松山キャスター
「それをどう抑えていくかという…」
伊吹議員
「うん。それを構造的なものではなく、景気の上げ潮だけで確保できるだろうかということを、土居先生にちょっとよく教えていただかんといかんですよね」
松山キャスター
「まさに最後の部分ですね。社会保障費などの抑制というのをこれからどうやってはかっていくかというあたり」
伊吹議員
「うん。だから、社会保障費の抑制と自然に増えていく税金を増やせるような景気の…」
松山キャスター
「循環」
伊吹議員
「…景気を良くしていく政策と。それだけで足りないから今度は制度的な税率を引き上げるとか、新税をつくるとかいうことの、この3つの兼ね合いで財政再建というのはできてくるんです」

膨らむ社会保障『抑制のカギ』
竹内キャスター
「来年度の予算として厚労省は、年金・医療・介護などの社会保障費として昨年から6180億円増の29兆8241億円、その他の政策経費・人件費は1兆8290億円で911億円の削減となっています。一方で、新たな政策の特別枠に2425億円増を要望している。結果的には7694億円増の31兆8956億円となっています。毎年、増え続けている社会保障関連の政策費ですが、伊吹さん、今回の要求規模をどのように評価されていますか?」
伊吹議員
「この新政策特別枠という2425億円をどうするかという問題はあるのでしょうけれども。たとえば、年金であれば65歳から基礎年金をもらえますね。そうすると、65歳以上の人で今後1年間の間に死ぬであろう人と、新たに65歳になるであろう人の差が年金受給者の増でしょう。それに基礎年金の約6万円をかけ、その2分の1を公費で負担しているのだから、その2分の1というものを要求に出せば、これは自動的に決まっちゃうんですよ。長寿者医療で言えば、75歳以上の人口で今後1年間に死ぬであろう人の数と、新たに75歳、これは焼け跡世代と言うので比較的今度は少ないのだけれども、ここで増える人数に1人あたりの医療費をかければ医療費全体が出てきます。その中で長寿者医療についての補助金を算定すれば自動的に長寿者医療の負担分というのは出てくるわけです。だから、現在の制度を変えなければ当然に増えてくる分は、これはカットしたら暴動が起こりますよね。ただ問題は、たとえば、新しいお薬が出てきて、よく言われるオプジーボだとか、このようなのが保険にポッと乗るわけでしょう。それをいちいち財務省とか、私達が見ているわけではなく、期中で審議会にかけて、これは保険適用にしますと言うと、その分を使った医療は1人あたりの医療費の中にボーンと入ってくるわけですよね。昨年度の予算編成の時はそういう新薬の費用があまりにもでかすぎると、医療費の中で。だから、収載単価と言って保険で支払う単価を半分ぐらいにしたとか、そういう作業はこれから行われると思います」
松山キャスター
「これまでにも社会保障費の抑制ということでは、過去、安倍政権の下でもこういう改革が行われてきたわけですけれども、2016年の12月には年金改革法、2016年度は1700億円の抑制をはかったと。これはずっと社会保障費をこの2016年度から2018年度までの3年間、合わせて1.5兆円…」
伊吹議員
「うん、そうそう」
松山キャスター
「毎年5000億円以内に抑制するという方針があったということで、それぞれ薬価の改訂とか、高額医療費の見直しとか、そういったことも含めて、なんとか抑え込んできたということがあったわけですけれど、この目標も今年度の予算からはなくなるということになると、これはどうやって社会保障費を抑えていくかというのが1番重要な問題になってくると思うのですけれども、このあたりはどういう方策をとるべきだというふうに考えますか?」
伊吹議員
「いや、それは先ほど来、私が言ったようなもので、対象人口が増えていく分はカットできませんよね」
松山キャスター
「そうですね、自然増…」
伊吹議員
「自然増ですから。自然増というよりは当然増なんですね。ところが、自然増と言われるものの中には、実際お医者さんが買う時に1点10円…なのだけれども、1点8円ぐらいに買い叩いて医療をやっておられるわけですよ。その10円と8円の差が薬価差と言われるもので、これは返してくださいと言うとか。それから、予算編成の時には話題にもなっていなかった新薬をボーンとある一定の値段で保険適用になる薬だと言って収載してしまうと。そうすると、それですごく実は医療費が保険から出ていくという時に、それは諸外国と比べてその薬価は高すぎるのではないか、少し我慢してくださいとか、そういうことはこれからずっと行われるので。これは5000億円は、3年間でその1兆5000億円をカットするということがあろうとなかろうと不必要なものは国民負担に押しつけちゃいけませんから。それは、私は厚生関係の仕事を長くやっていますけれど、厚生族というのは何でもかんでも無茶苦茶に予算をくれということは言わないと思いますよ、それは」
