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2018年8月22日(水)
『脱下請け』に商機? 中小企業の生き残り策

ゲスト

山本昌作
HILLTOP株式会社代表取締役副社長
山口義行
立教大学名誉教授
中小企業サポートネットワーク『スモールサン』主宰

『下請け工場からの脱却』 HILLTOPとは
竹内キャスター
「今夜のテーマは、中小企業の成長戦略です。中小企業は日本におよそ380万社。全企業の99.7%を占め、日本経済は中小企業によって支えられていると言っても過言ではありません。そんな中から急成長を続ける中小企業のカリスマ経営者を迎えて、中小企業の生き残り戦略、今後の成長戦略を考えます。では、HILLTOPの歩みについて見ていきたいと思います。もともとは高度経済成長期の真只中1961年に山本さんのお父様が創業した山本精工所という町工場でした。1977年、今日のゲストである次男の山本さんが入社しますが、当初はまだ自動車メーカーの下請けが中心の工場でした。1981年、下請けをやめることを決断し、売上げの8割を喪失してしまいます。1984年、コンピューターと加工機械をオンラインで結ぶシステムを構築することに着手、1991年には、いわゆる1点物を短期間でつくる独自のシステムが完成します。軌道に乗り始めた矢先、2003年に火事で工場を消失してしまいます。そうした苦難を乗り越えて業績を伸ばし、2014年には社名をHILLTOPに変更。アメリカ進出も果たしました。山本さん、そもそも最初、山本精工所、これを始めたきっかけというのは?」
山本氏
「そうですね。これは私の兄のことになるのですけれど、私の兄がたぶん2、3歳の頃だと思いますが大病しまして。大病をしたものの命を助けるために打った薬の副作用で、実は全聾になるんですね。私の親父もお袋もたぶん商才はなかったと思います。親父は職人でもなくて、たぶん何か得意なものを持っていたわけでも何でもないのだけれども、お袋がこの子が成人した時に職に就けへんかったらかわいそうだというので、親父のケツを叩いたのでしょうね。だから、そうやって興したので…」
松山キャスター
「兄が将来、仕事ができるようにということで会社をつくったと?」
山本氏
「ええ、そうですね。もうまさに親心で興したのがこの会社ですね」
松山キャスター
「いわゆる山本精工所が車メーカーからの下請け工事という形だった?」
山本氏
「はい」
松山キャスター
「それを8割方やめる決断をしたと、年表の中に書いてありますけれど」
山本氏
「そうですね」
松山キャスター
「これはすごい判断だと思うのですけれど、どうしてこういう判断に?」
山本氏
「うーん、私が入社する時にまず私はもともと親父・お袋達が、朝から晩まで油だらけになっている、もう本当に頭の先からつま先まで油だらけなっているのを見ながら、感謝はするけど、自分でやりたいかどうかで言うと、全くやりたくなかった。大学を出て、さらさら継ぐ気もまったくないし、そんな気はなかったのですが、商社に内定も決まっていたんですけれども。たぶんお袋は怒るだろうなと思いながら、内定が決まったことを言おうと。だから、お袋から言う、兄を支えるのはお前達2人やでと、私、兄弟は3人兄弟ですから、弟と私は兄貴を支えなさいというのが最初からちょっと運命的に書かれていたのだと思いますけれども。きっとこれは怒るよと思ったのですけれど、もう案の定、怒るところではなかったです。激怒で。でも、激怒されても私は自分の人生なので戦うつもりだったので、それは仕方ないなと思ったのですが、途中からお袋がボロボロ泣くんですよ。お袋に泣かれて平気でいられるわけがないですよね。その時に嫌で、嫌でたまらない鉄鋼所の中に入ることを決断するんですね。やることと言うと自動車部品の超大量生産、その中に私は、この大量生産のところに研修で行ったりする時に、行った先で、私はその部の社員さんに問いかけをしたんですよ。1日に7000個も同じものをやって、ボタンを押してやるのですけど、時間の経つのが遅い。それから、非常に毎日同じ単純労働なのですごくつらい。こんなことで耐えられるのですかと言うと、そこの社員さんが言いました。それはどう言ったかと言うと、あぁ、君な、頭の中で仕事を考えているやろ、何か考えているやろ?、いや、それは何か考えています。それはあかんのや、いいか、頭の中を真っ白にするねん、何も考えるな、体だけ動かしていたら、そのうちアッと品物がなくなっていると。こうでないとこの商売はもたへんから、そうしなさい、と言われたんですよ。これはたぶんきっかけですね。だから、もうこれはやりたくない。このラインを3ラインも自分達の会社の中にあることは、自分にとっては苦痛の何物でもなかったんですね」
松山キャスター
「あともう1つ、2003年ですか、火事で工場を消失とありますが?」
山本氏
「はい、そうですね、ええ」
松山キャスター
「この時、自身も酷いお怪我をされたという話を聞きましたけれど?」
山本氏
「これでも覚えていますけど、12月の22日、もうほとんどクリスマス前だったんです。現場で火事があって何かが燃えているというので私は消火活動に行ったのですけど。その時に消火器の泡で滑って転んで、有機溶剤を被るんですね。全身火傷だったんですよ」
山口名誉教授
「火だるまですね?」
山本氏
「火だるまですよ…」
松山キャスター
「有機溶剤というのは火が燃え移りやすい…」
山本氏
