プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2018年8月2日(木)
長期金利『上昇』容認 2%目標の行方と出口

ゲスト

大塚耕平
国民民主党共同代表 参議院議員
須田美矢子
元日銀政策委員会審議委員
早川英男
元日銀理事

徹底検証!日銀金融政策 量的・質的『緩和継続』
生野キャスター
「異次元の融緩和開始から5年半、日銀は一昨日、金融政策決定会合を開き、緩和長期化の副作用に対応するため長期金利の変動を容認する一方、物価上昇率の見通しを下方修正するなどの新たな金融政策を発表しました。今回、日銀が発表した強力な金融緩和継続のための枠組み強化ですが、ポイントをまとめました。強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から、政策金利のフォワードガイダンスを導入。短期金利は-0.1%、長期金利は0%程度を維持しますが、長期金利の変動幅は±0.2%程度に広げ、事実上、金利の上昇を容認。長期国債買入れ額は年間およそ80兆円、現状維持ですね…をメドとし弾力的な買入れを実施。ETF、上場投資信託の購入配分を見直し、ということですけれども。早川さん、今回日銀が示しました新たな方針をどのように?」
早川氏
「意図としては多くの国内メディアが報道しているように、長期金利の上昇容認ということだと思います。ただ、実際の公表文は、わざとわかりにくく書いてあって。要するに、金融緩和強化だと呼びたい人にはそう読めるように書いてあるというのが特徴かもしれません」
生野キャスター
「須田さんはどう見ていますか?」
須田氏
「この政策は、本来ならば、本当は見通しを下げたのだったら追加緩和が普通なんですよね。それが普通の考え方なのだけれど、それをしないでマーケットに失望させないためには、緩和的に見えるように1つはすると。もう1つは、人によっては引き締めに見えるようにすると。本当に考え方は同じで。ただ、フォワードガイダンスをすごく何かあたかも緩和のように見せていますけれど、超短期の水準、低い金利を維持すると言い切っていないですよね。維持することを想定しているということでしかないんです。そういったあと、声明文では、いや、リスクをちゃんと点検して、それに合わせて調整もしますとすぐ言っているんですね。だから、現在想定しているということは、現在の経済状況と現在のリスク評価というのは変わらないと思っているから、その限りでは、現在の金融政策を続けますよと言っているだけだから、本当にたいした意味もないようなものをあたかも緩和ですよとプレイアップさせて。受け取り手がわからないよう、要するに、一方向で走っちゃうとマーケットが動いちゃうので、どっち側でもとれるように曖昧にすることによって、結果的には何とか投資を下げたのだけれど、ほぼ現状維持の政策で乗り切ったというのが今回の政策だというふうに私は理解しています」
松山キャスター
「早川さん、フォワードガイダンスはどういうことなのでしょう?」
早川氏
「フォワードガイダンスというのは、将来の政策について皆に対して約束するということです。これを歴史的に言うと、実は最初にやったのは日銀が速水総裁の時代に、当時、時間軸政策と言われたのがフォワードガイダンスのもともとなので。実は最初に始めたが誰かと言うと日銀ですよという。いずれにしても、将来の政策について…。ただ、普通は将来の政策について約束するのはこういう条件が実現するまでとか、あるいはいつ頃までというものですよ。たとえば、福井さんの時の量的緩和の時は、要するに、消費者物価の前年比がプラスになるまで量的緩和を続けますよという、ある種わかりやすい表現だった。今回、条件は別にないですと。いつまでというのも当分の間ですよね。しかも、何を続けるかと言うと、極めて低い金利水準を維持すると。極めて低い金利水準とはどれぐらいだったら極めて低いのか。たとえば、長期金利が0.5%は極めて低いのかどうかと。そういう意味では、ほとんど何にも拘束されていないので、先ほど、須田さんが言われたように何も言っていないに等しいということだと思いますね」

長期金利『上昇』容認
生野キャスター
