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2018年8月31日(金)
EV充電『日中共闘』 『世界標準』奪う秘策

ゲスト

山際大志郎
元経済産業副大臣 自由民主党衆議院議員
荒井寿光
元特許庁長官 元通産審議官
津上俊哉
日本国際問題研究所客員研究員
吉田誠
CHAdeMO協議会事務局長

奇手?妙手?EV『日中共闘』 『知財戦争』生き残りの道
生野キャスター
「今週、日本と中国の業界団体は電気自動車の急速充電器の規格を統一、共同開発を進めることで調印しました。日本と中国が協力し新たな規格を生み出すことで、世界標準の獲得を狙える一方で、技術の流出などを懸念する声もあります。そこで北京での調印式に出席した『チャデモ協議会』の事務局長をスタジオに迎えて、電気自動車における日中協力の課題を検証すると共にモノづくりの生き残りをかけて日本はどのような戦略で臨むべきなのか考えます。今週、急速充電器規格の普及を目指している日本の業界団体『チャデモ協議会』と中国の規格を推進する『中国電力企業連合会』が急速充電器の規格を統一しまして共同開発を進めることに調印しました。まず日中が共同開発することに合意した急速充電器について見ていきます。電気自動車の充電器には普通充電器と急速充電器があります。航続距離80㎞の場合の充電時間で比較しますと、充電器や車の種類によっても違うのですけれども、普通充電器の場合は100Vでおよそ8時間、200Vでおよそ4時間の充電時間が必要です。急速充電器はおよそ15分の充電時間となります。吉田さん、この急速充電器というのは具体的にはどのようなものなのでしょうか?」
吉田氏
「皆さんの、スマートフォンとか、PC(パソコン)を想像していただくとわかりやすいと思うのですが、車というのは現在、電気自動車という文字通り電気でモーターを回して動く車ですけれど、エネルギーを電池から供給しています。その電池がなくなった場合に、そこに電気を戻してあげなければいけない。それをするための規格が充電の規格というものになります」
松山キャスター
「普通充電器から急速充電器に移行しているというのは、どういう需要があって、こういう形になっているのですか?」
吉田氏
「移行と言うか、普通充電器というのはだいたい皆さんご自宅とか、それから、会社のオフィスの駐車場、こういったところでやっていただくことが多くて。ですから、スマホのように家に帰れば充電をつないで、電気代が安くなる11時以降に充電して、朝になったら満タン、満充電になっている、こういうものが普通充電器、もしくはオフィスにいて、残念ながら長く働かなければいけない場合は朝行って帰るまでには満タンになっている。ところが、電気自動車が長距離を走ったりしますと当然、電気の場合途中で切れてしまうということでありますので、そういう時はそれこそお茶でも飲んでいる間、トイレ休憩をしている間に満タンにしたいということで、通常の電力よりも10倍、もしくはそれ以上の電力を急激に電池に入れてあげる、充電してあげる、これが急速充電というものになります」

充電規格統一の背景
生野キャスター
「では、主な電気自動車の急速充電器の規格を見ていきましょう。日本は『チャデモ』、中国が『GB/T』、アメリカとヨーロッパは『コンボ』というふうに3つに分かれています。充電器の世界シェアを見ますと日本は7%、中国が87%を占めていまして日本と中国が規格を統一することで世界シェアが9割を超えるということになります」
松山キャスター
「電気自動車ということでは、次世代の自動車ということで、それぞれ日本や中国、アメリカ・欧州と競い合っている状況というのはもちろんあると思うのですけれども、この技術、それぞれの陣営の技術というのは、どれぐらい発展していて、どういう経緯で、日本と中国がここでくっついた方がいいという判断に至ったか、そのあたりはいかがですか?」
吉田氏
「ちょっと昔の話に戻らせていただきますと、チャデモの充電器が初めて市場についたのが2009年ですね。現在からもう10年近く前になります。この時、まだ日本の方の規格としてチャデモが生まれたのですけれど、充電器が1種類、車の方も3種類ぐらいしかなくて、そこから大きく育てる、小さく生んで大きく育てましょうという規格でした。その中で、それでも市場において複数の車と充電ができるというのは、これまでなかなかなかったことでして、それに対し非常に多くの欧米、中国の関心を呼んだことは事実です。その時に、は我々いろいろ話したのですけれども、2つの流れになりまして。中国はその年、既にその年の6月から、実は中国の経産省にあたるところと、それから、国家電網という電力会社さん、こちらとチャデモ協議会、そういったところで、チャデモ協議会の会員の自動車メーカーと一緒に共同開発というか、いったいどういうものなのかという勉強会を2009年に実はスタートしています」