「そうですよ。引火点が60℃ぐらいなので、周りの温度が上がっているとそこで引火しちゃうんですよ。爆発が2回から3回ありましたからもう助からないと思いましたけれども。ですから、入院をして1か月は意識がありませんし、意識がないというよりも意識を殺されるんですね、痛くて、たぶん。全身、皮がありませんから、焼けて…」
山口名誉教授
「うわー…」
山本氏
「だから、そこは空気中の雑菌が温床になるので、それで、内臓も全て合併症で全てやられているので、たぶんもう生きられないというのはハンコを押されていました…」
山口名誉教授
「へえ…」
山本氏
「そんなこんなして、4か月ほど入院をして復帰できるかどうかもわからなかったのですけれども…」
山本氏
「社員達がその間はすごく一生懸命守ってくれて、気遣ってくれた。そうすると、それまでは自分はヒットシステムをつくって、なんとなく順風満帆で、IT(情報技術)100選という賞もいくつももらって」
松山キャスター
「順調に…」
山本氏
「たぶん、もう本当にそういう意味では天狗になっていたのではないかなと思うんですね。自分の中では、あとそんなにたくさん生きられないと、その時に思っていますから、たぶん自分がいつも言うのがロスタイム、現在だとアディショナルタイムと言うんですか、…の中で生きていると思っているので」
山口名誉教授
「あぁ、なるほど」
山本氏
「いつピーッと吹かれてもおかしくない、そんなふうに思いましたから。だから、すごく早いスピードで意思決定をずっとやり始めました。だから、火傷する前と後で極端に変わったのは、意思決定のスピードだけ」
松山キャスター
「経営哲学そのものも、それが1つの大きな転機になって変わってきた?」
山本氏
「はい、そうですね」

中小企業の生き残り策 『利益率20%超』の秘密
竹内キャスター
「HILLTOPでは、こちら、脱下請けによって取引先を増やし、多品種・少量生産したことによって利益率がアップし、現在はおよそ20%から25%の利益率を確保しているそうです。山口さん、この利益率どのように評価されますか?」
山口名誉教授
「驚異的ですよ。普通製造業でも。たとえば、電子部品とか、いろいろな製造業があるでしょう、食品とか。だから、業種・業態によって違いますけど、ちゃんと利益を出しているところでも、2%、3%ですね。5%というと結構良い業界ですよ」
松山キャスター
「8割ぐらいの外取引先を一気にやめたという話がありましたけれども」
山本氏
「はい」
松山キャスター
「目算が、その時からあったのですか?ここまで利益率が上げられるという…」
山本氏
「いや、まったくなかったです。8割の仕事をそうやって失ってから、3年間路頭に迷いましたから。その間に本当になけなしのお金で、割賦で機械を買うとか、しましたけれども。技術をためることに必死やったですね。飯も食えなかったので、3年間は」
山口名誉教授
「その時は、従業員のリストラとかしなくて済んだのですか?8割も売上げが減って…」
山本氏
「三ちゃん企業に近いぐらいだったので、ほんのごく数人でしたから。これまであった蓄えで、それは…」
山口名誉教授
「脱下請けができない最大の理由は、自動車産業は量が多いですよ、何と言っても仕事の…」
松山キャスター
「そうですね」
山口名誉教授
「ですから、それをやめてしまうと、一気に雇用を減らなければいけない。私の知っているところでも、50人いた従業員が脱下請けを、自動車大手自動車のメーカーの下請けをやめた途端に10人まで減りましたね。仕事の量が減っちゃうからです。だから、8割損失というのは、それはよくわかるのですけれど。それが怖くて、皆、普通できないのですけれども、これはもう大変な決断だと思います」
山本氏
「ええ、やめちゃいました」
山口名誉教授
「ハハ…」
山本氏
「でも、そこから、本当に下請けをやめたのかと言うと、そうではないですね。そこからまた新しい仕事…。ただ、超大量生産をはやめたのだけれども、中量生産だとか、小量生産にいくわけですよ。でも、お客さんから言うと非常に協力的な良い会社だからというので信頼関係が生まれて、そこの依存率が、5割、6割になりますね。6割ぐらいになってくると、こんな言い方したらいかんのですけれども、態度が変わりますね」
山口名誉教授
「あぁ…」
山本氏
「それまではパートナーだと扱っていたものがだんだん不条理なことを言うことになるんですね」
山口名誉教授
「うん、下請け扱い…」
山本氏
「ええ、なるんですね」
松山キャスター
「なるほど」
山本氏
「私は結構、我慢をする方ですけれども。このへんでヒューズがプチッと切れたような音がして、あぁ、もうダメだなというので、喧嘩をしまして…」
松山キャスター
「あともう1つ、多品種・少量生産ということが大きな柱になっているということですけれども、普通に考えると、同じ製品を大量生産して、コストを下げて、それで出していくというのが中小企業の鉄則というか、1番の儲けを生むポリシーだと思うのですけれども。それとは逆の方向に行っていると…これは逆にコストがこの分、上がるのではないかと、一般的なイメージとしては思ってしまうのですけれど、そこはどう解決されたのですか?」
山本氏
「確かに大量生産というのは楽ですね。1回段取りしたらずっと流せるので、確かに薄利かもわかりませんが。ところが、脳裏に浮かぶのは超大量生産をしていた時の、私の基本的な概念は、人は単純労働作業から解放されなければならない」
山口名誉教授
「うん」
山本氏
