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2018年7月30日(月)
日韓合意『白紙化』か 日本の拠出10億円凍結

ゲスト

西村康稔
内閣官房副長官 自由民主党衆議院議員(前半)
陳昌洙
世宗研究所日本研究センター長
浅羽祐樹
新潟県立大学教授

日韓合意『白紙化』の真意 文大統領の『対日戦略』は
竹内キャスター
「先週、韓国の文在寅政権は、日韓合意に基づいて日本が既に拠出していた10億円を保留、あらためて韓国政府が10億円を支出し、慰安婦の方々を支援するという新たな方針を閣議決定しました。解決に向かって動いていたはずの慰安婦問題は再び振り出しに戻ってしまうのでしょうか。文在寅大統領の真意と日韓関係の今後について話を聞いていきます。2015年12月、安倍政権は当時の朴槿恵政権と慰安婦問題に関する合意を確認しました。その中で、日本の拠出10億円で韓国が財団を設立し、元慰安婦の方々の『癒し事業』を行うことになりました。その後、朴槿恵大統領は弾劾により罷免されています。2017年5月に大統領に就任した文在寅氏は、慰安婦問題について『多くの国民は心情的に日韓合意を受け入れていない』と、当初から否定的な考えを示していました。新政権の下、日韓合意の経緯があらためて検証され、昨年12月、元慰安婦への意見聴取も行われず両国政府による秘密交渉で結ばれた不均衡な合意との調査結果が報告されました。年が明けた1月の会見で、文大統領は、『日本が真実を認め心から謝罪することが必要』としながら、日韓合意は正式な政府間合意であり日本との再交渉は考えていないとコメントしました。この時に韓国政府があらためて10億円を支出する方針を示し、先週火曜、正式に閣議決定されました。西村さん、そもそも政府間で結んだ合意を政権が代わって、次の政権が検証するということ自体、日本側としてどう受け止めていたのでしょうか?」
西村議員
「まさに国と国との国際約束ですし、これはまた国際社会が非常に評価をした合意だったわけです。当時の潘基文国連事務総長も大変評価をされましたし、アメリカもこの合意を歓迎ということで表明しています。そういう意味で、国際社会が認めた国と国との約束ですので、我々としてはこれをしっかり守っていただきたい、実行していただきたいということをこれまで何度も申し上げてきていますし、これは既に申し上げていますけれども、平昌オリンピックの時、安倍総理が平昌に行きまして、首脳会談、あの時に文在寅大統領は明確に『この合意は破棄しない』と、それから、『再交渉もしない』と、それから、『財団は解散はしない』『10億円は日本に返還することもしない』ということを明言されておられますので。そういう意味では、我々としては韓国政府としてもいろいろ国内の内政のことは我々も申し上げることはないのですけれども、しっかり実行してもらえるものと思っておりますし、文在寅大統領と安倍総理の信頼関係も私は醸成されてきていると思いますので、是非、実行していただきたいというふうに思います」
松山キャスター
「合意そのものについてはかなり否定的なことを、大統領選の時から文在寅大統領は言っていたわけですけれども。この韓国のスタンスはどう見ていますか?」
西村議員
「実は我々の拠出した10億円については、既に元慰安婦の方々に34名の方、それから、亡くなられた方もおられますので、ご遺族の方、58名のご遺族の方にも、これは、陳さんはご存知の通りで実施をしております。約5億円は日本の拠出したお金で、渡って支給されているということです。ですので、我々としては着実に実行してもらいたいということで、既に実行してきているわけですので、そういう理解です」
松山キャスター
「陳さん、西村さんが先ほど、話されましたけれども、既に一部の遺族に対しては、ある程度の金額が払われているという実績があるということですけれども…」
陳氏
「はい、うん」
松山キャスター
「ここについてはそのままいくのか、あるいは韓国政府としてはそこについてもう一度、その取り扱いを再協議しようとしているのか、そのあたりはどう?」
陳氏