松山キャスター
「その頃から日中共同である程度開発していこうという動きはあった?」
吉田氏
「あったんです。これに対して、欧米は黙っていたのですけれども、3年後に突如、まったく違う規格を出してきて…」
松山キャスター
「ヨーロッパ勢が?」
吉田氏
「ヨーロッパ勢です。そこで先行する日本勢の先行者利益を許さないということで、いわゆる標準の戦争を仕かけてきたと、そういうことになっています」
松山キャスター
「そうした中で、中国は中国で独自の道を発展させようということにはならなかったのですか?」
吉田氏
「その当時、これは東京電力さんの規格をもとにつくっているのですけれども、グリッド側がつくったということがあって、非常にチャデモの規格、ちょっと手前味噌になりますけれども、性能の良い規格でした。そこは互換性というか、汎用性が非常に高い規格でしたので、どの車にも、どういう充電器でも、充電できるという非常に優れた規格だったものですから。中国は良いものを感じとる力というのがあるんですね。そこで中国の方々は、これは非常に共同で研究に値すると見ていただいたのだと思います」
松山キャスター
「荒井さんは、今回の日本と中国と合同で規格を統一するという動き、これはどういうふうに?」
荒井氏
「大変素晴らしいことだと思うんです。私は、知的財産推進事務局の事務局長をやっていて、これは総理大臣の下でやったわけですが、2006年に国際標準総合戦略というのをつくったんです。これまで日本は、こういう標準はアメリカかヨーロッパがつくったものを受け入れて、それをいかに上手にこなすかというのが日本の強みで、やってきたのですが。そうではなく、ルールをつくらないとダメだと。この教訓はNHKのハイビジョンとNTTのiモードですね、いずれも世界で1番立派な技術だということだったのですが、お金も人もかけてやったのですが、世界に普及しないからダメだったということで。結局、良い技術をつくっても、皆に使ってもらう、そうすると世界中の人が喜んでくれるわけですよ。だから、国際標準を日本ももっとつくろうではないかということを10年前に言い始めて、これが今回こういう形で実を結んだというのは大きな成果だと思います」
吉田氏
「こちら、現在チャデモと呼ばれる急速充電のコネクタの断面の写真になります。ここに大きな2つの丸がございまして、ここを大電流が流れることになります。こちらがコネクタ、いわゆる差す側でございまして、こちらが車の受ける側、車側はそういうわけでフタがついております。この丸いところにピンが合って、ガチャッと差し込んでロックをして充電が始まるということになります。ただ、50キロワットというのは、家で普通に使う電力の3日分以上の電力でございますので、それが一度に30分、15分で入ることになりますから、電圧、電流がすごいものがかかります。ですから、この丸いところ、丸い部分のこれは真円度と呼んでいますけれども、まん丸に近くないと、どこかに歪みがあると、そこに電流が集中して火花が飛んだり、ひどい場合には火事になったりということが起こります。こういう本当に円に近くつくるというのは、ご存知の通り日本の技術、日本の工業技術の強みであります。その寸法の精度がどのくらいであるべきか、そういうノウハウもあります、つくる技術もあります。これはいわゆる技術を渡したからといって、安く、悪いものが量産されるという範囲ではないので。そういうところを規格として定めて、日本の強みを世界に広めていきたいと考えています」

チャデモが世界標準になるためには
松山キャスター
「荒井さん、実際にどちらが、本当にコアな技術をキープし続けるかという部分は、これから先もずっと課題として残ると思うのですけれども。ある意味、共同開発することのメリットにまずは乗ってみようということで、日米共同でやるということなのですか?」
荒井氏
「そこは大事な点で。こういうのは、たとえば、日本でいくら現在の段階で良い技術を持っていても日本の普及は小さいですよね。中国と共同でやることによって、中国は充電器、電気自動車の数が多いですから、いろいろなデータが集まってくるんです。と言うことは、次の発展に必要ないろいろなデータ・経験が集まってきたら、それを、日本を使ってまた次に行く、良いきっかけですよね。ですから、整理してみるとこれまで日本国内でやっていたのは第1世代の規格、今回、日中でやるのは第2世代の規格、今度それを、経験を活かして、日本がさらにリードして、世界中に広がる第3世代の規格をたぶん5年とか、10年の間には第3世代でないと世界のニーズに合わないと思うので。そういうことをリードするのだと。現在の技術を抱え込んでいればいいと言っていると遅れちゃうんです」
山際議員