「これが私のポリシーなので。それをずっと社員達がやっているのを見ながら、面白くないよなぁ、それは超大量生産ではないけれども、1000個も2000個も同じものをつくっているのは嫌だなというので、このロットサイズを落とすわけですね。そうすると、とたんに利益が生まれなくなるんです。それは当然の話で。たった1個のものをつくるのにすごく、私達が想像する10倍ぐらいの時間がかかるのですけれど。ここを眺めて見て、あっ、皆、自分達の思い通りにやってしまうことを少しパターン化したらどうなのだろう。そうすると、1回つくったものがリピートオーダーしてきた時にそのパターンに当てはめると普通に加工できるだろう。特にマシンセンターとか、いわゆる工作機械は頭脳を持っていますから、コンピューターが持っていますものね」
山口名誉教授
「うん」
山本氏
「私から言うと、この機械はどうして人がずっと張り付いて仕事することが必要なのだろうというのが不思議でたまらなくなってくるんですね。思い切って、この機械をかける時に、その加工をする時に極端に人をかけないでモノづくりができるようにしようという方に閃いていくんですね。そんなことをずっと考えている」
山口名誉教授
「多品種・少量だけれど、効率化を徹底的に進めていくと」
山本氏
「そうです」
山口名誉教授
「現在の話を聞いて面白いと思うのは経営目線で多品種・少量にしないといけないとか、脱下請けをしなければいけないのではなくて、これでは人間が働いていて面白くない…」
山本氏
「そうなんですね」
山口名誉教授
「つまり、そこから全部出ているんですよね。でも、結果論的に言うと、たとえば、大量生産型のところというのは現在、アジアに全部獲られてしまって、アジアではすごく低コストでできますから、それではもう競争が成り立たないですよね。だから、すごく低利益になって、下手したらもう赤字、ただ動かしているだけみたいな。だから、この多品種・少量型、量産型から脱出したというのは時代的に考えても極めて正解です」
山本氏
「あぁ…」
山口名誉教授
「でも、だからやったわけではなく、やっていてつまらないのではないかということから始まった…」
松山キャスター
「仕事として面白い方を追求していったらたまたまそれが多品種・少量生産という道だったということですね」
山本氏
「そう」
竹内キャスター
「部品はどのような製品などに使われているのですか?」
山本氏
「ほとんどのものがプロトタイプになりますので、たぶん世の中に出る前のものになるのだろうと思います。いや、何か開発したいとなると必ず1つ目のものをつくろうとするわけです。そういったものだけがきますから、実に様々なお客さまからこられますね。医療だとか、宇宙だとか、ホビーだとか、そんなこともありますから、そういったところからも、初めてのプロトタイプのものを注文されますね」
松山キャスター
「いろいろなメーカーが試作品みたいな形で、まずこういう形でできるかどうかというのをリクエストしてくるということですか?」
山本氏
「はい、そういうことです。結局、1個だけをやるところがあまりにも少ないので、集中するわけです。特にアメリカは特に1個…、1個、1個というものを好まれる土壌ではありませんので、私達はアメリカに出て注目はされます、いろいろなところからオファーがありますね」
松山キャスター
「あと宇宙開発に関わるようなものの部品についてもつくられている?」
山本氏
「そうですね。日本では現在、HAKUTOと言われる、グーグル…、サプライズと言いますか、月に飛ぶというヤツがありました。そういったものの、ローバーの足まわりとかも全て…」
松山キャスター
「月面探査…」
山本氏
「月面探査のヤツですね」
松山キャスター
「こういう車輌みたいなヤツですか?」
山本氏
「ええ」
松山キャスター
「ポリシーの1つとして、職人はつくらないと?」
山本氏
「ええ」
松山キャスター
「日本の中小企業というのは職人気質で、俺の手が覚えているのだと、この技術は、みたいな感じで、それを継承していくみたいなイメージがあるのですけれど、そういうのとはまた別な路線を行くということなのですか?」
山本氏
「そういうことよりも、職人を私は少し否定をしているんですね。私は、京都は職人の街なので、こんなことを言うとすごく怒られるのですけれども…」
松山キャスター
「老舗がいっぱいありますよね」
山本氏
「本当の職人と、にわか職人というのがあるんですよ。私はこの世界に入った時に、そのにわか職人ばっかりだったので、実はにわか職人は自分がちょっと何かをやって成功してモノができ上がったものを、それを頑なに人に言わないで守るんですよ」
山口名誉教授
「うん」
山本氏
「誰かが、教えてくれ、と言っても、そんなもんは教えられへんと。ほんまに見たかったら俺の背中を見て学べ、みたいな話ですよね。いや、どういうことだよ…」
松山キャスター
「ドラマで、よくそういう…」
山本氏
「ありますよね。でも、本当の職人は違うんです。本当の職人は現在やっていることを、でき上がっても、まだまだやりたいこと、もっといいことあるだろうとやって、突き止めるので、やってきたこの元は全て皆教えていくんですね。ウチの会社にも、ウチの社長、兄も超職人ですけれども、もう一方、いわゆる技能検定の特級を3つ持っている方がいらっしゃるんですよ。この方はお歳がもう70近いのですけれども、でも、いまだに私達社員に自分の持っているものを全部教えますよね。本当の職人とはこういうことなのだろうなと思ったりしますよね。だから、にわか職人が持っているものを、それは定量的にそれ以外に方法がないというのが私の概念ですね」
松山キャスター
「にわか職人とは違う本物の職人が持っているノウハウ、これは何とか継承して、その技術を製品に活かしていくということだと思うのですけれども…」
山本氏
「はい」
松山キャスター