「一昨日の日銀の発表に先立って為替と長期金利で動きがありました。市場では先週から日銀が長期金利の誘導目標を柔軟化するのではないかという報道で金利が上昇しまして、円高に振れました。日銀は金利上昇を抑えるために日銀が固定の利回りを指定したうえで国債を無制限に買入れる指し値オペを1週間に1、2、3回実施。昨日は長期金利が2年半ぶりの高水準で上昇しました。日銀が行いましたこの3回の指し値オペですけれども、これは須田さん効果があったということなのでしょうか?」
須田氏
「指し値オペを導入した時は、これは伝家の宝刀ということで、使わないというのを考えていたのですけれど。でも、実際抜いてしまったから、しょっちゅう抜いているのですけれど。現在の状況では、指し値オペが入ると非常に有効に効きます。マーケットよりも高いところでちょっと指し値オペをやれば一切入らないし、もう少し低めでやったら結構入って、大量に買うということがあるのですけれど、それで完全に落ちます。ただ、たとえば、財政の問題がおかしくなったとか、そういうような状況だったらいくら指し値オペをしても人々の期待がバッと変わっていた時には無理です。だから、現在のところは指値オペをやったら効きますし、それから、指値オペというのは決して政策の意図は一切反映されませんから、政策が決まる前までは前の方針に則ってやりますから、たとえその次の日からはレートが少し上がったとしても、それまでは決定時点までは前の+0.1というところでしっかり抑えていくという手段をやって、それをうまくそこは成功させたということだと思います」
松山キャスター
「なるほど。長期金利が上昇したという場合、どちらかと言うと結果としては為替については円高に振れるという見方が強かったと思うのですけれども。当初、円安基調があって、今日は円高にまた転じているという話ですけれども、この流れは長いトレンドとしては今後どうなっていくと考えますか?」
須田氏
「為替は、日本の金融政策というよりは、もっとアメリカの…」
松山キャスター
「貿易摩擦とか…」
須田氏
「…と、それから、財政・減税、そういったものの影響が大きいですから、そういうことをやれば、ドル高というのがあって。貿易摩擦の関係で日本に批判が出てくれば急にバッと円高になってということで。基調としては円安方向なのだけれども、そういうニュースがあるとガタッと円高になるということを円高が円安の頭を抑えるというようなことが行われて。金融政策についても日銀と欧米とは違う方向を向いていますから、それも円安要因ではありますけれど、そっちよりも現在はアメリカの影響が大きいというふうには思っていますね」
松山キャスター
「日銀が今回の金融政策決定会合の前に指し値オペと言われるオペレーションを3回も行ったと。かなり通常とは違うやり方だと思うのですけれど、効果、マーケットへの影響、これはどういうふうに?」
大塚議員
「もちろん、マーケットは指し値オペを打ったことによって金利の上限を日銀がそのぐらいと見ているということで、そこから撤退をするわけですけれども。違う見方をすると、先ほど、須田さんが伝家の宝刀と言いましたが、伝家の宝刀を3回抜いても、3回目で下がりましたけど、こう徐々に徐々に上がってきているわけですよね。これは考えよう、見ようによっては指し値オペで抑えきれなくなる可能性も想定して、抑えきれないという現象が起きると日銀に対する信頼が低下しますから、だから、金利の変動幅をここで敢えて容認したというふうにもこのグラフは読めますね。だから、4回目、5回目、今回の変更なしで指し値オペを打っても金利がジリジリジリジリ上がっていくと、ああ、結局、マーケットをコントロールできなくなってきたというふうに日銀が見られたら、相当ダメージ大きいですから。そうなる前に、敢えて変動幅を倍にしたという見方もできるグラフですね」
松山キャスター
「黒田総裁は今回の発表で金利の変動幅については倍、0.2まで許容するような発言をしていますけれども、今後その金利の上昇、どの程度まで進むというふうに考えていますか?」
大塚議員
「いや、それは0.2までいくと思いますよ。それは債権ディーラーにしてみたら、いや、上限を試したいという言いぶりでドンドン売り下げていって、金利が0.2までいって指し値オペでも出てくれば、ここが上限だって、そこで大量に買い込んで今度は-0.2まで下がる過程で儲かるわけですからね。だから、もうこれは、日銀としてはゲームの儲けの幅を今回大きくしてあげたと。同時にオペが効かないかもしれないという、日銀にとってのちょっと痛いところも上手に隠したと、こういう見方もできますね」

緩和長期化の『副作用』
生野キャスター