「ただ、現在、渡している金額については、日本のお金ではなくて、韓国のお金でもうそれを支払った、渡しているのだということを強調しているわけですから、その事業はやるんだと思いますね、これからも。だから、これから10億円の道については、また、日本政府と韓国政府が協議をするんだという、交渉をして、どういうふうに使い道を選択するかは政府間の協議によって決まることで、とりあえず韓国政府がやっている、現在、和解・癒し財団がやっている事業については、そのまま続くのだろうと私は思うんです」
松山キャスター
「日本のお金ではなく、韓国のお金として支払われたという形になっているということなのですけれども、そこは日本政府としてはそういう認識ではないと?」
西村議員
「円か、ウォンかというお話かと私は理解したのですけれども。日本が拠出をした10億円のうちの約5億円がもちろん、韓国の通貨のウォンに替えられて、支払われているという理解をしています」
松山キャスター
「そういうことですか?それとも韓国政府が払っているという形の?」
陳氏
「だから、これから、10億円の使い道を日韓の両政府が話し合いをするんだということですから。現在の金額をどうするかということは、まだわからないところがあるんだと思いますね。だから、これから韓国…」
西村議員
「いや…」
松山キャスター
「そこは認識が違いますよね?」
西村議員
「日本が既に拠出した10億円は、これは日韓合意でまさに元慰安婦の方々の心の癒やしのための事業に使うということで、先ほど申し上げたように元慰安婦の方に直接、1億ウォンですか、お支払いをし、支給し、ということでやっていっていますので。これはこれでもう既に内容は決まっているという理解です。ただ、韓国政府が追加的に10億円、自ら予算を出してやろうというところは、これは我々としては韓国内政の話ではありますけれども、日韓合意の趣旨に則って、それを損なわないようなことでやっていただきたいということですね」

日韓『慰安婦問題』再燃か 宙に浮く『日本の10億円』
竹内キャスター
「日韓合意の翌年、2016年に日本が拠出した10億円によって、和解・癒やし財団が設立されています。10億円を使って、これまで事業が進められた結果、生存されている47人中34人に1人当たりおよそ970万円、遺族については199人中58人の方々へ1人当たり194万円が渡されています。ところが、資金を5億2000万円残して、現在この財団は、事実上活動が止まっているということなのですが。陳さん、この活動が事実上止まっている背景にはどういった?」
陳氏
「だから、生存者には36人、渡したいと思っているのですけれども、その中で2人はまだいろいろなプロセスの中にいるわけですね。それと、遺族の方も68人ですね、実は68人がもらいたいということで、申し込みをしたのですけれども、そのうちの10人は名簿を確認して、本当に遺族なのかどうかを確認する作業に入っているわけですね。それで、そのあとのことが行き詰まっているところがあるんですね。なぜかと言うと、遺族の方は名簿を確認して、それを探すのが難しいですね。なぜかと言うと、慰安婦だということを知らない遺族もよくいるし、そのことから作業が大変難しくなっているところがあって、生存者はだいたい36人がもらいたいということですから、その以外の人は反対している方ですね。だから、事業はこれからも進むだろうと思いますけれど、90%…、80%はやっているのだと、やったと思いますね」
松山キャスター
「先ほど、西村さんの話ですと、日本としてはまだ日韓合意の枠組みというのは残っている、機能しているという認識だということだったのですけれど、それは陳さんも同じ認識?」
陳氏
「同じですね。だから、日韓合意に基づいて財団が運営されているのですけれども。それは財団がやる仕事というのは遺族に渡すことだけではなく、生存者と遺族に渡す金額を渡すことではなくて、祈念の事業もやるんですね。そのことは、祈念の事業というのは、癒しのために、ハルモニの慰安婦の癒しのために、そういう歴史的な教訓として残したいと。だから、何か祈念事業をやりたいと思っているのですけれども、そのことについては日韓が、政府が一緒に話し合いをして、その結論からその仕事をやるべきだと思っているのですけれども。そのことについてはあまり進んでないのだと思っているんですね」
松山キャスター