「そのための何かシステムというのか、何かそういうものを開発されたということなのですか?」
山本氏
「うーん、そうですね。システムを開発するのではなくて、にわか職人と職人の情報を引き出すのが1番の大きな苦労したところになるのだろうと思います」
松山キャスター
「なるほど」
山本氏
「言いたがらないので、ここは。でも、すごく苦労しました。1つのカテゴリーで1つのテーマを決めていろいろなことを喧々諤々やってくると、実は皆のこの場の中にたくさんの情報が出てくるんですね。職人という技術がこんなにも違うのかという話になるんですよ」
松山キャスター
「あぁ、1人、1人で全部違う?」
山本氏
「ええ。そこが1番面白いことだったのですけど。結局そのあと、これを何とかまとめなければならないので、と言うので、まとめていった結果が実は私達のHILLTOPの、いわゆる情報の1つになっていくんですね。だから、合意形成された情報をそうしていくつもずっと、これは何日もやりました。もうとにかく何回も何回もやって、その情報が出てくると、あるポイントが出るわけですね、ポイントが。これを2次関数、3次関数で結んでいくと、実はデータベースということになるんですよ」
松山キャスター
「いわゆる職人のノウハウみたいなものをコンピューターでデータ化し、合理化をはかる、一方で夜間のうちに工場の機械を動かしておいて、きちんと打ち込んだデータ通りにものができあがっているかどうかというのが、朝になってできあがってくると。最初はうまくいかない時期というのもあったわけですよね。そのあたりはどうやって克服されたのですか?」
山本氏
「うまくいくわけがないですよね」
松山キャスター
「そうですよね」
山本氏
「そんなうまいこといくのだったら、たぶん他の製造業の皆さんもやられていると思うんですよ。基本的に私の概念で言うと、コンピューターがついているので、それを人が横についてウォッチしていても、ボタン押してダメだと思ったら止めたら、いいやと言いながらついているのが現状ですね、他の製造業の皆さんは。でも、それは私から言うと、ボタンを押してもダメなものはダメだと思っているので、それは機械をウォッチしているだけなので。それはそのデータの確度を上げるしかないというのが私の理論ですね。そうしてやったけれど、やったもの、やったもの、不良の連続どころか、つけている刃物が、1本折れると折れたところにドンドンまた次の刃物がいくので、朝に来たらついている刃物が全部折れるとかいうのが、たぶん1週間に2回や3回ありました」
山口名誉教授
「ちょっと失敗すると何百万ですよね?」
山本氏
「はい、もう…」
松山キャスター
「機械が壊れちゃったりすることもあるのではないですか?」
山本氏
「機械が壊れた時は400万円ぐらいかかったこともありますね、最初は高いので。バイスと言われる、いろいろなものを挟むその高性能なバイスがあるのですが、だいたいこれは総研磨なんですごく高いのですけれども、朝来たらこれを削っていましたよね…」
山口名誉教授
「あぁ、それは…」
山本氏
「エッ?と思って、品物を削るのにバイスを削っていたりするわけですから」
松山キャスター
「なるほど、機械そのものを…」
山本氏
「もう焼き入れしたのがよく削れたなと思いながら笑っていましたけれど…」
松山キャスター
「それは、何度もプログラムを組み直して、あるいはシミュレーションみたいなものを何回かやって、そうならないようにもっていったということですか?」
山本氏
「実はその当時はシミュレーションというのがないんですよ。そういうソフトがなかったので、私は現在でもその時のことを覚えていますけれど、無人でものを動かすのは必要な機能は度胸だけなんです」
山口名誉教授
「…なるほど」
竹内キャスター
「ハハハ…」
山本氏
「ボタンを押し…」
松山キャスター
「動かしてみろと?」
山本氏
「はい。見ていたら怖いですよ、ずっと…」
山口名誉教授
「でも、1人見ていて、あっ、おかしくなったというので誰か止めれば損失がそんなに出なくて済むと思うと、1人は立たせたくなりますよね」
松山キャスター
「普通に考えるとそうですよね」
山口名誉教授
「それを…」
松山キャスター
「そこを敢えて置かない、人を置かないということですか?」
山本氏
「…頑なに、そこはもう置かない」
山口名誉教授
「いや、だから、その時に1番不思議だったのは、よく資金がもったなと。だって売上げは出てこないし、損失はかかるし、銀行はよく我慢してくれたと思うのですけれども。その資金対策は大丈夫だったのですか?」
山本氏
「いや、もう資金は、本当に私達は、親兄弟は最小限で、もう暫くは立ち上げをずっとやろうとしていたので、そこはいいと。でも、社員の資金だけを何とか面倒見ればいいと」
山口名誉教授
「お給料は、ちゃんと…」
山本氏
「それから、機械は実は火の車だったんですね。当時はまだリースとかいうのがなかったので割賦で買っていますから、毎月の支払いのことだけで…。ですから、給料が減ったり、私達の給料が減ったり、ちょっとでも出たりするのは、そこはそのクッションになっていた…」
山口名誉教授
「あぁ、なるほど…」
松山キャスター
「でも、ボタン1つをポッと押しただけで、あとは監視する人も置かずにそのまま機械を走らせる…」
山本氏
「はい、ええ」
松山キャスター
「その決断をするというのは、そうやることが将来的にはうまくいった時に必ずメリットとして戻ってくるという信念があったということなのですか?」
山本氏
「それはもう信じていました」
松山キャスター
「そこに人を立てて、監視するということをやってしまうと、従来と変わらなくなってしまうということなのですか?」