「黒田総裁が指摘した金融緩和長期化による副作用はこちらの2点です。金融仲介機能、つまり、貸し借りの仲介の停滞、それから、国債市場の機能低下、つまり、国債取引の活発さが失われることを挙げていますけれども。早川さん、まずこの金融仲介機能の停滞、これによってどういうことが起こるのでしょう?」
早川氏
「まず金融機関の利ざやがすごく薄くなっていますので、それによって金融機関が儲けられなくなって。たぶん地方銀行は実質的に本業でほとんど儲かっていないという数字があると思いますけれども…」
松山キャスター
「まさにそうですよね。地方銀行などの本業の赤字を示した数字ですが、106行のうち54行が、本業が赤字になっているということですよね」
早川氏
「本当に問題なのは単に金融機関が儲からないのが問題なのではなくて、これが将来、金融指数が動揺する要因にならないのかという。要するに、現在、本業で儲かっていないのになぜ金融機関は破綻したりしないかと言うと、それは企業倒産がほとんどないので。普通は銀行というのは企業倒産に備えて引当金を積んだりするわけですけれども、引当金をほとんど積まなくていいので成り立っている。だけれども、これから2年も3年もまだ2%いかないわけですよね。そうすると、普通に考えると既に今回の景気拡大は5年半になっていて来年の初めには戦後最長になって、それから、さらに2年も3年もずっと景気は良いのですか、普通に考えれば、来年なり、再来年なり、どこかで景気後退局面がくるはずであって。もし仮に景気後退局面で企業倒産が発生してくると、要するに、もともと本業で儲かっていないところで引当金を積まなければいけなくなれば金融機関の経営は非常に厳しくなる、それに金融システムの安定性を損なう原因になりかねないというのが最大の問題であって。そこまで踏み込んで考えないと、単にちょっと停滞していますというふうな話ではないと思いますね」
松山キャスター
「須田さん、副作用のもう1つの側面として、国債市場の機能の低下ということが指摘されていますけれども、日銀が4割以上の国債を保有している。今回また80兆円規模の国債の買入れ目標というのをキープするという政策が発表になっているわけですけれども。このあたりの弊害というのはどういうことが考えられますか?」
須田氏
「我々の生きているところは、市場経済だから、いろいろな資産価格がちゃんとニュートラルなものであるということが重要。だから、市場機能というか価格のシグナル効果ですね、金利が低ければもともとだったら長期金利だったら期待インフレ、インフレとか、あるいは成長とかというのが長期金利に反映しているというような、そういう金利からいろいろな情報を得るということがまずできなくなると。そういう意味で、市場機能が壊れてしまうということは非常に問題なのですけれども、それと同時にたくさん買っているから売りたくないんですね、市場…、そうしたらどうするのかと言うと、高い価格で買うんですよ。高い価格だったら市場が売ると。つまり、とんでもない高い価格だったらいくらでも買えるということは補助金を売り手に出すわけです。と言うことは、別な言い方をしたら、日銀が得た収益は、あとは税金として納付されるわけですけれども、それを小さくする、ディーラーにお金を渡してしまう。それから、ディーラーも買ってすぐ日銀に売るので、本当のワンタッチしか民間にいなくて、結局、お金は国からすぐに日銀に流れていく。ほとんど実質的に財政をファイナンスしているというような形にもなっていると。だから、結局こういう政策をとっているということが市場機能を低下させるし、財政のファイナンスに近いことになって財政規律に悪影響を与えている。それから、こういうことをやっていると、中央銀行がロスを出すということが起こるんですよね、出口とかで。そうすると、中央銀行がロスを出して、その前から収益を納付していたって、実際にロスを出した時には信認がすごく失われるし、その時の国民というのは納付金が小さくなるということで、所得トランスファーがそこでもまた起こっちゃうんです。現在の人達はたくさん納付金があるから国に日銀がお金を出すけれど、将来、納付金が出せなくなった人達は財政が厳しくなった時に日銀からもお金が入ってこないというような、そういうことにもなってしまうんですね。だから、そういう中央銀行の財務の問題も起きるし、それから、もっとこれから先だと出口が難しくなると。ドンドン緩和を続ければ続けるほど出口が難しくなっていくし、それから、1番、金融政策をやっていくうえで考えていかなくてはいけないのは、ずっと緩和を続けることによって収益が上がらないから過度なリスクをとっていく、危ない資産に手を出すということが起こるし、それから、バブルが生じてしまうというような、そういうことも起こるということで。こういう緩和政策をずっと続けていくということは非常にいろいろな副作用、コストをもたらすということだと思っています」