松山キャスター
「一方で、高齢者に対する、ある程度痛みを伴った負担を求めるという意見もありますけれど、たとえば、75歳以上の後期高齢者に対して窓口負担を現在の1割から2割ぐらいまで増やしてもいいのではないかという意見も一部…」
伊吹議員
「そうです…。これは所得制限と言うのかな、所得によってそれは採用すべきであって。所得のない人に2割、3割と無理なことを言ったっていけないでしょう。だから、教育の無償化も所得制限があって初めて、なるほどと言うので、誰でもタダにしてあげるというのはちょっといかがかなと思いますよね」

予算分配に浮かぶ省庁の力
竹内キャスター
「各年度の当初予算の推移をまとめたグラフですが、直近の数値が先週出された概算要求です。社会保障費の大きさが反映されて、厚労省がずば抜けて多く、安倍政権になってから4兆円近く増加しています。それに続く予算規模は、国交省、文科省、防衛省となっています。伸び率から見ますと目立っているのは内閣府で安倍政権スタート以来、2兆円規模の増加です。土居さん、これらの予算配分から安倍政権の経済財政政策の特徴をどのように捉えていますか?」
土居教授
「もともと内閣府というのは、省庁再編が2001年に行われた時に省庁横断的な政策を統括する形である種、各省にある権限を少し内閣府で束ねて、そこで垣根を越えて縦割りを排除して政策を実行しようというようなことで、内閣発足以降、いくつも新しい部局がその都度設けられてきたという経緯があって。特に安倍内閣で2013年、2014年、特に消費税増税後の財源確保ができたところで、少子化対策、子供・子育て支援をやるということになったものですから、ちょうどその頃、待機児童問題もかなり都市部で深刻化していた、それを解消するためのよりパワフルな政策を講じるために内閣府でやっている取り組みをもっと強く支援するということがあって、内閣府により多く子供・子育て支援を中心に予算が配分されたというようなところが、こういうようなグラフにも表れているのかなと思います。特にその子供・子育て支援というのは厚労省だけではなくて、文科省とか、他の役所にまたがることが結構あるものですから、そういうようなものを1つに束ねるというところで、内閣府の役割というのは、そういう意味で、省庁再編以来の趣旨を踏まえた組織改編及び予算編成の変更というのが、ここに表れていると思います。ただ、だんだんそういうやり方に霞が関も慣れてきたというところがあるのかと。省庁再編してからもう15年以上経って、いまさら他の省庁と交渉・相談をして政策を実行しなければいけないというようなものを、いやいや、私達の役所はこういうことですから、それからは一歩も出ませんよ、みたいな、そういう縦割り丸出しみたいなようなやり方というのは中央省庁の中では通用しないということも役所の人達もだいぶわかってきていて。ところが、内閣府に集めるのはいいのだけれど、結局、内閣府プロパーの職員がそこでいて、ちゃんと省庁横断的に束ねてやっているのかというと、実は親元はもともと厚労省採用の人で、それが内閣府に出向して仕事しているとか、文科省出向者ということで、出向者が寄り集まってやっているということだとすると、別にわざわざ同じ部屋に机を並べてやらなくてもその都度自分の役所から会議室に出向いて、ここはこうしましょう、あそこはこうしましょうと、垣根を越えて相談すれば話は済むのではないのという面も出てきましたから。今後、内閣府がどういうふうにそこを束ねていくのかというのは、これからの課題として残っているのではないかと思いますね」
松山キャスター
「伊吹さんは省庁別の予算のこの流れを見て、特に突出して予算配分として大きいのは厚生労働省だと思うのですけれども、安倍政権になってからおよそ4兆円予算が増えているということで。2000年代初頭の省庁再編の、まさに柱となっていたのが厚生労働省、厚生行政と労働行政を合併させて、医療・介護・福祉も入れてということだと思うのですけれど。この厚生労働省についてはある意味、予算配分があまりにも偏っているので、もう一度分割、あるいは再編、見直すべきではないかという意見もあります。そのあたりは、伊吹さんはどう考えますか?」
伊吹議員
「4兆円増えているのは数字のうえでその通りなのですけれど。しかし、先ほどの自然増というのか、概算要求から2兆円ほど切り込まれているのも厚生労働省ですよね。だから、予算が大きくなるからというのではなくて、現在の日本の置かれている、長寿・少子化、少子化の裏として労働力の不足、従って、働き方の改革、子育てのようなものを、ちょっとあまりにも1つの大臣で所管は大変だと。だから、国会でも厚生労働大臣の答弁というのは非常に多いですよね」
松山キャスター
「はい、多いですね」
伊吹議員