「西村さん、先ほど、陳さんが話されたような、慰安婦、元慰安婦への方々への支援とまた別に、その祈念事業的な部分にお金を振り分けるかもしれないという話がありましたけれども。そういうことは日本としてはある程度、韓国政府とのやりとりの中で、そういう打診を受けているのですか?」
西村議員
「詳細を承知していませんけれども、具体的にどういうことをやろうとされるのか。私は基本的にはまさにこの問題は最終的・不可逆的に解決だということですので、また、何か新たに問題だということで取り上げられ、それから、お互いに非難・批判することは控えるということで合意はされていますので。また、それで何か非難を、その事業によって、そういうきっかけになってしまうということであれば、これはもう我々としては認められないということですので。いろいろなアイデアはあると思いますので、お一人お一人にまずお渡しをして、また、日韓両政府でいろいろ知恵を出していけばいいのではないかと思いますけれども。しかし、いずれにしても最終的・不可逆的な解決ということですし、10億円については、日本としてはまさに慰安婦の皆様方の心の癒やしの事業に使っていくということです」
陳氏
「私が1番残念だと思っているのは、和解・癒やし財団をつくって、最初に慰安婦のハルモニ達にお金を、1億ウォンを渡す時に、何か両政府が、そこに象徴的なイベントをしてほしいと財団側は言っていっているわけですね、言ったと思いますけれども。だから、官房長官なり、日本の政府の長官が来て一緒に手を組んで、こういう癒し財団として役割をするのだという意味で、ハルモニ達に両政府が渡せば1番良かったと思います。それが合意精神に基づいての事業だと思ったのですけれど、それを日本政府はやらなかったわけですね。だから、問題はお金だけ渡して、それでもうおしまいですよという気持ちでは、癒しのことが本当にできるのかということですね」
浅羽教授
「非常に難しいその職責を引き受けられて、少しでも円滑に進めるために日本側からそういう呼び水があればやりやすかったと現在吐露されたのですけれど。国内事情は、それはそれでよくわかる反面、もしそうであるならば15年12月の段階でパッケージディールにしておくべきで、それであれば日本側としてもそもそもそのディールを飲むか、飲まないかという選択の余地はあったのですけれども。あとからだと後出しジャンケンをされたというふうに政権中枢も、日本国民も広くそのように、またかという感覚を持ってしまいますので、このかけ違いがこれまで何度か解決のチャンスがあったにもかかわらず…、解決しきれなかった部分を繰り返してしまうことになるので。もしそうであるならば、15年12月の前の段階でパッケージにすべきだったなと」
松山キャスター
「まさにそのあたりは?」
西村議員
「松山さんが先ほどおっしゃられた通り安倍総理は心からお詫びと謝罪の意思を表明されているわけで、この日韓合意の中でされていますし。それから、朴槿恵、当時の大統領との電話会談でもこのことを表明され、これは対外的にも公開され、公表されていますので。私は過去、小泉総理も含めて、当時は手紙で、お手紙を出してお詫びと謝罪をしていますけれども、あらためて安倍総理もそういう形で表明したということですので。これは合意の中でなされたことだということですので、是非ご理解いただきたい…」
陳氏
「だから、合意の中で謝罪とお詫びをしたということについては認めますけれども。だから、慰安婦のハルモニ達にお金を渡す時に手紙ぐらいは出してほしいということを財団側は言っているわけですね。それを…」
松山キャスター
「日韓合意をまとめたところでは、そこまで盛り込まれてはいなかったですよね?」
陳氏
「なかったんです。パッケージで、全部を文章で書き込むのは、これは無理ですよ。それは常識的に考えて行動をするべきですね。だから、その意味で、手紙くらいは出してほしいと言ったらば、日本政府も前に手紙を出したこともあるし…」
松山キャスター
「アジア助成基金の時に村山総理が…」
陳氏
「…あるんです。それにもかかわらず、手紙も出さなかったということは、本当に正義がある行動なのかと?」
松山キャスター
「韓国政府としても謝罪、誠意のある謝罪ということを繰り返し言っていますけれども、このあたりどう受け止めていますか?」