松山キャスター
「今回の日銀の政策修正と言ってもいいのだと思いますけれども、それの1つの目標としては、いわゆる副作用問題の解決という部分があると思うのですけれど。金融仲介機能の停滞、この問題を解決するために、金利をある程度上昇を容認するということで、銀行の収益改善につなげるという意図もあるのだと思いますけれども。その効果は実際どれぐらい上がると、須田さんは?」
須田氏
「いや、たいしたことないというふうに思っています。基本は金利を上げない、ボラティリティを高めますということですね、現在、やろうとした…。結果的には市場が試し、あるいは日銀もそれを望むかもしれないのだけれども、少し金利が上がっていくということがあってもわずかなものですから、それが銀行にとってホッとする材料にもならないと思います」

物価上昇予測『見直し』
生野キャスター
「黒田総裁は会見で『物価上昇率の高まりが後ずれしている』と述べています。今回、日銀は今後の物価上昇率の見通しについてこのような数字を発表しました。2018年度は今年4月の時点の1.3%から1.1%へ下方修正。2019年度は1.8%から1.5%へ下方修正。2020年度は1.8%から1.6%へ下方修正です。早川さん、日銀による物価上昇率のこの見直しをどのように見ていますか?」
早川氏
「多少は現実的になったという感じがしますけれども、それでもかなり努力目標的な数字ではないかと思う。たとえば、今年ですけれど、今年の1%前後というのは、そうおかしくはないと思うんです。現在、消費者物価の上昇率は0.8%で、まだ原油は上がっていますので1%ぐらいいくというのはおかしくないんですね。ただ一方、実はエネルギーを抜いた、要するに、生鮮食品とエネルギーを抜いた日銀版コアと言われる物価指数の上昇率は0.2しかないわけです。そうすると、だから、来年を考えた場合、原油がこれからドンドン上がり続けていくのでないとするとむしろ原油、エネルギーの寄与度は小さくなっていってしまうので、実力が相当上がっていかないと1%キープすることすら簡単でないわけなので、1.5%というのは実はかなり努力目標的ですよ」
松山キャスター
「まさに食糧・エネルギーの部分も含めて、どういうふうに物価が推移してきたかというのを示すグラフがこちらになるわけですけれど、5年半前の量的緩和導入、異次元融緩和導入後に、一時は物価が上昇して2%を超えた時期もあったわけですけれども、その後ずっとかなり低空飛行を続けていて。このグラフを見ると食料・エネルギーを除くという部分よりも総合部分の方、こちらの方が、いずれも低い推移をしていると。食料・エネルギーについてもかなり生活に直結する部分ですけれども、物価は上がっていないという状況。これを早川さんはどう見ていますか?」
早川氏
「ですから、まさに現在上がっているのは、全体だと、たとえば、ここのところ野菜が高いことが多いので、そいつが押し上げているのと、それから、皆さん、ご承知のように原油価格が上がっているのでガソリン代が上がっている、そういうのが押し上げているのであって。そうなると、天候不順がいつまでも続くかもしれませんけれど、普通はもうちょっとマシになるはずだし、原油もこんな調子でドンドン上がっていくのでないとすれば、そんなに上がらなくなってくるとすると、普通は赤い(食料・エネルギー除く)方に近づいていくというイメージになるはずであって。だとすると、この赤いのが相当上がっていかないと、要するに、2019年の1.5%というのはなかなかしんどいですよという」
松山キャスター
「須田さんは、この物価上昇率の引き下げ・修正ですけれども、これをどう見ていますか?」
須田氏