山本氏
「はい。現在なら、皆さんよくわかると思うんです。たとえば、3Dプリンター…」
松山キャスター
「はい、ありますね」
山本氏
「どこにでもあると思いますけれど、3Dプリンターを動いているところを最初はちょっと見るけれど、ずっと見ます?見ないですよね?」
竹内キャスター
「ハハハ…」
松山キャスター
「確かに見ていたら結局、手でつくっているのと効率的には変わらなくなっちゃう」
山本氏
「ええ、見ても仕方ないので。これと同じです、本当は。だから、そうやって考えると人が介入しない方が実は本当は良いものができたり、人が見ているから何か誤動作をするということもあるので。そういうことを考えていくと、度胸がいるかはわからないけれども、でも、それをやっていると、実はどこで事故が起こるか、どこで人間の間違いが起こるか、だんだんわかるんですね」
山口名誉教授
「ああ、なるほど」
山本氏
「皆がそれをやりながら、こういう表がずっと出てくるんですよ。JRの駅長さんがやるみたいに、ドコドコよし、ドコドコよし、ドコドコよし…」
松山キャスター
「点検みたいな」
山本氏
「それが出てくると極端に事故率は減りますね」
山口名誉教授
「はぁぁ」
山本氏
「それと、刃物を削れるというのは、早く削る情報はこれまで持っていたけれど、より安全につくるという、削るという情報が、実は私達も含め、そういった一般の製造業にはなかったんですよ。だから、安全につくるという情報が、私達のところでずっと…」
山口名誉教授
「本当に多額な損失を目の当たりにすると、プログラミングした人は二度とそんなわけにいかないから一生懸命考えますよね。そういう点でのモチベーションにはなっていますよね」
山本氏
「それは怒ったらダメなので怒らないです」
山口名誉教授
「怒らないですねよね、それが…」
山本氏
「全然怒らないです。逆に400万円の事故になるような機械があたった時は皆で笑っていました」
山口名誉教授
「へえ、すごいな…」
山本氏
「もう仕方ないです。それよりもいろいろなことを重箱突くようなことを言っても彼らのチベーションは絶対に戻りませんので」
山口名誉教授
「このへんが人育てのありようでもありますよね」

人材確保と育成の方策
竹内キャスター
「中小企業にとって最近大きな悩みとなっているのがこちら。人材難ということで。経営上の問題点として売上げや受注の停滞・減少、原材料高などを押さえて、悩みのトップにきているということで、33.5%を占めているんですね。そんな中で、HILLTOPは年々社員を増やしておりまして、10年前のおよそ3倍、2017年度は126人となっています。山本さん、ここまで増やしてきた第1の要因というのは?」
山本氏
「経営者は一生たぶん人で悩むのだと思うんですね。いつも、いつも人がほしいんです。しかも、優秀な人がほしいです。特に小規模型であればあるほど優秀な人が入ると大きく変わるというのがあるので。リクルートに関しては相当、私は、力を入れます。だから、年間、たぶん私らの規模で400万円、500万円かけるのは、なかなかけられないのですけれども、毎年やります。それから、その期間は、うちの社員達は面接をやりますから、自分達のロッカーには作業着とスーツと入っているんです。いつでも面接ができるように」
山口名誉教授
「あぁ、なるほど」
山本氏
「私達の基本的な人の選び方というのは、自分達の仲間は自分達で選べというのでやりますから、会社で会社説明会をやって、あとの1次面接・2次面接・3次面接は全部社員達がやるんですよ。だから、真剣なんですね」
松山キャスター
「なるほど」
山本氏
「自分達が面接をするのにいい加減な気持ちではありませんので前もって勉強会をやり、自分達はどんな人がほしいのだろうというプロファイルもやり、真剣にやるわけですね。だから、果実は良い人材を採ることと、もう1つは自分達の現在いている社員達の成長という果実があるので」
松山キャスター
「社員、たとえば、どれぐらいの期間、職場に置いておくか、1つの職場に置いておくか…」
山本氏
「あっ、ジョブローテーション…」
松山キャスター
「いわゆるジョブローテーションみたいなものはどういうサイクルで?」
山本氏
「ジョブローテーションはその人ごとにちょっと違うんですけれども。平均的に言うと3か月から半年くらいで…」
竹内キャスター
「エッ?」
松山キャスター
「3か月から半年で変えちゃうんですか、部署を?」
山本氏
「変えていきます、はい、まだ若い間は変えていきます」
山口名誉教授
「やっと慣れたのに、と言われるのではないのですか?」
竹内キャスター
「仕事を覚えたてぐらいの期間で…」
山本氏
「はい」
松山キャスター
「効率が逆に悪くなっちゃうのではないのですか?」
山本氏
「いや、効率が悪くていいです、全然」
松山キャスター
「いいのですか?」
山本氏
「はい、構わないです」
松山キャスター
「でも、全体の利益が上がらないですよね?そんなにしょっちゅう人を変えていたら…」
山本氏
「そんなには落ちないです、でも」
松山キャスター
「あっ、そうなのですか?」
山本氏
「最高の効率ではないですけれども、そこにいったん配属されていくとモチベーションがドンドン上がりますから、次々と新しいアイディアを出したりとか、根が生えていないのでいいですね」
山口名誉教授
「慣れてきちゃうとね、どうしてもマンネリ化してくるから」
山本氏
「そうですね、ええ、これでいいやと」
山口名誉教授
「ある時期、良い時に新人になるという…」
山本氏
「うん、うん」
山口名誉教授