「日本と中国とが今回、このチャデモの話で組んだということですけれども。当然、チャデモ協議会ではそこでストップするつもりはないはずですね。これまでドイツが後出しジャンケンのようなことを9年前にやりましたけれども、ドイツにも誘い水をして、次の規格をつくる時に一緒にやろうや、アメリカも一緒にやろうやと、こういう形で全てのプレイヤーが集まって統一の規格をつくるという方がユーザーにとっては絶対にプラスだし、実はメーカーにとっても絶対プラスです。それは皆で使うものだから、その部分は競争をするのはやめよう。実は世界のビジネスはだいたいそういう方向に進んでいまして。1番大きいのはプラットフォームマーと言われる人達がやっているプラットフォームビジネスがそうですよね。皆が使うものに関してはオープンにして、皆が使えるようなものをして、それで違う形で、そこの上でいろいろなビジネスを成り立たせると、そういう種類のものかなという気がいたします」
松山キャスター
「一方で、規格をある程度オープンにすることのメリットもあると思うのですけれども、たとえば、パーソナルコンピュータの分野で言うと、コアのCPUとか、プロセッサーの部分で、たとえば、インテルみたいな会社はそこの技術をあまりオープンにせずにずっと握り続けて現在の覇権を築いたという過去もあるわけで、ある意味コアな技術までオープンにしてしまうと結局、日本が仮に技術的に優位な分野があったとしても、それが世界的に自由にゲットできてしまうという状況になるとメリットがなくなっちゃうのではないかという見方もあると思いますけれども」
山際議員
「はい、おっしゃる通りです。ですから、そこはどこをオープンにして、コアの部分、どこをクローズにするかというのは各社皆、考えるわけですね。しかし、ある程度のコンセンサスで、ここはオープンでいようねというのが現在の皆が使う部分だったわけです。ですから、この充電器の規格に関してはオープンでいいよねというコンセンサスが得られるところだったから、世界での協調というのがこの日中を皮切りに、ドンドン進むのだろうなと予感させるという話をしたんですね」

中国『EVシフト』の本音
生野キャスター
「さて、昨年の電気自動車の売り上げが57万台を超え、世界一の電気自動車市場となった中国ですけれども、背景には政府が推し進めてきた電気自動車の普及のための政策がありました。購入者に対しては電気自動車を1台購入することに政府から最大およそ75万円が補助金として支払われます。さらに、北京の場合、ガソリン車では、ナンバープレートの抽選に当選してからでないと車を買うことができないのですけれども、電気自動車ならばナンバープレートをすぐにもらうことができるそうです。また、都市部の渋滞緩和のためにナンバープレートの末尾の数字によって走れる曜日を決める走行規制も電気自動車は対象外となっています。一方で、自動車メーカーに対してですけれども、来年1月から生産販売台数のうち、一定比率で電気自動車や燃料電池車など新エネルギー車を製造・販売することを義務づけました。これには罰則規定もあるようです。津上さん、こういった中国の政策をどのように見ていますか?」
津上氏
「これも産業政策と言ってもいいと思うのですけれども。自動車は、これは産業の裾野という点から見ても、人間の暮らしという点から見ても、すごく大きな存在ですよ」
松山キャスター
「裾野が広いとよく言われますよね」
津上氏
「ええ。そういうふうな存在なものですから。たとえば、どういう狙いでやるかということについても1番コアのところにあるのは、ガソリン自動車というところでは、中国はうまくいかなかったという残念感があるんですよ。こんなに一生懸命、育成に力を入れてきたのに、外資の下請け、マイナーパートナーというところまでしかいかなかった。これを、次の次世代には中国が、業界を指導するような、そういうトップに踊り出たいという、そういう願望というのがすごくあります。ただ、それだけではなく、大気汚染対策がある、エネルギー安全保障がある、そういうものすごく大きなところからスタートしているのですけれど。そのためにやった産業政策というのは、中国は産業政策が大好きですけれども、これまでほとんど失敗しているんですよね。それがなぜ失敗するかと言うと、要するに、これからこの産業が大事だと言うと、その産業の、いわば製造段階、製造業のところに一生懸命、補助金を出すのですが、そうすると、工場がたくさん増え過ぎて過剰生産になって皆苦しむ、もう何べんも同じ間違いを繰り返していたのですが。今回のこのEVについては、中国もお金がだいぶある国になってきたものですから、生産側ではなくて需要をいじるということをやったんですね。先ほどの補助金、75万円とありますが、これは2017年なら75万円ですが、2、3年前はもっと出ていたんです。段階的に削減する方向になって、2017年は減って75万円、前はもっとやっていました。かつナンバープレートとか何だとか、皆、要するに需要サイドですよね、これがうまくいったということだと思います。それから、メーカーについての義務づけというのも、要するに、新エネ車の生産が足りないメーカーは、新エネ車をたくさんつくっているメーカーから枠を買わなければいけないという、そういうふうなまったく新しいやり方を導入しているとか。産業政策を失敗した経験をもとに、今回は、おぬし、考えたなというところがいっぱいあって、これは大成功の部類だと思うんですね」