「どういうふうに見通しをつくっているかと言うと、この見通し期間の最後には2%にいくというふうに前提を置いてこう説いているから、2%にいくことになっていたのですけれども。まだ、現在のところ2%という目標にインフレ期待というか、インフレ予想が引っ張られているという程度を普通の人が考えるより強くしていく。たとえば、今回のフォワードガイダンスについて見ても物価目標達成…実現に対するコミットメントの強化ですというような言い方をしているんですね。だから、こうやってやることによって自分達も2%にいくのだという思いが普通より強く出ているというふうに思っています。私自身もその物価はこのまま見てもいいのですけれども、エネルギーを除いた…、モノの値段を見たら、日本だけではなくて、アメリカにしても、ヨーロッパにしても、ほとんど0%近くですね。それはグローバル化・IT(情報技術)化の中で結構だんだん修練収してくるようになっている。他方、サービスの値段はヨーロッパにしても、アメリカにしてもトントンと上がっている。サービスについて日本はどうですかと言ったらゼロです、ほぼゼロですと。そうすると、同じように2%に上昇していこうとしたら、サービスの価格がヨーロッパ・アメリカと同じようにかなり高い率で上がっていくという姿が見えないと2%は達成できないなと」

なぜ堅持? 『2%物価目標』
松山キャスター
「物価が上がらない理由について日銀がどう説明しているかというのを見ていきたいと思うのですが…」
生野キャラクター
「日銀は今回、このような見解を示しました。長期にわたる低成長やデフレマインドが強いという背景のもと、企業の慎重な賃金・価格設定スタンス、家計の値上げに対する慎重な見方、競争激化による価格押し下げ圧力、生産性向上余地の大きさや近年の技術進歩ということですけれど、早川さん、物価上昇に対する日銀のこういった見解をどういうふうに見ていますか?」
早川氏
「間違ってはいないと思いますけれど、基本的にその中で言うと、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスというのが圧倒的に重要だと思います。そのあとに出てくる家計の値上げに対する慎重な見方というのは賃金が上がらないからだと。賃金が上がってくれさえすれば、別に値上げにそんなに抵抗しない。昔、物価が上がっていた頃は、サービス価格も上がっていたんですよ。たとえば、クリーニング屋さんの料金は毎年4月に上がるのが当たり前、若い方はご存知ないかもしれないけれども…」
生野キャスター
「そうなのですか?」
松山キャスター
「それが当たり前だったのですか?」
早川氏
「当たり前でした」
松山キャスター
「あぁ、そうですか」
早川氏
「そうです。それはどうしてかと言うと、皆の賃金が上がっているわけですよ。皆の賃金上がっている時に、サービス業は生産性があまり上がらないので、値段は値上げしないとやっていけない。それは皆が寛容に認めていたんです。要するに、自分達の給料も上がっている、この人達だって生活がかかっているから値上げを認めてあげなければと思っていたわけですけれど。だから、現に1番根本にあるのは、賃金が上がらないから、家計も値上げに抵抗する」
大塚議員
「その点に関連して今回非常に日銀がある意味、正直に、かつ貴重な問題提起をしているんです。これは日銀の説明資料ですけれども、上がらない理由の1つに女性・高齢者の労働参加を挙げているんですよ。これは逆に言うと、女性・高齢者は賃金が低いということを言っているのと一緒ですよ。これは、日銀はそこを意図していたのかどうかはわかりませんが、実に深い問題提起をしちゃったわけですよ」
松山キャスター
「実態としてあるからそこに盛り込んだということでしょうけれども」
大塚議員
「現在、政府は、これから女性の社会参加、高齢者もっと長く働いてくれと言っていますけれども、こういう女性や高齢者の賃金水準が低いという状態で、それを推進すると、ある意味、この金融政策にも影響を与えるということを珍しく重要な問題提起をしていますよ」
松山キャスター
「大塚さん、日銀は黒田総裁も長期的な2%の物価上昇を諦めているわけではないことを強調していますけれども。この2%、物価上昇率が2%でなければいけない理由と、なぜこの2%ということにこだわっているのか、そのあたりどう見ていますか?」
大塚議員
「これは国会でも何度も総裁とやりとりしていて、結局、最終的に2%になると経済が好循環したり、いろいろなものがうまくいくということを理論的に説明している、そういう理論や学者はいらっしゃいますかと言って、何度も聞いたのだけれども、結局、最終的に、いや、そういうものはありませんと。諸外国で2%を目標にするのが普通なので私達もそうしていますということを1回答弁されたことがあって。つまり、2%目標の理論的及び合理的根拠はないですよ。だから、もし日本が何か特殊事情があって、イギリスやアメリカのようにならないというふうに判断すれば、それは1%目標でもいいし、あるいは物価目標を置かない金融政策の仕方もあると思います」