「それはすごく人間の成長にとってはいいことですよね」
山本氏
「結局、鼻歌交じりに仕事ができるというのはもう慣れている、モチベーションが落ちているんですよね」
山口名誉教授
「そうですね」
山本氏
「だから、そこはよく言いますね。だから、私達の会議、製造部の会議でも人のために会議をしていますね」
山口名誉教授
「うん」
山本氏
「誰々が、最近モチベーションが落ちているからどうしてあげたらいいのだろうという会議をします。だから、効率とか、能率とか、納期の会議はほとんどやっていない。だから、そこは正しいと思いますね」
山口名誉教授
「3回ぐらい大学の職が変わったんですけれど、何年か経って、また新人になるではないですか。結構、新鮮でしたよね」
山本氏
「ええ」
山口名誉教授
「そういうのは結構必要かもしれないですね」
山本氏
「ピュアな感じがするではないですか」
山口名誉教授
「うん」
松山キャスター
「山口さん、たとえば、他の日本の多くの中小企業は、さすがに3か月から半年ぐらいで1人の従業員をドンドン違う部署に変えることはあまりやっていないと思うのですけれども…」
山口名誉教授
「それはやっていないです、それは」
松山キャスター
「これはかなり特異な例なのですか?」
山口名誉教授
「なるべくベテランをつくりたい。ただ、有名な豊田市の工場というのは、半年間、会社に来ると、今日は何になりたいと聞いて、今日はこういうことがやりたいですと。経理希望なのにちょっとこの機械をいじってみたいとか言うと、ではやってごらんと。今日は何やりたいとまた次の日に聞くんですよ。それを半年繰り返すんですよ。半年経ったところで、君、何をやりたい?と、これをやりたいと言うと経理希望で入った子が、最高の旋盤工になっていたりするんです。
だから、好きなことこそ上手なれで。頭の中で決めないで、いろいろな体験をしてみると、その体験は今度は活かされますよね、自分の専門分野をやっている時も。だから、他の人とのコミュニケーションをやる時も、相手が気持ちとか、立場とかが理解できる子になるでしょう。だから、すごく良い感じで全体を眺めたうえで専門的意識を持っているという、そういう人間をうまくつくっていくということはすごく大事…」
松山キャスター
「ちょっと前までは、いわゆる会社の中での仕事のやり方としては時代の流れは専門職、プロフェッショナルに特化して…」
山口名誉教授
「そうです…」
松山キャスター
「その専門分野で生き残れるようにするというのが王道であるかのように言われた時代がありましたけれども。現在だんだんAI(人工知能)化とか、いろいろなコンピューターなどが入ってきて…」
山口名誉教授
「うん…」
松山キャスター
「逆に、人間の知的な作業をドンドン切り開いていくという意味では、いろいろな経験をしていた方がそれに対して広い目で見られるようになってくると、そういう流れに変わってきた…?」
山口名誉教授
「おそらくいろいろな形をしていることをやっているのだけれども、そこに共通する課題みたいのなのがあって、そういう意味では専門職なのだと思うんですよ。ただ機械をやったり、これをやったりするのだけれど、その仕事の姿勢とか、考え方とか、問題の解決の仕方とか、そういうのはおそらく全部一貫してつながっているのだと思うんですね。そういう意味ではプロですよ」
山本氏
「その通り」
山口名誉教授
「だから、やっていることが違うだけ。そういう人間を育てていくということが時代の変化の激しい現在では必要なのだろうと思うんですね」

製造業の『サービス』
松山キャスター
「山本さんは、製造業の生き残り戦略について著書の中にこのように書かれています。『これからの製造業は製造サービス業だ』ということなのですが、山本さん、これはいったいどういったことなのでしょう?」
山本氏
「実は日本のITバブルが崩壊した時、2000年とか、2001年ぐらい、世界の生産工場は日本であったものが中国に移っていますから、その時に大変な仕事難で困ったわけですね。実は当時、私達、京都の経営者が集まってですね、『京都試作ネット』というのを立ち上げるんですね。私はチャーターメンバーでもあるし、代表も経験して、現在はその顧問でもあるのですけれども。日本の役割をどうするのだと考えた時に、既に世界の生産工場ではなくなっているから、これからは世界の開発国になるべきだということを、仮説を立てるわけですね。そうすると、これまでに自分達のテリトリーのところだけをやっても、たぶんそれは担うことはできない。そうすると、自分達がまた新たなものを挑戦していく必要があるだろうということになるわけです。ところが、自分達のストライクゾーン、狙っているものとは違うものをやると、あまりにも自分達にやれないことが多すぎて、知らないことが多かったんですね。お客さんとやっている間にこの知識がドンドン溜まってくると、ここをサービスとして使えるようになる」
山口名誉教授
「うん」
山本氏
「モノをつくれるけれども、お客さんと話をする時、ヒアリングする時に、この手もあります、あの手もありますという、いわゆるコーディネーターができるようになるんですね」
山口名誉教授
「うん」
山本氏
「京都で言うと『悉皆屋』という言葉になるかもわかりませんがコーディネートできる企業体をつくっていくことこそ、これからの本当の付加価値になるんだろうということでやって。そこからこの『製造サービス業』という言葉をつくっているわけですね」
松山キャスター
「山口さん、この中小企業の概念として製造業とサービス業はこれまでは別々のものというイメージがあったのですけれども…」
山口名誉教授