松山キャスター
「これは、ある意味、社会主義経済みたいな形をとっている中国だからこそできる政策なのかなという気もするのですけれども」
津上氏
「そうですね」
松山キャスター
「荒井さん、ここまでして電気自動車を普及させようとしている中国の思惑、これはどういうふうに見ていますか?」
荒井氏
「これは本気だと思うんですね。これだけの産業政策というのはないですよね。買う方にこれだけのインセンティブがあって、しかも、片方には義務までかけるわけですから、需要と供給を一緒に組み合わせた産業政策というのは良い発明をしたのだと思うんですよ」
松山キャスター
「山際さん、日本の車メーカーも以前から電気自動車や燃料電池の車の開発というのをずっと長くやっているわけで、ある意味、技術で突出している部分というのもあると思うのですけれども。それでも中国がこれだけ勢いをもって電気自動車の市場拡大を続けている、これはどういうことなのですか?」
山際議員
「エンジンですね、内燃機関の技術というのはすり合わせの塊ですよね。ですから、一朝一夕でこれに追いつくということはこれはどの国でも不可能です」
松山キャスター
「高度な技術が必要になる?」
山際議員
「ええ。ですから、ドイツにせよ、日本にせよ、アメリカにせよ、自動車メーカーはしのぎを削ってエンジン開発をやってきたわけです。これから後発隊が追いつこうと思っても無理です。ですから、ゲームチェンジをするということで土俵を変えちゃったわけです。そこは中国だなと、戦略性を持っているなというのが1つあります。もう1つ、私が思うのは自動運転の話がありますね。この自動走行の話が入ってくる時に、電気自動車というのは非常に親和性が高いですね。そうすると、その先、要するに、電気自動車を普及させるのだというだけが目的ではなくて、その先、モビリティそのものの形を変えてしまうのだというところまで、実は中国というのは頭に入れて、この戦略は練っていると思います。ですから、そういう意味で言いますと、その戦略はさらに先のところに考えているものがあるということを念頭に入れないとまさに自動車メーカー各社は単なる下請け会社になる可能性があると。要するに、車をつくるところでは儲けが出ないで、そのサービスを提供するところで儲けを出すというビジネスモデルに、これも中国はビジネスチェンジをしていくということを考えていると、そう思ってあたった方がいいと思います」
松山キャスター
「吉田さん、充電器について日中で共同開発という話をしてきましたが、一方で、中国国内では既に充電済みの電池が既にパッケージになっているものをドンドン取り換えて、それを交換式でつけていくという、そういうものが、数分でできてしまうということで人気が伸びているという話を聞きますけれども、それとの違いというのはどういうあたりにあるのですか?」
吉田氏
「違いというのは現在、山際先生がおっしゃられたように、あまりなくて。結局、中国の人達が…政府が考えているのはサービスを提供する、A地点からB地点まで電気でガスを発生させずに移動する。たとえば、ディーディーという中国のカーシェアがありますけれども、彼らの始めたカーシェアというのは駅馬車タイプですね。北京から上海まで行きますと、そうすると、まずスマホにその目的を入れると、だんだん走ってくると電池がなくなってきます。あぁ大変だなと言うと、その次のサービスエリアに入ると何番というナンバープレートをつけた車があるから、それに乗り換えなさいと。だから、車ごとではないですよ、サービスを提供しているので、そこの次のサービスエリアからまた次のサービスまで、昔で言う駅馬車みたいなもので…」
松山キャスター
「馬を乗り替えるみたいな…」
吉田氏
「馬を乗り替えるみたいな、そういう感じです。ですから、そのように、本質はまさに現在、山際先生がおっしゃられたように、サービスの提供というゲームチェンジをもう始めています。ですので、彼らは先ほどのお話でもありましたように電池を交換する可能性もあります。これはバス、トラック、配送業者は基地局があって、これは実は交換する設備にお金がかかるんです、充電器の方がよっぽど安いものですから。こういう基地局があって、そういう大きな交換、すごくバッテリーは重いんですね、300キロとか、400キロありますから。そういうものを交換できる設備が基地局にある場合、それから、乗用車・自家用車のように気軽に街中で充電したい場合、遠くに行く、しかも、シェアした車で行く、いろいろな形のとにかくサービスとして何が最終ゴールなのというところがよくわかっている。ですから、彼らのEV政策というのは、モノづくり、コトづくり、まさに、山際先生がおっしゃったようにゲームチェンジというところで本気であり、かなり進んでいると思っていただいた方がいいと思います」