西村議員
「まず、この日韓間の請求権、財産権、請求権の問題はですね。まず1965年の日韓協定で全てこれは最終的、完全に解決済みという、まずこの立場があって、それにもかかわらず今回、安倍総理の最終的な判断でこういう形で慰安婦の皆様に対してお詫びと謝罪をしながら、今回の拠出を決めたわけです。このことについては国内でも保守派の人達から大変な批判もあり、安倍総理の支持率も落ちて…落ちるような事態の中で、しかし、この日韓関係を進めていくうえで、敢えてこの判断をされ、進めてきています。ですので、そうしたことも含めて、韓国側にも是非理解をしていただきまして、まして現在、文在寅大統領は非常に高い支持率、若干少し下がったとは言え大変高い支持率をお持ちですので、是非この日韓合意を着実に実行していただきたいなというふうに思います」

トランプ大統領×金正恩委員長 米朝協議と『非核化』の行方
松山キャスター
「北朝鮮をめぐる情勢というのもかなり動いていますので、そういった意味でも日韓関係が重要だと思うのですが。最近の北朝鮮の動きをまとめてみたのですが、西村さんはどう受け止めていますか?」
西村議員
「はい。歴史的な米朝の首脳会談で、初めてアメリカ大統領に対して文書で、金正恩委員長が完全な非核化ということで約束をしましたので、これは大きな一歩として評価をしつつ、その後、ポンペオ長官と北朝鮮側で交渉が進んでいるのだと思います。我々としてはそう簡単に、そうすぐになかなか、北朝鮮もいろいろ考えるでしょうから、まだ現在の段階で核の施設を破壊したとか、あの爆破は1回やっていますけれども、核の施設について何かしたという情報には接していませんので。そういう意味で、まさにそこに書いているポンペオ長官が公聴会で言われている通り、難しい相手との交渉ですので、我々としてはしっかりこれをサポートしていく、全面的にサポートしていく。この点については日米、日米韓でしっかりと連携をとっているというふうに思います」
松山キャスター
「まさに日米韓で連携をとるためには、まさに韓国と日本の関係も良好に保っていなければいけないと思うのですけれども。先ほどの慰安婦をめぐる問題とか、若干、日韓合意をめぐる認識についても、ここで差異が出てきているという状況で、この日韓の関係、北朝鮮に対して今後、日韓の溝が深刻な状況になった場合に悪影響を与える可能性というのがあるのではないですか?」
西村議員
「私は、文在寅大統領と安倍総理の関係も、平昌オリンピックに安倍総理が行きまして、その時の首脳会談、先ほどお話したようなやりとりがありました。それから、その後、今年の5月の連休明けですけれども、日中韓の首脳会談で文在寅大統領が来日をされて、安倍総理と首脳会談、昼食会も開きました。その時にちょうど文在寅政権1周年の前の日だったものですから、まさにサプライズで安倍総理から、昼食会の時にケーキを一緒に出しまして、『1』と書いた…、これは非常に文在寅大統領も感激をされましたし、私は首脳間で話をしていけば、文在寅大統領も非常に現実的な対応をされる政治家だと思いますし、いろいろありますけれども、マネージしながら、両国関係を発展させていき、さらに北の非核化に向けて、しっかりと歩調を合わせていけるというふうに思います」

半島情勢『激変』の時代 日本がとるべき対応は
松山キャスター
「一方で、文在寅大統領は、北朝鮮の金正恩委員長との南北首脳会談において、年内に朝鮮戦争の終戦宣言を行うという目標を盛り込みましたけれど。この終戦宣言については北朝鮮側がアメリカとの協議でもかなりこだわっているような姿勢が最近見受けられますけれども。日本としては年内に南北朝鮮が終戦宣言、どういう形で行うかはわかりませんけれども、朝鮮戦争の終戦宣言が行われるということに対する日本としての考え方、対応というのはどういう姿勢なのですか?」
西村議員
「終戦宣言というのは何を意味するのかというところによりますので、これは非常に難しいのですけれども。基本的には非核化をちゃんと進めていることがない限りは、それをしっかりと具体的な行動を示して非核化に向かって進んでいるということがないと、なかなかそう簡単に終戦宣言というのは、私はやるべきではないというふうに思います。これはいずれにしても日米、日米韓で連携しながら北朝鮮にしっかり行動をとってもらうということをまずやっていくことが先決だと思います」