「はい」
松山キャスター
「こういう山本さんのいう『製造サービス業』という…」
山口名誉教授
「リーマン・ショックのあとに、日本の製造業がガタガタになった時に、大田区の産業課の課長をやっていた人に大田区の状況はどうですかと」
松山キャスター
「いっぱい工場がありますよね、大田区…」
山口名誉教授
「大田区の製造業はどうですか?と聞いたら、何を言っているんだ、先生と。大田区は製造業ではなく、あれはサービス業だよと。つまり、問題を持ち込んでくる。こういうのがあって、ここでは何とかならないだろうかと言うと、じゃあと言って考えて、それでまた仲間に皆声をかけて解決しちゃうんですよ。問題解決型で、課題を持ってきたものを皆で考えてつくる…解決している。だから、何かものをつくってくれと、つくっているのとちょっと違うのだと言われていましたけれど。これからの日本の製造業の生き方はむしろそこ、答えがないものをどうやって自分達で答えを見い出していくか。でないと、答えがあるものをただつくっているというのであれば、アジアに全部仕事をとられちゃう」
松山キャスター
「付加価値の高いもの、付加価値の高いサービスも含めた製造…」
山口名誉教授
「そうですね」
松山キャスター
「…というものを、そこの分野を突き詰めていくことが日本の産業界をこれから生き残らせていくための1番の方策ということなのですか?」
山口名誉教授
「そうですね。それがまた好きですよ、日本のモノづくりの人達は、割と」
山本氏
「あっ、そうですね…」
山口名誉教授
「たとえば、なかなかできないんだよと言うと、ちょっと俺にやらせろ、みたいに、そうやってもう一生懸命、試行錯誤して…」
山本氏
「モノづくりの血が湧くんですね、これが湧くんですね」
山口名誉教授
「血が湧くんですよ。だから、モノづくりから外れているように見えますけれど、モノづくりの1番本質的なところにむしろ近づいているというか、そこを大事にされているのだと思うのですけれども」
松山キャスター
「なるほど」
山本氏
「ほとんどだいたいストライクゾーンに来るヤツは、わずかでも利益が出るのがわかるではないですか。そうすると、そこは、リスクはないですね。でも、自分達が次の時代を担おうと思うと、リスクを負わなくちゃならない。新しいものをやりながら新しいものの情報をとる、それから、技術をとる。そのためにはこれまでのゾーンの中ではなく、違うところを積極的にやる必要があると思う」
山口名誉教授
「そうですよね」

高齢化と後継者問題
竹内キャスター
「平均引退年齢が70歳と言われる経営者は、2025年にはおよそ245万人になるとされており、そのうち127万人が後継者未定となっています。この現状を放置しますと、2025年頃までの累計でおよそ650万人の雇用、およそ22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があるとされているという状況なのですが、山口さん…?」
山口名誉教授
「そうですね。年間6万社から7万社が、だいたい後継者がいないという理由で消えていっていると言われているんです。そうすると、雇用にすると年間40万から50万ぐらい消えていっていると。現在人手不足だからあまり問題になりませんけれども、でも、これは全体で見ると日本の経済の活力がドンドン衰えていくということですね。大規模がいくつかあっても中小企業がないと本当の活力にならないですよね。そういう意味では、これは1番深刻な問題だと思いますね」
松山キャスター
「中小企業の中でも、多くの企業は、たとえば、同族経営だったりするわけですけれども、それとは別に外から経営者を持ってきて中小企業を経営させたらどうかという、もう1つの考え方もある。これはそれぞれメリット・デメリットがあると思うのですけれども、どういうふうに見ていますか?」
山口名誉教授
「うまくいっているケースは非常に少ないです、残念ながら。たとえば…」
松山キャスター
「どちらのケースですか?同族ですか?」
山口名誉教授
「…トップをどこかから持ってくる」
松山キャスター
「外から持ってくる」
山口名誉教授
「大企業の経験者とかを持ってきても、なかなか中小企業というのは特殊ですよ、経営者がちょっと。だから、大企業の経験はなかなか活かされないですね」
松山キャスター
「なるほど」
山口名誉教授
「だから、結局ガッカリして3年ぐらいでオーナーが社長をまた代えるという、そういうことが結構ありますね。だからと言って、下から育っていった人達で体験学習だけやってきた人達から見ると、この時代の変化に対応できないです。そこが難しいところだと思いますけれども。でも、その両方のニーズを受けとれる人材が必要だと思うのですけれど。根本はなぜ子供達が昔のように後を継がないのか。ある時に調査をしたら、その最大の理由は何かと言うと、お父さんの仕事がつまらなさそう、将来性がなさそうというのが最大の理由です」
山本氏
「ハハ…」
山口名誉教授
「今回のケースで1番学ぶべきだと思うのは、継ぎたくて継いだわけではないではないですか」
松山キャスター
「山本さんも最初…」
山口名誉教授
「そうでしょう?こんな仕事は絶対に嫌だし、将来性もないでしょうと。だから、こうやって変えてやろうと思ったわけです。現在の若者にその気概がない。そういうのはもう避けるとなっちゃって。いや、そんなに嫌だったら将来性のある面白い会社に俺が変えてやるのだという気概さえあれば、日本の後継者問題は大きく前進するんですけれども。そういう子供達を育てなかった我々世代の問題でもあると思います」
松山キャスター