日本経済の抱えるリスクと策
生野キャスター
「金融緩和が長期化する中で日銀は今回、日本経済のリスク要因としてこのような点を挙げました。海外経済の動向、消費税率引き上げ。企業・家計の成長期待が不安定、財政への信認低下ということなのですが。大塚さん、これらのリスクについてもどのように考えていますか?」
大塚議員
「1番深刻なのは4番(財政への信認低下)でしょうね。目的はインフレ期待を高めるためであっても事実上、政府の資金繰りを日銀が助けている、ということになっているために、現在は、日本の政府はいずれ財政健全化にはちゃんと取り組むだろうという市場の暗黙の了解のもとに何とか信認が維持されているのですが。ところが、思い起こすと、現在から2年前にIMF(国際通貨基金)のエコノミストだったブランシャールという人がすごく辛辣なレポートを発表して、2年前に話題になったんですよ。もういよいよ最終局面が近づいているのかもしれないと、この財政の信認について。こういう表現を使っていました。ある時、突然、日銀の担当者に財務省から電話がかかってきて、生きるか死ぬかの瀬戸際なのだから自分達のことも考えてくれよ、もっと買ってくれなどという電話がかかっても不思議ではないという、こういうレポートが出て…」
松山キャスター
「日本の財政についての厳しい見方…」
大塚議員
「そうです。作家ではないですよ、ブランシャールさんは、人によってはノーベル経済学賞をもらってもおかしくないと…」
早川氏
「おかしくない…」
大塚議員
「…そういう人が、そういうことまで言い始めているので。いずれも先々の下振れリスク要因はありますけれども、もしこの4番(財政への信認低下)ではないことが取り沙汰されてくると深刻だと思いますね」
松山キャスター
「あと来年10月には総消費増税が予定されていますけれど、またオリンピックの前倒し需要での景気後退懸念もありますけれど、そういった要素というのはどういうふうに影響してくると?」
大塚議員
「これは影響してきます。消費税率、予定通り引き上げられれば、前回の経験から言っても、ある程度の下押しダメージというのはあります。おまけに、これはオリンピック需要で現在、完全に建設コストとか上がっているわけですから、それでもなおかつこの状態ですから、それがなくなる、剥落すれば、当然2020年、先ほどの予想では1.6%でしたけれど、2020年ぐらいからその1.6%もかなり高めの予想・期待に過ぎず、もっとそれより低くて。2021年にはガクッと下がるということがあり得ると思いますね」
松山キャスター
「早川さん、このあたりはどう見ていますか?」
早川氏
「常識的に考えると、今年度いっぱいはたぶん日本の経済は大丈夫かと思いますけれども。来年度から再来年度にかけてどこかのタイミングで景気の転換点がくる可能性はかなり高いと思いますね。第一にそもそも現在の景気が5年半続いていてということであり。現在、今年たまたま設備投資計画がすごく強いのですけれど、景気末期の設備投資計画が強いというのはむしろ危ない兆候です、経験則からすると。それに加えて、現在の消費税があり、オリンピックがあり、ということなので。それだけ国内要因を見てもそうなのですけれど、海外の方を見ると、ご承知のようにアメリカ経済、今年はすごく強いのですけれど、減税もあって。逆に言うと、物価が上がってきているのでたぶんFRB(連邦準備制度)は着々と金利は上げていくんですよね。そうすると、アメリカについても普通に計算すると2020年度前後にはピークがくる可能性が高いというようなことで。いずれにしても2019年から2020年度にかけて景気の転換点はあり得ると考えておかなければいけないと」
松山キャスター
「もう1つあるのは、アメリカでよく現在問題になっているのが、問題というか、意図的にやっているのですけれど、トランプ政権がやっている対中国に対する関税措置ですね。これが貿易摩擦、貿易戦争と言われることもありますけれど。この影響がどこかの時点で世界的な景気後退局面につながっていく、そういうリスクというのは、どう考えていますか?」
早川氏