松山キャスター
「非核化、核・ミサイル・拉致…」
西村議員
「我々にとってはもちろん、ミサイルも拉致問題もありますので、この解決に向かってしっかりと歩んでいくと、着実に進めていくということだと思います」

米朝協議と『非核化』の行方
竹内キャスター
「今年の4月、南北首脳会談の成果として打ち出された板門店宣言にはこのような共同声明が盛り込まれています。『南と北は民族の運命は、自ら決定するという民族自主の原則を確認し、既に採択された南北宣言や全ての合意などを徹底的に履行し、関係改善と発展の転換的局面を切り拓いていくことにした』と宣言しています。これから北朝鮮と韓国はどのような関係をつくろうとしているのか。宣言に込められた南北首脳の意図を、浅羽さんはどのように読み解いているのでしょうか?」
浅羽教授
「先ほど、副長官がお戻りの前に、終戦宣言についてどうお考えかと、非核化が進まないと終戦宣言だけが先に進んでもらったら困ると、私もそうだと思うんですね。非核化の部分が不可逆的に進展をせずに終戦宣言だけ、あるいは平和協定、さらには平和体制という部分だけが進んでしまうと、そちらが不可逆的になって、非核化の部分が可逆的、戻ることができるようになってしまうと困ると。ですので、後先が非常に大事ですが。韓国は3日前、7月27日が朝鮮戦争の休戦協定を結ばれて65周年ということで、板門店宣言に今年と盛り込んだことにも見られるように、非常に積極的、前向きですね。北朝鮮もポンペオ国務長官が3度目の訪朝を行って、会談を行った場合に我々は結構、不可逆的にいろいろなものをやっていると…。核実験場の爆破、あれは実は入口だけなので可逆的な措置でしょうし、ミサイル発射台も閉鎖するとか。他方で、アメリカ側は米韓共同軍事演習はとめたけれども、それは微々たるものだというのが北朝鮮側の主張。さらに見合う措置をとってくれと言うので、終戦宣言を非常に強くプッシュしているわけですね。韓国もそれに乗りかねないようなところがあって。日本とアメリカ、トランプ大統領としたら政治的判断でそれに乗りかねないのがちょっと危ういところですが、安全保障のサークルにいる人は北朝鮮の非核化が実質的に進まない限り終戦協定の部分が先にされてしまうと、非核化が進まないからと言って、もう一度、休戦体制に戻るということはできませんので、そこは非常に後先を一致するということと。韓国だけが前のめりにならないという部分の政策協調・協定、コーディネーションが大事だと思います」
松山キャスター
「韓国国内の世論は、陳さん、南北融和という話が南北首脳会談のあとぐらいからグーッと盛り上がってきたような気がするのですけれども…」
陳氏
「はい」
松山キャスター
「今現在の韓国内の世論というのはどういう感じなのですか?」
陳氏
「韓国世論は、対話をして戦争をなくすということについては、現在の文在寅政府がやっていることについては評価しているんだと思うんですね。だから、戦争の寸前まで行った危機の時期があって、昨年から見るとそれが現在はだんだん平和のムードになっていること自体が、それはいいことだと思っているのですけれども。さっきのことで本当に金正恩さんが非核化の意思があるのかどうかなんですね。現在の終戦宣言についてもそれをやるべきだという人達は、非核化の意思、金正恩さんが非核化の意思があって、それをもうちょっと早く非核化を進めるためには彼らが望んでいる終戦宣言をやって、そのあとにまた戻ればいいと。彼らは本当に非核化の意思がなくなった場合は、国際制裁をもっと強くしたり、それで前の戻ってやればいいんだ。だから、とりあえず呼び水をかけるように、とりあえず終戦宣言をやってみて、それが、非核化が進めればいいのだという考え方を持っているわけです。一方で、アメリカのところと、アメリカと日本の方で言っているように、非核化の意思について疑いを持っている場合は、非核化を進めないと終戦宣言をやってはいけないんだという主張になるわけですね。だから、現在の段階でどっちの方がいいのかということについてはまだわからない部分があるのですけれども。韓国の方から見ると、もうちょっと非核化を進めることにすることがあれば、それはやったほうがいいんだと思っているわけですね」