松山キャスター
「ゲームチェンジと聞くと、我々日本人は、これまで日本のまさに産業の中枢を担ってきた日本の自動車メーカーがこれからどうなっていくのかというあたりが1番気になるのですけれども、現在のシェアをキープしたまま本当に維持できるのか、あるいは、ある程度シュリンクしていくのか、そのあたりはどうなのですか?」
吉田氏
「私も、自動車メーカーにも所属している者ですから、そのへんを考えますと、自動車メーカーは1つには、世の中が要求するサービスの代償である車、これの多様性が求められますので、適切な車を適切なタイミングで適切な業種に出す、これができるようにしなければいけません。たとえば、EVで言えば、電池の容量をドンドン大きくして長く距離を走れますというだけではなくて、実は手軽に街乗りで駅とマンションの間のカーシェアでいいですというのであれば、小さいEVというのも開発しなければいけないでしょうし、もしくは水素の自動車であるとか、ハイブリッド型、それから、レンジエクステンダーと呼ばれる電池がなくなったらエンジンを回して発電するタイプ、こういったものを、いろいろなものを組み合わせて、どれだけお客様のニーズに沿った車が出せるか。これまではお客さんはエンドユーザーと呼ばれる実際に運転されるお客様でしたけれども、これからそこにいわゆるサービス事業者というお客様が新たに入ってくるので、その需要をいかにつかめるかということで。下請けならずに、積極的に仕かけなければいけないというふうには思っています」

どう守る? 『中国新幹線技術流出』の教訓
生野キャスター
「ここからは過去の事例から日本の知的財産をどう守っていくか考えていきます。2011年、JR東日本と川崎重工が新幹線に使われる鉄道車両の先端技術を中国側に供与し、北京と上海を結ぶ高速鉄道が開通しました。しかし、後に中国の車両製造会社が世界最速の時速380㎞で走る新しい車両技術を開発したとして国際特許や、アメリカなどの国々で特許を申請、日本の新幹線技術が流出したとして大きな問題になりました。荒井さん、この高速鉄道にまつわる問題が起きた原因というのはどこにあるのでしょうか?」
荒井氏
「原因は、日本人がまったく、技術は出してもそこで止まると気楽に思っていたんですよ。それから、当時まだ2011年の頃は日本の方が遥かに進んでいて、中国に技術を提供してもそれ以上、中国がまさか追いついて、あるいは日本よりも速いものをつくって、世界で特許を出願するなんて思ってもいなかったんですよ。そういう日本の甘さ、それが第1番の原因です。それから、アメリカなんかはどうしているかというと、外国へ輸出、プラント輸出をしたりする際にはすごく技術の管理がうるさいですよね。これはブラックボックスだから教えないようにするとか。そういうことをやるのに対して日本は親切に、丁寧に、皆教えちゃうわけです。日本人は優しくて親切だと言って、気持ちもいいから、皆こうやって教えちゃうというようなこと。知的財産、あるいは技術がいかに大事なものかという認識が輸出している人にはないんですよ。だから、会社の中でも、そうやってモノが売れればいいと思っている人と、技術を管理している人はまったく別。従って、契約書にもほとんど書いてない、これが原因ですね」
松山キャスター
「津上さん、特にこの新幹線の例を見ていると、日本人としては技術で先行していたのにちょっと悔しいなという気持ちが出てくるのですけれども…」
津上氏
「そうですね」
松山キャスター
「日本の新幹線技術がなかったら、仮に。そうしたら中国はどうなっていたのですか?」
津上氏
「いや、まさに、中国は最近、中国4大発明の1つとして高速鉄道と言いだして、お前、いい加減にしろよとさすがに怒ったのですが、私も。もし日本がそうやってかなり甘い新幹線技術の供与みたいなことやっていなかったらどうなったかと言うのは、答えは非常に明らかで、中国はヨーロッパのTGV方式が全部、席巻をしてと、日本は高速鉄道もガラパゴスになりましたということで終わっていたんですよね」
松山キャスター
「あぁ…」
津上氏
「20年近く前になりますけれども、当時、中国も高速鉄道をやりたがっていたのですけれども、そこで日本式か欧州式かという争いがあったわけです。当時の感覚としては、もう欧州の優位は動かせないよねという感じだったんです」
松山キャスター
「あぁ、そうだったんですね」
津上氏