「当然あると思いますね。現在1番気になるのは、2つあって。1つは中国も景気の減速、これは別に既に貿易摩擦が影響し始めているというわけではないかもしれないのですけれども、中国の景気減速がかなり明確になってきていますし、それから、新興国の多くでアメリカの金利が上がっていく中にあって資金流出が起こっていますので、新興国的にも少し厳しくなっている状態。要するに、アメリカは完全雇用なのに大減税をやっていますから。これまで、アメリカはなかなか景気が良くても物価が上がらないねと言っていたのが、物価も上がってきているので、FRBは着々と利上げしていくし、よせばいいのに、たとえば、関税かければ物価は上がるんですよ」
松山キャスター
「そうですね、価格が上がるわけですから」
早川氏
「そう。イラン核合意を廃棄しているので、それによって原油価格も上がると。だから、FRBから見ると、あなた、トランプさんのやっていることは私達にもっともっと利上げをしてほしいというふうに見えますねと、パウエルさんは言わないけれど、たぶんそう見えているはずです」
松山キャスター
「IMFは貿易摩擦が深刻化した場合のリスクというのをこのように数字を出して発表しているのですけれども。世界的に全体で-0.5%、GDP(国内総生産)が押し下げられると。日本についても-0.6%押し下げられるという予測を出しています。アメリカ-0.8%、新興国-0.7%などとなっていますけども。須田さんは貿易摩擦が与える景気後退のリスク、下振れリスク、このあたりをどう見ていますか?」
須田氏
「もともと、もうそろそろ2019年以降には景気の循環という意味では下を向くと。それから、日銀にいる時、よく言われたのですけれども、日銀の見通しは景気が良くて、ソフトランディングするような見通しを立てているんですね。高い需給ギャップ、プラス大きかったそれがだんだん…。そんなこれまで経験則がないと。下がっていったら、必ず景気後退にいくものだということなので。もうそろそろ、かなり長い成熟してきた中では、そういう時期が到来するというのは日本もアメリカも同じで、現在、中国が少しおかしくなっているということもあるから、リスク要因として見たら、海外経済が下振れるリスクというのが結構気になっています。そのうえで貿易摩擦がいったいどの程度の意味を持つかということに関しては結局、それぞれ2国間もグローバルにもあるのでしょうけれど、対日本ということで見ればトランプ氏が2国家間の貿易収支をすごく気にしているということの持つ意味、だから、大きく円高になりかねない。それから、トランプ氏のこういうこと、対日本に対する批判に対して企業の方にどうするのだということなると結局は地産地消しかないよねというお話をされるんです。そうすると、アメリカで売りたいのだったらアメリカに行きます。だけど、どうなるか現在見えてこないから、何が起こっているかと言うと、先が見えないことの不確実性が人々の行動を止めちゃっているんです。だから、摩擦そのものが見えないことによる投資行動も…」
松山キャスター
「抑えられてしまう…」
須田氏
「抑えられてしまう。今度はじゃあと言ったら、国内で投資というよりはそっちに行って投資を、いざとなったらやっていくしかないかなというふうになっているので。この問題はかなり大きくなったら下振れ要因としては相当カウントしていかなくてはならないだろうなというふうには思っています」

『出口戦略』あるべき道筋は
松山キャスター
「大塚さん、今後の出口戦略行動、どう見ていますか?」
大塚議員
「そうですね。2つ申し上げたいのですけれども、1点目は黒田さんの5年間でマネタリーベースや総資産の対GDP比がだいたい3倍になったんですね。それから、日銀の持っている保有国債の残存期間というヤツが3.88年から7.66年とだいたい倍になったんですよ。それで黒田さんももう残り任期は5年弱になってはっきりしているわけですから、黒田総裁就任時の状況にどのように近づけるかという長期的な考え方をお示しになってもいいのかなと。それは、でも、いきなり、たとえば、残存期間7.66年を、償還期限がきたヤツをそのままずっと落としていけば、だんだん短くなって元に戻るのですけれど。ただ、3.88年という元の水準に戻さなくても在任期間中に何とかこれを5年程度にはしたいとか、そういうターゲットをお示しになる時期がきているのではないかなと。これが1点ですね。2点、私の場合は立法府に身を置かしていただいているので、現在、事実上、統合政府状態と言われているわけです」