松山キャスター
「浅羽さん、今後、在韓米軍の撤退という話まで現実化してくるとなるとかなり東アジアの安全保障環境というのがガラッと変わってくると思うのですけれども、韓国国内ではそれについては、どういう受け止めをされているのですか?」
浅羽教授
「これは、北朝鮮だけに一方的に屈服を求めることはできないにしても、現実的にできないにしても少なくとも釣り合いのとれた形で進むべきだと。行動対行動が事実上前提になっているわけですけれど、北朝鮮の様々な措置ですよね、遺骨を55柱返すとか、核実験場の入口だけの爆破ショーをするとか、あと、東倉里のミサイル発射実験場を閉鎖すると。でも、既に火星15号、ICBM(大陸間弾道ミサイル)、昨年11月末に飛んだヤツは移動式発射台から飛んでいるわけで、もう完成しているものなので、要らないから閉鎖しますという話なわけですよね。ですので、能力の軽減には至っていないと。善意は一応、金正恩さんがサインした文書が出てきたというのは、それは画期的ではありますが、懐疑論から見ると能力が実質的に削減されて初めて呼応する措置を考える余地が出てくると。米韓軍事演習はとりあえずこの夏から秋にかけてやるヤツが停止になります、韓国も呼応する独自のものを1回はやめますと。これが長く続いてくると在韓米軍はローテーションできますので…」
松山キャスター
「なかなかノウハウを継承できない…」
浅羽教授
「半年、1年となると、単なるその停止ではなく、核抑止の即応力の能力の低下、韓国を防衛するアメリカのコミットメント低下、翻っては在日米軍、日米同盟もそのように扱われるかもしれないという、同盟ネットワーク一円に対する不安につながりかねないので。そっちの部分がかなり進みかねないと。北朝鮮の措置はいろいろあるのですけれど、それこそ本当にサラミを細かく、細かく小出しにして、集めても、これはステーキにまだなっていませんよと、我々が食べたいのは分厚いステーキですと、旨いと言いたいという話なので。そこが、釣り合いがとれないと、終戦宣言、いくら政治的な宣言と言っても、それを突破口にもう実質戦争は終わったのだからと韓国国内世論から当然出ますし、それに便乗する第3国も当然出てきますので、在韓米軍の規模、現在の規模は必要ではないのではないですかという議論に波及するのは、これは目に見えているわけですよね」

南北が描く『国のカタチ』は
松山キャスター
「南北がどういう形で結びつくか、韓国側の提案としては現状の国の形を維持したままで協力できる部分で連合していくという統一の案というのが出されたと」
陳氏
「うん、そうですね」
松山キャスター
「一方、北朝鮮の方は、両国を束ねる政治機構上において、南北双方を統治していくという低い段階の連邦制と言われますけれど、こういう形の提案がなされたということなのですけれど。陳さんはこういった提案、将来南北が仮に本当に統一されることがあるとすれば、どういう形に進んでいくと見ていますか?」
陳氏
「だから、国家連合になるんですね。韓国側が提案をしているところから始まるんだと思うんですね。なぜかと言うと、非核化をすると、まず金正恩さんが望んでいるのは開発独裁ですね、開発独裁。開発をしながら自分が独裁をする姿勢を持つということになるのだと思います。それがうまくいけば10年は維持されるのだと思いますけれど、韓国の方を見ても、1972年の維新独裁が始まってから、1980年代になると民主化運動が起こるわけですね。だから、10年以上になると政権が本当に維持できるかどうかは、うまく非核化をして、本当に経済を開放してやれば、実は金正恩政権が本当に長く続くかどうかはわかりませんね。そのことを考えてみると、開発独裁の金正恩さんの国家と、韓国が、両方、国があって、そこから、経済交流、人権の交流を進めていくと、だいたい連合体のことになるのだと思いますね」
松山キャスター
「浅羽さんはこのあたりどういうふうに?」
浅羽教授