「それをひっくり返したという部分はあるんですね。ただ、そのひっくり返した時に、おっしゃるように、ちょっと脇が甘かった部分というのがあると思うんです。それは派生技術という部分の技術の取り扱いだと思うんですね。ベースは日本なのだけれども、そこにいろいろな独自のアレを加えましたというのは普通、派生技術と言って、そういう時にはベースの技術の発明者にもそれなりの権利を認めるみたいな、そういう条項があるはずなのだけれど、そこらへんが抜けていたのかもしれない。それから、鉄道にちょっと特殊な事情として、この技術はJRさんのものなのか、メーカーさんのものなのか、そこらへんが曖昧ですよね。技術開発とかなんかを発注しているJRさんみたいな方が、実は力が強くてみたいなこと…、私らは業者ですからみたいな感じだとすると、業者感覚の人達は自分の技術としてそれを守るというところについて、今ひとつ当事者意識が薄いみたいなことになるのかもしれない。そういう事情もあったかもしれない…」
松山キャスター
「ただ日本の技術をもとにしてつくられた中国の高速鉄道で、いまだに日本が恩恵として得ている部分というのがあるのですか?」
津上氏
「そこは、皆さんは言わないですよね。実は相当儲かっている部分、会社があるわけですよ、中核部品みたいな形で。これは日本製なので、みたいな形で相当な量を輸出して、それなりに良い商売をさせてもらっている会社というのは実はあるのだけれども、皆、こうやって言わないのね」
松山キャスター
「なるほど」
津上氏
「だから、そこのところはアレですけれど。もうちょっと中国にはオリジナルをつくった日本に対する敬意と、それから、利益の分け前をもうちょっと払ってほしいなという感じはするんですね」
松山キャスター
「山際さん、このあたりは現在にもつながる話だと思うのですけれども」
山際議員
「ええ」
松山キャスター
「たとえば、日本はリニアモーターカーの技術もありますけれど、現在どういう対策を日本としては考えているのですか?」
山際議員
「現在は、先ほどちょっとお話ししようとしてできなかったのですが、中国の知的財産のレベルというのは、本当に特許の件数がこれだけ世界一になっているぐらいに、知的財産に対する意識はこの数年間でドーンと高くなったわけです。何が次に起きているかと言うと、これまでは言ってみれば、技術を盗る側、盗む側という言い方は悪いかも…、だったのですが、これだけ特許があるわけですから、今度はその技術を守らなければいけない側に一気にまわってきているんです」
松山キャスター
「中国自体が?」
山際議員
「中国自体が。ですから、知的財産の話し合いというのは同じ土俵で、日中で話ができるところに実はもうきていまして。ですから、そういう意味で言うと割にフェアなことができるのかもしれません、知財の分野に限ると。一方で、問題なのは、商習慣の問題、これは政府が握っていますから、中国の場合は。技術を供与しない限り、あるいはコア技術をオープンにしない限り中国の国内でビジネスはやらせないということを言ってくるんです、平気で。ですから、新幹線の時はそうでなかったのかもしれませんが、そうすると、先ほどのように欧州と日本との間でどっちをとるかというので競争している時に、中国の市場を少しでもとりたいと思うならば、技術を提供してでもマーケットをとりたいというのが、メーカーとしては、これは当然そうなるわけですね。結果として、それが盗まれると言うか、あげてしまったものだから、それを磨かれて新しいものにされるというようなことにもなる。ここの部分は、本当は世界全体でそういうことをやってはいけないということで、たとえば、TPPの枠組みというのはまさにそうなっていまして、技術供与を強要してはいけないというような項目がきちんと入っているんですね。ですから、もし中国がTPPの枠に入ってくると、日本から技術を提供されない限りはビジネスをやってはいけないというムチャクチャなことは言えなくなる。そういう意味で、世界の中の通商のルールというのは大変重要だということだと思いますね」
松山キャスター
「吉田さん、そういう意味では、日本としてこれから急速充電器ですか、電気自動車の技術の1つを共同開発するうえで、知的財産の保護とか、日本としての技術の管理、これをどうやって守っていくかという、このあたりが重要になってくると思うのですけれども、どういうふうに考えていますか?」
吉田氏
「守るというか、先ほど来ありますように協調領域に共通して入っていく、こういう場合は、結局は何を出すか、何を共通のポットに入れるかというのが大事ですから。そこにどれだけ日本として貢献でき、中国の方が、あぁなるほど、これは良いのを出してくれたと思って満足していただくか、まずは、そこは大事になると思います。そのうえで、さらにポケットにはまだ1個、2個残っているというのが理想ではないかなというふうに思います」
松山キャスター
「最後の重要な部分は、グリップをちゃんと押さえておいてということは考えなければいけない?」
吉田氏
「考えなければいけないと思います」

日本の知財『モノづくり』 生き残りの戦略は?