松山キャスター
「日銀と政府が…」
大塚議員
「財政と金融が一体化して政府と中央銀行が統合政府のようになっていると。アマルガメーションアプローチなんて昔は、これはSFの世界だったのですが、現在は現実になっちゃって。そうすると、今私達、ちょっと中で議論しているのは経済・財政・金融に関する基本法みたいな、もちろん、中央銀行の政策の自由度はもちろん、独立性がありますから、そのまま中央銀行に委ねるのですけれども、しかし、財政と金融が一体化して経済にも影響を与えるという観点からすると立法府として経済・財政・金融に関する基本法、その枠組みの中には、たとえば、日銀は、この残存期間について適正な期間において適正な水準に戻す努力をすべきと、敢えて水準は明記しないまでも。言って見れば、そういう運営の基本方針を金融も財政も経済も、日銀が自ら出口戦略について語れないならば立法府としてザクッとした枠を提示してあげるということも1つのやり方かということで、現在議論はしています」
松山キャスター
「早川さん、日銀の独立性というのは昔から言っている議論だとは思うのですけれども、現在の政権との関係もあると思うのですが、政府と日銀がかなり寄ってきているのではないかという大塚さんからの指摘もありましたけれども。そのことがなかなか政策を劇的に変えられない理由になっているのですか?」
早川氏
「正直言って、本当にデフレ局面において中央銀行の独立性をどこまで強調するかというのはちょっと疑問もあるんです。ある意味で、デフレ局面においては政府と一体にならないとなかなかデフレ脱却できない。おそらく、本当にアベノミクスの3本の矢が当初言っていた通りきっちりやっていれば、相当良かったと思うんです。要するに、金融政策は大胆に金融緩和をやり、政府はまず1回財政出動した後、ある一定の状態にいったら財政の健全化に舵を切る。その一方で、常に成長戦略はベッタリがんばる。でも、そうなっていないのが問題であって。そういう中にあってひたすら中央銀行が政府に従属する、あるいは官邸の意向を忖度して動くのであっては、これはかなりまずい状態ではないかと。だから、本当は別に3本の矢というのは実はある意味で独立ではないですよ、皆で一緒にやろうという話ですから。それはそういう局面において必要だと思うのだけれども。結局、それは守られていなくて、守られていない中にあって、ひたすら日銀が、政府がどんなに赤字を続けていても買い続けると。政府と日銀が共同声明ではそういう話ではなかったでしょうということをちゃんと政府に対して言っていかないといけないと思いますね」

大塚耕平 国民民主党共同代表の提言:『正直な説明 後付政策からの脱却』
大塚議員
「2つ申し上げます。1つは、今回の政策変更、中身はともかく、見通しが少し正直になったという意味では良かったと思っているんですよ。これからはできるだけ正直な認識と説明に努めていただきたいというのが1点と、それから、起きたことをなぜこうなったか、これは日銀のせいではないと言って理由をいっぱい考える、こういう後付政策的な対応はもうやめて、黒田さんも任期満了に向けて、有終の美を飾るべく、フォワードガイダンスではなくて、フォワードプランニングというか、ウィリングというか、明確な意思を示してもらいたいと思います」

須田美矢子 元日銀政策委員会審議委員の提言:『聞く耳を持つ』
須田氏
「要するに、これから大事なのはコミュニケーション・対話であるということ。パウエル議長が金融政策というのは、全ての人に影響を与えるのだから誰にとってもミステリーであってはいけないということをおっしゃっています。ちゃんとわかるような説明をし、聞く耳を持つということは、相手のわかるような説明もできるはずで、そうなっていなくてはいけないと。だから、キチッとした議論をしていただきたい。これは政府に対しても言いたいことですけれど、国民皆でこういう姿勢でいっていったらいいと思います」

早川英男 元日銀理事の提言:『副作用のオープンな議論』
早川氏
「『副作用のオープンな議論』と書きました。今回、やったこと、たとえば、長期金利の上昇要因にしても持続性が高まるようなスキームづくり、正しい方向だと思いますけれども、決してわかりやすいやり方ではなくて。そのためには、本当は副作用についてきっちりとオープンな議論をしたうえで、だったらどういう政策が必要かというふうに進めていく必要があると考えています」