「板門店宣言の順番を見ると、南北協力のアイテムもいっぱい書かれているんですね。道路とか、鉄道とか、場合によっては電力、ひょっとしたら北朝鮮の核のエネルギーで原発という話につながる可能性が十分あるのですけれども。非核化は最後に短く書かれているんですね。シンガポールの共同声明も実は米朝の間の新しい関係の構築が1番目で、2番目に平和体制、3番目に非核化、4番目に遺骨の返還です。なので、北朝鮮からすると、1番目、自分達は4番目、順序からと言うと4番目をやったのに1と2が進んでないのに3だけできるかということが言える構図にはなっているんです。韓国側はそれにある種、呼応する部分があって、1、2の部分が進むことで3を、非核化の部分を北朝鮮に出てこさせたいという、楽観視していると。日米のとりわけ安全保障のサークルから言うと能力の部分が客観的に軽減、しかも、不可逆的に軽減されて初めて呼応する措置として平和体制の部分で、最初の第一歩として終戦宣言というのはあり得るという姿勢です。2点目は、その話につながるのですけれども、板門店宣言で南北協力が最初に書かれていて、終戦宣言と南北協力をやりたいと。他方、南北協力は南北だけでは勧められない。非核化の部分で実質的な進展があって、国際的な制裁が緩和されないと南北だけで勝手にはできないと。人道事業として離散家族の再会ですとか、そのくらいはやれるけれど、道路ですとか、開城工業団地の再開ですとかは現ナマが入るという話になりますので、それはできないということも韓国政府もよく理解しているんですね」
竹内キャスター
「国家として民主主義の国と党独裁体制の国が1つにまとまってやっていくというのは可能だと思いますか?」
陳氏
「可能ではないですね。だから、先ほど話した通り、こういう連邦制になるというのはその次の段階ですね。だから、お互いに開放すると独裁体制は必ず崩れるわけですね、崩壊する可能性が高いわけですね。だから、韓国の方は長期的なことを考えて、統一に向けてやることだと思って、非核化をすることは重要ですね、その意味で。だから、先ほど、浅羽さんが言っている順序では、3番目とか、後ろの部分にあるのですけれども、現在の北朝鮮はそれしか持ってないわけで、核しか持っていないわけなので…」
松山キャスター
「だから、それを最大限吊り上げて交渉している感じがします」
陳氏
「そうです。だから、それを最初のところへ持っていって、お前、全部ということよりも、順序にやって、そのあとに結果として、それを非核化するんだと。だから、その意味で、プロセスがこれから、交渉しているところですから、まだ失敗か、成功かはまだわからないですね。だから、成功に向けていろいろな期待を込めてやるべきだということが韓国側の立場だと思いますね」

どう向き合う? 日本と韓国
松山キャスター
「歴代韓国の政権というのは、支持率が下がってきた頃にだんだん反日色を強める、運動に乗ったり、そういうことが過去に何回かあったかと思うのですけれど」
陳氏
「うん」
松山キャスター
「現在、文在寅政権は、かなり高い支持率をキープしているということですが、今後この支持率がドンドン低下してきた時にそういう反日色を若干強めていくという、そういう危惧というのはありますか?」
陳氏
「ないですよ」
松山キャスター
「ありませんか?」
陳氏
「それがないんですよ。なぜかと言うと、日韓関係は前と違って、65年体制の3つの柱があったんですね、だから、3つの柱というのはまず歴史を管理すると、安保のことを考えて、安保の協力を考えて歴史を管理すると。それがだんだんうやむやになっているのですけれど、それが1つの柱だったんですね。2番目は経済協力が重要だと、日本との関係は。なぜかと言うと、日本の方が経済が上ですから、そこから技術移転とか、いろいろな協力の利益があるのだと思って、現在はそこが競争の相手になっているわけですね、2番目も。3番目は日本の方が現在、不信感が高いわけですから…」
松山キャスター
「意識調査をすると、結構そういう結果が出ますよね?」
陳氏
「そう。だから、観光客を見ても、韓国の方が伸びているのではないですか。700万以上になっているのではないですか。日本は現在300万人以下になっているんですね。そのことは韓国の国民はきれいに2トラックの、歴史と経済・安保をきれいに…」
松山キャスター
「切り分けている?」
陳氏