生野キャスター
「日本のモノづくりが生き残っていくためには、山際さん、どういったことが必要だと考えますか?」
山際議員
「実はこれまで日本はモノづくり大国だと言われてきて、モノをつくることで、それを商品化して、価値をつけて、それを売って、豊かになる、ということをやってきたわけですが、2000年代に入ってIT(情報技術)の社会が当たり前というようになってから、このビジネスモデルが立ち行かなくなりつつあるというのが現代です。簡単なことを言うと、いわゆるプラットフォーマーと言われる人達が情報をバーッと無料で集められる仕組みをつくって、その情報に基づいて、ビジネスを仕かけてくるということが普通になってきている。これをイノベーションの立場から考えますと、イノベーションのもとになるのは知的財産、知財である。その知財でこういう新しいものが発明されました、それを磨いて、磨いて、商品にして価値をつけて売りますというのがこれまでのやり方。ところが、データからものを考えると、人々が何を必要としているかということが、それがわかる。この人々のニーズがこれだったら、そのニーズに合うものはどういうものなのだろうというのを考えて、それに必要な技術は何だろうかというところから、ある技術を持ってきて、組み合わせて、それで提供する。iPhoneというのはまさにその典型ですよね。こういうかっこいい携帯電話がほしいというニーズがあるのなら、それをつくるためにはどうすればいいのだろうかと言って、技術は自分のところでつくらなくてもいいから、いろいろなところから集めてきて、アッセンブルして、それを売る。これがもう普通になってきていると。ですから、日本はイノベーションのやり方というものを、1本足打法、それは知的財産をまずつくって、その知的財産を磨いて、ビジネスをするという1本足打法から脱却し、現在のようにニーズからビジネスを起こすというやり方もありますし、現在ある技術を組み合わせて何か新しいものをつくるというやり方もありますし、1本足から何本足かの打法に変えていかないといけないですよねということはだいぶ言われるようになってまいりました。ですから、そういうことをやれば、実は日本の企業にも、日本の大学にも、日本人私達1人、1人にも、アイデアもあれば、技術もあるわけなので、それをもう一度見直しをして、組み直してネットワークすると世界の中でキラッと光る国としてさらに発展することは間違いないと思いますね」
松山キャスター
「荒井さん、山際さんの話にもありましたけれども、モノづくりというのを、日本のモノづくりをきちんとキープしていくためには知的財産というものに対する認識をあらため、それをキチッと守って、しかも、防御していかなければいけないということだと思うのですけれども、日本としてはどういう戦略を描くべきだと?」
荒井氏
「これは、では、日本は本当に守っているかと言うと、知的財産を、実はあまり守っていないですよ。どういうことと言うと、裁判所に行って知的財産を侵害したんですと言っても、ほとんど賠償額が認められない。弁護士費用も出てこない。それに対して、アメリカはどうかと言ったら1000億円以上の…」
松山キャスター
「すごい訴訟をよくやっていますよね」
荒井氏
「だから、これだけの発明をする、知的財産とることの意味はアメリカに行くとあるんですよね。では、中国はどうしているかと言うと、中国はこれだけ金をかけた知的財産を侵害したら、けしからんということで、アメリカ方式を採用したんですよ。賠償額を高くする、そうすると、知的財産の価値が上がるから、一生懸命良い開発をするのだということに踏み切ったんですよ。だから、アメリカと同じ流儀で専門の裁判所をつくる、それから、賠償額を高くする、弁護士を増やす、こういうことをやっていまして。と言うことは、世界を見渡した時にアメリカと中国は知財強国というのを目指して、それとアメリカと中国でそういうルールをつくっている時に日本は侵害してもほとんど認められないと。では、あまり特許をとっても、知財をとってもしょうがないというようなことだから、外国企業もあまりとらなくなってきたんですよ。そういう意味では、知財のガラパゴスになっていまして。では、どうしたらいいかと言ったら、良い開発をしましょう、良い研究開発をしたら、それは特許として、知財として裁判所できちんと認めてくれる。従って、他人の侵害なんかしていてはいけないという、アメリカ・中国流に早くシフトしないと、これからの国際競争に負けますね」
松山キャスター
「津上さん、そのあたり、国際的に、日本が生き残るための知的財産の保護策、どういうふうに考えますか?」
津上氏
「荒井先輩がおっしゃったまさにそういうことだと思うのですが、ちょっと知財からは離れるかもしれませんけれども、私、昨年アメリカにしばらく滞在させてもらって、最初に感じた、あっ日本と違うことは何かと言うと、データフロー、データフローということがすごく言われていたわけですね。現在、世界の通商戦略の最先端というのはまさにデータをめぐる攻防みたいなところにいっているのだけれど、日本はそこについての議論をこれまでどれだけしてきたかと。私は恥ずかしながら行った時に。データフローって何?という感じだったんですよ」
松山キャスター
「あまり聞かないですよね、日本では?」
津上氏