「だから、どういうやり方をするのか。自民党の行革本部でもそのことは十分認識をしているようで。大臣を2人にして役所の再編をした方がいいのではないかという意見は非常に強いですよね。だから、それは予算がでかいと言うのではなくて、結果的に予算はそれについていくわけですけれども、たぶん年金・医療・介護は、普通は同じ役所でやるのでしょうから、これがある限りは、この37兆円のうちのほとんどはこの経費ですからね」
松山キャスター
「一方、先ほど、伊吹さんも話されたように安倍政権になってから2兆円ぐらい切り込まれているのも厚生労働省だという話でしたけれども…」
伊吹議員
「うん、そうそう…」
松山議員
「その2兆円分がだいたい内閣府につけられているということが結構多いですけれども。ある意味、政治主導、官邸主導で、ある特定の政策に特化して予算をつけるという場合に内閣府の場合はつけやすいということがあると思うのですが。そうした動きというのは健全だと考えますか?」
伊吹議員
「土居先生がおっしゃったように、各省庁にまたがる。たとえば、子育て関係の費用だとか、いろいろなものを、それから、地方創生の予算とか、こういうものを1つの省にバラバラに、農水省はいくら、何省はいくらというよりも、総合的に見ていないといけないので、それはそれでいいのではないかと思います。ただ、それをどういうふうに効率的に使うのか。権限だけ、役人というのは財源がないと力が出ないですよね、これは」
松山キャスター
「そうですね」
伊吹議員
「フジテレビもそうかもわからないけれども、制作費がないと…」
松山キャスター
「予算がないと何もできないですからね」
伊吹議員
「だから、予算を持っていないと相互調整機能というのはなかなかやりにくいんですよね。だから、むしろ各省庁を束ねて使う人の値打ちみたいなものをどうするかという議論をした方がいいと思います」

見えない『財政健全化』の道筋
竹内キャスター
「国の借金と言われる国債の発行残高と日銀の保有国債の類型を重ねてみますと、国債残高の増加ペースを追い上げるように日銀が異次元緩和によって、国債の保有額が急増し、直近ではおよそ半分を日銀が持っているという状況です。伊吹さん、この日銀の異次元緩和と国債頼みの財政運営の行き先についてはどのように見ていますか?」
伊吹議員
「日本銀行が国債を持っている、これだけ保有に至ったというのは、これは民主党政権の時の成長率もマイナス、物価上昇率もマイナスという、いわゆるデフレの状態からまず脱却をしなければいけないというので異次元と言われる金融緩和に踏み切った。踏み切ったということは、日本銀行がお札を出して市中にある国債を買いとったと。だから、日本銀行は現在、資産のほとんどは国債だという状況になっているので。このことは金融緩和の結果ですよ。それで財政が国債を出していることとは直接関係ありません。だから、財政の再建をするということは、歳出をカットするか、それとも自然に経済をドンドン大きくして、自然増収を上げていくか。どうもそれだけでは歳出の増に追いつかないから、制度的に消費税率を上げるとか、あるいは法人税の税率を下げる代わりに金融資産課税を強化するとか、この3つの組み合わせでやるんですよね。だから、これは財政の再建と、日本銀行がたくさん国債を持っているという、あとで土居先生からお話を伺わにゃいかんのだけれど、これは大変な実は弊害があります。財政に対しても、それから、今後の景気対策にとっても非常に弊害があるのだけれども。日本銀行が国債を持っていることと財政が国債を発行していることとは直接の結びつきはありません」
松山キャスター
「弊害という部分で言うと、たとえば、概算要求の中では国債費として国債の、いわゆる利払いとか、償還の費用ということで、25兆円ぐらい入っていますが」
伊吹議員
「はい、ええ…」
松山キャスター
「それが、現在のような低金利であればうまくいっているかのように見えるのですけれども。これが、たとえば、金利が上がってくるということになってくると、そこが若干、また不透明になってくるような気もするのですけれども、そのあたりの心配というのはないのですか?」
伊吹議員
「これは非常にあります。これは、いわゆる出口政策と言われるもので。まず日本銀行が1番困るのは、たぶん金利が上がってくるということは、国債の値段が下がるということすから。現在持っている、たとえば、464兆円ですか、短期国債がありますから440兆円ぐらいだと思いますけれども、それの評価損がすごく出てくるわけです、日本銀行としては。それは困るし。それから、景気が将来、逆に悪くなってきた時に、これ以上のカンフルと言うか…金融政策は使えないですよね。そうすると、財政に依存する。すると、財政は国債を増発しなければいけないのだけれども、国債を増発すると供給のあるモノの値段は下がるから、当然国債の金利が上がってくる。国債の評価額が下がってくる。すると、また、日本銀行は大赤字が出てきて、最後は一種の国家機関ですから、国民の税金でその評価損を、尻拭いをしなくてはいけないという大きな問題はあるんですよ。だけど、現在、日銀が国債を持っているということ自体は、異次元の金融緩和の結果なのであって、国債を出しているものを使って金融緩和はしているけれど、財政が国債を出していることとは直接は関係ないです」