「山本さん、実体験として実際にお父さんのやっていた町工場の時は、暗くて、狭くてというイメージから、まったく違うことをやりたいと言っていましたが」
山本氏
「ええ、はい」
松山キャスター
「実感として、いわゆる同族経営は同族経営ということになると思うのですけれども、それのメリットというのも享受されているという部分もありますか?」
山本氏
「私が、もし嫌で、嫌で他に行っていたとしたら、うだつのあがらないサラリーマンをやっていたのだろうなと思います。でもたまたま、どうあれ、チャンスをもらったわけですよね。同族でその立場に置いてもらったこと、これは活かすべきだと思いますね」
松山キャスター
「なるほど」
山本氏
「ただ、その上にあぐらをかくかどうかの問題ですよ」
山口名誉教授
「そう」
山本氏
「それはただ与えられチャンスなのに。だから、若手の経営者にいつも言うのは、自分は、それはたまたまチャンスがあったのだろうと。そのチャンスはありがたくとれ。でも、その上にあぐらをかくのだけはやめろと。この会社を次から変えていく。だから、守るのではなくて…」
山口名誉教授
「そうですね、その通り…」
山本氏
「…変えることを考えないと何の価値もない」
山口名誉教授
「だから、事業承継という言葉がいけないと思うんです。事業を承継するのではなくて、舞台を承継するんですよ」
松山キャスター
「なるほど」
山口名誉教授
「たとえば、会社の従業員とか、会社と金融機関とのつながりとか、お客さん、そういう舞台を承継して、その舞台の上で新しい踊りを踊るのが実は事業承継です」
山本氏
「そうです」
山口名誉教授
「ところが、事業を承継すると言われると、ドカンと上に乗せられ、これを守らなければいけないと思っちゃう。だから、話が暗くなるんです。だから、、舞台を引き継いで、そこにお前なりの新しい踊りを踊れよと言って事業を引き継がせる。そうしないと、同族だろうが、同族ではなかろうがうまくいかないですよ。ただ引き継がせるという感覚だし、引き継ぎますなんていう商売をやっていたら数年でだいたいダメになっちゃいますね」
松山キャスター
「HILLTOPの話を今日はずっとやっていますけれども、これだけ成長をしている会社ということだと、他の企業から、たとえば、会社ごと買いたいみたいな話が当然出てくると思うのですけれども、そういうお話は過去ありました?」
山本氏
「M&Aの話はいくつか話がありました」
松山キャスター
「それは敢えてそれに応じなかった?」
山本氏
「いや、応じる気はまったくないですし、こんな楽しい会社を誰に売るのよと思いますね」
松山キャスター
「どんなに高いお金を積み上げられても、そこはまだ…」
山本氏
「聞いていないのでわかりませんけれども、その気はまったくありません」
松山キャスター
「会社を大きくしたいという野望があるということもないですか?」
山本氏
「うーん、自分自身が、目標と言うか、この会社は将来、ロボットをつくる会社にしたいという欲が、自分の夢があるので。それを、ずっと要素・技術をためている状態ですから、だから、いろいろな人達を採るんですね」
山口名誉教授
「そうですね」
山本氏
「現在、私達の技術だけではロボットはつくれないので、しかも、ドロイド系のロボットはできませんから、それに必要な要素と技術はたくさんあるので、だから、いろいろな人を採用し、そっちに向かっていますから。だから、それが行われるまでは何とか見届けたいなと思ったりしているぐらいですから」
松山キャスター
「試行錯誤しながらいろいろとやっていることは多少利益があがらないことも含めて、いろいろ事業をされていますけれども、それは全て将来的にはロボット、総合的なロボット技術というのに?」
山本氏
「そうですね、ええ」
山口名誉教授
「この会社の強さは、社長の夢を皆が共有している。だから、ジョブローテーションでいろいろグルグルまわっても、こういう経験が最後こういう夢を実現するのに役に立つのだという、その夢の共有感が伝わってくるから1000人もの若者が会社を受けに来るのだと思うんですよね。だから、その夢を語れないところというのは、人が寄ってこないですよ。だから、そこがポイントだと思いますね」

山口義行 立教大学名誉教授の提言:『ゆでガエルになるな!』
山口名誉教授
「ゆでガエルになるなと。現在、金利がすごく安くて、景気もまあまあ良くて、このままで何とか行けそうだなと思うのだけれども。実際、地下ではドンドン産業構造が変わっていくし、新しい技術革新も起きているし、アメリカとか、中国を見ているように、中国はすごく伸びているし、このままいったらダメになるぞという時になって、慌てなくていいように、現在から自分のやっていることを捉え直して、できるところから改革をしていくという、そういう精神を持たないと厳しくなりますよという意味で、ゆでガエルにならないように気をつけてくださいと」
松山キャスター
「徐々に温度が上がっていることにちゃんと気づいておいた方がいいと」
山口名誉教授
「そういうことです」

山本昌作 HILLTOP代表取締役副社長の提言:『チャンスは平等にある』
山本氏
「私は『チャンスは平等にある』というのを中小企業の皆さんにはお話したいと思います。自分達がその事業を受け継いで、これは守らなくてはならない、変わったことをやってはならない、みたいなことが、なんとなくこの風土の中にあるかもわかりません。そんなことはまったくないです。自分達は何をやっても構わない。チャンスは平等にあるわけですから、いろいろなものにチャレンジしてもらいたい。そうしないと日本の本当のモノづくりは衰退するだろうと本当に思います」