「ええ。そこらへんの、ルールメイキングだとか、そういうルール、いろいろな仕組みをつくって、それで守っていくというふうな、そういうところは日本は弱いということの1つの表れだと思うので。そこらへんも含めて、強くしていかないといけないのではないかなと思います」
山際議員
「これは日本も何もやっていないわけではなくて、『Society 5.0』という言葉で言われる、次の生活社会をこうなりますというものを…」
松山キャスター
「AI(人工知能)時代の社会ですね?」
山際議員
「ええ、…見せて。それはデータ社会になるということはちゃんと謳いながら、そこは気づいてはいるんです。ただ、おっしゃるように、それに気づいているのだったら、それを裏打ちするシステムがちゃんとできているのですか。それに価値を見いだすのだったら、その価値を守るだけのシステムなっていますかと言われると、お二人のおっしゃる通りで、まだまだ不十分であることは間違いないですね。ですから、これはロー・メイカーの方に与えられた宿題だと受け止めて、一生懸命やりたいと思います、これは」
松山キャスター
「吉田さん、そういう意味では、知財の保護も含めて、共同開発というのももちろん、世界標準に向けての大きな動きという中で、念頭に1つ置いておかなければいけないのは、この知財の管理という、そのあたりということですか?」
吉田氏
「私どもはモノづくりの、コトづくりの立場ですので、精神論になって恐縮ですけれども、継続すること、謙虚に学習して継続していくこと、データから学ぶというのがありましたけれども、我々が今回先行しているのも2009年から最初につけたという実績があります。それから、メーカーとしては1番、電気自動車を売ったという実績もあります。こういうところからお客様の使用方、データを知っていて、それが形になっていく。これを止めたところで、一気に追い抜かれますから、管理ですとか、そういう仕組みのところは、ちょっと我々が、僭越ながら言うというのもおかしな話ですけれど、我々はとにかくもうそういう、学ばれる、盗まれるモノをつくり続ける。マネされるくらいのものをつくらないと置いていかれるというくらいの…、ちょっと精神論で恐縮です」
松山キャスター
「あくまで常にその最先端を目指していく?」
吉田氏
「はい」

吉田誠 CHAdeMO協議会事務局長の提言:『一歩前へ』
吉田氏
「『一歩前へ』。前へというのは当然、継続という意味もありますし、先んじるという意味もあります。精神論ですがとにかく盗まれる立場になりたい。継続してがんばりたいというふうに思います」
松山キャスター
「盗まれるぐらい嘱望される技術を持つということですね?」
吉田氏
「はい」

津上俊哉 日本国際問題研究所客員研究員の提言:『王道を行く』
津上氏
「ちょっと綺麗事な明後日のことを言っているみたいですが、心はどこにあるかと言うと、日中が連携するというのは、このチャデモの提携だけではなく、日中連携全てについて、欧米の猜疑心とか、ジェラシーを買うリスクがすごく高い話です。ですので、スケベ心なんかを出すと、必ずやられるということで。公明正大、オープンに。そういう意味で、王道を行くという姿勢が大事だと思います」
松山キャスター
「追いつかないぐらいの技術を目指していくというのもそのうちの1つなのですか?」
津上氏
「まぁ、それもありますね。皆で使ってくれよというオープンな姿勢ということだと思います」

荒井寿光 元特許庁長官の提言:『ルールを作るものが世界を制する』
荒井氏
「私はルールを作るものが世界を制すると。これは、三流企業はモノをつくる、二流企業は技術を開発する、一流企業はルールを決めると、こういうふうに言われているんですね。これはスポーツの世界と一緒で、日本がせっかく強くなって、金メダルを獲るようになったら、ルールが変えられて負けていくということで…」
松山キャスター
「よくありますね…」
荒井氏
「よくありますよね。同じことがビジネスでもありますから是非ルールメイカーになっていく、そういうことが1番大事なことではないかというふうに思います」
松山キャスター
「ルールメイキングの中に、プロセスで日本は絶対入っていくべきだと?」
荒井氏
「及びルールメイキングのリーダーになっていこうと」

山際大志郎 元経済産業副大臣の提言:『仲間づくり』
山際議員
「私は『仲間づくり』。5年前と中国が変わったという話をしましたが、中国はこれから21世紀最大のマーケットになるわけですね。そうすると、プレイヤーとして中国が入ってきた時の世界のルールをどうやってつくっていくのだろうかと、これは各国真剣に考えなくてはいけないと思います。中国を排除してもダメですし、中国に従ってもダメだと思うんです。そうなっていくといかに中国を巻き込んだ形で世界のルールをつくっていくかということを真剣に考えなくてはいけなくて。そうなると、日本はどこと戦略的に組んで、どこと仲間になって、その世界のルールをつくっていくかということをこれまで以上に戦略的に考えて、かつその中には中国が入っていくということなのだろうと思うんです。これはこれまでとは考え方をちょっと変えなくてはいけない、そういうステージに入っているのですけれども。まだ世界のルールづくりの場というのは西洋諸国がつくった場のままで中国は入っていないということが多々あるわけです。ですから、それは日本がその発言をしていく中で、新しい場をつくっていこうということもやるべきだと思います」