松山キャスター
「土居さん、このあたり、日銀が国債をたくさん持っているという状況、政府としての国債の償還に対するリスクというのも、伊吹さんが話されたようにリスクがあると…、このあたりはどう見ていますか?」
土居教授
「伊吹先生がおっしゃったことがその通りであると多くの方が信じてもらえるような状況にしないといけないと。つまり、いわゆる財政ファイナンスという言葉が日銀の周りでは言われている言葉で。つまり、国債発行を国が決めるわけですけれど、それによって賄われたお金が、ほとんど日銀が尻拭いをする形で供給しているというふうに、世の中の人から思われてはいけないと。思われると、まさに日銀が信用を失ってしまうということなので。黒田日銀総裁も、我々は財政ファイナンスをしていないとか、ないしは、安倍内閣の初期の頃は、政府にもできれば財政健全化にしっかり取り組んでほしいということまではっきりと踏み込んで、黒田総裁がおっしゃった時期もありました。ですから、まさに伊吹先生がおっしゃったように、別に日銀が量的緩和をやっているということと、政府が国債残高を増やしているということは無関係であるということを証明するというか、そういうことであるという理解を多くの人に示すためには、政府はしっかり財政健全化の姿勢を崩さず、かつ日銀は日銀のミッションを果たすということが成し遂げられて初めてそうなのですけれども。でも、そうは言っても結局、政府与党で、国債をもっと増発して、どうせ日銀が引きとってくれるのだから、いくらでも国債を増発して、公共事業だの何だのバンバンできるではないかという話が出てきちゃって、かつ一生懸命、日銀もそれを尻拭いするかのようにバンバン買い入れているということだとすると、それはただひたすら日銀は政府に服従して、国債の買い入れを増やして国債残高、国債の保有残高を増やしているということだということに見えてしまうと伊吹先生がおっしゃっている話とちょっと違うではないかということになってしまうので。そうすると、さしもの日銀も通貨の価値に対して信用が失われるということになると、半分そうしている面もあるのですけれども、つまり、デフレを止めるということは通貨の価値をほどほどに落とすということですので、通貨価値を落とさないと物価が上がるという表裏の関係が実現しないので、デフレ脱却のためにはある程度は必要なのだけれども、適度にやらなければいけなくて。それは、これでもか、これでもか、これでもかと日銀が国債を買っちゃうと、本当に適度に通貨価値が目減りするということ、つまり、緩やかにインフレになるということになるのかと言うと、結局、日本銀行は政府の借金の尻拭いをしているだけではないかと見られてしまう。これだけは…」
松山キャスター
「そう見られないことが重要なんですね?」
土居教授
「そうですね」

伊吹文明 元財務大臣の提言 『金を借りるは憂いを借りること』
伊吹議員
「これは国民皆が考えないといけないのだと思いますが、お金を借りるということは憂いを借りるということで。だから、次の世代が汗水垂らして働いたお金を、次の世代の判断で使わせるということを、今の世代の政治家は真剣に考えておかないと、誇りのある美しい日本にはならない。国債の利払いと国債の償還に、お父さんやおじいさんがつくった借金を返済するために僕は働いているのかという日本はあまり感心しないという、そういう憂いを持っております」

土居丈朗 慶応義塾大学経済学部教授の提言 『10%超時代の社会保障の構築』
土居教授
「消費税を10%に上げたあとの社会保障をどうするのかということを本格的に議論するべき時期に来ていると思います。日本の財政を持続可能にするには、社会保障の財政を持続可能にするということが欠かせないわけでして。あいにく、まだ10%に消費税を上げられていないので、現在の政府内部の議論は、あたかも忖度しているかのように、2020年以降の社会保障の姿を踏み込んでき議論できない状態になっている。つまり、踏み込んで、別に消費税が上がらなくても社会保障の話は議論できるのですけれど、その議論をしたとたんに財源をどうするという話になって、消費税は10%だけでは足らないということですよねということがもう明らかになってしまうものですから。2020年代の社会保障をどうするか、ちょっと議論は、なかなか生々しい議論はできませんねという感じに現在の政府ではなっているので。できるだけその呪縛から早く解き放たれて、社会保障のあり方を踏み込んで議論していただきたい」
松山キャスター
「もっと自由に議論すべきだと?」
土居教授
「はい、そうですね」