「切り分けているわけです。そのことから見ると、現在の段階で支持率が下がって、それで反日してももうニューノーマルの日韓関係に入っているわけなのですから。だから、歴史については最初から厳しい、だから、歴史の管理はできない。競争相手として日本を見ていると、3番目は先ほど話した通り、好きなことは好きだと、それと不信感はあっても信頼関係がそもそも低いということであるわけですから、日本のことで支持率が上がるとか、することはないですよ」
松山キャスター
「韓国の国民の頭の中では、経済の話と歴史の話、2トラックで分けて考える方が多いという話ですけれども、それは実感されますか?」
浅羽教授
「スペシフィックにこれという形で日韓合意をどう思いますかと聞かれると、いや、反対ですとか、慰安婦少女像の移転に賛成ですかと聞かれると、反対ですと答えると。ただ四六時中、日本のことを考えているわけでは決してないし、韓国の現在の大学生からは、それこそ日本は就職が良いみたいだから日本語を学んでいて良かったと、日本で就職しようと、韓国国内でもフェアをいっぱいやってくれているし、みたいな捉え方ですね。非常にビジネスライクと言うか、そっちの方が儲かりそうだからそっちに行きます、みたいな、淡々とした感じですね」
陳氏
「だから、悪い意味の捉え方で言えば、そういうふうになるかもしれませんけれど。だから、韓国の方も成熟しているのだと。だから、日韓関係のために発展して…しているのが良いのか、悪いのかと言ったらば、日韓関係は良い方が良いんだと皆思っているわけですね」
松山キャスター
「思っている人が多いと?」
陳氏
「うん。でも、歴史については厳しいわけで、理由があるんですね。だから、昔の我々の世代は日本帝国主義そのものが悪いのだと、だから、日本は全部悪いのだという、イメージがあったのですけれども、現在の若者、現在の世代は普遍的な人権問題については厳しいですね。だから、日本だけではないですよ。だから、ベトナムについて韓国側がやっていることについても厳しいし、だから、普遍的な人権の問題として日本の慰安婦の問題を取り上げているわけですね。そのことについては厳しいですよ。でも、それは切り分けて、他の経済、利益になる戦略ということになると、日本との関係は重要だと思っている」
松山キャスター
「現実的に考える人が多い?」
陳氏
「そうです」

陳昌洙 世宗研究所日本研究センター長の提言:『leadership』
陳氏
「私は、リーダーシップと書いているのですけれども。日韓では1番重要なのは、首脳同士が、どう思っているのか、どういうふうに認識しているのかということと、協力する意思があるのかということが重要だと思っているんですね。そのことが、うまく信頼関係を保つことになると、日韓の国民の世論も変わるんです。だから、その意味で、これから安倍総理、それと文在寅大統領が日韓の重要性を考えて、協力してほしいわけですね」
松山キャスター
「現在の段階では日韓両国の首脳、陳さんの目から見てかなり現実的な対応を互いにとっていると、そういうふうに…?」
陳氏
「はい。北朝鮮のことがあって、前よりも協力する姿勢を保っているのだと思っているんですね」

浅羽祐樹 新潟県立大学教授の提言:『businesslike』
浅羽教授
「ビジネスライクですね」
松山キャスター
「あっ、こちらも英語ですね」
浅羽教授
「過剰に期待しないと、と言って過小評価もしない。期待が高くて裏切られたと思うと失望に変わりますし、まだ一緒にやって双方が得することと損を回避できること、多々ありますので、そこはそこでやりたいと。商売の部分と、あと北朝鮮のことに関しては淡々と実務的な協力をしっかりやっていくと。現在、奇しくも2名とも英語で…。日韓、これまで何か特殊なそれぞれのレトリックとか、そういう言葉を使ってきたと思うのですけれども。英語、普遍的なロジック、普遍的な振る舞い、あまねく通じる言葉のロジック・振る舞いを互いにやっていくと、そういう関係が望ましいのではないかと思います」
松山キャスター
「一歩引いて俯瞰で見て客観的にいろいろなことに対応してくという、そういうことも?」
浅羽教授
「そうですね。かつてのような、何か爆弾酒を一緒に飲んで、ワーッと盛り上がってお茶を濁すような関係ではなく、それはそれで楽しいのですが、しっかりビジネス、ことを進めていくということが大事だと思います」